ニャ~・・・70
「クロエさん、こんにちは」
「こんにちは、積み木は完売したわよ」
「やった~」
「そうだと思って持って来ました」
「お姉ちゃん、面白いよ」
西側の市場に積み木の入った木箱を持って野菜の販売をしているクロエさんの所に来た。クロエさんは祭りの時に野菜の台を貸してくれた人だ。
沢山の野菜が載った台の後ろでは、積み木で遊んでいるマルコ君がいる。
「良かった、面白くないと言われなくて」
「マルコが遊んでいるでしょう、それを見て欲しいと言ってくれる人がいるのよ。不思議よね、私には面白い様には思えないのよね」
「子供には面白んです、弟も喜んで遊んでます。これ差し入れのお菓子です」
「まあ、嬉しいわ・・・・・・お祭りの時のお菓子ね、嬉しいわ。あんなに沢山売ったのに自分が食べていないなんて変よね、ありがとう、後で頂くわ」
「ニャ~≪マルコ君久しぶり、止めてくすぐったいよ。仕返しだ≫」
「この、よくも・・・・・・止めて、止めて、あはは、くすぐったい」
「台の下に入れときますね」
ミヤちゃん達は持って来た木箱9個を台の下に置いた、もっと持って来たいけど、一人3個位が限界だ。
「はい、代金よ。ちゃんと売っとくから、また在庫を持って来るのよ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「お礼に大人の味をクロエさんとマルコ君にあげます」
「ありがとう・・・・・・美味しいわ、まさに大人の味ね」
「美味しいけど、大人の味なの?」
「そうなんだよマルコ君、君もいつか分かるよ、大人の味が」
「行こうか、クロエさん、ありがとう」
「アカリちゃん・・・・・・このお菓子ありがとう」
「お祭りの時はありがとうございました、お菓子の名前はカステラです」
「そうか、名前を付けたのね。カステラかいい名前」
「さようなら、お姉ちゃん達」
「じゃあね」
「ニャ~≪販売よろしく。マルコ君、目立つ様に遊んでね≫」
積み木の代金は6個で1.2万ロージ、大銅貨1枚と銅貨2枚だ。沢山売れると嬉しいけど、少しずつの積み重ねが大事だ、ミヤちゃん達も色々な事が出来ていい経験になっている筈だ。アカリちゃんは将来はパン屋さんを継ぐみたいなのでいい勉強になっているかも。
「ミヤ、完売だったね」
「うん、よく売れるよね、面白いのかな」
「ジャンは夢中だよ、お母さんが一緒に遊ぼうねと誘っても、一人で遊んでいるんだよ」
「ニャ~≪皆は大人だから面白いと思わないかもね≫」
「レイちゃん、鞄に入る?」
「ニャ~≪入って欲しいんだね≫」
メグちゃんの頼みだ聞いてあげよう、ここでは話せないので・・・・・・確認はされなかったな。
「閉めるよ、寝てもいいからね」
「ニャ~」
寝ても・・・・・・起きたばかりの朝なのに、暗くなったから寝れるかも、おやすみ・・・・・・。
「シンシアさん、ありがとうございます」
今日は給料日だ、お待ちかねの日だ。
「ごめんね、心配かけて」
「あの~私のは?」
「明日には渡せるかな」
「いいですけど、一日位遅れても」
「夜には数えておくから、明日ね」
「貰えるんだから、遅れてもいいじゃないですか」
「そうだけど、心配だったのよ、とても」
そうだろうな、後払いだから余計に心配だ。30日働いて『ごめん、無理だった』なんて言われたら、茫然として何も考えられなくなるよな、それに前もって資金難なのを知らせているから余計に心配だろう。
「ごめんごめん、ほら、大変だったでしょう。それに、硬貨を大きい硬貨に変えないと数が多くなってしまうでしょう」
「ニャ~≪二人分の給料が良く貯まったよね≫」
ナタリーさん達二人の給料日は今日だった、ナタリーさんの分は前日に用意する事が出来た。春の半ば、ハリーさんが仕入れに行ってから30日位が立っている・・・・・・25日位か、帰って来ないな。
働いた人が給料を貰うのを初めて見た、どんな気持ちなのかな・・・・・・・やっと貰えた、この日を待っていた、カードの支払いで半分が、ツケが払える。こんな感じかな、僕だったら串焼きが食べれるだな。
「帰ります、お疲れ様した」
「お疲れ様でした」
「ご苦労さま、明日もよろしくね」
「ニャ~≪ナタリーさん、無駄遣いは駄目だよ≫」
「レイちゃん、またね」
「ああ、気持ちいい、明日ね」
「ナタリーさんニャン、ジェシカさんニャン、お疲れ様ニャン」
二人は挨拶を言って、僕を撫でて店を出て行った。
お店が終わったな、ジャンは囲いの中で寝ているんだな。
カウンターから降りてジャンを起こしに行こう、直ぐに夕ご飯だ。
「レイちゃん、ありがとう。洋服はほぼ売れた・・・・・・売る洋服が無くなりそう、でも積み木と売れた洋服の代金で何とか二人に渡せる。後はハリーが仕入れた洋服を頑張って販売するわ。次の支払いは30日後の食料品とかの代金と二人の給料・・・・・・これさえ支払えれば、次の食料品とかの代金は90日後よ、何とかなる。はぁ~」
「シンシアさん、マッサージニャン」
「レイちゃん、ありがとう、長いのでお願いよ」
「はいニャン」
シンシアさんはマッサージが大好きだ、マッサージと聞いただけで少しは元気になる。今夜は戦いだな、どちらが先に眠るか、シンシアさんは疲れてるから直ぐに寝るな。僕はなまけ過ぎかな、いや、働き過ぎだニャン。
「レイ・・・・・・お母さん寝たよ、お姉ちゃんの所に行きたい」
「はいニャン」
そうか、気持ち良くて、シンシアさんは直ぐに寝ても、昼真寝ていたジャンは眠くないんだな。
「お姉ちゃん、遊ぼう」
「ジャンは何がしたいの?」
「積み木」
「よし、積み木ね」
大量生産した積み木は何処にでも置いてある、ジャンが遊べる様に。
「誰が一番高く詰めるか競争よ」
「「は~い」」
「ニャ~≪おやすみ≫」
「レイも積みなさい」
「そうだ、負けたらお菓子を奢って」
「レイ、負けないよ」
「ニャ~≪皆の敵は僕なのか、最初から負けを宣言したい≫」
そうだ、僕には最後の手段だ有るんだ、誰も知らない秘密が。
「レイ、もう負けを認めたの?」
「まだニャン、あきら・ないニャン」
『め』が言えなかった。3段積めば僕の勝ちだ。
「シンシア、ご苦労様、頑張ってくれているんだな」
「レイちゃんが言っていた通り、我が家にお金が無いのが、よく分かったのよ」
「え、洋服は完売しそうだと言ったよね」
お昼過ぎにハリーさんが仕入れから帰って来た、馬車一杯に有った夏の洋服を皆で倉庫に運んだ。販売する洋服が無くなるかもと心配になってきたけどハリーさんがやっと帰って来た。
「ジェシカ達の給料を払う位にしかならなかったのよ、売る洋服が無いとお店も閉めないたいとダメでしょう、だから一日も早く帰って来てほしかったのよ」
「すまん、去年、川の橋が落ちただろ、だから橋を渡らないですむローレンスに行って来たんだ」
何処かの街の名前だ、僕にも分かるように地図とか用意してほしいよ。
ミヤちゃん達は街の名前を聞いたら分かるのかな、それとも、地理とかの授業はないのかな。今度聞いてみよう。
「ローレンスだと、私の実家のブランシールの北がグランシールでその西がローレンスよね」
「ああ、遠かったよ、夏の洋服は少し安いかった。レイちゃんに言われた事を覚えているよ、仕入れ値は5千ロージから8千ロージ位だ。レイちゃん・・・・・・後で仕入れ値の合計と掛った経費の合計を・・・・・・ええっと、帳簿か、それに書くよ」
「どうしたのハリー?」
ハリーさんは凄いな、シンシアさんに驚いた顔をさせたぞ、猫の僕が話しても驚かないのに。
「馬車の移動の時に反省したんだよ、今のままじゃいけないと。僕は計算が苦手だ、でも、洋服を売る仕事をしているんだから、計算が苦手だと言っている場合じゃない、どうしたらいいのかよく分からない、だから僕を助けてくれシンシア、特にレイちゃん、お願いします」
あれ、僕より大人の人にお願いされたぞ、どうしたらいいんだ・・・・・・計算が出来るだけなのに。
「貴方の奥さんなんだから、頼っていいのよ。レイちゃんも協力してくれるわよね?」
困ったぞ、計算・・・・・・経理ぽい事が少し出来ただけなんだよな。それ以外は何も知らないぞ、思い付く事を僕が言って、二人に判断して貰えばいいのかな。
テーブルでシンシアさんに撫でられている僕はよく考える、ミヤちゃん達は寝ている、ジャンも寝ている、僕は子猫だ・・・・・・そろそろ寝たい。よく考えたら、僕は猫だよ、何で僕に頼るかな、元の世界では中学生だよ、頼られても困るんだよな。
「レイちゃん、聞こえてますか?」
「あの、協力してくれるんだよな?」
「分からないニャン、仕事は出来ないニャン、ニャンニャンニャン」
「シンシア、トントンの用意だ」
「そうね、トントンが必要ね」
「トントンは要らないニャン、疲れたニャン、疲れたニャン」
シンシアさんは台所に板を取りに行った。どうするんだ、眠いのに・・・・・・協力してと言われて、はいニャンと返事をすれば良かったんだ。眠い・・・・・・まだ3歳なのに重労働だよ。
「ニャ~≪対象は校門を出た、門が無くても校門でいいのか?≫」
僕は猫学生だと認められる前の時の様に建物に沿って移動する、対象の向かう方向は分かっているので慌てずに付いて行けばいい。
「レイ、これは何?」
「レイちゃん、体力作り?」
「ニャ~≪少し屈むんだ、発見されるよ≫」
質問には答えられない、ここは学校で人目に付く、それに、外では会話禁止だ。
学校の入り口の柱に隠れて左・・・・・・東の方向に視線を向けると対象を確認出来た。
「レイ、どうなっているの?」
「ニャ~≪気が付かれるよ、対象は敏感だ≫」
「レイちゃん、さようなら」
「ニャ~≪誰だ、見た事はあるけど、今はそれどころじゃない≫」
今の人は、校舎裏で食べ物をくれる人だ、授業では一緒になる事が少ない学生さんだ。
「レイちゃんの知り合いだ」
「ニャ~≪行くよ、対象が北に曲がった≫」
「ミヤちゃん、メグちゃん、どうしたの?」
野菜の屋台が多い道で対象に発見されてしまった、尾行は難しいな。
「はい、レイがお肉の安売りをしているお店があると言うので、これから買いに行きます」
「うちは、貧乏なので少しでも安く買いたいの」
「その安く買えるお肉屋さんは私のうちだったりするのかな?」
「そんな・・・・・・悪いですね、荷物を持ちます」
「レイちゃんを貸します」
流石だ、ゴマすりが上手いな・・・・・・使い方は合っている筈だけど、どうしてゴマすり? 使っていても分からないのがことわざだな。
「ありがとう、ふかふかね今日も、いいわ、友達価格て売ってくれるように頼んであげる」
「やった~」
「おお、作戦成功だ」
ミヤちゃん達と猫学生はキャシーさんの後に付いて来た、お肉を安く買う為だ。
いつも買っているお肉屋さんは、干し肉を加工した物と塩漬けのお肉を販売している、それなら問屋さんで買おうと考えた、今は何でも安く買いたい。
「ニャ~≪お肉を安くしてね≫」
昔の秋葉原の電気屋さんは表示価格から値切るのが主流だった、何軒も違う店に行って値段を聞くのが楽しかったとおじいちゃんは言っていた。裏情報では、展示価格には30%~40%の利益が載っているらしいので10%位は安くなる様に交渉するのがいいらしい。
友達価格か、期待しちゃうな。
「これも、持って行け」
「あら、それだけじゃ駄目よ、これも持って行くといいわよ」
「ありがとうございます」
キャシーさんの家に着いた僕達はお昼をごちそうになった、二度とこの家では食べたくないと思っていたけど、今日は臭い匂いが少なかった。
「商売やっているとな悪い時もある、それでも頑張るしかない」
「そうよ、頑張るには美味しい物を食べるのが一番よ」
ここにもことわざが・・・・・・食べないと戦えない? ・・・・・・腹が減っては戦だ、思い出せた、だから敵の食料を狙うんだな、いい勉強になったな。
「そうですよね」
今・・・・・・メグちゃんはお菓子の事を考えている筈だ、顔に書いてある・・・・・・お菓子は食べないとねと。
「レイちゃんも食べるんだぞ、こないだと変わらないぞ」
「ニャ~≪僕は小さいからね、沢山食べても変わらないよ≫」
「そうね、お肉が足りないのかしら、これも持って行ってね」
「もういいです、バッグに入りません」
そうなのだ、会話が続くとおまけが増えるのだ、既に二人のバッグはパンパンだ。
「あら、ごめんね気が利かなくて・・・・・・キャシー、バッグ持って来て~」
「は~い」
キャシーさんはお昼を食べるとどこかに行ったけど、お店から声を大きくすれば聞こえる所にいたんだな。
「これでいいの?」
「ああ、それがいいね」
バッグを持ったキャシーさんが近づいて来たけど、エプロンが血まみれだ。
受け取ったバッグにお肉を詰め込むおばさん、ここにいるみんなはエプロンに付いた血が気にならないらしい。
「おじさん、おばさん、ありがとう」
「ありがとう」
「おお・・・・・・腐る前に食べろよ、次に買いに来るのは、7日後だな」
「古くなる前に加工するのよ、新鮮なのは2日間だけよ」
「は~い、お母さんに伝えます」
「ありがとう」
「ニャ~≪ごちそうさま、安くして・・・・・・おまけもありがとう≫」
安く買えたお肉と、おまけの入ったバッグを両肩に担いだミヤちゃんを先頭に市場の方に向かって家に向かう。
「お姉ちゃん、安く買えたね」
「そうだね、半額よりも安かったよ、お母さんが喜ぶよ」
後ろを見ると、キャシーさんが手を振っていた。
「ニャ~≪ありがとう≫」
ニャンパラリン、お肉。回転して手を振る、振り返された事に喜んだキャシーさんはナイフを持っている手も振った。エプロンに血が付いているので周りを歩いている人は避けて歩いている。
警察を呼ぶんだろうな日本なら。
「レイ、ありがとう、安く買えたよ」
「ニャ~≪ちりも積もれば、チリ山、風で飛ばない様に固めよう≫」
カステラ1個の情報で、お肉は半額でおまけは・・・・・・買ったお肉の量よりも多かった。いつか恩返しが出来るといいな。
そうか、ふざけて姐さんと思っていたけど、キャシーさんと呼ぼう。そう、恩返しの前に失礼な呼び方は改めよう。




