告白
「大切な話がある」か。
興味もないし。
聞きたくもないのに・・・。
「・・・凜咲、実はな、俺・・・・・余命半年なんだよ。」
「は・・・?」
いきなり何を言うのかと思ったら・・・余命半年?
「冗談よしてよ!つまらないことにつきあってられるほど暇じゃないんだけど。」
こんなにピンピンしてる人が余命半年な訳・・・・。
「冗談なんかでこんな事言うか!・・・信じられないのは俺も一緒なんだ。」
嘘でしょ、嘘。
嘘に決まってる!
「凜咲、信じられないでしょうけど、事実なの。」
「お母様・・・。」
いつの間にかお母様が戻ってきていた。
「死ぬ前に、凜咲の花嫁姿見れてよかった。孫の誕生を祝うことはできないけど、凄く嬉しいよ。元気に生まれて来ることを祈ってる。」
「そんなこと言わないでよ・・・・・!」
遺言みたいな事・・言わないでよ。
嫌いだった。
何でも勝手に決めて、結婚相手決めて、無理矢理結婚させて。
だけど嫌いになりきれなかった。
こんな人でも親だし。
・・・死ぬなんて考えたこともなかった。
いなくなる?
そんな馬鹿な・・・!
「すまなかったな。・・・無理矢理結婚させて。憎まれても仕方ない。でも、俺はもう悔いはない。」
「・・・・。」
「凜咲のこと、頼むな。優悟君。」
「・・・はい。」
「・・・お父様。あたしと優悟を結婚させたのはどうしてなの?」
ずっと聞きたかった。
どうして優悟と結婚させたのか。
理由が知りたかった。
「さつきとは、幼なじみなの。」
お母様が言った。
「さつきって・・・。」
「そう、優悟君のお母さん。優悟君が生まれて、凜咲が生まれた時に、結婚させましょうって言ってたの。」
「俺も、ついこの間聞いたよ。おふくろから。」
「優悟、知ってたんだ・・・。」
「知り合いってことは知ってたけど、詳しく聞いたのはついこの間なんだ。」
「冗談のつもりだったけど、優悟君はいい年して彼女一人いない。凜咲は大学に進む気も働く気もない。じゃあ、ひっつけようってさつきと・・・。」
「ノリなんだよ、俺たちの結婚は。」
「ノリ?なにそれ・・・。」
「まぁ、俺は凜咲を好きになったし、今幸せだし。よかったけどね。」
「よくないッ!!何よ・・・ノリって。人の人生を・・・!」
「凜咲、落ち着けっ!お前一人の体じゃ・・・。」
「うるさい、優悟!放して・・・!」
「もう済んだことでしょ!いいじゃない。」
「お母様も酷いよ!」
「じゃあどうして進路決めなかったのよ。凜咲、あんたが悪い!」
「無理に決めろとは言わないって言ったのはお母様じゃない!」
「人のせいにしない!」
「二人ともやめなさい!」
あたしとお母様の言い合いを強制終了したのはお父様だった。
お父様がいきなり大声で言うから空気は凍り付いた。
あたしを止める優悟の手もほんの一瞬離れた。
「いい加減にしなさい。もう二人とも大人なんだから。」
「ごめんなさい・・・。」
だけど、止まらなかった。
ノリなんかで人生決められた、なんて。
「帰る・・・ッ!」
あたしは部屋を飛び出した。
「ちょっ、おいッ!」
優悟も、あたしを追って部屋を出た。
「走るなって!凜咲!!」
ノリ・・・。
あたしの人生はノリなの?
そもそもノリで娘の人生決めちゃうわけ?!
信じられない。
お父様が短命だろうと知らないわよ、もうッ!!
勝手に死んじゃえばいいの!!
「凜咲、止まれって。」
「うるさい優悟!帰れ!!」
「俺に当たるなよ。なあ、凜咲。」
「ほっといてよ!ついてこないで!!ストーカーって叫ぶよッ!!」
「てンめ・・・!ストーカーはねぇだろ!?」
「知らない!誰かーーっ!むぐっ」
あたしは大声で叫んだ。
それを優悟が阻止しようと口を塞いだが・・・逆効果。
あたしの声を聞いて窓から顔を出してきた人ににらまれる優悟。
「だからっ、静かにしろよ!・・・すいません。」
ぺこりと頭を下げた後、またあたしの方を向いて言った。
「ばかやろー!こんなトコで大声出すなよ。」
「だってストーカーじゃん。」
「だからちげーよ!っておまえも知ってんだろ。」
「知らなーい♪」
たまには悪魔から小悪魔になるのも・・・と思ってみたけど、キモっ。
自分でいうのもあれだけど・・・・。
「凜咲、もう一度聞くけど、おまえは後悔してるか?結婚に。」
近くにあった喫茶店に入って、優悟が発した一言目。
「・・・してない・・と思う。」
悩んだ後、返答した。
確かに今、あたしは幸せなんだと思う。
だけど・・・あんなことを聞いてしまって・・・とても腹が立った。
許せることと許せないことがある。
・・・でも、もう遅い。
あたしは優悟を愛しすぎた。
好きだから・・・もう離れられない。
すべてを許すしかないの。
子どもだっている。
そう、ここに。
あたしたちの愛の結晶ともいうべき、子どもが。
「・・・ごめん優悟。」
「何が??」
あたしの突然の謝罪に優悟は驚いてきょとんとしていた。
そう・・・もう・・・いいのかも。
この結婚に、もう、後悔はない。
今あたしたちが頑張らなくちゃいけないのは子どものことよ。
もう、過去に囚われてちゃいけないの。
――あれ?
何か重要なことを忘れてるような・・・。
(お父様のことだよ!!)
何か思い出しかけたような・・・。
ま、いいか。