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第2話 転生の間とわんちゃん

 『ハッハッハッハッ』


 そんな音と共に生ぬるい風が体に当たる。


「うぅ~ん、なんだぁ?ハッ!ワンチャンライフ!」


 バッ!と俺は飛び起き辺りを見回す。


「は?なんぞここ?」


 起きたら何故か辺り一面真っ白の空間だった。あまりにも真っ白過ぎて距離感覚がつかめず、広い場所なのか狭い場所なのかもよくわからなかった。

 どこまで行ったら壁に突き当たるのだろう・・・。そんなことを考えていると真後ろから生ぬるい風が吹いてくる。それが気になってそちらへ顔を向けた。


「なんだこの生ぬるい風・・は・・・」


 真後ろを見て驚いた。そこにはなんと・・・大きな犬がいたのだ!

 その大きな犬は伏せた姿勢でいるがとても大きく、大型バスくらいの大きさがあるようだ。色は銀にも青にも見えるとても綺麗な白色で犬種はシベリアンハスキーにも見えるがもっと野性味が強く狼にも見える。

 そしてなんといってもその目だ。その目からは強い意志と深い知性を感じさせ、こちらを観察するかの様な目をしていた。

 平常時ならこんなすごい犬?がいたら「ギャー!化け物ー!」とでも叫んでいただろうが、今の俺はこんな夢みたいな状況に興奮しきっていたのか「このわんちゃん超カッコイイ!」と思ってしまい、たまらずに近寄って行った。


「おぉとってもかっこいいなぁお前、撫でてもいいか?おぉそうか、ヨーシヨシヨシヨシヨシ」


 撫でてもいいかと聞いたら首を縦に振ったので、たまらずに近寄り撫で触った。

 その毛並みはとてもなめらかでサラサラしていて良い毛並みだった。ヨシヨシ言いながら5分ほど夢中で触っていたのだが、だんだんと我に返って気が落ち着いてきた。


「ヨーシヨシヨシ・・・ふぅ、とっても最高な毛並みだなお前は。ところでここはどこなんだろう?」


「ここはいわゆる転生の間と呼ばれるところだよ」


 独り言のように呟くと、それに対してとてもいい声で返答が返ってくる。


「やだ・・・とてもいい声・・・じゃなくて!え?お前が喋っているのか?」


「そうだよ、私が喋っているのさ一郎君」


「そうなのか、とてもいい声ですね・・・じゃなくて!転生の間って今言った?それになんで犬が喋って??」


「まぁまぁ、事情を話すので取りあえず落ち着きなさい」


 ちょっと混乱しているとそんな風に言われたので深呼吸をして少し気を落ち着かせる。


「ふぅ~少し落ち着いたぞ・・・で、一体ここは?」


「ここは今さっきも言ったが転生の間というところだよ。一郎君は何故ここにいるかわかるかい?」


 そんな風に言われて考え込む。


「えーっと、たしか俺はビール飲みながら宝くじの確認して・・・それで当たって・・・!」


「そうだよ、それで君はそのあと浮かれて転んで後頭部を強打して死亡。それで今は私が魂を拾い上げてここ、転生の間にいるというわけさ」


「な・・・なるほどぉ・・・。魂を拾い上げたと言いましたが、あなたはまさか?」


「そう、いわゆる神と呼ばれるものだよ」


 そう自己紹介されて、少し前にやったことを思い出し血の気が引いて青くなる。


「すすすすいませんでした!神様だとは知らずにあんな真似を!申し訳ありませんでしたああああ!!」


 そう言ってジャンピング土下座をして謝った。


「ハハハ!いいよいいよ楽にしなさい。まぁ神と言っても地球の神ではなくて、エドゥーナという世界の魔物から昇神した神だがね」


 そう言って笑う神様。ホッと息を吐き顔を上げ問いかける。


「それで、えーっと異世界の神様が何故?」


「いやね、本当に偶然地球を見ていたんだけど、面白いことを言いながらすごい死に方をしたのを見てしまってね。これもまたまた偶然なんだがこちらの世界に転生枠の空きがあるんだ。それでこちらの世界に転生してみないかと尋ねに来たというわけさ。いわゆるスカウトだね」


「転生のスカウトですか?でも・・・なんで俺なんです?言ってはなんですが、俺って特にすごい能力があるとか頭がいいとかでもないですよ?」


「ハハハ!言った通りだよ。本当に偶然転生枠が余っていてね?偶然目についた君を誘ってみたまでだよ。まぁしいて言うならば面白かったから・・・かな」


「面白かった、ですか」


「そうだよ!なにせ死に方が所謂『豆腐の角に頭をぶつける』に見えたし、最後の言葉がダジャレだったしね」


 そういって、ワンチャンわんちゃんライフ・・・とか、ギャグだよね豆腐の角・・・とか言いフフフと笑っている神様を見た。

 テーブルに倒れこんだ時に色々巻き込んだが、そんな感じに見えたのか・・・。

 ちょっとモヤモヤする心境だがそれはとりあえず置いておき、転生について聞いてみる事にする。


「えーっと、それで神様。転生と言いましたがそれはどのような?」


「ああ、ごめんごめん。それはだね」


 そう言って笑っていた神様が転生について説明し始めた。


「転生すると普通は前世の記憶は持ち越せず消えてしまうのだけど、一郎君のその面白い個性を消してしまうのはもったいないと思うんだよね。だから記憶を次に持ち越せるようにしよう。なんて言ったっけ、俺ツエーだっけ?前世の記憶にある技術で楽になるようにするのもいいと思うよ」


 おお!転生物の代名詞である子供の時から修行とかして俺TUEE・チーレム・俺また何かやっちゃいました?とかいいよね!


「他にはそうだね、エドゥーナという世界は地球に比べて危険が多いんだ。危険なことに巻き込まれてすぐに死んでしまわないように、それを打破できるようにユニークスキルを授けようか」


 エドゥーナという異世界は魔物がいて人を襲ったり、山賊や盗賊もいて危険が危ない!って感じらしい。


「特別に転生させたからといって使命を与えるとかもないよ。自分の生きたいように生きるといい。食べ歩きを趣味にしている人もいるくらいには料理も発展していて、人族の国にある首都などではそこそこにおいしいものが食べられるらしいよ。ドワーフ族だとお酒とかね」


 おお!料理がおいしいのはいいな。それにドワーフがいるということは、他にもエルフや獣人もいるということかな・・・犬耳さんとか見たいな!


「転生についてはこのようなところかな。どうだろう一郎君、エドゥーナに転生してみるかい?」


 俺は少し考えてみるが、好条件だと思い転生を受けようと思った。転生物のラノベとか好きだった俺としては、転生で俺TUEE・チートでハーレムなんかもできるんじゃないかと淡い期待もあり受けようと思ったのだ。


「はい!ぜひ受けさせてください」


「そうかそうか、よかったよ。それでは転生の準備をするとしよう」


 そうして神様は何かを念じるかのように目をつぶる。そうすると俺の下に魔法陣みたいなものが浮かび輝きだす。


「それでは一郎君、エドゥーナに送るよ?」


 神様がそういうと俺の体が足元から薄くなっていった。


「はい!ありがとうございました」


「ああ、面白く生きてくれたまえ」



 そう言って、神様が犬顔にしてはいい笑顔で送り出すのが見えたのを最後に転生の間から姿を消していった。


お読みいただきありがとうございます。「面白い」「続きが読みたい」と思いましたら、下にある☆をつけていただきブックマークをよろしくお願いします。


2021/12/1 セリフの言い回しや行間を修正

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