ニャ~・・・69
「おじさん、出来ていますか?」
「親方と呼んでくれ」
「親方さん、出来ているの?」
「さんは付けるな、親方だ」
「親方は名前ですか?」
「ああ・・・・・・知らないのか、親の様に弟子を面倒見る人の事を親方だ、分かったか?」
「あの怖そうな人も弟子なの?」
メグちゃんの言っているのはあの人かな、頬に傷のある・・・・・・日焼けした黒髪のおじさん。
「弟子だ、顔の傷は作業中に転んだからだ、元は優しい顔だった」
「親方、出来ているの?」
「すまん、そうだったな、ほれ、こないだのと同じ物だ」
「出来ている、親方流石ですね、昨日の頼んだのに」
「まあな、簡単だった」
昨日の夕方に頼んだのに朝一番には積み木が出来ている・・・・・・簡単だな、円柱以外は四角だ、後は角を削ってやするだけだ、ネットの動画を見ながらでも出来る作業だ。
猫の動画が見たいな、成長しているかな、初めて家に来た時から見てたのに残念だ。いきなりライブになって投げ銭をする人がいたんだ、お金持ちだ。面白いシステムだけど何で投げるんだろう、僕なら猫カフェに使うな、いくらかかるのかな。
「それでいくらですか?」
「端材でいいからと言われたからな、前回は忘れたな・・・・・・5ロージでいいぞ」
5ロージは小銅貨5枚だな、前回は20ロージだったかな、捨てる木材だと安くなるんだな。
「ありがとうございます、大銅貨1枚です」
カウンターに置かれた大銅貨は、ハリーさんに渡す箱から出していたお金だ。何かの為に渡さなかったお金だ。
「木箱に入れました、どうぞ、お嬢さん」
「・・・・・・ありがとう」
怖いと思っているおじさんから、積み木の入った木箱を受け取ったメグちゃん、おじさんの顔を観察している様だ。
「お釣りだ、簡単だからな、また頼むよ」
「質問があるんだけど?」
「何でも聞いてくれ」
「端材はまだ有るんですか?」
「ここは工房だ、端材が沢山出る、捨てるの困るぐらいだ」
「木工の加工工房がこんなに在ったんだね」
「お姉ちゃん疲れたよ、お菓子で補給を」
「我慢してよ、私も食べたいよ」
「ニャ~≪お菓子を買ってもいいのに≫」
街が広いから工房が沢山在ったな、初めてお願いする人は家の近所で探すんだろうな。
ミヤちゃんの首に巻かれていたから、違う疲れがたまるな。
沢山歩いた僕達、知っている場所に行くには最短距離で行けるけど、手当たり次第に工房を探すのは大変だった。
通りから工房らしき建物があればそこに行き、何をしている工房なのか確認しないと分からない。看板はぶら下がっているけど、積み木の制作を受けてくれる工房かは、中に入って親方に聞いてみないと分からない。
「お菓子買うニャン、ローラさんマッサージニャン」
「もう直ぐなのね。レイ、ありがとう、食べようお菓子を」
「うん、食べようお菓子を、大人の味も貰えるね」
僕の串焼きは当分先だな・・・・・・ああ、この時期に食べた事ないな、いつも通りだ。次はシンシアさんの誕生日だな・・・・・・夏の終わりの秋の始め頃? だろう。
「ミヤ、四角いのが無くなったよ」
「アカリ、ほぼ四角だよ」
「そうか、長い四角」
「メグ、アカリに長い四角の場所を教えて」
「アカリちゃん、この辺の木箱が長い四角だよ」
洋服の在庫が沢山有った時に分かりやすい様に各季節ごとにした、今は春の在庫以外は数個の木箱が置かれているだけだ、シンシアさん達の頑張りのお陰だ。春の洋服は、少しずつ売れているけど高騰した値段で仕入れて来たので、売れば売れただけ赤字になっている。相場の2倍以上の値段を相場の値段で売っているのだから、仕入れた金額の半額のお金になる。
僕が気が付いたのは、秋の終わり頃から販売した高級な洋服は安く仕入れて高く売る事が出来た、でも、春の洋服は相場の2倍で仕入れた、それを半額で売っている。去年の冬に仕入れた洋服はそんなに多くなかった、もう現金が少なくなっていたんだ。
段々と経理みたいになってきたけど、もっと分かりやすくまとめよう。
仕入れた在庫が1年間倉庫に有ったんだから、少ない資金で1年間営業した事になる。その1年間では生活費とか引くと儲けが出ているか微妙だな。お金が無くなっていないから何とかなっていた、でも、倉庫の在庫は冬以外はどんどんなくなったから、売った代金は、経費と生活費でほぼ無くなる? シンシアさんが破産よと言い出したのが、いつだたかな、秋頃かな? ハリーさんが残していったお金が生活費だと考えると、冬の洋服を秋の半ばに売り始めなければ、冬の初め頃には、お金がなかった事になる。
今現在の状況は、冬の洋服が安く買えて・・・・・・4割増し位で売れた、今回買った洋服は半額で売る予定、1*1.4/2=0.7・・・・・・秋の終わり頃に有ったお金が3割減った事になる、今年仕入れた洋服は単価が安くて少なめに仕入れたから、そんなに金額がなさそうだ。
もしかして、冬に入ってからの経費と生活費を引いたら・・・・・・・この家にある資金は相当少ない事になるよ。
今考えた事は合っているのかな、板に書いて計算したいけど無理だし、恐ろしい結果を見たくないな。
「ミヤちゃん、木箱は全部倉庫に入れたよ」
「ありがとうございます、エネルさん」
「じゃあね、いつでも手伝うから」
「ご苦労さま、大人の味だよ」
「これが噂のか、ハリーさんも食べた事がないんだよね、いただきます・・・・・・大人の味だ、メグちゃん、ありがとう」
「は~い」
「ニャ~≪運んでくれてありがとう≫」
馬車で買った木箱を運んでくれてたエネルさんは帰って行った、大人の味と言って貰えたメグちゃんは満足そうに頷いている。
「後で頂戴よ」
「メグちゃん、私も」
「よく働いてくれた人にはあげます」
アカリちゃんを入れた3人は、エネルさんが運んでくれた木箱に積み木を詰めている。
「ミヤ頑張れニャン、メグ頑張れニャン、アカリ頑張れニャン、疲れたニャン」
「レイ、疲れたニャンは要らないでしょう」
何でミヤちゃん達は離れて作業をしているのかな? 競争でもしているのかな。
プリントを束ねる為にグルグル回ってホチキス、あれの様に木箱を持って順番に移動して回れば早そうなのに・・・・・・経験が無いから思い付かなだろうな。それに楽しそうだから、今のままでいいな。
「みんな頑張れニャン、お菓子は美味しいニャン」
「お菓子は美味しいよ」
「うん、美味しい」
「お土産まだかな」
ハリーさんが仕入れに行ってからまだ10日位だ、もう街に着いたかな、それともまだ向かっている最中かな。
今日の夕食は何かな・・・・・・いつも同じだ。そう言えば、お魚を釣っているのを見た事はあるけど、魚を食べた事がないな、どんな味かな。
「レイ、橋だよ」
「橋ニャン」
両端が短い円柱の柱に長細い四角の積み木を乗せた橋が完成した、乗せるのは簡単だけど、ジャンに橋を教えたのはシンシアさんだ。本物の端は見た事がない、僕もジャンも。
「ジェシカさん、あそこは何ですか?」
「さあ、ジャンとレイちゃんが遊ぶ場所かな?」
僕とジャンの遊んでいる場所は店の入口を入って右の隅だ、夜のうちにミヤちゃん達と店内を改装した。洋服の棚を少し動かしただけだけど、空いた場所を木箱で囲んて、ジャンの遊び場を作った。
「レイ、競争だよ、高く積むの」
「はいニャン」
勝負を挑まれたので長くて安定感のある長方形を縦に立てる、1個目は簡単だ・・・・・・ジャンは2個目を載せ終わって、次に何を載せるか考えている様だ、2個目は平たい円柱だ・・・・・・楽しいな、3個目を載せたらその次は載せられそうもないので、最初の長いのを最後に載せるぞ。
「ああ、倒れた、とりゃ~」
「ジャン、やったニャン」
「えへへ」
敵は攻撃をしてくる様だ、僕が攻撃をするのは大人げないけど。
「ああ、レイ、邪魔しないで」
「嫌だニャン」
僕が両手で攻撃をするフリをすると積み木を守る様に反対を向いて積み上げ始めた。敵は自分を間に入れて積み木を積む作戦だ。僕に勝ち目は無いので、倒す作戦に切り替えよう。
「遅くなってごめんね、朝食の片づけをしていたのよ」
「シンシアさん、あそこはあのままで?」
「うん、ジャンの遊ぶところを作ろうとなったのよ、レイちゃんの案よ・・・・・・カウンターの近くだと遊んでいる声が少しお客さんに悪いだろうだって」
「そうですね、店内で遊んでいるなら、何処かにその場所があった方がいいですね」
「載せると・・・・・・お家」
「こうちて・・・・・・置くと馬車」
カウンターの上にいる僕が、薄目を開けると2人の小さい子供が積み木で遊んでいた。
ジャンがいないな、何処に行ったんだ。
「スー、スー」
ベビーベッドで寝ているのか・・・・・・大きくなってきたけど、何歳まで使うんだ? 窮屈そうだね。
「この洋服がいいわね」
「宜しければ、バッグにお入れしますよ」
「お願いします」
「はい」
ナタリーさんの接客の相手は若い女性だ、購入する洋服が決まった様だな。
「この洋服で赤色はないかしら?」
「少々お待ち下さい、在庫を確認してきます」
「お願いします」
ジェシカさんは在庫確認だ。
小さい子供達が遊んでいる囲いの中に横になっているだろう足が見える・・・・・・シンシアさんの足? 寝ている? どうなんだ。
「これは使わないのかな、大きいから下の方に置いた方がいいわよ」
「ちたに置いて」
「は~い」
男の子と女の子が遊んでいるのか、シンシアさんは積み木で一緒に遊んであげてるんだな。
「高くなったよ」
「上手ね、倒さない様に積もうね」
「は~い」
「お客様がお選びになった洋服の赤色の在庫がありました」
「良かった、それとこの子供の服を下さい」
「はい、鞄をお借りします」
少ない在庫の中によく色違いが有ったな、ハリーさんが仕入れから帰って来ないと、売る洋服が無くなるかも、冬の洋服の数の半分以下しか・・・・・・もしかしたら、三分の一位かもしれない洋服は完売してしまうかも、売る洋服が無くなるのは困るな・・・・・・ハリーさんもそう考えて高騰していても仕入れて来たんだよな。
「さあ、帰るわよレイ」
女の子の名前がレイちゃんか、僕と同じ名前だな。
「嫌、もっと遊ぶ」
「イアン、帰りましょうね」
「高くつむたい」
「そんなに面白いの、困ったわね」
「面白い~」
「うん、面白いよ」
あのお母さん達は知り合いじゃなさそうだな、女の子は他のお母さんの『そんなに面白いの』に返事をしたんだな。
「まだ、遊びたい、洋服選んでて」
「買い物は終わったのよ・・・・・・その店員さん、遊んで頂いてありがとうございました、このおもちゃは何処でお買いになったんですか?」
「囲いに使っている木箱の中に同じ物が揃えて入っています、販売もしているんです」
「まあ、この木箱の中に・・・・・・子供がこんなに夢中で遊ぶなら買ってもいいかも、お幾らなんですか?」
「はい、20ロージです」
「そんなに安いんですか、買います、1個貰えますか?」
「すいません、私も買います、静かに遊んでくれるなら嬉しいです」
「はい、お持ちになれる大きさですけど、このままでも、いいですか?」
「ええ、持って帰ります」
「私も、持って帰ります」
「ありがとうございます」
積み木のセットが2個も売れた、シンシアさんに話しといて良かった。
「家で遊びましょう」
「は~い、お姉ちゃんありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
「おばちゃん、ありがとう」
「おばちゃんじゃないのよ、お姉ちゃんなのよ、ありがとう」
積み木の支払いをすると二組のお客さんは帰って行った。
シンシアさんはおばちゃんと言われて、直ぐに訂正したな。
「シンシアさん、この積み木? は面白いんですか?」
カウンターで積み木を積み上げているジェシカさんは、囲いから戻って来たシンシアさんに面白いか聞いている。子供にしか分からないんだろうな。
「ジャンは喜んで遊んでるわよ、子供には面白いのよ」
「はぁ、そうなんですかねぇ」
「面白いですね、家になりましたよ、この丸いのを重ねると長い煙突」
ナタリーさんはカウンターで積み木をしだした、想像力が有ると色々な建物を作れるんだな、僕だと家しか思いつかないよ。
カウンターから見える囲いの中に何か落ちている、、ハリーさんがジャンの誕生日に買ってあげた馬の置物だ・・・・・・さっきの子は馬の後ろに荷台を作ったんだな。




