キモチ
絶対に幸せになってやると決意した。
だけど、今更、どうしていいかわからない。
優悟に冷たくしてきて、いきなり、態度を変えるというのもどうかと思うし。
あたしのちっちゃいプライドがあたしの幸せを妨害してる。
そんな葛藤はもうずっと続いてる。
優悟に心を許した、恋をした。
あたしにわかるのはそれ位で。
でも、どうしたらいいの?
そんな連鎖で頭の中はグチャグチャ。
本当に幸せになれるのか。
不安だけがいつもついて回った。
―優悟との生活にも不安ばっかり。
夫婦生活もそう。
優悟はあたしに指一本触れようとしない。
それはそれで悲しかった。
・・・正直普通じゃないと疑いました(笑)。
いい男が据え膳食わぬなんて。
おかしいって思いたくなるでしょ。
そしてあたしは自分の性格で悩んでたはずなのに、いつの間にか、そっちに悩みが変わった。
多分、優悟と暮らし始めて1ヶ月と少しが過ぎた頃。
1ヶ月も一緒に暮らしてる上に夫婦なのに、夜の生活は全くなし。
だから疑いたくもなる。
普通じゃないって(笑)。
――結婚して2ヶ月がたったある日。
あたしは思い切って聞いた。
その一言は自分でも驚く位自然に出てきた。
「優悟、どうしてあたしを抱かないの?」
優悟はかなり驚いた。
そしてキレ気味に言った。
「なんでそれ言うんだよ。」
「何でって・・・・不安なんだもん。」
女として妻として見られてないんじゃないか。
そんな不安と。
最初、初めて出会った頃あんなに感じた優悟の気持ちが今、全然わからないことへの不安。
幸せになると決めたのに。
「優悟の気持ちが見えないよ・・・。」
涙が溢れ出した。
結婚して、一緒に暮らし始めて、あたしは変わったみたい。
前はこんなこと言わなかった。
こんなに泣き虫じゃなかった。
あたしはやっと気付いた。
自分が思ってる以上に優悟のこと好きなんだって。
うざいヤツだと思った。
絶対に愛さないと思った。
なのにあたし・・・・こんなに優悟が好きなんだ。
恋ってこんなにも苦しいんだってわかった。
もうお父様なんか関係ない。
あたしは優悟が好き。
「凜咲、俺の顔見て。」
静かに優悟が言った。
「そして、俺におまえの気持ちを聞かせて?」
「ゆ・・ご・・・好き・・・。」
「聞こえないよ。」
「・・・好きっ。」
不安を打ち消すようにあたしは声を絞り出した。
「俺も。大好きだよ。」
その言葉が何よりも心に染みた。
優悟はあたしを抱き寄せた。
そして耳元でささやくように言った。
「凜咲が大事だから抱かなかった。凜咲を傷付けるようなことはしたくなかったから・・・。」
それだけでもう十分だった。
優悟の温もりに包まれて幸せといえるような気がした。
「優悟・・・あたしを抱いて。」
初めてじゃないけど・・・とても恥ずかしかった。
だけど気持ちが止まらなかった。
「いいの・・・・?」
「・・・うん。」
見つめ合った後、キスを交わした。
―そしてあたし達は・・・結婚してから2ヶ月過ぎの初夜を迎えた。
何度も愛し合って。
優悟の愛をたくさん感じた。
今までの不安が嘘のように消えてった。
一緒に、常に側にあった孤独感が消えた。
一人じゃないのに一人だと思ってた孤独感。
結婚して、優悟の愛を感じて初めて、あたしは一人じゃないと思えた。
愛ってこんなに温かいんだね。
「優悟、あたしを絶対に幸せにしてよね。結婚してやったんだから!」
「はいはい、お嬢様。」
結局あたしはお父様の策略に見事にはめられたらしい。
けれど、もう、忘れようと思う。
お父様の言動で一喜一憂してるのもバカらしいし。
気にしてる間は幸せにもなれないだろうからね。
でも・・・あたしのこの性格はまだまだ直りそうにないです――。