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ニャンだふるワン  作者: 自由人書
59/521

ニャ~・・・59

「洋服の生地が良い物ですね、このデザインは西側の洋服屋さんでは売っていない物です」


女性は気に入った洋服が有ると自然にたいどにでてしまうんだな、洋服を見る目と手に取る動作が素早いぞ。


「そうなんです、王都の隣の街で仕入れて来たんです」


「そんな遠くも物が揃っているなんて。どれにしようかしら、これとこれ・・・・・これもいい・・・・・・肩の所にヒラヒラが付いているのも初めて、これもいいな、綺麗な濃い赤色、寒い時期に合う色ね、今選んだ5着を頂きたいです」


まとめ買いだ、流石ローラさんだ、選んだ洋服はどれも素晴らしい。


「はい、直ぐに、えっと4万ロージと3万ロージ、それに4万ロージと3万5千ロージ、これは6万5千ロージで合計は・・・・・17万ロージです」


「ええ~、凄く安いですけど大丈夫なんですか?」


「安い? ですか」


「ええ~と、王都の隣だとサシンベラ・・・・・・洋服の形と色と模様に高級な生地の生産が盛んな街ですよね。お父様の船は南と東の大陸には行くんですけど、洋服ならサシンベラが一番です、馬車で買いに行くにしても遠い場所なので、住んでいる街で買えるなんて嬉しいです。そうだお支払いをしないと。小銀貨2枚でお願いします」


「ジェシカ・・・バッグには無理なので、後でお届けしましょうか?」


「いいんですか、そうか、このバッグには入りませんね。先日は、マッサージを受けた後に洋服を買いたかったんですけど、マッサージの代金しか持ち合わせがなかったんです、今日は洋服の入る大きさのバッグを忘れたみたいです」


「それで本日は来ていただけたんですね」


「はい、気に入った洋服が残っていて良かったです」


「はい、お釣りです。ありがとうございました」


「こちらころありがとうございます、レイちゃん、家に来てね、では、失礼します」


「はいニャン、ニャ~≪ありがとうございます、お届けに伺います≫」


ローラさんはマッサージを受けた次の日、今日、お店に洋服を買いに来てくれた。


お店のドアの所で『持ち合わせがない』と呟いていた、まさか、次の日に来てくれるとは思わなかった。


「ジェシカさん、最新の・・・去年のですが、最高のデザインで、最高の生地の洋服が目の前にありますよ・・・ジェシカさん、あの、どうしたんですか?」


「よく見て勉強しないと、最新の縫い方とか流行りの色とかがここに、ありがとうハリーさん」


「え?」


「もう、ハリーさんが遠出をしなければ一生見れなかったかも知れないのよ、感謝します」


「あの、シンシアさんはどうしたんですか?」


ジェシカさんは、ハリーさんに感謝している様だけど、シンシアさんはそれどころじゃない。


「レイちゃん、作戦会議よ」


「はいニャン」






「私が付けた値段は安いのかしら」


「どうなんでしょうか?・・・・・・いつもはどうしているんですか、ハリーさんが値段を考えているんですか?」


「私よ・・・・・・ここだけの話、ハリーは安く買って来たとかは言ってくれるのよ、でも、いくらだったのかは本人も覚えていないそうなの」


「それじゃ~、もしかしてシンシアさんがお考えて?」


シンシアさんの話に二人は驚いている、ハリーさんは説明が少ないんだよな・・・・・・説明がない時の方が多い。


「そう、値段を決めているのは私なのよ。だから大変なのよ、沢山仕入れて来た時は」


「ご苦労されてるんですね」


「そうなのよ」


これは作戦会議なのだろうか、カウンターに集まって雑談をしている女性の集まりの様な感じだ。


少し変なのが、会話のテンポがいいのに僕を撫でる皆の手がゆっくりだ。


「ローラさんが最初のお客さんで良かったですね」


「そうですよ、冬物はローラさんが買ったのが最初です、もう一度値段を考える時間の余裕がありますよ」


僕には商品を見て値段を決めるなんて出来ないな、シンシアさんは凄い仕事をしているんだな。






「ねえ、値段を高くし過ぎたのかしら」


シンシアさんは二人に値段の感想を聞きたいようだ。


「どうなんでしょう、ジェシカさんはどう思います?」


「そうね、シンシアさんの値段は間違っていないかもしれませんが・・・・・・」


ジェシカさんが在後に手を添える様にして考えているぞ。


値段が間違っていないのなら、シンシアさんの洋服を見る目は・・・・・・・値段を変えたんだからどうなんだ。


「が?」


「が、どうなんですか?」


「がニャン?」


これは、ネットで同じ言葉を言わないといけないやつだな。


「レイちゃん、がにニャンは付けないでよ」


「がニャン」


少し遅いけど、いいぞジャン。


「だからレイちゃん、やめてよ、気持ち悪いでしょう」


「シンシアさん、最初のはレイちゃんで、次はジャンが言っていましたよ」


「そうなの、ごめんねジャン」


間違えているけどいいか。


「は~い」


ジャンはいい返事をしたな、シンシアさんが何で謝ったのか分かってなくても、名前を呼ばれれば返事をするのが子供だ。良い子だなジャンは。


「売れないのはやっぱり高いからですね」


「そうだと私も思う」


「もしかして、良い物でも高いので、手が出ないんじゃないでしょうか?」


ミヤちゃん達との作戦会議と違って、雑談が多くて、結論が出ない事がある。僕は相談役の様に皆の話を聞いているだけなんだ。


「ただいま~」


「お菓子が食べたい、ただいま~」


仲良し姉妹が早く学校から帰って来た。


昨日の夜にローラさんの家に洋服を届けたのはミヤちゃん達だ。チョコのお礼を言う事が出来たので良かった。


「あれ、今日も会議している」


「洋服は売れたの?」


「それが、さっぱりなのよ。値段が高いのかも知れないのよ」


「安くするの?」


「した方が良いと思うんだけど、どの位安くすればいいのか分からないのよね」


「大変だねえ」


「メグ、ご飯食べに行こう」


「おお、お腹が空いているんだよ、お菓子が食べたい」


僕もお昼を食べよう、マッサージの予約は夕方近くだからのんびりできる。


「ミヤ、いい案を考えて、私達も考えるから」


「いいけど、レイしか考え付かないよ」


ミヤちゃん達も考えてはくれるんだけど、諦めるのが早いんだよ。


難問は諦めが肝心だと言う様な感じだな。


「それでいいのよ、レイちゃんお願い」


「はいニャン」


先に行ったメグちゃんを追いかけるようにミヤちゃんは走り出した、僕も行こう。


高く売りたいけど売れない、適正価格のようでも売れない、安ければ売れるのは当たり前、難しいぞこれは。





「レイ、リズムよく叩くとメグが書き取れないわよ」


「そうだよ、早いし連続はダメだよ」


二人の指摘に叩いた手を止める。


リビングのテーブルの上に置かれた会話用の板の前でメグちゃんが書き終わるのを待とう。


「レイちゃん、最初からお願い」


「最初からなの?」


「うん、見てなかった」


「レイ、最初からのんびりよ」


「はいニャン」


最初の字は『ね』だ・・・・・・のんびりと続けていく、僕が買い物をした時の事を思い出して文字を叩く。






少し寒くなってきた、秋の半ばを過ぎた頃だろう、ミヤちゃん達は自分へのプレゼントを探す日々をしている。


「すいません、これを頂けますか?」


「はい、バッグをお預かりします」


「はい、お願いします」


僕は少し早いけど冬物の洋服を着ている、新作の洋服は子犬着ぐるみだ。カウンターの近くで遊んでいるジャンも同じデザインの着ぐるみを着ている。


最初の着ぐるみは去年の冬の初め頃に完成した。その後にシンシアさんからのお願いでジェシカさん達は、僕とジャンのお揃いの洋服を作り始めてくれていた。


「わぁ~、小さい犬なんですね・・・・・・お揃いで男の子も着ている、凄く面白いな」


子犬か、大型犬よりも凶暴な感じで吠えられた事があるな。


大型犬の方が吠えない様な気がする。


「子犬に見えるのは子猫なんですよ、レイちゃん、挨拶して」


シンシアさんのお願いだ、聞いてあげよう。


「ニャ~≪レイです、お買い上げありがとう≫」


「子猫? 子猫なんて見た事がありませんよ。顔を上げると、犬の顔の下に子猫ちゃんの顔があるんですね、本当に小さくて可愛い。撫でても大丈夫ですか?」


「どうぞ、ふかふかで気持ちいいですよ」


ふかふかなのは僕の毛かな、洋服の方かな。


「気持ちいい。大きい猫は凛々しい感じだけど、小さいと凄く可愛い」


「お待たせしました、バッグです、洋服の代金は5万ロージです」


「はい、安く買えて良かった。来年も楽しみです」


「ありがとうございます、お待ちしております」


僕を撫でていたお姉さんはジャンの頭も撫でて出て行った。


「ワン、ワン、ワン」


「ジャンはお利口ね」


「ワン、ワン、ワン」


お店の中で遊ぶのが普通になってきたジャン、今日は犬の洋服を着ているので、『ワン、ワン』と鳴いて遊んでいたけど、お客さんが来ると静かに遊んでいる。


「ジェシカさんの犬の洋服最高です、前の部分は白色で後ろ側は茶色、犬の特徴のある帽子、口と目が有るのでジャンが犬に見えますね」


「そこなのよ、どうするか悩んだんです。帽子に耳が付いている物にするか、帽子を犬の顔にするか、面白い方にしたんです」


「ジェシカ、ありがとう、ジャンも喜んでいるし、私も嬉しいわ」


「ありがとうございます、また作らせて下さい、頑張りますから」


「それなら、ジャンの誕生日に向けて作ってくれないかしら、デザインは任せるから、倉庫の生地は好きなように使ってね」


「ありがとうございます、誕生日までに作ります」


ジャンの誕生日か、3ヵ月以上先だな、どんなのが出来るのかな。


「ただいま~、早く帰って来たよ」


「ハリー、お帰り・・・・・・早かったのね」


ハリーさんが帰って来た、それもだいぶ早いようだ、僕にはその辺の事は分からないニャン、みんなの会話から判断するしかないんだから。






「そうか、サシンベラの洋服は売れているんだね、安く買えたけど、元が高いから心配だったんだ」


「もう、値段を教えて行ってよ、それでいくらで仕入れたのよ」


そうだ、仕入れの値段が知りたいな。暖炉の前で寛いでいたけど、値段が気になるのでシンシアさんの所に行こう。


「レイちゃん、今日も気持ちいな、値段か・・・・・・1年前のサシンベラでの仕入れの値段は、2.5万ロージから3万ロージだったかな、交渉する前が3万5千ロージから5万ロージだった? そうだ、全部買うから合計にして貰ったんだよ、確かな金額は忘れたけど1着3万位で買えたんじゃないのかな」


「そんなに安く買えたの、いくらで売ればいいのよ?」


「そこはシンシアに任せているだろ」


仕入れの値段も言わないのに任せていたんだ。


「高くてなかなか売れなかったのよ、それでレイちゃんにお願いして考えて貰ったのよ」


「すると、僕が渡されたメモにも載っていないんだな、それで、どんな方法で?」


「ニャ~≪説明するより、持って来た方が分かり易よ」


「レイちゃんが、持って来た方が良いと言っているわ、取って来る」


シンシアさんは、僕が言っている事が分かる時がたまにあるんだよね、本当にたまにね。





「ただいま~」


「ただいま~」


「お帰り~、元気だったか?」


「お父さんがいる、早かったね」


「早くお菓子を下さい」


二人も早く帰って来たと感じるのか。


「ああ、暖炉の前のテーブルにあるよ」


「大きい、こないだと同じ大きさだ」


「メグ、急ごう、お母さんに取られる前に」


「そうだ、減ってしまう」


学校から帰って来た2人は、木箱を持って部屋に向かって行った。


「ミヤ達、帰って来たのね、階段を上がる音が聞こえた」


「ああ、お土産を持って上がって行ったよ」


ジャンは静かだな、ソファーでまだ寝ているのかな。


「これがそうよ」


「これは値札だよね」




≪生産地・サシンベラ 特価・・6万ロージ→4.5万ロージに値下げ≫




「生産地か、こんな事思い付かないよ、それに特価で値引きしている様に見える。凄いよ、レイちゃんありがとう、レイちゃんどうしたんだ?」


「ハリーが強く握ったんでしょう、ああ、可愛そうに」


「ニャ~≪トイレに行きたい、洋服を脱がして≫」


ジタバタしても脱げないよ。


「シンシア、洋服が脱ぎたい様だよ」


「したいのね、はいはい、脱ぎましょうね」


「ニャ~≪暖かい代償はともて大きいんだな≫」


急げ、垂れ流し禁止だ。


「レイちゃんが幸せな顔してる」


「僕にも分かるよ」


はぁ~、漏れなくて幸せだ。



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