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お見合い

――さかのぼること、8ヶ月前。


お父様とお母様に嫌々連れ出され、ホテルの一室に向かった。


そこには・・・女の人がいて、あたしたちを見て軽く会釈した。


40前後の女性は着物がとても似合っていた。


「すいません、柳さん。優悟ったらお仕事入れちゃって・・・。」


「いえ、美波さん。この世界はその時が一番大事なんですよ。よく理解してますから。」


あたしには見せたこともないような顔をしてお父様は言った。


そして続けて、あたしを紹介した。


「あ、これが娘の凜咲です。」


「凜咲です。」


そういって会釈したときだった。


バタンッと大きな音を立てて、扉が開いた。


同時に、男が飛び込んできた。


「すみませんッ!!遅れてしまって・・・。」


チャラそうな格好をしたその男は深く頭を下げて謝った。


「大丈夫だよ、優悟君。これで主役はそろった。始めようか。」


笑顔でお父様が言った。


あんな笑顔、初めて見た。


―あたしと優悟のお見合いが始まった。


とは言っても、あたしは黙って座ってるだけ。


無理矢理連れてこられて、笑顔なんかできる訳がない。


だから・・・これじゃ、優悟とお父様のお見合いみたい。


あたしの態度は自分で言うくらい、悪い。


今まで何でも聞いてきたよ。


だって、お金に関しては何の不自由もしなかったし。


逆らうことは許されないとも思ってた。


だけど・・・これは違うよ。


あたしの人生はあたしのものだもの。


そんなこと決められたくなかった。


でも・・・やっぱり何も聞いてはくれなかった。


あたしは・・・・・結局、お父様の操り人形に過ぎない。


だから今も逃げたくても逃げられない。


なんせ、扉の前に黒いスーツの男が二人立ってるし。


・・・・はぁ。


疲れちゃったよ、座ってるだけも。


帰りたいなぁ〜。


そんな事を考えてるときだった。


「柳さん、あの、すいません。凜咲さんと二人で話したいので、外を歩いてきてもいいですか?」


優悟はそう言って立ち上がり、あたしの腕を掴むと、扉を開いた。


あたしは突然の展開に驚いて、引きずられるかのように後をついて部屋の外に出た。


お父様たちも驚いているようだった。


―「ちょっとッ!腕痛いんだけどっ。放してよ!!」


しばらく歩いた後、あたしは優悟の手を振り払った。


「ごめん・・・、大丈夫?」


チャラい見た目からは想像もつかない優しさを持ってた。


「・・・・・」


関わりたくなくてあたしは黙りを決め込んだ。


「君、あの場に居たくなかったんだろ?顔がつまらなそうだし。ふてくされてただろ。」


でも、鋭いとこ突いてくる。


「どうしてわかったの?」


「顔に書いてあるって言ってんじゃん。まあ、正直俺も嫌だったしな。」


「あなたも?」


「当たり前だろ?急に結婚しなさい、お見合いしなさいって、おかしいって。」


「え・・・じゃあ。」


「そう。俺のおふくろと柳さんが昔からの知り合いらしいよ。んで、二人で勝手に進めた話。」


優悟も・・・同じだったのね。


「けど・・・俺は、今はいいよ。君みたいな子なら。」


「え!?」


なんでよ、断ろうよ。


「俺、お嬢様ってもっと嫌な人種かと思ってた。イメージで。でも、凜咲はなんか違うな。」


「・・・勝手に呼び捨てにしないで。」


どさくさに紛れて。


「いーじゃん、結婚すんだし。・・・凜咲は素直な子だなって思った。だから、今は結婚してもいい。」


「あたしは嫌よ。勝手に決められたくない。じゃあね、あたし帰るから、お父様たちに言っておいて。」


優悟に背を向け、あたしはロビーを出た。


クールにすたすたと歩いていたけど、心臓はバクバクだった。


そして、ムカつくけど・・・優悟がかっこよく思えた。


あ゛ーーーーッ!!


あたし、何言ってんだろ・・・。



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