ニャ~・・・72
どうしたんだろう、エプロンをしたサキさんが慌てて店内に入って来たぞ。
「シンシア、赤ちゃんが出来たのよ」
「サキ、おめでとう・・・・・・いつなの産まれるのは?」
驚きとかはないんだな。
「秋の終わり頃かな、だいたいその辺よ」
「サキさん、こんにちは」
「ジャン、こんにちは」
おめでたか、アカリちゃんはお姉さんになるんだな、男の子かな女の子かな。
「お母さん、あんまり走らないでよ、体に悪いよ」
後から来たアカリちゃんがサキの体の心配をしている。
うん、転ぶと良くないよな、それなのに走って来たよ、大丈夫なのかな。
「大丈夫よ、早く知らせたかったのよ」
「アカリちゃんおめでとう、弟と妹どちらがいいの?」
「そうだですね、一緒に遊ぶなら妹で・・・・・・面倒を見てあげるなら弟かな」
「どちらでもいいのね、サキはどうなの男の子がいいの? 女の子?」
「そうね、男の子もいいわよね、ランディも男の子が良いと思っている筈よ」
ハリーさんの時と同じかも、味方が欲しいのだ、一緒に遊ぶなら同性の親子の方が一緒に行動できる。
「いいわよ、男の子は、ジャンはお父さん子だから面倒はハリーがよくしてくれるのよ」
「そうか、その方が助かるわね、アカリの時は全部私がしてたからね」
そうだ、まだお祝いの言葉を送ってない、お辞儀をして伝えよう。
「サキさん、おめニャン」
「レイちゃん、いたのね、ありがとう」
「レイちゃん、積み木が来たんだよね、手伝いに行くね」
「はいニャン、行くニャン」
僕は、アカリちゃんの後を追いかける。
「ミヤ、メグちゃん、お母さんに赤ちゃんが出来たよ」
産まれないと赤ちゃんと呼べないけど、まあ、みんなそう言うよね。まあ、お腹の中で赤ちゃんが育っている最中だ。
「凄い、赤ちゃんか」
「アカリ、おめでとう。兄弟が出来るのね」
「うん、そうだよ」
「今日で春は終りね」
「支払いは済んだんですか?」
猫学生がお昼を食べて、お店に下りて来ると、ジャンは囲いの中で寝ていた。
店内にお客さんがいないので、カウンターに集まっている三人、ハリーさんは出かけていないようだ。
「ハリーが午前中に支払ってくれたわ~」
昨日の夜には支払えるとシンシアさんが喜んでいて、ジャンが寝るとマッサージをお願いされた。その時にはハリーさんは隣で寝ていた。
ジャン、お父さんとお母さんは頑張ったぞ。
「なでなで」
「お腹一杯」
しっかり喋れるジャンの寝言は小学生ぐらいの子供だな。
囲っている木箱は3段になっている、倉庫に沢山在庫があるけど、囲いの所で売れる事が多いので1段から3段になった。
「なでなで」
「お代わり」
どんな夢を見ているんだ、お腹が一杯なのにお代わりする物は・・・・・・甘いお菓子だな、ミヤちゃん達の弟だ、ジャンの頼んだお土産はお菓子だったな。
「レイちゃん、ジャンを起こさないでよ」
「はいニャン」
直ぐに起きるだろう、この囲いには友達が大勢来る。
「そうだ、今日は給料日よね・・・・・・台の下に置いといたのよね」
「そうでした、今日だ」
「長かった、私も支払いがあるんだ」
今日は給料日のようだ、ジェシカさん達のお金は用意できたんだ、支払いもハリーさんが行っているから・・・・・・後は、税金だ。
「大変だ~」
「ハリー、お客さんよ」
「あ、すいません」
「お釣りです、ありがとうございました」
大変だ~、誰かが大声をあげたな。寝ていたのに、お店の中は静かにだよ。
「どうも、ありがとう」
お客さんが騒いだのかな。
「パパ、お仕事?」
「ああ、お仕事だよ」
ジャンは起きて、積み木でもしているのかな、カウンターの下で寝ていた僕には、ジャンの声のする方向で囲いの中にいそうなのが分かった。
「ハリーさん、どうしたんですか?」
僕の近くにみんなが集まってきたな、足が沢山見える。
寝起きで意識が覚醒していないけど、僕の前にいるのはシンシアさんで、その近くに男性の足が・・・ハリーさんが帰って来たのか。もう一度寝るかな・・・・・・まだ寝れるな。
「役所に行って来たら、税金の支払いが・・・・・・小銀貨5枚だ、50万ロージだった」
「小銀貨5枚ね、30日あればどうにかなりそう、あ、給料も用意しないと駄目ね」
「シンシア、硬貨が違う・・・・・・僕が間違えたのか、銀貨5枚の50万ロージだ」
「ええ、税金てそんなに・・・・・・掛かるんですか?」
「30日で・・・・・・50万ロージ・・・・・・」
「ハリー、小銀貨5枚の5万ロージよね」
「ごめん、50万ロージだ」
とんでもない金額になったな、税金はそんなに高いのか・・・。
シンシアさんの話だと持ち込んだ枚数が税金だよね、仕入れに行っているハリーさんはそんなに沢山仕入れて来たの? 思い出せないけど『沢山仕入れて来た、安かった』といつも言っていたな。
「ああ、どうするのよ、お金はないわよ、ああ、お昼食べなければよかった」
「落ち着けシンシア、まだ、30日あるよ。何とかなるよ、駄目ならあるだけ渡して待って貰おう」
最後の最後で無理だったか・・・・・夏の洋服の利益が1枚300ロージ~500ロージとして、約1000着~1700着売らないといけない、これには経費が入っていないから、もっと多く売らないと利益だけで50万ロージはいかないな。
「駄目よ、夏の洋服を全部売っても20万ロージもいかないわよ」
「仕入れて来た在庫もそんなに残っていないよな」
皆の視線が倉庫に向けられる。もう半分近くになっている、頑張って売ったからいい事だけど、残りを売っても駄目だ。
「ニャンパラリン、ニャンニャンニャン」
「どうしたのレイちゃん?」
「ああ、レイちゃんに見放されたんだ」
「ええ~・・・・・・そんな風には見えませんよ」
「・・・・・・喜んでいる?」
「ニャンパラリン、ニャンニャンニャン、税金を払うニャン、払うニャン」
この時が来た、僕の秘密だ、猫ニャンニャン。
「・・・・・・レイちゃん?」
僕はお店から倉庫に向かって走り出した。
「待つニャン~、待つニャン~」
倉庫から出ると急いで階段を駆け上がる、皆に聞こえる様に待つニャンと何回も大声を出して。
「・・・・・・・見放されたか?」
「税金を払うと言っていたのよね」
「待つニャンと言っていたので待てばいいんですかね?」
「どこに言ったんでしょうね?」
急げ急げ、僕の部屋に。作戦が成功した。
「レイちゃん、小金貨だぞ」
「ニャ~《へそくり・・・・・・いや、猫ばばしてました、ごめんなさい》」
「レイちゃん、マッサージ頑張ったのね」
「凄いです、初めてみました」
急いで部屋に戻った僕はベッドの下の真ん中の壁際に置いといた小金貨を咥えて戻って来た。
「本物ですか?」
「税金を払うニャン、払うニャン」
「そうだ、税金を払ってもお釣りが来るぞ」
「・・・・・・もう支払いに悩まないでいいね」
「あの~・・・・・・出どころは気にならないんですか?」
出どころか、猫ばばしていたのを言わないと駄目だよね。聞かれたら言おう。
「ジェシカ、いいじゃないか、今は喜ぼうよ・・・・・・ああ、大変だったな」
ハリーさんが大変だった事があるのかな、無いような気がする。
「これだけあれば、仕入も出来るわね」
「私は知りたいです、レイちゃん、教えて」
「私も知りたいです」
「そうなの、トントンするレイちゃん?」
「はいニャン」
そうだな、楽しくトントンしてもいい筈だ。
「そう、ミヤ達のお金の入った木箱から盗ったのね」
「すいませんニャン」
仕入のお金をハリーさんに貸す時に考えた。みんなで協力して頑張らないと駄目なのに、小金貨があると頑張らないで、ミヤちゃん達のお金で支払いをしてしまうと思った。支払いが全て終わってもお金がなければ何も出来ないので、支払うお金を稼ぐ事とお店の経営を考えてもらおうと考えた、小金貨を見つけた時には隠そうと直ぐに思い、ベッドの下の壁際に小金貨を置いた。
「そうか、あの木箱の中から出したのか、どうしてそんな事を?」
本当の事を言った方がいいのかな、それとも隠してあげた方がいいのかな、ハァ~、どうするかな、覚悟を決めよう。
「串焼きが食いたいニャン、串焼きが食いたいニャン」
「レイちゃんが串焼きの為に」
「そうですね、串焼きの為に」
「でも、そのお陰で税金の支払いは出来ますよ」
「そうよ、レイちゃんは悪くないのよ、串焼きが食べたいだけなのよ・・・・・・税金も払えるし、いいじゃない。串焼きを皆の分買ってお祝いよ」
「シンシアさん大好きニャン、ジャン大好きニャン、ナタリー大好きニャン、串焼き大好きニャン」
「ああ・・・・・私、責めていないのに」
「僕だって、串焼きの為ならしょうがないかもと思ったよ、責めていないんだよ」
よく分からないけど、どうしたらいいのかも分からないや。
「ハリーさん大好きニャン、ジェシカさん大好きニャン、全員大好きニャン、串焼き大好きニャン」
もうどうでも良くなった、それに、どうにかなったのだ、素直に喜ぼう。
では、次の作戦に進もう。
「レイ、作戦をお父さんにちゃんと話さなかったの?」
「はいニャン、忘ニャン」
「レイちゃん、言えない言葉が有るんだね、お姉ちゃん、トントンする」
「そうね、レイが忘れたのなら思い出さないとね」
そうだな、色々あり過ぎたのと過去の事で気になる事、それが今回の資金不足になったのだ。猫の僕には記憶力が有るのか微妙だ、他の猫よりも覚えているかも知れないけど、流石に自分の事ではないし、メモを取る事が出来ないから、忘れる事もあるし考えた事がこんがらがる。
二人の協力で僕の考えた事、僕が見聞きした事をメモする事が出来た。珍しくミヤちゃんが、メモを取ってくれた・・・・・・メグちゃんが読み上げた事をミヤちゃんはメモをした、それは、メグちゃんが考えない様にする為だと思う。
二人には先に寝て貰った、メモを見て整理したいからだ。
我が家が危機に見舞われた原因は。
① 2年目年の冬に仕入れた高額だけど安く仕入れた上質な冬の洋服。(仕入れた年に販売しなかった)
② 去年の秋には冬の洋服を仕入れた(昨年の在庫が有るのに仕入れた)
③ 去年の冬に仕入れた春の洋服は高騰していたけど仕入れた。(帰って来た時の残金は大銅貨7枚)
④ ①の後にハリーさんの家族が来て、借りていたお金を返した。(この時にミヤちゃん達のお金も使う)
以上が大金が動いたと思われる事だ。他の原因を入れると、全部で10個以上になる。
⑤ いくらか分からないけど替え馬(早く帰って来る為)
⑥ 仕入れの仕方(計画性と資金の管理がない)
⑦ 仕入れの時の予定、時期(これは難しいけど、販売する季節前には戻っていないと販売できる期間が短くなる)
⑧ シンシアさんとの情報交換(幾らで仕入れたとか。シンシアさんの才能で何とかなっていた)
⑨ ⑥はお店の事だけど、家の生活費等、税金もここかな(生活費とお店の資金の区別化)
⑩ 情報の管理(各街の洋服のランク付け、仕入れた街との距離・・・・・・何日で行けるとか、他にも色々)
⑪ 30日間の目標(利益、販売量)
⑤からは、直接の原因ではないけど、このうちのどれかが出来ていれば、ここまで酷い状態にならなかった。
問題は①から④のお金の流れだ。①の在庫が1年間倉庫に眠ってしまった事で、他の季節の在庫だけで1年間お店を続けた、販売した代金で次の季節の洋服を仕入れて、去年の在庫と一緒に販売した。それを春、夏、秋と繰り返した。いつか忘れたけど、シンシアさんが破産すると勘違いした事になったけど、勘違いではなかった、現金も資金も底を尽きそうだった筈だ。約1年間は少ない資金で何とかお店の経営と生活費をなんとか捻出出来たが、冬が来た。
本格的に資金が無くなるのはこれからだった。
在庫の冬の洋服を秋の中頃から販売を開始したが、在庫が多いので、ミヤちゃん達と考えた作戦は、お店にお客さんを増やす事・・・・・・いつもと同じだが。マッサージの受付をシンシアさんにお願いした。4階の受付を1階のお店の中に変更した。
意外とマッサージのお客さんは1階で洋服を販売している事を知らなかった。
冬の洋服は高級品なのでなかなか売れないが、何とか在庫が減ってきた。ハリーさんが仕入れて来た洋服と在庫の洋服を同時に販売した。この時から洋服が更に売れる様になった。
洋服が売れて現金に変わって、資金が沢山ある様な感じになったところで③の高騰した洋服の仕入れで全ての現金が洋服になった。この時高騰した洋服は2倍以上の値段だったらしいので、生活費や給料などの収支を引いた金額が春の仕入れに使われた金額になる。
「ニャ~≪冬に販売した洋服の半分以下・・・・・≫」
ああ、勘違いだ、単価が安いから沢山買えるのか、でも、資産価値は半分以下だ。あれ、何で在庫が冬より少なかったんだ? ちゃんと考えよう。
おそらく現金になったけど支払の関係で沢山仕入れて来る事が出来なかった。ここは運が良かったのか、冬の洋服が完売していなかったので、その後も高価な洋服を売る事が出来たんだから、仕入れ前に売れてなくて助かったのか。売れていたら、その代金も高騰した洋服になっていた。
帳簿を付ければ悪かった事と良かった事がもっとよく分かるのに、だいたい④のダグラスさんに返済した金額と、ミヤちゃん達のお金以外のお金はいくら出したんだ? 悪い事が重なり過ぎてこれ以上は分析できないな。
ジャンの誕生日の後に我が家の資金が残り少ない事に気が付かなかったら、大変な事になっていた。
ハリーさんの悪い経営が招いた事だけど、悪い事が重なり過ぎたな、高級な洋服をその年に販売で出来たらこんな事にはならなかった・・・・・・仕入れの時期だけでも改善出来ていれば、ハァ~、起こらなかった事だ。
疲れたな・・・・・・取り敢えず、この板は捨てよう。ミヤちゃん達にはもう一度、改善点を書いて貰おう。ハリーさんの悪かった事と、ミヤちゃん達のお金を使った事を知らせない方がいいだろうな。
⑫が有るとしたら、僕が来た事で、販売と仕入れのバランスが崩れた。一応ギリで上手くいっていたのかもしれないな。
ジャンの誕生日に積み木をあげて良かったな、遊んでいるのを見て、販売してみようと思ったんだ。
ハリーさんの経営はここがスタートだな、行き当たりばったりが無くなれば、シンシアさんの心配も減るな。
僕の考えと推理が間違っているかも知れないけど、そんなに大きくそれていないと思う。そうだよね。




