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ニャンだふるワン  作者: 自由人書
76/521

ニャ~・・・76

見張りの人に捕まるのも、追い立てられるのも嫌なので、柵の間を抜けて中に入った。


村の中はやっぱりあの日のイメージと一緒だけど、建物が沢山建っていた、今のところおじいさんの家を見つけられていない。


「今年は暑いわね」


「そうね、その分、冬が寒そうで嫌だわ」


「そうね、毎年雪が降るのは止めてほしわ」


おばさん達の立ち話だ。建物がまばらなのは、各家庭に家庭菜園が出来る位の土地があるからだ。


敷地全部を柵で囲んであるお宅と家庭菜園だけを囲ってあるお宅があるけど・・・・おじいさんの家はどちらだったんだろう。


「暑いぞ、井戸で水浴びでもするかな」


「それがいいな」


通りを通る人たちの服装が薄着だ、暑いから生地も薄そうだな、僕は裸だ。


そうだ、おじいさんの家には家庭菜園があって1本の木が生えていた。


柵の内側に木が生えている家はそんなにないな、木が生えている家を目印に探そう。





猫探偵は建物の窓の下に立って、忘れたあの日の景色に似ていると思うところを探す事にした。窓の右の方に木が生えていたから、左側に生えている家は除外できる。


「ニャ~≪似ている、雪があるともっとあの日の記憶に近い≫」


「お、子猫がいる、どこの家の猫かな」


「ニャ~≪おじいさんの家じゃないね、失礼しました≫」


次はあそこの木のある家の窓の下だ。


あれ・・・・・・猫と認識された、僕の兄さん達がどこかにいるんだな。





「ニャ~≪ここは違う、窓から見た景色には建物が少なく見えた≫」


南の柵から北に向かっておじいさんの家を探しているけど、まだ見つからない。あれかなと思った家の窓の下に行って確認し始めてからだいぶ経つ。人通りもそれなりにあって、視線を向けられるけど、あまり気にならない様だ。


「ニャ~≪何しているの、ここで≫」


「ニャ~≪知り合いの家を探しています≫」


僕に声を掛けて来たのは、大きい猫だ、全体の毛が茶色の凛々しい顔立ちをしている。


「ニャ~≪どこに行きたいの?≫」


「ニャ~≪おじいさんの家で、僕のお母さんが住んでいる家です≫」


「ニャ~≪小さい子猫の家か、ごめんね、分からないわ。小さい子猫は家からあまり出ないのよ、頑張ってね≫」


「ニャ~≪ありがとう≫」


今更だけど・・・・・・お母さんの名前を呼べばいいんじゃないのかな。


窓の下の壁から離れて窓に視線を向けると、窓は空いている・・・・・・夏だから窓が開いている、周りの建物の窓を見ると、ほぼ開いている。


呼べばいいだけじゃないか、作戦変更だ。





「ニャ~≪キャロット母さん~≫」


「ニャ~≪ここよ~≫」


声を張り上げて村の中を駆け抜けていると、微かに母さんの声が聞こえな、懐かし声だ。


「ニャ~≪どこにいるの?≫」


「ニャ~≪ここよ≫」


右の方から聞こえたと思ったけど、左だった。柵に囲まれた敷地に木が生えているのが見えた、柵の近くに来ると家の前に小さな畑があった。


「ニャ~≪母さん≫」


「ニャ~≪誰なの?≫」


「ニャ~≪僕だよ≫」


「ニャ~≪私の可愛い子猫ちゃんね、まだ、僕と言っているのね≫」


そうか、メス猫の僕が僕と言うから分かり易いんだな? 変だけどいいか。


「ニャ~≪窓から入ってもいいかな≫」


「ニャ~≪どうかしら、ドアからの方がいいわね、何とかして入って来て、急いでよ≫」


「ニャ~≪は~い≫」


窓越しの母さんの声はあの頃と変わらなかったけど、何か慌てているみたいだった。


「まあ、外から猫の声が聞こえると思ったら、貴方なのね。キャロットから産まれた子かしらね」


「ニャ~≪久しぶりです、おばあさん≫」


「どうした?」


「外で猫の鳴き声が聞こえたんです、ほら、子猫がドアの前に」


ドアを開けてくれたおばあさんの後ろにおじいさんが現れた。


「ニャ~≪おじいさんも久しぶりです≫」


「キャロットの子かのう、どれ、どたらかな・・・・・・キャロットの子供だ、メスは生まれにくから・・・・・・3年前かもう少し前の冬に産まれた子だ」


おじいさんは性別で判断しないでよ、あの時の・・・・・・少しは成長したけど、そんなに変わらない筈だよ。


「まあ、街の紳士が来てくれた、あの時の子猫ちゃんなのね」


あの紳士は・・・・・・あの時の男性は紳士に見えただけでだ、僕にも紳士に見えたけど、今ではその面影はありません。


「ニャ~≪母さんに、会いに来ました≫」


「中にお入り、奥に行くとキャロットがいるよ」


床に降ろして貰った僕は奥の部屋に向かう。ドアに近づくと小さい鳴き声が聞こえて来た。





「ニャ~≪そうなの街で楽しく過ごしているのね≫」


「ニャ~≪そうだよ、僕の飼い主が良くしてくれるんだよ、お母さん、この子は?≫」


「ニャ~≪私の子よ、貴方の妹ね、でも、変な物を食べたのよ。もう駄目かも≫」


母さんに抱かれている仔猫は、僕達と同じ種類の猫だけど、毛の色が真っ白だ。見た目がメス猫に見えるな、白色の美人猫さんだね。


あれ、もう駄目とは・・・・・・助からない事? 初めて会えたのに。


「ニャ~≪お母さん、お薬は?≫」


「ニャ~≪おじいさん達も探してくれたのよ、でも、薬が無かったの、だからもう、何もして・・・・・・あげられないのよ≫」


この世界に獣医さんがいる筈もないし、薬も無いよな。


「ニャ~≪お母さん・・・・・・お腹が痛いよ≫」


「ニャ~≪ここね、撫でると少し痛みが無くなるのよ≫」


「ニャ~≪僕も撫でるね≫」


「ニャ~≪お姉ちゃん、ありがとう≫」


この場合どうすればいいんだろう、お姉ちゃんと呼ぶのをやめさせる、呼んでもいいと納得する。まあ、あだ名がお姉ちゃんだな、それでいいだろう。


「ニャ~≪お母さんのお腹に頭を乗せるんだよ、僕が撫でてあげるから気持ちいい筈だよ≫」


「ニャ~≪うん、気持ちいい~≫」


「キャロット、子猫ちゃん達、ご飯は置いとくからね」


「水もキレイだ、沢山食べて沢山飲むんだぞ」





「レイ、迎えに来たわよ」


「レイちゃん、寂しかったよ」


「すいません、お世話になって」


ミヤちゃん達だ、それにリードさんも一緒だ。


「ニャ~≪何でそんなに早いの? 僕が到着したの少し前だよ≫」


お母さんのお腹に頭を妹と乗せて寛いでいたのに、迎えが来た。


「みなさん、ご苦労様です」


「遠いところからよく来て下さった。レイちゃんは元気にお昼頃来ましたよ、どちらで別行動を?」


「シーラスの東の農家だと伺っています」


「そうだよ、お母さんに会いたいと行っちゃったんだよ」


「まあ、そんなに遠くからレイちゃんは一人で来たのね」


「ニャ~≪大変だったよ≫」


「それは凄いですな、よく無事に着く事が出来た、無茶をしてはいけないよ、レイちゃん」


「ニャ~≪はい≫」


「最初にお伺いした時もそうでしたが、急いでシーラスに向かわないと子供達のご両親が心配しているので、出発したいと思います」


「そうですか、それは残念ですな」


「このカステラは、お礼です、レイがお世話になりました」


「お世話になりました」


「まあ、都会のお菓子なのね、嬉しいわ」


二人は成長しているな、大好きなお菓子をお土産に持参するなんて、昔なら考えられないな。


そうだ、母さんにお別れを言わないと。


「ニャ~≪母さん、迎えが来たので帰ります≫」


「ニャ~≪そのようね。幸せなのね、大事にされていて安心したわ≫」


「ニャ~≪お姉ちゃん、寂しいよ。大きい街はどんなところなの?≫」


「ニャ~≪そうだな・・・・・・ここよりも人が多くて、近くに海があるんだよ。今は暑いから海で泳ぐのも楽しいんだよ≫」


「ニャ~≪いいな、行ってみたいな≫」


「ニャ~≪母さん、一緒に行ってもいいですか?≫」


僕はキャロット母さんに連れて行って良いか聞いた。


「ニャ~≪そうね、おじいさん達の許しが出たら、一緒に行くといいわね≫」


「ニャ~≪お母さん、嬉しい、連れて行って、お姉ちゃん≫」


その呼び方は止めて欲しいけど、元気なうちにシーラスに一緒に行こう。


「ニャ~≪ミヤちゃん、相談したい事があるんだ、気が付いて≫」


ここでは話せないので、ミヤちゃんに話があるとジェスチャーで伝えた。





「その、本当によろしいんですか? もうもたない思います」


「はい、それでもお連れしたいと皆が言っているので、よろしければお譲りいただけないかと」


「では、キャロットの子供をよろしくお願いします、レイちゃん、仲良くしてあげておくれ」


「ニャ~≪仲良しだよ、母さんをよろしく≫」


「ありがとうございます、少ないですか、お受け取り下さい」


「受け取れません。こちらこそ、ありがとうございます、ハリーさんによろしくお伝え下さい」


「はい、お伝えします。お2人が元気でお変わりないと」


あの日と同じだ、おじいさんと玄関でお別れをした、後ろでは小さく手を振るおばあさん。お母さんは部屋の中なのでもう声は聞こえなかった。


「ニャ~≪レイ、私の可愛い子供。妹を大事にしてあげてね≫」


「ニャ~≪僕頑張るよ、また遊びに来るよ~≫」


あの時と違って開いている窓からかキャロット母さんの声が聞こえた。


あれ、僕の滞在時間は1時間もなかったよ、来るのには大変な思いをしたのに。


「ニャ~≪母さん~、元気でね≫」


仕方ないか、キャロット母さんに会えて良かったな。




「レイ、子猫ちゃんは大丈夫なの?」


「駄目だニャン、元気が無いニャン」


キャロット母さんの家で、ミヤちゃんとメグちゃんと相談した。小声で話したので、リードさんとおじいさん達には聞こえていない。僕が人間の言葉を話してい事にキャロット母さんは驚いていたけど、その辺の事を簡単に説明した『人間の学校で勉強しているんだ、飼い主の皆にも言葉の勉強を教えて貰っているんだよ』『まあ、良い人たちね、向かいにも来てくれて、幸せそうで嬉しいわ』とキャロット母さんは、喜んでくれた。


「レイちゃん、もう駄目だよ、私達を置いて行っちゃ」


「はいニャン、いつも一緒ニャン」


「レイちゃんは、もう会話が出来る様になったんだな。不思議だな」


「ニャ~≪お姉ちゃん、この人達は何を言っているの?≫」


「ニャ~≪人間の言葉が分からないんだね、元気になったら覚えようね≫」


「ニャ~≪は~い≫」


僕は可愛い妹のお腹を優しく撫でる、痛みが少しでも少なくなる様にと、少しでも元気になればと。


まだ村を出たばかりだ、早くシーラスに着くといいな。





「干し肉ありがとうニャン、美味しかったニャン」


「気にするな・・・・・・何で馬車からお礼を言われたんだ」


「もう直ぐニャン、キリト村は近いニャン」


お世話になった4人組の冒険者にお礼を言えたニャン。進行方向から歩いてくるのが見えたニャン、あの朝に言えなかった人にお礼を言う事が出来た。


「そうか、レイはご食べ物が無かったのね」


「あの人達がレイちゃんに食べ物をくれたんだ。おじさん~ありがとう」


「俺は、おじさんじゃな~い、25歳だぞ」


「俺も25歳だ~」


メグちゃんの大声に返事が返って来た、ミヤちゃんの肩の上で後方に視線を向けると、飛び跳ねている人と、女性の人が男性をなだめている様な動作が見えた。


25歳だとおじさんは嫌なのか、何歳ならいいんだろう、異世界だとおじさんでいいような感じなのにな。


「ニャ~≪お姉ちゃん、お腹撫でて~≫」


「ニャ~≪は~い、今行くよ≫」


お姉ちゃんは直りそうもないな、仕方ないか。お兄ちゃんと呼ばれたいけど、向こうの気持ちが大事だな。






モグラを捕まえた畑を過ぎると山岳地帯で、両脇が林の様になっている街道だ、左側の山の向こうは海。


左側に海が見えて来たぞ、少し右にカーブすると街が見えてくる筈だ。馬車を飛ばせば約二日で着きそうだ。僕が追い付かれるはずだよ、でも、嬉しいな心配して迎えに来てくれたんだから・・・・・・でも、キャロット母さんのお腹で寝たのは1時間もないんだ、滞在時間約1時間で、行き帰り掛かったのは七日位だ。


「ライナーさんニャン、帰ったニャン?」


「おじいちゃん達なら、まだいるよ」


「心配してたよ。畑は大丈夫なんだって」


「収穫が終わって、今は暇だよと言っていたな。野菜のお土産を私にも分けてくれたんだ、いい人達だ」


「ニャ~≪街が見える大きいね、あの青くてキラキラしたのが海なんだ、私・・・・・・遠くまで来れた。お姉ちゃん、ありがとう≫」


「ニャ~≪もう直ぐお家だよ、ふかふかの布団があるからね、よく休むんだよ≫」


「ニャ~≪は~い≫」


妹は元気が無くなってきた、寝ている時間も多くなってきている。家に着いたらゆっくりと休むんだ。


何とかなる、大きい街を楽しみにしていたんだから、街を案内しよう、最初はアカリちゃんの家だ。


「門に着くよ、減速するから何かに掴まって、落ちない様にするんだよ」


「「は~い」」


「行く所があるニャン、妹をよろしくニャン」


「早く帰って来るのよ」


「そうだ、早く帰って来ないと、カステラが無くなるよ」


キリト村から帰りの道に毎食後はカステラを1本ずつ食べていたミヤちゃんとメグちゃん、飽きないのかと聞いてみたら、三食をカステラにしたかったと言われた。リードさんはその事をシンシアさんに注意されたと話してくれた。

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