平和って大事
「もう無茶はするなよ!凜咲は一人の体じゃないんだよ!!」
「ごめんなさい・・・。」
「わかったらいい。」
この前の通り魔事件以来、優悟は何かと怒る。
今怒ってるのは、SPを付けずに、如月とランチに行ったこと。
それぐらいで怒るな!!って言いたい気分。
・・・でも、あれ?悪いのはあたし??
だよね~。
でも恨み買う優悟の方が・・・それは言っちゃいけない。
――あの通り魔事件は週刊誌などで記事になった。
『沖田剣哉の娘(18)、通り魔に遭う!!』
とタイトルが付けられ、記事はこう。
「俳優 沖田剣哉と織紗英華の娘の美波凜咲さんが、都内某所で通り魔事件にあったという。犯人は俳優の進也さん、本名は竹島進で、既に身柄を拘束されている。」
記事の中には優悟との因縁も書かれていた。
最初、その記事の書かれている雑誌を、お父様もお母様も・・・優悟も隠していた。
あたしには伝わらないように・・・。
きっと思い出したくないだろうからと、気を遣ってくれたんだと思う。
でも、あたしは偶然その雑誌を見た。
そして・・・みんなが隠していた理由が明らかになった。
事件の始まりは4ヶ月前。
次の大河ドラマの主演が決まった。
それは・・・優悟の事務所の先輩で、有名な俳優、倉先 静。
そして少し前、優悟の大河ドラマ出演が決まった。
・・・でもその前に、優悟の役に決まっていた人がいた。
それが竹島進。
あたしを襲った犯人。
それが竹島進との因縁。
役が決まって喜び、10年つきあっていた彼女にプロポーズをしようとした矢先に降ろされて。
挙げ句の果て、彼女にも捨てられたらしい。
そして自分の後に役に抜擢された優悟が許せなかった・・・。
結婚して、仕事も増え、人気も急上昇。
そんな順風満帆の優悟が憎かった。
―逆恨みもいいとこなんだけど・・・。
そして・・・その恨みはあたしに向いた。
竹島進は沖田剣哉・・・お父様にも恨みを持っていた。
お父様が言った一言で竹島進は仕事を降ろされたこともあったらしい。
だからあたしを傷つけることで二人を追い詰めようと・・・。
これがあの事件の全てだった。
――「優悟、さっきはごめんね。もうSP振り切って逃げたりしない。」
その場を離れようとしたあたしを優悟は呼び止めた。
「ちょっと待って、凜咲。」
「どうしたの?」
「あのさ・・・子供が生まれて、大河の撮影が終わったら、新婚旅行行こうな。」
・・・・。
それ、このタイミングで言う事?
「いきなりでびっくりしたーっ。・・・そういえば、行ってないもんね。」
「ああ。結婚してすぐ忙しくなったし。行けなかったからな。」
「それに、この子も、ね。」
「だな。とにかく、ゆっくり行き先とか考えような。」
「うん!じゃあ・・・おやすみ。」
優悟にそう言い、部屋を出ようとした・・・が。
「あ、凜咲、今日は一緒に寝ようよ。」
振り返って優悟を見るとかなり笑顔だった。
・・・気持ち悪!!
と思ったことは秘密♪
「もぉ、しょうがないな~。大きな子供なんだから。」
「とか言って、凜咲も一緒に寝たいんだろ?」
ムカっ。
一緒にするな!!
・・・でも、
「そういう事にしてあげるよ。」
ツンデレ風?
またキャラチェンジ??
はははー・・・。
自己嫌悪。
「やっぱり凜咲、素直じゃないんだから~。」
「だーかーらーっ!!」
「早くここにおいで?」
優悟はびっくりするぐらい・・・やっぱり笑顔でした(笑)
そして独り言のようにつぶやいた。
「最初から素直に言えばいいのに。淋しいって。」
ドスッという鈍い音が響いたのは・・・気のせいかしら?
うん。
きっと気のせい。
あたし、疲れてるからだ。
ついでに横で、優悟がお腹を押さえて苦しんでいるのはきっと食あたり。
そうよ、きっとそう。
食べ過ぎってのもあるかな?
ご飯、3杯もおかわりしてたし。
あはは。
腹八分目って言葉、優悟は知らないのかなー?
「何笑ってんだよ?凜咲。」
優悟はお腹を押さえつつ、あたしに言った。
「きゃあーーッ!怖いーー!襲われるーーーッ!」
少しネタに走ってみたり・・・。
ペし。
優悟の仕返しのデコピンが、見事にあたしのおでこにクリーンヒットした。
地味に痛い・・・。
「暴力反対!!」
「デコピンは暴力じゃねえ!愛の鉄拳だ!!」
・・・・・・・・。
寒い。
寒すぎる。
ノーコメント、ということでお願いします。
はぁ・・・・。
やれやれ。
うちの夫はどうしようもない少年の心をお持ちのようです♪
こうして今日もあたし達の一日が終わっていった・・・。
些細な言い争いも愛おしい、バカップルの誕生(笑)
少し、どころかかなりネタに走ってしまいました(笑)
とにかく笑ってくだされば・・・。