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ニャンだふるワン  作者: 自由人書
98/521

ニャ~・・・98

「久しぶりだね」


学校から抱かれていた僕が連れて来られたのは領主様の屋敷だった。


グランカさんが学校を出た後に最初に向かったのが、造船所だった。僕が良く知る道を軽快な足取りで進んでいたけど、お嬢様らしき人が住むような建物が無いよなあと思って着いた所が造船所。『大型の船の造船所よ、見えるでしょう、大きい船が作られているのが』と説明してくれた。お財布さんの船の大きい骨組みの材料がが見つかった様で、船底の方から外壁の部分が作られていた。造船の作り方は分からないけど、このまま船の外壁の作業が続けられそうに思えた。


お財布さんの船の造船の進行具合が見えれたのは凄く嬉しかった、次に向かったのが市場の野菜の露店がが多く在る通りで、野菜を販売しているクロエさんのお店の前を通った。久しぶりに会うクロエさんに手を振って元気に過ごしている事をアピールした。クロエさんからは積み木が売れて、在庫を持って来る様にミヤちゃんに伝えてと言われた。


キャシーさんの家の近くも通ったけど、露店と違って、建物の中で作業するのがお肉の問屋さんなのでキャシーさん一家を見かける事が出来なかった。


商業地区の様な路地を何ヵ所か過ぎると、住宅地の様な建物が多く建つ地域になった。


僕が知っている道路を進んで行きついた場所は、訪問マッサージを何回かした領主様の屋敷だった。なるほど、グランカさんは領主様の娘さんか。


帰って来た道順を思い出すとだいぶ遠回りをしたんだなグランカさんは。


「ニャ~≪こんにちは、お久しぶりです≫」


抱かれたままの状態で僕は、領主様にお辞儀をした。


「お父様、着替えて来ます」


「ああ、食堂で待っているよ・・・・・・先ずは、お昼にしよう。レイちゃんの好きな串焼きを用意してあるよ」


「ニャ~≪串焼きが食べれるのか、付いて来て・・・・・・連れて来られて良かったな≫」


少し白髪の増えた金髪の領主様のソード・フォン・クライスト様に付いて行く。


このお屋敷を歩くと大金持ちの家に住む子猫の気分になるな、周りを観察しながらチョロチョロしながら後を追う。これだけ広いと全然使わない、行かない部屋がありそうだな。





映画とかで見た事のある、貴族様の屋敷にある、長~いテーブル。テーブルが長くても椅子の数は少ない。椅子と椅子の間隔が2メートル位は離れているかも知れない。


ソードさんに付いて来た時には誰もいなかった食堂に今は僕も含めて5人の人がいる。一番偉い人が座る上座にソードさんが、右斜め前に奥様のリディアさん、リディアさんの前に座るのがグランカさんで横には少年が座っている、名前はフレデリック君だ。フレデリック君は親戚のお客さんとの事だ。


フレデリック君の前の席には座って食べれない僕がテーブルの上で、焼肉と冷めたスープのお皿の前にちょこんと座っている。テーブルの上で食べる事があるけど、領主様の高級テーブルの上は流石にここでいいのか聞きたくなる。


テーブルは光沢があるので、何か加工が施してあるのだろう。弁償できない僕は、爪で傷を付けない様に気を付けよう。


食事を始める時に話は後にしよう、先ずは食事を味わってくれと言われた。


本当に何も話さないで食べるんだなと感心してしまう。僕の前に座っているフレデリック君も静かに食べているけど、ちらちらと僕に視線を向ける時がある。


焼肉は凄く美味しい、声に出して美味しいと言えないのが少しつまらない。美味しい時は自然と呟くものだけど、呟くような雰囲気がここには無い。それに猫は静かに食事をするんだよな、人間だけが話しながら食事をする。


いつもの光景の山済みのパンが無いのは、パンが無くなるとメイドさんがお皿に載せてくれるからだ。置かれる前に『もう結構です』と言うとお代わりのパンが置かれないみたいだ。


皆の食べている料理は、ステーキに野菜のいためた物、スープにパンだ。ステーキ肉が何か気になる、牛を見た子がないけどこの世界にいるのかな、いたとしたら、イノシシみたいに体長は凄く大きいんだろう。





屋敷で働く人達の好奇心の視線を受けながら向かった部屋は、両開きのドアのある広い部屋だった。僕から見たら狭い部屋は無いけど。


凄い本棚の数だな、暖炉とドア以外は本棚だ、どんな本があるのかな・・・・・・この本は誰が作ったんだ。貴重な本・・・・・・洋服が欲しい僕が駄目にした本も高価なんだろうな。


本の数は4千冊位有ってもおかしくないな。数えるのは面倒なので確認しないけど、僕の知っている公園にある図書館よりも本の数が多い、あそこは小さい図書館だからね。公園の名前は大塚公園だ、公園の入口にレンタル自転車が置いて有るんだよ。


前を歩いているソードさんを抜いて向かった先に有る机は、ドーナツの半分の形の机だ、大きい半円の中心に一人分より大きい半円だ、ここにソードさんが座るんだな。


「面白いだろう、半円型の机。内側に私が座って外側には7人が座れるんだ」


「ニャ~≪丸いテーブルはよく有るけど、半円のドーナツ型の机は初めて見ました≫」


「ふふ、レイちゃんは話せるんだろ、先生方から聞いたいるよ。先生方が話したわけではない、授業の進め方、魔法の授業の方法等を考えてくれた様だな、ありがとう」


僕が話せる事を先生達が言わなくても、僕の周りに話せる事を知っている人は沢山いるな、グランカさんも知っていた。あたり前の様だけど、目の前では話した事が無いんだよな、個室で勉強をしていたんだから。


「お父様~」


「おじさん、僕達も一緒に話を」


「そうだな、皆座ってくれ、レイちゃんは机の上だな、そうしないと見えないだろう」


僕達の後にそーとドアが開くとグランカさん達が入って来た。


ソードさんと反対側の7人座れる方に、グランカさんとフレデリック君が座った。僕はグランカさんの横の場所の机の上に座ったけど、立ち上がったグランカさんに引き寄せられてグランカさんの前に座っている。


「最初から話そうか、その方がいいんだろ、グランカ?」


「はい、質問しないで済みます」


「僕も聞きたいです、今までの事が本当なのか」


何が本当なんだろう? ふむ、親戚の男の子が僕に視線を向けているぞ。


「先ずは、二人が気になる事・・・・・レイちゃんが話せるかだが、二人は学校でレイちゃんが話しているのを聞いた事があるのかな?」


「ありません」


「ありません、他の生徒が話すと言っていました」


あれ、フレデリック君も学校に来ているのか・・・・・・もしかして、もう一人の個人授業の生徒さんは彼なのかな。後姿は、ここから出は見れないけど、そうなんだろうな。


「レイちゃん、何か話してくれないかな、私もこの2人と同様に聞いてみたいのだ」


話せばいいのか、何を・・・・・・先ずは自己紹介だな。


「初めましてニャン、僕の名前はレイニャン、ソードさんニャン、グランカさんニャン、フレデリック君ニャン、これでいいニャン」


「凄い、話すの聞けたよ」


「本当に猫が話した、僕の名前を呼んだよ」


三人は驚いている様だ。グランカさんも驚いているけど、ほら、話せたみたいな顔をして視線を僕に向けている。


「凄いな、私の名前を憶えてくれていたのか、娘とフレデリックの事も呼べるのか、初めてこの屋敷に来た時には話せたのかな?」


・・・・・・そんな前の事覚えてないよ、どうなんだろう、最初からミヤちゃんの名前は呼べたけど、どどうかな、話せる様になっていても片言だったかな。


「話せなかったニャン、話す練習はしていたニャン」


「練習したんだ。質問です、どんな練習をしたの?」


「グランカ、今は質問は止めよう、話が進まない」


「おじさん、僕も聞きたいです」


「そうか、仕方がない、お願い出来るかな?」


「はいニャン。人間の言葉の発音ニャン、同じ様にニャン、聞こえるようにニャン、練習するニャン、同じ発音になるニャン、話す事ニャン、出来るニャン。もっと簡単に説明するニャン、人間と同じ音の練習するニャン、同じ様に聞こえれば次の言葉ニャン」


「・・・・・・最初の方は短い文章だったのに長い文章でも話せる、凄い、それにだ、猫のレイちゃんが練習をしようとした事が更に凄い、どうなんだ、猫とはこんなに頭が良い物なのか」


「なるほどなるほど、発声練習して話せる様になったんだね」


「はいニャン」


「勉強する猫、不思議だ」


「はいニャン」


「謎が解けた事で本題だ」


謎は謎のまま、練習すれば誰でも話せる、でも、何で練習したのが本当の謎なんだけど、まあ、いつか質問されたら正直に答えよう簡単な答えだけど。






「検証は大変だったようだな、しかし、よくそんな何日も練習が出来たな」


「そうです、僕だったらすぐに飽きただろうな」


「私なら頑張れたわよ、知る事は大事なの」


「大変だったニャン、途中からは意地ニャン」


魔法の検証の話が終わった、ニャンを付けて話すのは苦労するな。


そうだ、意地になっていたんだ、魔法が使える様にならない様な予感はあった・・・・・・でも、あれだけ練習したんだからもしかしてとも思った。途中から検証する事と僕が使える様になるのは別だと割り切った。そんな時がたまにはある、ゲームはあまりした事が無いけど、レアアイテムは出ないだろうと思いながらレアのボスと戦う心境と一緒だろう。


「ロイ先生の提案とマイヤ先生のお願いを聞いた事も報告を受けている、学校に通う生徒さん達の勉強に役立っている様だ、ありがとう。先生達も助かっているだろう・・・・・・フレデリックの勉強にも役に立っている」


ほほう、このフレデリック君の役に立ったのか。


「そうだね、前より分かりやすくなったかな」


「順番に並んでいる文字のお陰で、簡単に書ける様になったわ」


ソードさん達に今までの事を話した、順序良くまとめたつもりだけど、どうなんだろう。魔法の効率をよくする方法、文字の覚え方、授業の進め方、授業の復習等、先生方に僕が提案して、お願いした事は全て話せただろう。


「すいません、ソード様、リディア様がマッサージの準備が出来たと、レイ様をお待ちです」


ソードさんの要件のお話が終わると、雑談をしていた。どうして僕が串焼きが好きな事を知っているのか尋ねたら『学校でみんなに質問した』だった。


質問少女のグランカさんの質問責めに他の人もなっていたんだと初めて知った。


そこにメイド服を着た・・・・・・メイドさんが僕を呼びに来た。


「そうか、レイちゃん、リディアの準備が出来た様だ、お願い出来るかな。二人共、話はこれで終わりだ」


「はいニャン」


「お部屋に戻ります」


「僕も部屋に戻る、本でも読もうかな」


二人がソードさんの部屋を退室すると、準備が出来たと知らせてくれたメイドさんの案内でリディアさんお部屋に向かった。フフフ、レイ様だって。


僕の人生の中で一番偉い・・・・・・高貴な方? にマッサージをする、丁寧にリズムよく力を入れるところは入れ、優しく撫でるところはゆっくりと徐々に早く。基本をしっかりとしよう、無礼があってはいけない、猫でもマッサージは一生懸命する。




「リディアが、喜んでいたよ。前回もそうだが、レイちゃんはどこでマッサージを習ったんだ?」


「秘密ニャン、門外不出ニャン、誰にも教えないニャン」


喜んで貰えた様だ、マッサージを一生懸命にして良かった。元の世界の事が言えないんだから、教えないと言えば、大丈夫だろう。


「そうか、秘密か・・・・・・致し方ないな。どうだここにある本で読みたいのはあるかな、グランカから勉強が好きだと聞いている」


グランカさんは僕の事をどれだけ他の人に質問しているんだ。ミヤちゃん達からは僕の事を聞いている人の話は聞いた事が無いな、ミヤちゃん達には聞いていないのかな。


ソードさんがこの部屋の本を読んでいいと言ってくれたけど・・・・・半ドーナツ型の机の上で周りの本棚に何が有るんだと視線を向けたけど、多すぎるんだよな・・・・・・それに、親切にタイトルが書いて無いんだよ、手に取らないと何の本なのか全く分かりません。


そうだ、あの事が書いてある本は有るのかな。


「この中にニャン、有るのかニャン・・・・・・」





「ニャ~≪色々あったけど、来て良かったな≫」


胸元で揺れている巾着には金貨1枚が入っている。僕が考えた言葉と文字の教材の販売が出来なくなったお詫び、又はお礼だそうだ。


学校の授業の進め方と、学生さんの勉強の進み具合がいいらしい。魔法も順調で、生活魔法を覚えた者が多く出たと、他の街に情報が提供できるとソードさんは喜んでいた。


ソードさんの奥さんのリディアさんはマッサージを凄く喜んでくれて、腰が軽いと言っていた。リディアさんにマッサージを施術していると、グランカさんがマッサージを観察しに来た『ふむふむ、これがマッサージ、撫でているだけの様だけど、気持ちがいいのね・・・・・・お母様がだらしないお顔を』と言った後に、興味が無くなったのか、部屋を出て行った。


領主様の依頼のお礼は金貨1枚が相場なのかな、庶民には大金過ぎる気がする。それに、そのお金を運んでいるのが猫の僕、何とも不思議だ。


それにだ、僕にお金を持たせる事を・・・・・・前回と同じだ。そうすると、前回は初めてなのに気にしなかったのかな。それとも、不思議な猫だから、まあいいかと思ったのかな。


「ニャ~≪焼肉美味しかったな、ソードさん達の食べているステーキも美味しそうだったけど、味付けは塩コショウにニンニクかな、ワインを使ったのも美味しいんだよな≫」


お昼をご馳走になったから、のんびり帰ろう。


何年か前にソードさんの屋敷から帰るのに、近道を考えた。屋敷の前の道を東に向かって行けば、途中にある林を抜けて、東側の街に出れる。林は海の方が尖った三角形の形をしている、西側と東側を分けているのが三角形の林。西側の林から緩やかな傾斜を上るんだよな。


ミヤちゃん達がお風呂の薪を拾いに来たのもこれから向かう林だ。


何年か前に通った道順を思い出して、猫らしくチョロチョロと建物の近くを歩く。思い出の道の様に懐かしい気持ちになるな。


大きい通りの角の建物で立ち止まり、海に視線を向ける。


「ニャ~≪海がキラキラして、ないか起きそうな、ワクワクした気持ちになる、いい事が起きそうなそんな感じだ≫」


夏休みが終わって二学期が始まると、夏休みの間に海に行った事を話して聞かせる友達が多い。東京だと千葉の海に行った人が多くて泊りで言っている様だ。神奈川県の江の島の海は日帰りの人が多い、東京から1時間位で行けるからだ。


友達も海のキラキラを見て、ワクワクしたんだろうな。猫になっても泳げるのが嬉しい、速く泳ぐ事は出来ないけど、泳ぎ始めた時の言葉には出来ない感情・・・・・・なんだろう、帰って来れた? 久しぶりに入れた? 自分の居場所に戻って来た? ・・・・・・よく分からない感情が沸き起こるんだよな。


ニャンパラリンで飛び込んだ時はそんな感情は無いけど、静かに海に入ると不思議な感じがする。


夏の海には皆がワクワクしている、ここからは見えないけど、ロイ先生はエサを食べているお魚を想像して楽しんでいる筈だ。


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