ニャ~・・・4
「可愛い、仔猫ね」
お店の正面から横に回るとドアがあった。正面のドアはお客様用で、住んでいる人達は建物の横のドアから入るのかもしれない。
開けられたドアから建物の中に入ると、正面にはドアがあったけど、右にある階段で2階に上がって来た。2階の通路が反対側まで伸びていて3階の階段とドア1ヵ所、この階にあるのはドアが1ヵ所。
そのドアをドアを開けて出迎えてくれたのは20代前後の女性で凄く綺麗で可愛い。
綺麗で可愛いとは変な表現だけど、まあ、そう見えたんだから仕方がない。
「ニャ~《始めまして、よろしくお願いします》」
まだ名前を付けて貰ってないので、名乗る事が出来ない。
僕が挨拶した女性の顔が、誰かに似ている。日本の女優さんで、記憶が無くなる探偵役の主演女優さんに似ている・・・・・何とか結衣、苗字が分からないけど、沢山ドラマの出てる人気のある女優さんだ。
女性は薄い緑色のワンピースの洋服を着ている、街の女性はおしゃれなんだな。それに白に近い銀色の髪の毛で綺麗な女性。可愛く見えるのは愛嬌がありそうな微笑みのせいだ。
「猫ちゃんが来た」
「猫」
女性の後ろから現れた女の子二人は女性の娘さんだろう、5歳位の女の子と3歳位の女の子で、顔も髪の毛の色もお母さんと同じだ。若く見えるお母さんなので、3姉妹に見える。僕を引き取りに来たお父さんだと思う男性の髪の色は薄茶色で、女の子にはお母さんからの遺伝が色濃く出ている・・・・・・お父さんからは何も遺伝してないようだ、見た目には。
「ニャ~《よろしく》」
小さい女の子なのにおしゃれな服を着ているな、街の人達は子供もお洒落だ。
「ただいま、お待ちかねの子猫を譲って貰ったよ。ミヤ、メグ、挨拶をしようね」
「はい、私はミヤです、よろしく」
「メグです、よろしく」
お姉さんの方がミヤちゃんで、妹さんがメグちゃんか、男性はやっぱり、お父さんだった。
お父さんからミアちゃんに渡された僕はおとなしく抱かれる、頭を撫でられたり、くすぐられたりするけど我慢だ。
「猫さん噛まない」
「噛まないよ、おとなしくていい子だよ」
メグちゃんはそおっと撫でてきた。
僕は本当に猫になったんだ、僕も撫でる方をしてみたい、非常に残念だ。こんなに身近・・・自分だけど、ああ、触りたい、抱いてスリスリしたいな。
そうなんだよな、死ぬまでに猫を撫でたりする機会がなかったんだよな、猫カフェにでも行けばよかったな。
「さあ、家の中に入りましょう、ハリー、お疲れ様」
「ああ、疲れたよ。私がいない間に何も問題はなかったかい?」
「毎日、子供たちが『猫ちゃんはまだ』と言っていたぐらいかな」
「そうか、リードさんは頑張ってくれたんだが、遠いいからねキリト村は」
家族の皆は話しながら、家の玄関からリビングに向かった。リビングには新品に見える大きい暖炉があった。
暖かそうだぞ、暖炉の前が僕の場所だ。抱っこされていた僕は、メグちゃんの手から下りて暖炉の前に来た。
「ニャ~《温かい、風邪をひかなくてよかったな》」
「ああ、暖炉は危ないのよ」
「ニャ~《放してよ、温まりたいんだ》」
「さあ、椅子に座ろうね」
まあいいか、部屋の中は十分に暖かい、眠くなってきたな、暖かい事は良いことだ。
僕はハリーさん、この家のお父さんが、僕を貰いに行った時の話を家族の皆に話しているのを聞いていたけど、眠くなってきてしまった。
「ニャ~《母さんお腹は、気持ちいいね》」
「ニャ~《私のお腹で寝るのが好きなのね》」
暖かくて気持ちいいのと母さんの心臓の音が心地よく聞こえるんだ。
「ニャ~《兄さん達も、もう少しいれば色々と遊べたのに、でも、兄さん達がいないから母さんのお腹を独り占め出来たんだな》」
「ニャ~《甘えん坊さんね》」
夢を見た、母さんとのんびり過ごした短い日々の事を。猫でも夢を見るんだんな、でも、短い夢だったな。
ここは何処だろう、最後に覚えているのが・・・・大きい暖炉の前で寝ようとしたら、ミヤちゃんに連れていかれて、椅子の上で疲れてきたんだ、その後、すぐに眠くなって寝たんだ。
「ニャ~《ここは何処なんだ?》」
温かい物体に挟まれているようだけど、暗くて何も見えない。
もぞもぞと移動できる方に向かうと、寝息が聞こえてきた。どうやら、2人の女の子の間で寝ていて頭の方に移動して来たんだな。
ミヤちゃんとメグちゃんの間から出るとベットの横の床に飛び降りた。
「ニャ~《猫は少ない明かりでも見えるから便利だな》」
僕が寝ていたのは、大人二人でも余裕で寝れるベッドだった。
部屋には暖炉があって、少し離れた横に机が、机の上には本の並んでいる本棚が置かれている。ドアの横には机の高さ位のキャビネットがある、小物とかが入っていそうな家具だ。
ドアの前まで来たけど、僕には開けれないのでこの部屋から出れない。
そうか、母さんに教えて貰ったあれをしよう、僕の匂いを色々な所に付けよう。犬のマーキングと同じだけど、猫は自分の匂いを付けるんだ。
僕がよく寝る場所になるかもしれない、ベットの足にスリスリと、この位でいいのかな、他の足にもスリスリだ。
次は何処にするかな、あの机の上にも乗ってみよう。
「ニャ~≪乗れた、練習しといて良かった≫」
机の上でゴロゴロすればいいのか。本棚には僕の読めない文字が書かれている本が数冊並んでいる、何が書かれているのかな。ミヤちゃんの勉強の本か何か、それとも漫画かな、ああ~、死んだから漫画の最終回が読む事が出来ないよ、もう少しで終わりそうで、最後にどうなるのか凄く気になる。
気になる作品が沢山ある。役者を目指す作品の先生はあんなに長い話にしたんだよ、飽きてきたけど、最終回だけは読みたかったのに。
ニャンたる事だ、猫なのに前世の記憶があると、心残りを思い出しちゃう。
心残りは、漫画の最終回と推理物のドラマ。あれ、そんなにないかも、そうか、ドラマは完結してから見ていたからだ。
心残りの猫を撫でてみるか・・・・・・この手だと触り心地が分からないよ。人間の手は凄かったんだな。
暇だな、あまり昼真に寝るのは止めとこう、部屋の中で出来る事が少ない。ミヤちゃん達が寝ているのに運動するのはうるさいからダメだよな、夜に寝れる様にミアちゃん達の起きている時間は、起きていよう。
なので、もう一度寝よう。猫の母さん、僕は頑張って猫らしくします。おやすみなさい。
「ミヤ、起きなさい」
「起きてるよ」
「目が開いてないわよ」
「もう少しで開くよ」
「着替えたら下りて来てよ、メグも連れて来るのよ」
「は~い」
何か聞き覚え・・・言い覚えのある会話だ。『起きているよ』、僕も何回も言ったな、そしてすぐに寝た。
「す~」
ほら、ミヤちゃんは寝た。僕と似ているな、起こされた時の対応が。
「猫ちゃん、ご飯食べに行こうね」
ん、メグちゃんが起きたよだぞ、3歳でもしっかりしているな。
「ニャ~≪僕はどこに行けばいいのか、分からないので、よろしく》」
僕をしっかり抱いたメグちゃんは、部屋から廊下に出た。部屋の前にもドアがある。廊下の奥がミアちゃん達の部屋か、右は行き止まりで左の先の正面にドア、その手前にも左右にドアがある。この廊下に面している部屋は4部屋だ。
開けてある正面のドアの先には階段が見える。どうやら、階段のある通路と部屋のある廊下は、1枚のドアを隔てて繋がっている。階段を上がらないで、通路の反対に向かうと下の階に行ける階段だ。
「もう直ぐだよ」
昨日の記憶だと、2階はとても広いリビングにドアが何個か有った、ミヤちゃん達の部屋は違う階にあるんだろうと思う、2階のドアと今通って来たドアは同じ位置でも違う階にあるようだ。
「ニャ~≪僕飛んだよ、ビックリした≫」
「ごめんね、猫ちゃん」
この家の間取りを考えていたら、バランスを崩したメグちゃんの手から投げ出された。メグちゃんの位置から5段下に落ちたんだな、ほんとビックリしたよ。メグちゃんの階段を下りる足どりが危なっかしいな、止まって待っていよう。
先に下りると走って階段を下りて来そうで、横にずれて待つ事にした。
「ニャ~《危ないから、抱えなくてもいいよ》」
僕は何回も危ないから抱かなくていいよと言ったけど、言葉が通じる筈も無いので、メグちゃんは僕を抱き上げて歩きだした。
ふう~、下の階に付いたぞ。
「猫ちゃん、ドア開けて」
「ニャ~《開けれません》」
僕にはドアを引く力はないよ、あれ、押すドアだったかな。
「開けれないんだ、押すだけなんだよ」
メグちゃんは僕を抱いているので、肩でドアを押して開けた。
リビングが見えるので、ここは2階、ミヤちゃんの寝ている部屋は3階の奥の右側だ。
「メグ、お姉ちゃんは?」
「寝てる」
「もうあの子は、起きたって言ったのに。先に食べましょうね」
「は~い」
リビングの暖炉は薪が燃えていて、この部屋を暖かくしてくれている。僕の場所は暖炉の近くかな。
暖炉前のソファーの先にあるダイニングテーブルにはパンが山済みになっていのが見える。
「ニャ~《あんなに誰が食べるんだ、それとも、お客さんが来てるのかな》」
「猫ちゃんのご飯も用意してあるのよ」
「シンシア、どこで食べさせるんだ?」
「皆と一緒だから、テーブルの上?」
シンシアさんは首を傾けて、考えてるようだ。
メグちゃんは僕をテーブルの上に乗せてくれたけど、いいのかな。
「お父さん、おはよう」
「おはよう、メグ」
「ニャ~≪おはようございます≫」
朝の挨拶をした僕は、目の前に置かれたお皿に視線を向けた。皿の上には、お肉と野菜が載っていた。これが僕のご飯なのかな、皆の皿には乾燥したお肉、干し肉?見たいのが載っているだけで、野菜が載っていない。皆は野菜を食べないのかな。
「いいのよねぇ? テーブルの上で。スープを持ってくるわね」
「まあいいか、食べ方が駄目だったら床にすればいい」
僕はこのままなのか、どうせなら床の方がいいな。テーブルに乗って食べるのは行儀が悪いと思うんだけど。どうも、人間の僕がテーブルに乗っている感覚になるんだよな。
人間だと行儀が悪いのだろうけど、飼い主のみなさんが、これでいいんだと言うのなら従おう。
お肉と野菜か、先ずは野菜から食べてみよう。
「いただきます」
「ニャ~《いただいます》」
メグちゃんに続いて僕も朝食を食べ始める。味付けは塩だな、野菜の本来の味が出ているのかな、甘くて苦くて歯応えのある触感だ。どれ、お肉はどうかな・・・・・・。
「ニャ~《塩っぱいよ》」
「美味しそうに食べているな、それに行儀が良いのか、散らかさないな」
「そうね、いい子なのね」
いい子は合っているけど、美味しい肉なのかもしれたいけど、塩っぱいよ。塩漬けのお肉なのか・・・ああ、冷蔵庫がないから、塩漬けのお肉か干し肉しかないのかもしれないな、保存方法がそれしか思いつかない、他の方法はないよな。
歌を思い出したぞ、確か、ガスもねえ、何にもねえ、そんな歌詞の歌があったな。こんな田舎嫌だ~、東京に出るだ~。そうだよ、ガスも電気も水道も何もないがこの世界だよ。
「ニャ~《次からは塩抜きで、お願いします》」
僕はシンシアさんに視線を向けてお願いした。
「好きなだけ食べてね」
お願いは聞き入れて貰えなそうだ。
でも、母さんに人間の言葉を教えて貰って良かったよ、会話は出来ないけど、会話や僕に話し掛けている言葉が分かるのが嬉しな。
「ああ、みんな食べ始めてる。猫ちゃんも食べてるんだ」
「直ぐに起きないのがいけないのよ、猫ちゃんなんか早起きで、行儀もいいんだから」
遅れて来たミヤちゃんは、メグちゃんの隣に座って、あの山積のパンを1個取った。
丸パンと呼べばいいのか、パン屋さんにあるフランスパンの丸い形のパン、千切れるからフランスパンよりは柔らかいんだな。
「明日からは、猫ちゃんと一緒に起きるよ」
この家の家族が全員揃ったようだぞ、この皿の量のパンを4人で食べるのかな。
「いただきます」
どんどんパンが手に取られるが、全部は無くならいだろうな。




