ニャ~・・・34
「美味しいわね、ハム」
「美味しいね、ハム」
「高級だな、ハム」
「ハムのお代わり」
「私も」
アカリちゃん家族はハムの感想を言っているけど、ミヤちゃん達はお代わりのようだ。朝食を食べて来たのによく食べるな。
「アカリ、パン、めし」
「レイちゃん、パンが食べたいのね、柔らかいのが好きだったわね、待っててね、お父さんパン貰うね」
「ああ、特別に美味しいのを持って来いよ」
「は~い」
「レイちゃんは食通なのね、柔らかいパンは人気なのよ」
「ニャ~≪柔らかいのしか食べてないので食通ではないです、柔らかいパンはとても美味しいです≫」
パンを取りに行ってくれたアカリちゃんが帰って来た、そうだ、サンドイッチにして食べてみたいな。
「ミヤ、パン、折れ、パン、折れ」
ミヤちゃんにパンを切ってとお願いした。
「パンは折れないわよ」
どうやら伝わらいようだ、手で頬をゴシゴシしてどうすれば伝わるのかを考える。
「そのしぐさ可愛いな」
「ニャ~≪こうかな、これもあるよ、後、手を舐める仕草が人気があるよ≫」
「ミヤちゃん、小さい仔猫は他にいないのかな?」
「珍しいから、いないのかな」
「レイちゃんを探すのが大変だったとお父さんが言ってたよ」
「そうか、こんなに可愛いのに手に入らないのか」
「ええ~、お父さんは家では飼えないし、連れてくるなと言っていたじゃない」
「その、動物は大好きなんだ、でも食べ物を扱っているからな」
「ニャ~≪今はパンを切る事の方が大事だよ、そうだ、包丁を指して話せばいいんだ≫ミヤ、パン、折る、パン、折る」
「そうよ、レイちゃんはミヤちゃんに包丁でパンを切って欲しいのよ」
「なんだ、早く言ってよ」
僕の仕草で何とかパンを切って欲しいと伝わったぞ。
「レイ、この位?」
「ニャ~≪この位の厚さでお願いします≫」
「この位?」
「ニャ~≪この位≫」
「こんなに薄くするの?」
「はい、ニャ~≪お願いします≫」
ミヤちゃんがパンを切ってくれたぞ、もう一枚頼まないとサインドは作れない。
「ミヤ、パン、折る」
「もう一枚なのね、待ってね」
目の前のお皿にハムとパンが載せられた、後は挟むだけだ。
パンをお皿からどかして、ハムをパンに載せるのが大変で・・・・・・大きさはハムが小さいから簡単な筈で・・・・・・どうにか載せることが出来たので、パンを頑張って載せればサンドイッチになった。
空のお皿の横にあるサンドイッチを立って上から眺めると、僕の口の大きさでは食べれない事に今更気が付いた、それに、小さく切ってもサンドイッチの形で僕が食べる事が出来ない。一生、サンドイッチを食べる事が出来ないのが分かった。この小さい口には串焼きのお肉位までしか口に入れる事が出来ない。
「ニャ~≪サンドイッチは、諦めよう、スライスしたパンの角ぐらいしか僕の口に入らないよ≫」
「レイ、それ何しているの、食べないの?」
「ニャ~≪口に入らないから食べれないんだよ、ああ、食べてみたかった≫」
ハムだってあの大きさだと角しかかじれないよ、みじん切りにしてくれないと食べれないよ。
「ミヤちゃん、レイちゃんが頭を抱えて転がっているわよ」
「もう、ふざけていると、食べちゃうわよ」
「ニャ~≪どうぞ。口に入らないんだから代わりに食べていいよ≫」
「これ美味しい、パンとパンに挟んであるだけなのに」
「挟んだだけで美味しくなるか、そんな筈ないぞ」
「お姉ちゃん、私も食べたい」
「はい」
「それなら、パンを切ってみんなで食べましょう」
「そだね、私も食べたい」
「ニャ~≪口が大きくていいね、僕が食べれのはみじん切りだよ≫」
皆楽しそうだね、ふて寝してやる、厨房の隅を借りますよ。
「ニャンニャンニャン、ニャ~≪この家だ≫」
訪問マッサージを予約してくれた人の家前まで来る事が出来た、東門近くだよとミヤちゃんに言われていたので迷子になる事もなく、その家の前に着く事が出来た。ミヤちゃんの地図のお陰だ、お客さんには地図に印を予約用紙には何日後のどの位の時間がいいのか記入して貰っている、訪問ではない人は記入して後日マッサージを受けに来る。机の上の説明書きには他の人と同じ日の同じ時間帯は出来ない事が書いてある。僕達の部屋には誰かがいるようにしているけど、いない時もある。
僕の訪れた家の玄関から東門の詰め所が見える、ドアには目印の赤い布か結んである。
「トントン」
「ニャ~≪訪問マッサージのレイです、マッサージをしに来ました≫」
マッサージは楽しい、猫の手でも少しは効果があるようなので良かった。
「トントン」
「は~い、お待ちしてましたよ」
今日のお客さんはお婆さんのようだ、年齢は50代位かな。
「ニャ~≪よろしくお願いいします≫」
「レイちゃんね、楽しみだわ」
ミヤちゃんからは、言葉を話す事を禁止されている、珍しい仔猫なのに更に言葉を話すのは良くないと言われた。誤解や問題が発生しても困るので、なるべく話さないようにしようと思う、自分で誤解を解ける位に話せるようになっていれば別だけど。
僕のルール肆、四番目のルールが出来た・・・・・・人間との会話は親しい人だけ、後、話してもいいと思った人だけ。
話す猫の見世物小屋でも企む人に誘拐されない為だ。そんな人がいないと信じたいけど、新宿の神社のお祭りで首の長い女性の見世物小屋があった、あれは偽物だろうけど、言葉を話す猫は本当にいる。
お婆さんの手に持たれて家の中に入る、落ち着いた雰囲気の暖炉のある別荘のようだ、見た事ないけど、そんな感じだ。
「ニャ~《猫らしく鳴かないとね》」
「そういえば、話している事が分かると説明に書いてあったわね、本当かしら」
「ニャ~《キャロット母さんと勉強しました》」
「まあ、本当に話しているようだわ、嬉しわね。家の中で誰かと話すのは何年ぶりかしら、おじいさんが亡くなって、子供達も離れて暮らしているから家に来てくれる人がいないのよね」
「ニャ~《日本でも親に会いに来るのは若いうちなので仕方ないと聞いたことがあります》」
誰も来ないのは寂しいだろうな、遊びに来てくれる人がいなくても遊びに行けてればいいよな。
「優しい顔をしてくれるのね、大丈夫よ、遊びに行ける家はあるから、友達は気を使ってくれているのよね」
外から見た建物は2階建て、お婆さんは階段を上らないで通路の奥に歩いて行く、奥の部屋がお婆さんの寝室だった。
「洋服を脱いでうつ伏せに寝ればいいのよね、凄いわよね、仔猫がマッサージをしてくれるなんて、マッサージが出来る人がそんなにいないと昔聞いたけど、今でもマッサージを出来る人は少ないのかしら、ごめんなさいね、お願いします」
「ニャ~≪いつもの様にお尻に乗らせて貰います、基本の腰から肩に撫でるように優しく何回もします≫」
マッサージを僕に教えてくれる人はこの世界には居ないので、基本をしっかりとして、そこから少しだけ僕なりのやり方を入れていく、それでも基本からあまりそれないで基本の応用でマッサージをする。
「ニャ~≪少し力を入れます、痛かったら言って下さいね≫」
背骨の横の筋肉を優しく揉みほぐしていると寒気がした、これが身も毛もよだつなのかな。少し部屋の気温が下がって涼しく感じるよ。
≪おい、俺の女房に何している≫
あれ誰かの声がするな、でもマッサージの手は止めない、マッサージはリズムが大事なので手お止めるわけにはいかない、でも、視線を横にずらすと浮いている老人がいた。
≪俺の声が聞こえているんだろ、何をしているんだ≫
「ニャ~≪マッサージだよ、話し掛けないでよ、変に思われちゃうよ≫」
≪頭の中で話せばいいだろう、俺はそうしているぞ≫
そう言えば、イレーヌさんの時も僕だけ声を出していたな、相手に話し掛けるようにすればいいのかな試してみよう。
≪あなたはこの人の旦那さんですか?≫
≪そうだ、何回も行っているだろう≫
上手く行ったぞ、ええと、俺の女房に何していると聞かれたんだ。
≪体の疲れを取るマッサージです、この人がマッサージの予約をしてくれたので、今日は尋ねて来てマッサージをしてしているところです≫
≪それがマッサージなのか初めて見たな、そうか、疑って悪かったな≫
あんなに疑っていたのにすぐに信じてくれるんだな。
≪あの~、僕は猫なので、噛みついたり爪で引っかく事位しか出来ませんよ≫
≪猫なのか、こんなに小さい猫は見た事ないぞ≫
≪集中してマッサージをしたいので何処かに行って貰えませんか?≫
≪そうか、すまなかったな≫
悪い人では・・・・・・悪い幽霊ではなかったな。
テレビとかの心霊は悪い人ばかりが出てくるけど、恨みとかやり残した事とかで幽霊になると霊媒師の人が言うけど、もし幽霊が本当にいるのなら偶然だと思うけどな。
思い残した事で幽霊になれるのならもっと沢山の幽霊がいて目撃されていそうだけど、僕の周りで見た事がある人は誰もいなかった。見た人がいれば騒ぎになっていただろう。
あれ、何でまた見えたんだ、考えるのをよそう、頑張ってマッサージをしてこのお婆ちゃんの疲れを取ろう。
「マッサージは凄いのね、体が軽くなったようだわ。皆が受けたいと言っているのがよく分かったわ」
「ニャ~≪効果があって良かったです、人によっては同じ様にマッサージをしても効果がない人もいるので≫」
「首から下げていたお財布に料金を入れればいいのよね、お金を取って来るので待っていてね」
お婆さんは部屋から出て行った、リビングにお金を置いてあるのかな。僕が乗っているテーブルには来る時に首に掛けていたお財布の巾着が置いてある、マッサージが終わった後に入れて貰う事になっている。
≪おい、お願いがあるんだ、鍵がベッドの下にある、俺が死んだ時に落とした鍵だ。女房に渡そうとしたが渡す事が出来なかった、リビングにある私のキャベネットの鍵で、病気になった時に書い手紙が入っているんだが、恥ずかしくて最後まで渡せなかった。お願いだ、渡してくれ≫
≪ベッドの下にあるんだね、見つけられるといいんだけど、よく見えないな≫
「お待たせ、財布に入れるわね」
急いで探そう、時間がない。ベッドの下の何処だ・・・・・・何か金属が落ちているぞ、有った鍵だ。
口に咥えるのは難しいぞ、手で拾うのはもっと難しい、そうか拾わなくてもいい押していけ~。
ベッドの下から出ると、テーブルの近くにいるお婆さん方に押して行こう。押すだけなら簡単だ。
「あら、何処に行ったのかしら、あら、いたわね~、何を押しているの・・・・・・鍵よね、落ちていたのね、これはお爺さんの鍵だわ、ありがとう」
「ニャ~≪頼まれたんだよ、これで手紙が読めるよ≫」
「もう帰るのね、玄関まで送るわね」
お婆さんは僕の首にお財布をぶら下げてくれた。
「ニャ~≪ありがとう≫」
玄関でお婆さんにお辞儀をして家に戻る為に建物沿いを歩きだしたら。
「まあ、愛しているて書いてあるわ、結婚した時以来だわ、私も愛してますよ」
微かにお婆さんの声が聞こえた、手紙が読めたようだな。
≪愛していると書いた事を誰にも話さないでくれよ、ありがとう≫
お爺さんの声も微かに聞こえてきた、お礼より驚かさないでほしいよ、また鳥肌が立ってきたよ。




