ニャ~・・・35
「お父さん、お帰り」
「お土産は?」
「ただいま、ちゃんとあるぞ」
またまた、大量に仕入れて来た秋物の服の入った木箱をエネルさんも運んでくれている。東門の近くにリードさんの家が在るらしくて、一緒に来てくれたようだ。
「ニャ~≪ハリーさんは買い過ぎなのを分かってないよ、去年の秋が短いと感じたのは僕だけ?≫」
一年を360日位だとすると、春が3か月間位、夏が4か月間位、秋が2か月間位、冬が3か月間位あると思うんだけど、そう感じたのは間違いなのかな、でも倉庫が広くていくらでも入りそうだからいいのかもしれないな。
「お父さん、お菓子だよね、勿論」
「ああ、お菓子もあるぞ」
「すいません、通して下さい」
「ああ、悪い、お父さんも荷物を運ぶから、お土産は後だぞ」
「分かった、メグ、リビングに行こう」
「そうだね」
二人はリビングに向かい、ハリーさんは馬車の荷台の荷物を取りに行った。僕は玄関の横で毛づくろいをしながら木箱がどの位運ばれてくるのか見ているつもりだ。
「レイちゃん、どうだ大きくなったか?」
「ニャ~≪自分では大きくなったと思うんだけど、みんなは変わらないと言っているよ≫」
「父さん達はレイちゃんによく話し掛けるね」
「そうだな、話し掛けたくなる何かがあるんだよ、それに可愛いだろ、見ていると癒されるんだよ」
「そんなもんかな」
そう、猫の仕草は癒されるんだ、僕も家で飼えなかったのでネットの動画をよく見ていた・・・・・・寝ているの限定だったけど、とても可愛いんだよな。
リードさんの大きくなったか? で、玄関の壁の僕用の入り口の塞がっている穴を見た。最初に入り口にして貰った時から大きさは変わっていない、ハリーさんが僕が大きくなったその時は大きくするかなと言ってくれたけど、今でも通り抜けられる、そう、僕は微妙に成長する珍しい猫なのだ、ジョンさんたちのように大きくはなれないのだ。入り口の穴から自由に出れる今の方が幸せかもしれないな。
それにしても、何往復しないといけないんだろう、明日の午前中は品出しだな。
「バブ~、バブ~」
「ニャ~≪追いかけて来るな、ここは危険だ、僕のご飯が置いてあるんだよ≫」
「ジャン、移動ができるようになって、嬉しいでちゅね~」
暖炉の前には入れないように策が置かれた、もともと有ったのだが倒れにくい柵に変えられた。置かれた柵だと火の近くに行けないので、冬の楽しみが減ってしまった。
今日はシンシアさんの誕生日で、夜にみんなからプレゼントを贈られるだろう。マッサージは何日か前まで続いていたが、予約が全て終わると玄関前の看板は≪マッサージ、終わりました≫と書き換えられた。
「レイちゃん、お願い」
「はいニャン」
ミヤちゃん達を起こすように言われたので返事をして階段を駆け上がる。
≪はい≫の返事が出来るようになったけど、≪はい≫だと味気ないとミヤちゃんに言われてニャンを付ける事にした、一番言いなれている≪ニャ~≫よりもゴロがいいようなので≪はいニャン≫に決まった。
「メグ、ご飯を食べたら買い物に行くわよ」
「うん、お母さんのプレゼントだね」
3階の階段の通路を走っていると、ミヤちゃん達の声が聞こえた。イベントの日にはちゃんと起きれる良い子なのだ。
「レイ、朝食は終わったの?」
「ニャ~≪まだだよ、起こしに来たんだよ≫」
僕が≪はいニャン≫と言わなければミヤちゃん達には伝わる。
「起こしに来てくれたんだ、今日はちゃんと起きれたよ」
毎日、自分達で起きてくれれば、シンシアさんも僕も助かるんだけどな。
ミヤちゃんに抱かれて階段を下りる、僕も1回は猫を抱いてみたかったな。
「レイ、お昼は串焼きだよ、食べるでしょう」
「はいニャン」
「2人とも早く食べて」
「「は~い」」
串焼きだ~、朝食は抜こうかな、でも、串焼きだけを沢山食べるのも悪いよな。
「バブー、アーアー」
ジャンは良く喋るようになったな、赤ちゃん言葉は分からないけど、何かを訴えている。
「はい、もう少し食べましょうね、いりませんか・・・・・・ベッドに行きまちゅか?」
「アーアー、ブー、アブー」
ハリーさんの足に抱き着いて遊んでいるな、座る事が出来るようになったので遊びも色々あるんだろう。
「ニャ~≪ジャンにつかまる前に、朝食を食べるぞ≫」
朝食を食べ終わると、ジャンに気が付かれないようにリビングを後にした。ハイハイが出来るようになったので追いかけて来たりするけど、移動できるようになったので、僕以外に興味がある物があれば、解放される事が多くなってきた。
入口のドアの前で丸くなって、ミヤちゃん達が降りてくるのを待つ事にした。
「お待たせ、串焼きだよ」
「ニャ~≪直ぐに食えないよ≫」
「メグ、遅いわね」
メグちゃんはシードルを買に行った。
串焼きは焼けるのに時間が掛かる、その焼けた串焼きが少し冷めると、僕の食べやすい温かさになる。
僕とミヤちゃんが露店の脇にいると、男の子が僕の串焼きに視線を向けていた。
「お腹すいた」
まあ、その視線の先にあるのが串焼きなら、そう言うよね。
「はい、食べていいわよ」
「いいの?」
「ニャ~≪僕の串焼きが≫」
「ありがとう」
「気お付けて食べるのよ」
「マルコ~」
「お母さん」
呼ばれた男の子は、走ってお母さんの所に向かった。
「レイ、メグを探しに行くわよ」
「ニャ~≪はいニャン≫」
串焼きは1本しか食べれなかった、男の子に2本あげたからだ。ミヤちゃんは優しい、男の子は今日の事をいつか話すだろう、お姉ちゃんが美味しい串焼きをくれたと。男の子のお母さんがお辞儀している、手に持っている串焼きが串になっていた。猫舌じゃないんだね。
「お姉ちゃん、あそこに新しいお菓子が」
「メグ、直ぐに食べよう」
「うん、シードルあげる」
「ありがとう」
僕の無くなった串焼きは追加されないんだね。
「シンシア、誕生日おめでとう、僕からの贈り物だ」
「ありがとう、開けるわね」
誕生日の夜は少し豪華な料理が用意されるのが当たり前になった、テーブルに並べられた料理に僕の料理も置かれている。
テーブルの上に乗っているので皆の表情がよく見える、ハリーさんはシンシアさんにあげたプレゼントに自信がある様だぞ、顔に書いてある。
シンシアさんが木箱をテーブルの上に置いて上蓋を外した、中を確認し中からプレゼントを出した。手に持っているのは紐だ、紐をドンドンとたぐい寄せる様に上に持ち上げると布が付いていた。
「ハリー、これは何?」
「モンドの街で人気が出たおんぶ紐だ、赤ちゃんをおんぶするのが簡単で、布が赤ちゃんを支える様な形になっているんだ。凄いだろう」
「おんぶ紐か、便利なのね後で試してみるわ、ありがとう。ジャン、後でおんぶしまちゅうよ」
「アーアー、バブー」
モンドの街で人気が出ているおんぶ紐か・・・・・・それは必要な物でプレゼントとしてはどうなんだ。それに人気が出ているなら、勿論、販売用にも買って来てあるんだろうな、いや、そこに気が付いたらハリーさんじゃない、絶対に買って来ていないな。
「メグ、持って来て」
「は~い」
テーブルの上にはプレゼントの木箱があるけど、それとは別にもう1個プレゼントがある、それを部屋に置いてあるので、メグちゃんが取りに行った。
僕は何を買ったのか知っているけど、ここに置いていたら何をプレゼントするのか見れば分かってしまう。
「お母さんちょっと待ってね、部屋に置いてあるの」
「でも、そこにも木箱が置かれているわよ」
「今年は2個用意したの」
「楽しみだな、ミヤ達が何を用意したのか」
ハリーさんも興味あるようだ、自分のプレゼントは成功したと思っているだろうけど、ジャンが大きくなったら隣の部屋に片付けられる運命だ。
「持って来たよ」
メグちゃんはドアの所で顔だけ出している、準備が出来たようだ。
「お誕生日おめでとう」
「お誕生日おめでとう」
先にミヤちゃんがお祝いの言葉を送って、その後に続いてお祝いの言葉と花束を持ってメグちゃんがシンシアさんの横に来て花束を渡した。受け取ったシンシアさんは花束の匂いを嗅いだり回転させて見る角度を変えている。
花束は赤い花、黄色い花、ピンク色の花、白色の花の4種類で、どの種類も少し濃かったり薄かったりしているので、とても綺麗だ。4種類の花は大きさが違うので束ね方を変えるとまた違う花束に見えるだろう。僕の知っている花は、バラ、アジサイ、ひまわり、薬味のネギの花・・・・・この4種類しか知らない、アジサイは名前だけ知っている、そうか、桜に梅の花は見れば分かる。シンシアさんの持っている花束には僕の知っている花が入っていない。
「ミャ、メグ、ありがとう。お花を貰えるなんて、それもこんなに綺麗な花束は・・・・・・凄く高そうね」
「そうだ、花は何処で売っているんだ。僕は販売しているのを見た事が無いよ」
「それは秘密なの」
「そうなの秘密なの、約束したの」
「誰とよ」
「父さんには教えてくていいだろ」
「ダメなの約束は守らないといけないの、ねえ、お姉ちゃん」
「そうね、メグの言う通りよ、さあ、2個目のプレゼントよ、お母さん、おめでとう」
「お母さん早く開けてね」
「ありがとう、開けるわね、まあ、見た事のないお菓子ね・・・・・・メグ、先に食べていいかしら?」
「お母さんは後でもいいよ」
シンシアさんがお菓子を取る前にメグちゃんはお菓子を掴んで自分の席に座った。
「メグ、お母さんの誕生日なんだから先に食べて貰おうよ」
「そうだね、お母さん早く食べて」
「分かりました、ご飯前に食べるのは1個よ・・・・・・美味しい、中が柔らかいのね、サキの柔らかいパンとは違う食感よ、甘くてとても美味しいわ」
「そう・でしょ、おい・・・・・・しいよ」
「もう食べながら話さないでよ」
ハリーさんにはお菓子は渡されなかった、3人は幸せな表情をしてお菓子を食べているが、視線は僕に向いていた。
僕の番らしい、用意はしているけど、そんなに期待しないでほしい、失敗する可能性もあるので変に期待しないでほしい。
「シンシア、おめ」
みんなの視線を感じながら、お祝いの言葉を言って、シンシアさんに抱かれたジャンの耳に口を近づける。
「レイちゃん、ありがとう」
「ジャン、ママ~、ママ~」
ジャンの言葉を誘導するように話し掛ける、上手くいくかな。
「アウー、マーマ、ママ、ママ」
「ジャン、ニャ~≪よく言えた、偉いぞ≫」
「す・ごーい、ジャンがママと喋ったよ」
「凄いぞ、話したんだな」
「そうね、赤ちゃん言葉じゃない、初めての言葉だわ」
「レイ、ママて何の事なの?」
「そう言えばそうね、ママて何かしら、ハリー分かる?」
「僕が分かる筈が・・・・・・分かりません」
あれ~、僕は左右に頭を傾けて、何処が悪かったのか考えた。ママはこの世界では通じない? どこでも共通なのかと思っていた。
「ママ、ママ、ジャン、ママ」
「ジャンが自分の名前を言ったぞ」
「そうよ、ジャンのママはお母さんの事なの、レイ、そうでしょう」
「はいャン、ニャ~≪そうです、良くわかったね≫」
ジャンはママと言いながらシンシアさんに抱き付いた、これを見ればもしかしたらと思う筈だ・・・・・・・思って欲しい。
「私の事なのね。ママと言われると嬉しいわね」
「ママ、ママ」
「よく分からんが、お母さんとママは同じ事を指していると思っていいんだな・・・・・・僕は何て呼ばれるんだ、楽しみだな」
「お父さん、それはレイちゃん次第だよ、レイちゃんがジャンの横で話してそれを真似ているんだからね」
「今年の誕生日のプレゼントは特別なものが多くて嬉しいわね、花束にジャンがママと呼んでくれた、最高の誕生日よ、さあ、料理を食べましょう、今日はお肉が多めよ」
「ニャ~≪嬉しいな、串焼きだ・・・・・・お昼にも食べたけど、何回食べても嬉しいな≫」
「よし、いただきます」
「「いただきます」」
「ママ、ママ~」
「お肉でちゅね、この柔らかいのを食べましょうね、美味しいでちゅよ」
ジャンは母乳以外を食べ始めるようだ、離乳食だよね。
みんなは少しだけ豪華な夕食を食べ始めた、メグちゃんはお肉を食べているけど視線がシンシアさんにあげた美味しいお菓子の木箱に向いている、何か理由を付けて食べる事だろう。僕も串焼きを食べよう。
「ニャ~≪美味しいニャン、沢山食べて大きくなるぞ≫」




