ニャ~・・・61
「ゴロゴロ」
「凄いぞ、ジャン、全部倒したな」
「はい、次はおじいちゃん」
「よし、負けないぞ」
ライナーさんはジャンと棒倒しをするに夢中になっている。僕の番は来ないようだ。
暖炉の前はゴロゴロの場所なので、ソファーで二人が遊んでいるの眺めている。二人は飽きないのだろうか、それに棒の数が10本になっている。僕の知っているボウリングの並び方になっている。
「何故だ、両脇に残ったぞ、ジャンの方が上手いのか」
「おじいちゃん、並べて」
「お、そうだな」
僕には棒を10本も並べられないな。
「「ただいま」」
ミヤちゃん達が帰って来た、何処に遊びに行っていたのかな。
数日前に皆で市場に出かけた、プレゼントを買うのはまだ先なので、露店にお菓子を食べに行った。
ジャンは街を歩けて嬉しいのか『あれは何?』と沢山質問をしていた。ジャンの質問に受け答えするのはライナーさんだ。
露店のお菓子、串焼きを奢ってくれたのはミヤちゃん達だ。ライナーさんは驚いていたけど喜んで奢って貰っていた。
ジャンもお菓子を沢山食べていた、流石、ミヤちゃん達の弟だ。
「おじいちゃん、貰って来たよ」
「そうか、ミヤちゃんとメグちゃんのお勧めのお菓子か」
「うん、切って来るね」
「なに、おじいちゃんが切ろうか?」
「大丈夫、慣れているんだから」
馴れているのはかぶり付いて食べる事だと僕は思う。
「は~い、ふわふわのお菓子だよ」
「どれ・・・・・・いただきます」
手に取ったライナーさんは色々な方向から観察をすると口に運んだ。
「いただきます」
「美味しい」
「ほお、ふわふわでしっとり、甘みも丁度いいな、とても美味しい、どれお代わりを・・・・・・もう無いのか」
「あるけど、私のが減る」
ミヤちゃんの言葉に頷くメグちゃん、ジャンとライナーさんにあげるのは1個のようだ。
「そのだな、もう1個食べたいのだが、ダメかのう」
「どうするメグ」
「お姉ちゃん、明日も貰いに行こう」
「おじいちゃんにあげる」
「ジャン、もっとあげるね」
「おおそうか、嬉しいな、ありがとう」
「お姉ちゃん、ありがとう」
そんなに美味しいのだろうか、昔の記憶を思い浮かべる。
母さん達のは・・・・・・まあまあだった、自分で作ったんだからこれでいいレベルの完成品。ランディさんのは材料が間に合わせのだけどプロが作った完成品、うん、食べなくてもランディさんの方が美味しい。
「レイ、何頷いているの?」
「お姉ちゃん、食べたいんだよレイちゃんも」
「レイ、あげないわよ」
「そうだ、あげないよ」
「ニャ~≪要らないニャン、甘いのは食べないニャン≫」
寝よう、もう数日したらミヤちゃん達の誕生日だ。僕も3歳になるんだな。
ミヤちゃん達が選んだプレゼントはナイフにお菓子だ。ナイフは友達のアレク君の家に買いに行った。
買ったナイフは革の鞘? に入れられていた、何に使うナイフなのか分からないけど、メグちゃんもお揃いだ。二人の買い物は全てお揃いだ。
お菓子は色々なお店に行ってバッグに沢山詰め込んでいた。お昼の買い食いとプレゼントは別なので、買い物が終わったら、ミヤちゃん達はお菓子とシードルを僕は串焼きを食べた。
「お母さんから、お菓子よ」
「僕もお菓子だ」
「おじいちゃんからもお菓子だ」
「お菓子」
シンシアさん達の用意したプレゼントはお菓子。
シンシアさんとハリーさんは、我が子の事がよく分かっているので大箱だ、前回と同じ大きさだ。ダグラスさんのプレゼントは、お土産用の大きさなので、凄く小さく見える。
「シンシア、その大き箱の中身はお菓子なのか?」
「そうよ、沢山入っているけど、少しずつ食べる様に言っているのよ」
「そうです、二人はお菓子が好きなので、誕生日には沢山あげているんです」
「なるほど、それなら俺も大きい箱にすれば良かったな」
「おじいちゃん、ありがとう」
「おじいちゃん、ありがとう」
いいのだろうか、お菓子がこんなに沢山で、自分達でも買っているから凄い量になったぞ。
「ジャンにもあげてよ」
「「は~い」」
ジャンとライナーさん以外の視線が僕に注がれる、僕の時間だ。
「ミヤちゃん、メグちゃん、誕生日おめでとう、大好きだニャン」
「レイ、私も大好きよ」
「レイちゃん、私も大好き」
「凄いな、レイちゃんが話した」
「ジャン、大好きだニャン」
「レイ、大好き」
「レイちゃんは私は?」
「シンシアさん、大好きニャン」
「ああ、僕はどうなんだ?」
「ハリーさん、大好きニャン」
「おい、シンシア、何で驚かないんだ、おかしいだろ、猫だぞ、動物が言葉を話すか」
「いいのよ、レイちゃんはお利口さんなの、勉強好きだからこれ位出来るのよ」
「そうだよ、レイは凄いのよ・・・・・お父さん達に『さん』が付いているのよ」
「そうか、レイちゃんは私には『ちゃん』だったよ、ジャンには付いてなかったけど」
「これが普通なのか、いやいや・・・・・・おかしいだろう」
「ライナーさん、大好きニャン」
「俺か、俺も好きだ・・・・・・まあいいか、不思議だけど、話しているのは事実だ、他には何か言えないのか?」
「はいニャン、ニャ~≪沢山言えるけど、小出しにしないと駄目なんだよ≫」
そう、全部は喋れないけど、沢山発音出来るようになった、でも、完璧に出来ないと単語が途切れて会話にならない。今日話した言葉は今日の為に練習したから、それ以外の会話は今は出来ない。
「レイ、ありがとう、頑張っているのね」
「レイちゃん、ありがとう、後でお菓子を1個あげる」
「夕食を食べましょう、スープが冷めちゃうわ」
「レイ、大好き」
「ジャン、大好きニャン」
メグちゃんの申し出は辞退しよう。僕は甘い物を食べない、それに、僕が要らないと言えばメグちゃんは喜ぶだろう。
「ニャ~《魔法の授業に出るぞ》」
朝ご飯を食べて、ミヤちゃん達よりも早く家を出た。
いつもの様に、港周りで人目につかない様にして学校に着いた。
学校の入口で壁に沿って校舎迄走って行く。校舎の端から入口に誰にも見つからない様にしてドアの前に着いた。
「ニャ~《ドアが空いてないな、先生は遅刻か》」
朝僕が来るといつもドアは開いていて、校舎に入ると先生が職員室にいた。
初めてだな、ここにいると見つかるので、魔法の的の近くの草の茂みに居よう。
「ニャ~《誰も来ないな、どうしたんだろう》」
どれくらい待ったかな、早く来ないかな。
来る日を間違えたんだな。
「ニャ~《一日間違えたよ》」
昨日のように壁伝いに走って、中央のドアを目指す。校庭に人影はないようだ。
あれ、ドアが閉まっている。どうなっているんだ、茂みで待ってみよう。
「ニャ~《誰も来ないな、また間違えたのか?》」
「ニャ~《3日連続で間違えたよ》」
今日も誰も来ないようだ。
少しここでのんびりしてから帰るかな。
「ニャ~《あれ、今日も開いていないよ》」
どうなっているんだ、この寒い中、猫学生が登校してきているのに授業はどうなっているんだ。
寒い時期・・・・・・・冬休み? 僕の感覚だと週2日しか学校に来ないから休みがなくてもいいと思うんだけど、冬休みなのかな。
そうか、ミヤちゃん達の後に付いてくればいいんだ。
約一週間過ぎた、その間にミヤちゃん達が学校に行くそぶりがなかった。
「レイ、とんとん叩いてどうしたの、何か話したいことが有るの?」
「はいニャン」
僕は待っていた、お昼を食べた後に部屋に戻って来るのを。
乗っている机の上で、置かれている板を叩いて、学校の事を聞こう。
「ああ、学校ね、冬休みだよ。冬は寒いでしょう、学校には暖炉がないのよ。春まで学校は休みだよ」
「家にいるから不思議だったんだね」
「ニャ~《そうか、暖炉がないから休みか、仕方がないね》」
寒い学校で授業を受けるのを想像したら、寒くなってきた。
ベッドで寝よう・・・・・・いや、暖炉の前の布団がいい。暖かそうだ、挟まれて寝るのは幸せだ。
「レイは寝るのね」
「ならば、隣で寝る」
「そうね、暇だし」
寝るのか・・・・・・うるさくしないでよ。
そろそろ3歳になったな、生まれたのは雪の降っている季節、今は雪は降っていないけど冬。
暖炉の前の囲い柵は撤去された、ジャンに危ない事をシンシアさんが教えて、ジャンが理解しているようなので、片された。暖炉に近づけるけど、あまり近いと暑いし、布団が有るので少し離れていた方が安全だ。
秋から冬にかけて忙しかった日々が終わって、のんびり出来る日が続いている。
ジャンが棒倒しをやりに来たら邪魔になるけれど、ジャンはミヤちゃん達と言葉の勉強をしている。
簡単な会話で、ジャンの話す単語の数を増やす為らしい。
「レイちゃん、毎日寝ていると牛さんになっちゃうわよ」
「ニャ~≪牛さんですか、どんな例えなんですか?≫」
「ハリーさん、お客さんがお店に着てますよ」
「ありがとう」
ハリーさんがいたんだ。
「誰かしら、見てこようかな、でもいいいか」
洋服を買いに来たんだな、お客さんだからね。
在庫が沢山売れたな、去年は在庫が少なくて売る洋服が少なかった、仕入れから帰って来るのが遅かったからだ、今年は冬の前に帰って来たし、去年買わなかった人が値段の高い洋服を買ってくれたので在庫が減っている。
商売は大変で、仕入れも大変なこの世界は全てが大変なのかもしれないな。
「シンシア、お願いよ」
「サキ、どうしたの?」
「シンシアさん、お願いいだ」
「ランディさん・・・・・・どうしたんですか、二人揃って?」
「ハリーさんは?」
「仕入れよ、早く行って、早くは帰って来ないかもしれないけど、早めに仕入れに出かけたのよ」
「どうして?」
「簡単に言えば、その方が売れるからよ」
そう、説明するのは面倒だよね、全て話して理解して貰わないと『ああ、そうなんですね』とならない。
さっきアカリちゃんの声も聞こえたから、ミヤちゃん達の部屋に行ったんだな。
みんなは何しに来たんだろう。
「どうだ、美味しか?」
「凄く美味しいよ」
「よく分からないので、大きい方を下さい」
「メグ、今は美味しいかを聞かれたの、後でくれるわよ」
「とても美味しいです」
「それで、何の話をしに来たの?」
肝心な話を聞く前に、ミヤちゃん達が降りて来た、アカリちゃんが呼んで来たんだな。
「シンシア『俺が話すよ』はい」
「その、去年のお祭りの時は参加せて貰って嬉しかった、その時に作ったお菓子は・・・・・・このお菓子なんだけど、お菓子の作る権利を譲って欲しい」
「え、いつも作ってますよね」
「あ、そうか、販売する権利を譲って欲しいんです、販売したいんです」
「どうしたらいいのかしら、私には決めれません」
「シンシアどうして?」
「ああ、ごめんなさい、ほら、このお菓子はミヤ達が考えたから、私に権利がないわよね」
「そうか、ミヤちゃん、メグちゃんどうだろう?」
「分かりません」
「うん、分からないよ」
そうだな、僕にも分からないよ。
それよりもミヤちゃん達とアカリちゃんが残りを食べたそうな視線をカステラに向けているよ。
「そうか、レイちゃんが考えたのか・・・」
「レイちゃんが・・・・・・」
色々と権利の話をした、簡単に言えば著作権を譲って欲しい、もっと簡単に言えば作るのと販売をさせてだな。その話をランディさんはミヤちゃん達に話して許可を下さいと頼んだ。
「そう、レイが教えてくれたんだよ」
「お父さんがレイちゃんに頼んだんだよ」
そうだったかな、ミヤちゃん達が頼まれて、その後に僕が頼まれた事だったかな。1年前の事だから忘れたな。
「ハリーさんもいないと駄目か」
「いえ、問題は子供達とレイちゃんだと思います、ハリーは考えていないのだから無関係だと思った方が話が進みます」
「シンシアは良いと思ってくれているのね」
「まあね、だってうちじゃ作れないわよ」
「そんなに難しないのよ」
「それでも、プロと素人を比べてもね・・・・・・ミヤとメグはどうなの?」
「別にいいよ、作れないし、売るのも面倒」
「うん、面倒」
うん、どちらも面倒だ、洋服屋さんの方が・・・・・・比べられないな。食べ物屋さんの方が買って貰えそうなだけだな。
「すると、レイちゃんの許可次第だな、レイちゃんお願いだ許可してくれ」
「嫌だニャン」
「ああ、何でだ」
「レイの嫌だニャンは強烈だね」
「久しぶりに聞いた」
「ミヤ、あの板持って来て、何で嫌か聞かないと」
「は~い」
嫌だニャン、イヤダニャン、嫌だニャン~。
「なるほど、商品として認められたらいいんだな、美味しいのを作るぞ」
アカリちゃん一家が許可を貰いに来たのは昨日、僕は美味しく作れたら、ランディさんに全てを譲ってもいいと言った。生意気かもしれないが、お祭りと違って日々売るのには一定の味を保たないと駄目だからだ、中華屋のおじいちゃんの教えだ。
おじいちゃんは、一定の味を保つ為にお酒は飲まないし、タバコも吸わなかった。
『おじいちゃんは、酒は飲みたい、タバコは煙いので嫌だ、経験は大事だがしなくてもいい。飲んだ事がないんだよな、料理酒はあるが料理の中だ、飲んだ事にならない筈だ。食べ物の味を美味しくするのには無くてもいいんだ』
まあ、お酒は飲みたかったんだろうな、お店でもお客さんには出していたんだから。
「ニャ~≪最高のカステラを作るのだ、出来たら認めてあげるよ≫」
これはランディさんと僕の戦いだ。
ランディさんは直ぐに卵をかき回し始めた。
「ニャ~≪道具が進化している≫」
効率良く、疲れないようにする為だろ、ヘラの先が十字になっていて、前のヘラと同じ様に長方形の穴が開いている。十字のヘラに全部で8個の穴がある、料理の粉を混ぜるあの道具に似ている、名前は・・・・・・聞いた事がない。ああ、ハンドミキサーにも付いているな、小さいのが。
道具が進化したけど、電動のハンドミキサーには敵わない、でも、凄い情熱だ・・・・・・パン屋さんなのにお菓子に情熱。パン屋さんもカステラを販売しているかも知れない、いいんだろうな。
街のパン屋さんが近くに無いので、スーパーの何でも並んでパンコーナーしか見た事がない。パン屋さんにはパン以外に何を売っているんだ。
「みんな座って待ちましょうね」
サキさんが用意してくれていた椅子にみんなが座る、僕は作業台の上なので。
「ニャンニャンニャン」
「レイちゃん、ありがとう」
応援する事にした。
「ニャンニャンニャン」
粉を振りかけて、のの字の縦部分はヘラを立てて下から持ち上げる、外の丸の部分も同じ手順で縦に戻ってを繰り返す、ボールを回さないと上手く粉をまぶせない。ランディさんは沢山作って来たから、リズムがある。
「焼けた、食べてみてくれ」
最初の一切れを乗せたお皿が僕の前に、その皿をメグちゃんの前に押し出す。
「レイちゃん、ありがとう」
「食べてくれ」
ミヤちゃんの前にもお皿を押して行く、少し遠いいな。
「レイ、ありがとう」
「食べてくれ」
サキさんの前を通り過ぎてアカリちゃんの前にお皿を置く。
「レイちゃん、ありがとう」
「ジャン、サキ、シンシアさん、どうぞ」
「ありがとう、おじちゃん」
「レイちゃん、食べてくれ」
どうする、甘いのが嫌いなのにこんな事を始めてしまった。
僕の前に置かれたお皿、その上に焼かれたカステラの一切れ。
覚悟を決めてお願いする事にした。
「切ってニャン、大きいニャン」
「あ、ごめん」
「ニャ~≪いただきます・・・・・・美味しいな、ザラメが足りないけどその方が僕には良いな≫」
「おお、す・ご~い、レイちゃんが甘いの食べた」
「そうだ、初めて食べたんだ」
「そうだね、絶対に食べなかったよね」
そうだったな。久しぶりにメグちゃんの『す・ご~い』を聞けたな。
「そうか、初めてか、それで許可は貰えるのかな?」
「はいニャン、ニャ~≪約束だよ、ミヤちゃん達とアカリちゃんが食べたくなったら作ってあげてね≫」
「レイが、約束を守ってねと言ってます」
「そうだ、約束は守らないといけないのだ」
「そうだね、いい約束だったね」
三人は嬉しいだろう、販売されるようになっても食べれる様に約束して良かったな。
作戦名はいつでも食べたいだ・・・・・・・ミヤちゃん達が。




