ニャ~・・・78
「つい最近新しい冒険をした。ある依頼で、西にある標高の高い山に特別な草を取りに行ったんだ、山に着く前に魔物と遭遇、俺達三人組のパーティーは剣士が二人に魔法使いの編成だった。山に着くまでは戦闘する事もなく、先頭のバカを追いかけるだけだった。遅れて付いてくる魔法使いは『走るの禁止の約束はどうなったのよ』と叫んでいた。俺も禁止だと言ったのだが、山に入ってからが大変だからと注意してあったのに、見事に別行動になった」
誰と一緒に行ったのか、分かる出だしだな。走るのが好きなロバート先生、足の遅いライラ先生はいないだろうからメイガン先生、話をしているパール先生、先生三人組で依頼を受けたんだな。
「ニャ~≪レイちゃん、面白い話なの?≫」
「ニャ~≪少しね、物語を聞いているみたいな感じだから、言葉の勉強にはいいよ≫」
「ニャ~≪よく聞くね≫」
ロイ先生とライラ先生にお願いして、妹も学校に来る事を許して貰った。授業中にはあまり話さない様にお願いされた。
二人で勉強するのは楽しいのだけど、教科書の様な物がないので、僕が話し続けないといけないので大変だ。話している人の言葉を勉強するなら、学校の授業に出た方が偏りのない単語と会話が聞けると思って許可を貰った。
「ふみふみ」
「ニャ~≪ふみふみ≫」
キャシーさんは小声でふみふみを要求してきたので、授業中だけど太ももにふみふみする。好きな授業に出れるこの学校だと、友達と同じ授業を出る事はよくある事だ。キャシーさんも僕と同じ授業を取る事が多い。
「その後は、どうなったんですか?」
「街道から獣道を上り始めた俺達はゴブリンに遭遇した、どうせならイノシシの方が嬉しいが選ぶ事が出来ない、ゴブリンは7体で、山から下りて来る様な感じで襲って来たんだ。とっさに剣を出したのは俺だけだった、ロバート先生は素手で攻撃を始めた、後ろから来る魔法使いは火魔法と風の魔法を唱えてゴブリンに攻撃を始めた。皆が戦闘を始めてそれぞれがゴブリンを倒していったが、素手で戦っていたロバート先生は、殴り過ぎて負傷してしまったんだ。だから、剣の練習をしよう、魔物相手に素手は危険だ。魔法使いは、逃げ回りながらゴブリンを1体倒す事が出来た。魔法も当たらなければ意味が無い、やはり、剣に勝る攻撃はない。魔法を使える様になっても剣の練習をしよう、安全のために」
「先生、その後はどうなったんですか?」
「うむ、他にも沢山の魔物と動物と戦闘になった、ブラックベアも強敵だったが、魔法使いの火魔法に怯えて逃げてしまった。一番厄介だったのがポイズンスパイダーだ、全長は人間の3倍位ある、ここから・・・ここ位までだ、蜘蛛は巣を作って糸に掛かった獲物を食べるが、ポイズンスパイダーは獲物を捕獲するんだ、体が大きいが木の上にも素早く上がれるので、戦うしかない」
パール先生が大きさが分かる様に、教壇の壁から6メートル位ある場所まで来た、約6メートルの蜘蛛がいる事になる。
「ニャ~≪どうなったんだ、やっけたのかな≫」
「ニャ~≪もう少しゆっくり話して下さい、分かりづらいです≫」
「そうか、レイちゃん達も気になるんだな、続けよう、俺達はポイズンスパイダーを囲む様にして攻撃を始めたが、名前に付いている毒攻撃を受けたら死んでしまう可能性がある、絶対に口の近くの牙に噛まれるわけにはいかない、距離をとってそれぞれが攻撃をした。俺の剣が遂に足の1本を切る事に成功した、ここからは動きの遅くなったポイズンスパイダーを総攻撃だ、誰が攻撃しても避ける事も防ぐ事も出来なくなって倒す事が出来たんだ。頂上付近に生えている草を持ち帰って依頼は終わった、どうだ凄い冒険だろう」
「すげえ~、僕ならあんな大きい蜘蛛を相手に出来ないよ」
「ああ、大きいのに動きが速くて大変だと聞いた事があるよ」
「しかし、先生達が頑張って採って来た草が気になる」
「依頼の情報は言えない決まりだ、もし依頼を受けたらその情報を他の者に話してはならない、よく覚えておくように」
「「「「「「はい」」」」」」
話が面白かったようで、生徒さん達の返事がいつもより大きい。
「ニャ~≪怖い蜘蛛の話だった、大きいから食べられちゃうね≫」
「ニャ~≪足も速いようだから逃げれないのか、遭遇したくない生き物だな≫」
「良かった、終わったのね、蜘蛛の話なんかして、夜眠れなくなるわよ、もう~」
途中からふみふみを要求されないと思ったら、耳を塞いでいた様だ。
「レイちゃん、久しぶりに来てくれたんだな」
「ニャ~≪キャシーさんがどうしてもと言うので≫」
「ニャ~≪初めまして、レイちゃんの妹です≫」
妹には初めて会う人にはお辞儀をする様に教えた、そうすれば人間関係の様に関係が良くなるからだ。
「まあ、綺麗な白色の毛をしているのね」
「はい、レイの妹なんです」
「産まれたばかりなんだよ、夏の初め頃かな」
「キャシー、まだ焼けないのか?」
「もう直ぐよ」
キャシーさんにミヤちゃん達三人と僕達兄妹は遊びに来てと誘われた。お肉の問屋さんの匂いに慣れてきたので、キャシーさんと皆で一緒に学校から帰って来た。
キャシーさんはイノシシの串焼きを焼いてくれているのだ、お菓子の大好きな三人もお肉は大好きだ。お昼を食べていないので余計に食べたくなる。
僕は閉じ込められた後もお昼を持って来ていたけど、財政難と自分で出せないので持って来るのを止めた。それに人間と違って時間通りに食べる習慣がないので、食べたい時、食べれる時に食べればいいと思った。
「お肉が一杯ですね」
「まあな、それが我が家の売りなんだ、アハハは」
「あの・・・・・・少し痛いです」
豪快に笑うおじさんは、アカリちゃんの背中をリズムよく叩いている、力が入っているように見えないけど、アカリちゃんには痛いようだ。
「ごめんよ、キャシーには、いつもしているんだ」
「もうあんたは、このお肉を持ってお行き、お詫びだよ」
「・・・・・・困ります、気にしないで下さい」
「そうだよ、アカリちゃん、気にしちゃいけないんだよ、おじさん、私にもお菓子を下さい」
「仕方ないな、お菓子の代りにこの肉を持っていけ、美味しい~ぞ」
「メグちゃん、ごめんね、うちの両親はお菓子をあまり食べないから家に無いのよ、串焼きを食べてね」
「は~い」
おじさん達は凄くいい人達だ、お肉の話をしながら、僕と妹を撫でる手が止まらない。
「いただきます」
ミヤちゃんの食事の挨拶で皆も頂きますと言って食べ始めた。
「ニャ~≪レイちゃん、お肉が美味しいよ。家のとは違うね≫」
「ニャ~≪新鮮なお肉を焼いて食べれるのは数日間しかないんだよ、時間が立つと少し味が悪くなるんだよ≫」
「ニャ~≪美味しい、美味しい、お肉最高だね≫」
「ニャ~≪そうさ、串焼きは一番のご馳走だ≫」
串焼きは美味しい、でも、この普通の家のあのドアを開けると、向こうでは、いやな光景があるんだよな。この家の玄関がどちらか分からないけど、ドアが二つ有って良かったよ、お肉の加工所から家の中に入らないですむ。
「・・・オー、・・・オー、・・・オー」
「リロイ君、悪いわね」
「いえ、お役に立てて嬉しいです」
開いているドアの向こうの部屋で、お風呂の水瓶に水を貯めている音が聞こえる。便利だな生活魔法の水魔法は、沢山ある水瓶が水で満タンになっているんだろうな。
リビングの前の布団に妹と挟まれてリロイ君の唱える声とシンシアさんのお礼声が聞こえてくる。
「貯め終わりました、これでいいですか?」
「ご苦労様、ゆっくりしていってね」
「はい」
終わったみたいだ。
「レイちゃん、終わったよ。抱いてもいいかな?」
「ニャ~≪いいよ、ご苦労様≫」
「お風呂に入るから、キレイだし良い匂いがするんだね。レイちゃんの妹も良い匂いだ」
妹はお昼寝中だ、仔猫なので一日に寝る時間は僕よりも多い。僕も生まれたばかりの時はよく寝ていたな。
暖炉の前のソファーに座って僕を撫でるリロイ君は、毎日入っているお風呂の水を樽に入れる為に来てくれた、頼んだのはミヤちゃんだ。毎日お風呂を沸かしてくれるのはハリーさんだ、どうしてなのか分からないけど、優しいハリーさんの好意に甘えている・・・・・・僕と妹は。
リロイ君は学校に来る回数が減ってきている、それは魔法が使える様になって授業を受けなくても良いと思っているからだ。あの学校は夏に初めて参加して、辞める時はいつでもいいそうだ。
もう少し魔法の効果が上達したら、学校には来なくなるだろう。なかには、魔法を覚えるのを諦めた年上の学生さん達も学校に来なくなったと、ライラ先生は言っていた。
諦める人と、頑張り続ける人、事情がある人、色々な人が通う学校、ミヤちゃん達と僕は頑張り続ける人だ。
「ニャ~≪魔法のコツを教えて欲しいな、ミヤちゃん達もまだ使えてないしね≫」
「そうか、気持ちいいんだね、僕もだよ」
会話をしない様にしているから、相手に何を言っているのか伝わらないけど、これが普通なんだよね。
くだらない商品が有ったな、動物の話している事が分かるとか、人間の赤ちゃんの言っている事が分かるとか、作った人は動物と人間の赤ちゃんの数種類の行動パターンを基にしているんだろうけど、そんなに簡単かな生き物の行動パターンは。猫になって分かった事は、意外と色々考えているし、しょうがなくて人間の相手をしてあげている様なんだよね。
ジョンさん達も喧嘩している様だけどじゃれている、それは飼い主さんを楽しませる為でもあると僕は思う、それがジョンさんとマックスさんの楽しみにもなっているようだ。
「そうだ、レイちゃんが産まれた村に遊びに行っている時にライナーさんがうちの露店に来たんだよ。驚いたよ、父さんが野菜を仕入れているブランシールの農家さんはライナーさんの農家だったんだよ」
「ニャ~≪だからか、メグちゃんがリロイ君の家の露店のトマトが大好きなんだな≫」
もしかすると、ライナーさんの売り上げに貢献しているぞメグちゃんの行動は・・・・・・リロイ君のお店は、わざわざ運んで来てメグちゃんにあげている事になるのか、面白いな。
「これも何かの縁だから、収穫の時は手伝いに行きたいと言ったら喜んでくれたよ、ついでに水を畑にまいてくれだって、魔法が役に立つな」
「ニャ~≪よし、お礼にふみふみだ≫」
ふみふみ、ふみふみ、ふみふみ。
「これが、ふみふみか、キャシーが喜ぶ筈だよ、凄く可愛いいな・・・・・・大きい猫もするのかな・・・・・・しないか」
僕と同じ事を考えたなリロイ君は、どうなんだろう、猫の習慣は異世界にもあるのか・・・・・・妹はふみふみをしないな、今は甘い物を食べる事と寝る事で忙しい。人間の言葉も勉強しているから余計に疲れるのかもしれない。
「もう直ぐお昼だ、お店の手伝いに戻るよ。レイちゃんが学校に来る様になって、みんなが明るくなったような気がするな、僕もだけどね」
「ニャ~≪動物がいれば雰囲気も変わるよ、特に授業を受けている猫がいるんだからね≫」
「シンシアさんは・・・・・・お店だな、このまま帰るよ、レイちゃんまた来るね」
「ニャ~≪ありがとう、明日学校で会おう、じゃあね≫」
僕は別れの挨拶と手を振って見送った、リロイ君も手を振ってリビングを出て行った。
「ミヤちゃんは、薪拾いか、水は入れといたよ」
「ありがとう、お礼にレイをお店に連れて行くね」
「嬉しいな、待っているよ、それじゃあ」
「うん、気を付けてね、馬車に」
「ああ」
ミヤちゃんが帰って来た、石きり工房の裏にある林から薪に使える枝を拾って帰って来たようだ。
今の話からすると、メグちゃんとリロイ君の家に遊びに行く日はが来るんだな、メグちゃんが喜ぶだろう。
「お昼ニャン、食べるニャン、マッサージに行くニャン」
「レイ、メグはまだ帰って来てないの、何処に行ったのかしら」
「疲れて寝てるニャン、部屋にいるニャン」
「行ってみるわ」
拾って来た薪を置いて3階に上がって行ったな、お昼を食べよう、今日の予約は3件だ。




