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ニャンだふるワン  作者: 自由人書
45/521

ニャ~・・・45

「ここに寝ればいいのね、噂のマッサージ楽しみ」


「ニャ~≪では、始めます、痛かったり、強く押して欲しかったら言って下さい≫」


数日前の試食会は成功した。


でも、ミヤちゃんとアカリちゃんのカステラはかき混ぜが足りなかった、それと、小麦粉がダマになっていたので食感が悪く焼けていたいような感じに仕上がったらしい。味は同じだけど食感が違うと全然違う食べ物だ。


二人が失敗した事で、ランディさんは混ぜ方が足りない事と粉を均等に混ぜないといけない事に気が付いた、流石はパン屋さんのプロだ。道具も揃っていたので何とかなった、ハンドミキサーが有ればもっと簡単に出来たけど、無いから仕方ない。


「猫ちゃんの手がとても気持ちいいのね、帰りに抱かせてね」


「ニャ~≪撫でてもいいよ≫」


僕は頑張る、美味しいお菓子と串焼きをお祭の時に食べる為に。


「そこ、そこ、もっと強く押して」


「ニャ~≪腰ですね、立ち仕事でお疲れですか?≫」


4階のマッサージ部屋には説明書きの板が置いてある、なんで、今まで思い付かなかったんだろう。ミヤちゃん達も『説明を書いとけば、便利だったんだ』と後になって気が付いた。


便利だ、マッサージを受けているお客さんが視線を向ければ注意書きが見える。





「ニャ~≪ミヤちゃん達が、喜ぶぞ≫」


ローラさんの屋敷で、マッサージが終わって、家に帰るところだ。


ローラさんから予約が入って僕は、貰ったリュックを背負って向かった。プレゼントされた物を使用しているところを見せるのは礼儀だ。使う機会が少ないけど仕方ない、自分では背負えないし、荷物も入れられないので自然と使う事が無いのだ、それは許してもらおう。ローラさんの家に訪問する時には着けて行こうと思う。


「ニャ~≪押せ~≫」


雪の降った冬の時だけ、石を押して出れなかった。


僕の為に開けた穴の前の床板には石を動かした時の擦り傷がある、現代の家の持ち主なら怒るだろう擦り傷だ。よし、今度は塞ぐぞ、優しい飼い主の家で良かったな。


階段を上がり始めた時に声が聞こえた。猫の耳は人間よりも遠くの音が聞こえる、おそらく、何倍も耳が良いはずだ。誰だ聞いた事の無い声だぞ、お客さんか、珍しいな。


「そうだ、凄く遠いんだぞ、王都のリースロンドよりも向こう側から来たんだ」


「何て名前の街なの?」


「アイルガーラだ、しかし、子供達はシンシアさんにとても似ているな」


「そうよね、姉妹に見るわ」


「兄さんに似たら、こんなに可愛い筈がないよ」


聞こえてきた話の内容からすると、ハリーさんの両親と弟さんだ。どれどれ、どんな人達だ。


「お父さんの悪口言わないで」


「そうだよ、悪口はいけないんだよ」


「ランドン、謝りなさい」


「悪口を言って・・・・・・すいません」


「ミヤちゃん、メグちゃん、ハリーとランドンはね、悪口を言い合うのが好きなのよ。だから、許してあげるのよ」


「そうなの、じゃ許す」


「許す」


二人は不服そうだけど、兄弟だからね、悪口を言い合うよね。でも、可愛いと言われたんだから、そこは誉め言葉だったんだけどね。


「なんで、ランドンがいるんだ、また悪さをしに来たのか」


「何でまたなんだよ、子供の時に落とし穴に落ちた事をまだ根に持っているのかよ」


「ハリー、お帰りえりなさい、久しぶりね」


「母さん、父さん、いらしゃい。長旅ご苦労さま」


お母さんに挨拶されたら、ハリーさんが落ち着いたみたいだ。


「ハリー、元気にしていたか?」


「はい、元気です、お店は順調です」


「そうか、それならいい」


「ハリー、赤ちゃんが生まれたなら知らせて頂戴、可愛いわね」


ジャンはハリーさんのお母さんに抱かれて寝ているようだ。


「つい、手紙を出すのを忘れていました。みんな、疲れただろ、部屋で休んだら」


「そうだな、休ませてもらうか」


「俺の部屋、まだそのままかな」


「そのままよ、たまに掃除もしているわよ」


「シンシアさん、ありがとう」


「ご苦労さま、ジャンをお願い。懐かしの我が家ね」


暖炉の前で事の成り行き見ていたけど、ハリーさんの家族はここに住んで居たんだな。


どのくらいの長旅だったんだろう、遊び疲れて、帰って来たらそのまま寝るパターンみたいだな。


「夕食の用意が出来たらお呼びします」






「お父さんに似てたね」


「髪の色が同じだった」


ハリーさんの家族は皆が薄い茶色だった。弟さんの・・・ランドンさんはハリーさんに似ているけど物事をハッキリと言いそうな感じの雰囲気が顔に出ていた。


「ほら、お皿を並べて」


「はい」


「ジャンはレイちゃんと遊んでいましょうね」


「はい」


はいと返事をしているのはジャンだ、ジャンはミヤちゃん達の後を追いかけて、お手伝いをしているつもりだ。


僕の名前が出た事で、遊び相手が発見出来た嬉しいジャンが、暖炉の前で寛いでいる僕を捕まえて抱っこする、乱暴に扱われる事がないので、ともて良い子だ。


「ジャン、ニャ~≪お手柔らかにお願いします≫」


最近では力が付いてきて、強く抱きしめられて痛い時がある。乱暴にはされないけど、力加減が分からないのが子供だ。小さい虫や動物を誤って殺してしまうのは、その力加減で相手にダメージを与えると思い付かないからだ。


「レイ、ゴロゴロ」


ゴロゴロがしたいのか、よし、棒を立てるか。


ゴロゴロとは自分が転がるのと、ボウリングのゴロゴロがある。道具を使った遊びが楽しいのはジャンが少しずつ大きくなってきた証拠だ。そのうち、僕と遊ぶよりもおもちゃで遊ぶようになるだろうな。


暖炉の横に棒倒し用の木材が置かれている、薪だと汚れるし立て辛いので、ハリーさんが用意してくれた。最初は3本だった棒が、今は5本になった。


「ジャン、ゴロゴロ」


僕が合図の言葉を掛けると、ジャンは暖炉の反対側にトコトコと歩いて行く。置いて有った石球を持って来て、棒の方向に向かって座った。


「ゴロゴロ」


ジャンはゴロゴロと言ってから、石球を棒に向かうように押し出した。


「ニャ~≪上手く転がしたね≫」


ハリーさんの買った幸運の石球は奇麗な球体なので、狙った軌道からずれが少ない、棒に向かってドンドン転がって来る。


僕はこの石球を奇跡の玉と思っている、だって、この世界でこんなに形の整った石の玉が作れるなんて奇蹟だ。


「ゴロゴロ」


「ニャ~≪もしすると、ストライクか≫」


石球は先頭の棒にぶつかると斜めに並べられた棒に次々と当たっり、先頭の棒が石球が行かなかった方の棒を弾いて倒した、ストライクだ。


よし、並べるぞ。倒れている棒を元の位置まで押して運んでいると、ミヤちゃんが並べてくれた。


「ミヤ、あり」


「レイちゃん、幸運の石を置いとくよ」


「メグ、あり」


早く準備が出来た、二人も遊びたいだろうけど、夕食の準備を手伝っている。


「ジャン、ゴロゴロ」


「ゴロゴロ」


「ジャン、マンマよ」


「はい」


シンシアさんにいい返事をしたジャンは、石球が棒に当たるのを見届けてから、ご飯を食べる為にテーブルに向かった。


「ニャ~≪遊びは終わりだ、片付けて部屋に戻ろう≫」


僕はハリーさんの家族が雑談をしている時に食べたので、部屋に戻ってのんびりとする事にした。


あれ、リュックを背負ったままだ、外して貰うの忘れてた。二人が食べ終わった後でいいや。





「レイちゃん、寝てる」


「疲れたんでしょう」


「頑張ってくれてるもんね」


「そうね、リュックを着けたままだ」


二人の話し声が聞こえた、食事が終わったんだな。寝ていた僕が目を開けるとミヤちゃんの顔が目の前にあった。


「ニャ~≪外して≫」


「あれ、起きたよ。この動作は外して欲しいんだね」


二人はベッドに座っていた、僕はミヤちゃんの足まで移動して、リュックを外して貰う。


「ローラさんの所に行ったのよね、あれ、何か入っている、お金と紙で包んである何かだよね」


「何かくれたのかな」


「これはもしかして、チョコかな」


「ああ、チョコだ、でも、こないだと形が違うね」


「そうか、温かいと溶けるのよ。だからレイの背中の形なのよ」


「舐めると解けるんだから、レイちゃんの背中で溶けたんだ」


そうか、チョコが入っていたのか、僕の背中の形になっているんだな。


「ニャ~≪僕は寝るよ、まだまだ続くよね≫」


「レイ、布団で寝るの?」


「はいニャン」


だって、二人は当分寝ないだろうし、少し離れていれば話し声が眠る僕の邪魔をしない。


ベッドから降りた僕は暖炉の前に向かう。久しぶりだな、リビングの暖炉の前に置いてある布団はよく使っているけど、この部屋はどれ位ぶりだろう。


「美味しい、大人の味だ」


「大人の味、メグ、母さん達にもあげるのよ」


「少しだけだよ、おじいちゃん達にはどうすればいいかな?」


「少しだけあげてみる」


「そうだね、少しだね」


寝よう、少しだけが続きそうだ。


「少しだね」


「少しだけね」





「レイちゃん、ありがとう。今度は妻にもマッサージを勧めるよ」


「ニャ~≪おじいさん、ありがとう、その時はよろしくです≫」


家の入口で新規のおじいさんにお礼の言葉を言われ見送られた。


午後のマッサージはこれで終わりだ。


この街の東側の西寄りの家に来た。建物の裏を走って家に向かって走る。僕専用の猫の道だ。ジョンさん達と犬の皆さんはリードが付いているので、通りをご主人様と散歩する。だから、建物の裏の私道は誰も通る者はほぼいない。


「ニャ~≪何しているの?≫」


「ニャ~≪追っ手を撒いているところだ≫」


何やらカッコいいセリフだ、大きい猫だけど、リードが付いていない、どうしてなんだ。


私道で初めて動物に会ったよ。


「ニャ~≪誰に追われているの?≫」


「ニャ~≪しつこいな、奴だよ≫」


通りの向こうから走ってくるおじさんが『うちのお肉を食べやがって、どこの猫だ』と呟いて、キョロキョロしている。


「ニャ~≪盗んだんだ≫」


「ニャ~≪食べる物が無いんだ、俺は行く、奴に言うなよ≫」


大きい黒い猫は中央の東側と西側の境界の森林に向かっていった。


「ニャ~≪街の中に野良猫がいるんだ、夜の会議はあるのかな≫」


この街に来た時に気になった夜の会議、でも、あの猫しかいなかったらつまらないな。夜の会議を見付けに行くのはやめとこう。





「レイちゃん、遊びに来たの?」


「ニャ~≪マッサージの帰りだよ≫」


黒猫さんに会った後にアカリちゃんの家の前を通ると声を掛けられた。アカリちゃんは外で何をしているのかな。


「猫を預かっていたんだよ、レイちゃんの知り合いの猫だと思うよ」


ジョンさん達の誰かだろう、常連さんになってくれたから、店の前でよく会う。アカリちゃんもお駄賃が貰えるからお手伝いが楽しそうだ。


「ニャ~≪帰ります、さようなら≫」


「じゃあね、レイちゃん」


「レイちゃん、いいところにいたわ、行きましょう」


「ニャ~≪誰だ≫、サキ」


「名前を呼んでくれたありがとう、忙しくて予約を入れられないのよ。お願いよ、今からして、ね、ね」


後ろから捕獲して、お願いだと言われたけど、放してくれる事はないよね。


「お母さん、レイちゃんが可哀そうよ」


「はいニャン、ニャ~≪いいですよ、いつもは直ぐに予約するのに予約が無いからどうしていたのかと思っていましたよ≫」


「ええ、いいの、疲れてないのレイちゃん」


「はいニャン」


疲れてはいるけど、カステラを作るあの作業に比べたらお安い御用ですね。


「ほら、レイちゃんは優しいのよ、アカリ、ご飯は先に食べてね、私は後でいいから」


「は~い、レイちゃん、疲れたら帰っていいからね」


優しいアカリちゃんは、僕がマッサージをしている事を知っているので心配してくれる。


「はいニャン」

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