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第26話 A5級お肉とわんちゃん

 あるダンジョンの一室にとてもいい香りが漂っていた。


「ごぶごぶ、うっほうっほごぶごぶ」


「(うっほうっほ)」


「ごぶごぶ、早く焼けるごぶ。早く焼けるごぶ」


「(いい香りだ~。だけどあせっちゃだ~め~よ~。じっくりと焼くんだよ~)」


 その香りの発生源の周りで踊る2つの影があった。その2つの影はとても陽気そうに踊り、何かが焼けるのを待っているみたいだった。


「(あぁ~、いい感じに脂のサシが入ってたしおいしそうぅぅ~)」


「ごぶ?サシごぶ?何かわからないけどいいものそうだごぶ」


「(サシっていうのはその、なんだ・・・。いい具合に脂が入ってるみたいな?・・・ええい!俺もよくわからん!とにかく美味しそうな良い肉だってことだ!)」


「ごぶごぶ、とにかく美味しそうなお肉ごぶ」


 そう、俺たちは肉が焼けるのを待っているのだ!この美味しそうな肉が何の肉かって?


 それはモチロン・・・



 ・

 ・

 ・



「ごぶ、やったごぶ・・・?」


「(それ、やってないフラグ!)」


「ごぶ?」


 『ズーーーーーン』


「「勝ったあぁぁぁあ!」ごぶ!」



「(ふぃぃぃ・・・、何とか勝てたなぁごぶ助?しかしあいつもやっぱり様子がおかしかったな。まぁそのおかげで勝てた様なものなんだが・・・。おかしくなかったらスキルとかも使ってきただろうしなあ・・・、ってごぶ助?)」


 俺はごぶ助に向けてミノタウロスに勝ててよかったなと感想を言っているつもりだった。だが横を見るとそこにごぶ助は居なかった。どこに行ったんだ?と辺りを見回すと、前方でしゃがみ込んでいるのを見つけた。


「(おーいごぶ助~!なにしてるんだ~?)」


「ご・・・ごぶっ・・・!これを見るごぶ!」


「(ん?どうしたんだ?)」


 何やら見てみろという事なのでごぶ助の傍へ行き、見ろと言われたものを見てみる。するとそこにあったものは・・・!


「(魔石と角?それに肉?)」


「ごぶ!石と角はどうでもいいごぶ!お肉ごぶ!すごく美味しそうなお肉ごぶ!」


 なるほど、これらはミノタウロスのドロップ品かと思い当たる。ごぶ助が注目している肉だが、確かにうしの肉なら美味そうというのも納得いくと思い改めてその肉を見る。

 その肉は『輝いている』、そんなツヤを放っていた。その肉の脂は美しいグラデーションを描き、さらに常温で少し溶けだしているのか、脂が弾けて火花が舞っているかのような幻想的な光景に見える。又その脂の火花が弾けることによって辺りにはうっすらと香しい匂いが漂っていた。


「(まるで・・・肉の宝石箱やっ!・・・・ハッ!!!)」


 あまりにも美味そうだったので前世の某有名人みたいな言葉が出てしまった。


「ごぶ、宝石肉ごぶ」


「(そのネーミングはやめておこう?)」


 グルメハンター漫画の先生に怒られそうな名前を出してきたのでごぶ助にストップをかける。

 でもこの肉ってば本当に美味しそうだな!うーん・・・でもこの状況で悠長に食事っていうのもなあ。

 目の前のすごく美味しそうな肉を見ながらどうするか考える。そして俺はある一つの答えをだした。


「(ごぶ助さんや、聞いておくれ)」


「ごぶ?」


「(今の状況としては、迷宮に何かがあって異変が起こった。おそらくその影響で、魔物が侵入できなかったこのセーフティーエリアもおかしくなっている。)」


「ごぶごぶ、たしかに何か変ごぶ」


「(なので今は悠長にのんびり休憩を取っている暇はない!ないんだが)」


「ごぶごぶ?」


「(英気を養って次の難関に備えるというのも大事だと俺は思うんだよね?まあそのつまり何が言いたいかと言うとだね)」


「ごぶ?何を言いたいごぶ?」


「(焼肉パーティーしようぜええええ!)」


「するごぶううううう!」



「「ッヒャッハーーー!焼肉ダァアアア!!」ごぶ!」



 ・

 ・

 ・



 こうして俺たちはすごく美味しそうなミノタウロスの肉で焼肉パーティーを始めたのだ。

 そして何故俺たちが肉の周囲を回りながら踊っていたかの経緯を説明しよう。

 まず俺たちは肉を焼き始めた。安心と信頼の『ごぶ助カリバー』を地面にぶっ刺し、上側に肉を刺して固定する。そこに俺の『火魔法』を使い肉を焼く。

 その肉が焼ける匂いがいい匂い過ぎるので、俺たちのテンションがドンドン上がり居ても立っても居られなくなり肉の周りをまわりだしてしまう。

 そしていつの間にか踊りながら回っていた。なんでだ?


「ごっぶ!ごっぶ!お肉ごぶ!」


「(まあいいか!よし、そろそろ焼けたんじゃないか!?)」


 多分テンションが上がって踊っていたとかそんな事だったと思う!だがそういう細かいことはどうでもいい!今はこの美味そうな肉だ!

 正直な所、こんな感じで肉食って休んでいる場合ではないのかもしれない。ダガシカシ!このやばいほど美味しそうな肉の魔力に俺たちはあっさりと負けてしまったのだ。

 だってさ、このミノタウロスの肉って前世でも食ったことのないような肉なんだぜ?所謂A5肉とかそういうレベル。下手したらそれすら超えてるかもしれない感じだ。・・・まぁA5肉とか食ったことがないからわからないんですがね?


「ごぶ!それじゃあ食べようごぶ!」


「(おうよ!一旦ごちゃごちゃ考えるのはやめて肉を食おう!そうしよう!)」


 俺は一旦色々考えていたことを置いて目の前の最高級の肉に意識を向ける。そして十分焼きあがったと判断して使っていた魔法を消し肉を二つに分けた。それを俺たちはそれぞれ手元に引き寄せて一言。


「「いただきます!」ごぶ!」


 その挨拶と共に肉にかぶりついた。


「「うーまーいーぞー!」ごぶ!」


 一口食べた瞬間つい叫んでしまった。それほど美味かったのだ!

 俺たちは最初に一声上げた後は無言になって食事を続け、気が付いたらいつの間にか肉が消えていた。


「(ハッ!?美味すぎて意識飛んでる間に肉が消えてる!ごぶ助、俺の肉を食べたな!?)」


「ごぶ!?美味しすぎて驚いていたら肉がなくなってるごぶ!相棒、我のお肉たべたごぶ!?」


「「??」」


 俺たちは二人が二人して同じことを考えていたようだった。ペットは飼い主に似ると言うがそういう事なのかもしれない。


「(美味すぎて無意識に食べちゃったのか・・・。残念だ・・・)」


「ごぶ・・・」


「(しかしいつまでも残念がっていられないぞごぶ助)」


「ごぶ?」


 ついつい肉に意識が全部持っていかれてたが今は非常事態だった。いつ何時何が起きるのかわからない状況なのだ!

 あんなにのんびり楽しそうにご飯を食べていたじゃないか!という突っ込みは受け付けない。


「(ごぶ助よ、再度気を引き締めて探索再開だ!)」


「ごぶ!わかったごぶ!」


 俺たちは肉パーティーで緩み切った気を引き締めなおした。そして探索再開の準備を進める。と言ってもばらまいてしまった薬類を拾い集めるくらいだったのだが。

 残っていた薬類をごぶ助のアイテムボックスに入れてもらい、準備が整う。


「(よし、それじゃあ出発しよう。行先はあのミノタウロスが出てきた方の通路だ。あっちは最初ここに飛ばされて以来行ってないから、十分に気を付けて行こう!)」


「ごぶごぶ、命を大事にごぶ」


 十分わかってくれたのか、色々混ざっていない返事だった。

 俺たちはミノタウロスが来た方の通路に足を踏み入れる。何が出てくるかわからないので警戒を強くしながら進む。

 そのままじりじりと警戒をしながら進んでいたのだが、特に魔物もでてこないし何も起こらかった。それでも警戒を緩めずに進み、体感3時間ほど進んだ時だった。


「(ごぶ助一旦停止だ、前方に扉がある)」


「ごぶ、扉ごぶ?」


「(ああ、扉だ。今までこのダンジョンで扉なんて見たことがない。だから最大級の警戒をしてくれ!)」


「ごぶ!まかせろごぶ!」


 俺たちがこれまで進んできて他の道はすべて行き止まりになっており、後はここしか調べるところが無いので扉を開けるしかなかった。なので現れた扉に最大級の警戒をしつつ近づいて行く。そして扉に手が届く距離まで近づいた。


「(んー、パッと見ただの扉っぽいな。物音も特に聞こえてこない)」


「ごぶ、開けてみるごぶ?」


「(それしかないかなぁ・・・)」


 明らかに何かあるんだろうが見てみるしかない。なので扉をほんの少しだけ開ける様にして、恐る恐る扉の向こうを覗き見る。

 扉の向こうは石造りの部屋みたいになっていた。部屋の広さはセーフティーエリアと同じくらいで、明るさもそこそこ明るい。だが天井に光苔が生えている風でもなく、なぜ明るいのか謎な感じだった。

 その部屋の中でも一際謎な存在は部屋の中央にあった。


「(特に敵などは見当たらないな、入ってみるか)」


「ごぶごぶ、入ってみるごぶ」


 俺たちは恐る恐る部屋に入って何も起こらなかったので、ホッと息を吐き安堵した。そして取りあえずは部屋の中央にある謎の存在の元へ歩いて行く。


「(これって何だろうな・・・。あ!まさか・・・)」


 俺はその謎の物体になんとなく検討が付いた気がした。ダンジョン、最奥、謎の物体とくれば多分《《あれ》》だなと鑑定をかけようとした。


「ごぶごぶ、これは何ごぶ?」


 だがそれより先にごぶ助が棒で《《それ》》を突っつこうとした。


「(あっ!ちょっとまって!!)」


「ごぶ?」


 俺の制止むなしくごぶ助の『ごぶ助カリバー』が《《それ》》に触れた瞬間・・・。



『バヂィィイイイイ!』



 静電気が弾けるような音が大音量で響き俺の耳に大ダメージを与えてくる。


「ごぶ!?」


「(ギャーース!)」



 またこのオチなのかぁぁあああ!と俺は頭を抱えたくなった。



 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白かった」「続きが読みたい」「肉の宝石箱やっ!」等思ったら☆で評価やブックマークをして応援してください。

 ☆をもらえて、この小説が人気になると、作者が、いぬまろになります。


 追記:カクヨム様。にてコンテスト参加中です。よろしければ応援おねがいします。

 URL→ https://kakuyomu.jp/works/16816700428711348667

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