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ニャンだふるワン  作者: 自由人書
29/521

ニャ~・・・29

「街が見えてきたね」


「帰って来たわ」


イレーヌさんに貰ったお金で、お菓子を食べる事は出来たけど、それで満足するミヤちゃん達ではなかった。近所の農家さんにモグラを捕まえる事をさせて下さいと頼んだ。ミヤちゃんは『2回目よ、だから目標は十匹』と言った。許可を貰った僕達はお昼を食べた後に始めて、2時間位で13匹も捕まえる事に成功した。街の市場に向かいモグラを売って、3人・・・・・・2人と僕は美味しい物を食べた。それから数日後にエネルさんがおじいさんの家に現れた。


「何事もなく街に着く事が出来た」


エネルさんは最初から頼まれていて、約30日後におじいさんの家に向かいに来てくれた。夜のうちに持って来た荷物を馬車に積んで、次の日の朝には出発した。


「ご苦労様、家の前までお願いしますね」


「勿論です、ハリーさんからも家の前に行き、荷物を運ぶのも手伝ってくれと頼まれてます」


アイシャさんに方角を教えて貰ったので、これから入る門が東門だと分かるようになった。


おじいさんの家は北の方角にある。山を大きく回り込んで東門から街に入る、僕が最初に来た時も東門だ。


「ニャ~《帰って来た、30日て長かったんだな》」


学生の夏休みは約40日、大学生はもっと長いと聞いた事あるけど、大学生がちゃんと勉強しているか分からないんだよね。それに、テレビのニュースで割り算の出来ない大学生がいるって放送していたけど、あれはヤラセだよね、まさか、割り算が出来ない人がいる筈ないよ、都市伝説だ。


「家が見えた」


「長い休暇が終わってしまったのね」


「お父さんは、帰って来ているのかな」


「僕が出発した時にはハリーさんは帰って来ていませんでした、その後に仕入れから戻って来てくれていればいいのですが」


ミヤちゃんのつぶやきにエネルさんは分かり易く説明してくれた。


ハリーさんの事だからのんびりと仕入れをして、そのうち帰って来るだろう。そんな予感がする。


「アカリ、ただいま」


「ミヤ、お帰り」


「アカリちゃん、ただいま」


「メグちゃん、お帰り」


外にいたアカリちゃんと会う事が出来たようだ、僕は馬車の中なので声しか聞けないけど元気なようだ。


「明日、お土産のお菓子持って行くね」


「わぁ~、楽しみ、明日ね~」


馬車用の坂道を進んでいるけど、後3回カーブをしないと家の前に着かない。馬車の道だとアカリちゃん家までの距離は、凄く有るんだな。


「家が見えたよ」


「もう少しね」


「ちゃんと止まるまで下りないで下さいよ」


「は~い」


「着いたのか、今夜お風呂は入れるのか?」


「お父さん、先ずは荷物を運んで、その後に夕食です。時間があれば沸かします」


「そうか、入れるのか、1年ぶりだな」


お風呂好きなライナーさんは一緒に馬車に乗って来た、馬車代が浮くのとお風呂に入りたいからだ。新鮮な野菜を持って来ると言っていたけど、一緒に来るとは思っていなかったシンシアさんはため息をついて『手伝って下さいよ』と言った。






「おお、浴槽の端まで手が届く」


「お姉ちゃん私も届く」


二人が並んでお風呂のお湯に浮いている、僕は浮けないので猫かきをして泳いでいる。


浴槽の端から端までどの位あるのか分からないけど、二人は手が届くようになった。おじいさんの家に行っている30日間の間に大きくなったのか、そんなことがあるのか・・・・・・あるんだろうな。


「ニャ~≪成長期か羨ましいな、僕はいまだに両手に乗れる位の身長しかないよ≫」


僕が生まれてから1年半が過ぎたけど、僕の身長はそんなに変わっていない。珍しい猫の僕の成長はもう止まっているのかな、少ししか猫の事を知らないけど、日本での知識では、猫の成長は生まれてから1年後位までらしい、ここでもその常識通りだと僕はもう身長が伸びない。


大きくなりたいと思ってはいなかったけど、僕にも成長期があった筈なのに大きくなっていない。


「レイは赤ちゃんの時と変わらないわね」


「小さくて可愛いよね」


やはりミヤちゃん達も小さいままだと思っているようだ。鉄棒にぶら下がる、牛乳を飲む、ベッドで誰かに足と手を引っ張って貰う、よく寝る、どれも伸びないらしい。どれも、都市伝説だな。


まあいいか、おそらく成長は止まったのだろう、キャロットお母さんよりも大きくなるぞと思っていたけど無理だった。


「おじいちゃんが入りたいと言っているわよ、レイちゃんはそのままでもいいわよ」


僕の体は小さいので長風呂は良くない、おじいさんと一緒に入るのもいいけど、のぼせちゃう、僕も出よう。


「は~い、直ぐに出る」


「お姉ちゃん、体を洗ってないよ」


「そうだった、急がねば」


ミヤちゃんは出る時に洗う派のようだ、僕は入る時に入る派だ。


「レイちゃん、拭いてあげる」


「ニャ~≪ありがとう≫」


「よし、洗い終わった、部屋に戻って寝よう」


そうかまた、間に挟まれて寝る日々だな、幸せの時間だ。


大きいベッドの大きい布団に潜り込む。


「メグ、ニャ~≪おやすみ≫」


「おやすみ、レイちゃん」


「レイ、疲れたからマッサージをしてよ、ねえ、レイ、寝たふりね」


「そうか、マッサージか、レイちゃん私もして欲しい」


「ニャ~≪分かりました、マッサージをします、うつ伏せになって下さい≫」


既にうつ伏せだった二人、先ずはミヤちゃんだ、直ぐに寝てくれるだろう、メグちゃんは早寝早起きが出来るので後の方がいい、マッサージをする時間が減る可能性がある。


「わあ、いいわね、レイちゃん、後で迎えに来るからね、マッサージの後はジャンと寝てね」


「ニャ~≪忙しい日常が戻って来たな、あそれ~、トントントン、トントントン≫」


頑張るぞ、最後のシンシアさんは・・・・・・待ちくたびれて寝てくれないかな。






「ニャ~≪ニャンパラン、ニャンパラリン、ニャンパラリン≫」


ふう~、温かくならないと出来ない練習を再開した、まだ少し水温は低いけど。イノシシから逃げて登った木から降りた時に落ちる速度が劇的に遅くなったのを実感した。


練習して上達しているのが分かれば、頑張りたくもなる。やるぞ~、お~。


そう言えば、おじいさんの家から帰って来てから10日位経つ、おじいさんは毎日お風呂に入っていたが、ハリーさんが帰って来た日の朝には寄合馬車に乗って帰って行った。何でも安全が確保できている街同士だと、バスの様な運賃を払うだけで次の街まで行ってくれるそうだ。朝出ると夕方には着くので、朝出発の寄合馬車が何台かあるそうだ。僕が隠れて乗ればとなり街までは行ける事が分かった。


帰って来たハリーさんは何を考えているのか、仕入れて来た夏物の洋服はいつもの1.5倍だったようだ。シンシアさんが『こんなに売るの』と言っていたけど『在庫が無くなる位売れるんだからいいだろ』と気楽に言っていた。休み明けのナタリーさん達は夏物の洋服を楽しそうに棚に出していた。


ジャンが起きている時間が多くなったので、ジャンよりも早く起きて、日課をする事にした。


「ニャ~≪楽しいな、体は大きくならないようだけど、体力と運動神経は成長している。前よりも速く走れるようになった≫」


泳いで陸に上がれる場所に向かっていると堤防の先から大きい船がこちらに来るのが見えた。小さい僕から堤防越しに見えるんだから相当大きい。人が沢山乗っているのかここからでも人影が見える。甲板だよな・・・・・・僕の方を向いている人が手を振ている。


「ニャ~≪港には僕しかいないのに手を振っている、もしや、これがドラマとかで見た上陸の瞬間の旅行客が喜んでいるシーン・・・・・・いや、別れのシーンしか見たこと事がないな≪元気で、また来て、手紙書く≫まあそんな事を言ってお別れするんだ≫」


海から上がった僕は階段を駆け足で上る。もう一度船を見るとやっぱり手を振っていた、誰も振ってあげないと可愛そうなので僕が振ってあげよう。


「ニャンニャンニャン、ニャンニャンニャン、ニャンニャンニャン・・・・・ニャ~≪楽しいけど、小さい僕が手を振っても見えないだろな≫」


「レイちゃん~、私だ、分かるか」


あれ・・・・・・手振っている人の中に僕を知っている人がいるのか? 僕からは皆の顔が見えるけど船の上の人達から僕が見える筈がないよね。


「レイちゃん、後ろにいるんだけど」


「ニャ~≪後ろか、誰だ?≫」


まあそうだよね、船から僕よ呼ぶ声が聞こえる筈がないよね。


振り返ると、お金持ちのお財布さんが立っていた。名前を聞いた覚えもないし名前を呼ぶ事もないのでお財布さんでいいだろう。


思い出したのでお辞儀をして手を出す、すると、財布さんもお辞儀て手お出して、握手をしてくれた。僕の手が持たれたとも言うけれど、握手だ。


「覚えていてくれたか、その節はありがとう。お財布を落とさないようにしているよ」


「ニャ~≪そうだね、大金の入った財布なんだから落とさないようにしないとね≫」


それに、落とし主を探すのは大変なんだぞ、人間と違って重たい物は持てないし、僕は顔を上げて歩けなかったんだから、もう落とさないでよ。何回も頷いてそうだと肯定した。


「港で会うとは奇遇だな、今から来る船は私の船なんだ、人も荷物も沢山運べる、凄いだろう」


「ニャ~≪あの船がお財布さんの船なの、凄いお金持ちなんだ、どおりで重たい財布の筈だよ≫」


ここで見ていても仕方ないな、お財布さんはこれから仕事なんだろう、僕も朝の練習が終わった、発声練習は先にしていたので、帰って塩の効いたイノシシ肉でも食べるかな。


「ニャ~≪お財布さん、さようなら≫」


「おお、行くのか、さようなら」


お財布さんは当たり前のように僕と会話していたけど変だと思わなかったのかな、動物好きの人はやっぱり動物に話し掛けるのが好きなのかな。


僕はいつか猫猫団を結成して・・・・ミヤちゃん達が許してくれたら船の旅をしてみたいな、面白いだろうな。





「いや、夏服がよく売れるな、沢山仕入れて良かったよ」


「そうですね、ご来店のお客様も前より多くなりましたよね」


「午前中は暇ですけど、お昼過ぎぐらいからお客様が来るようになりました、ジェシカさんが疲れるぐらいに」


「そうなですよ、忙しくて疲れるなんて今まで体験した事がなかったです」


「今までお客さんの少ないお店でごめんよ、僕も頑張っているんだよ」


嬉しい話から今までの暇な時の話になってしまった。シンシアさんはお店にいないけど、ジャンはベッドで寝ている。


「ハリーさん、シンシアいます?」


ちょうどお客さんが切れた時にカウンターに集まって話していたら、サキさんが入って来た。


今日も素敵な金髪で洋服の上にエプロンをしている。


「2階にいると思いますよ、台所かな」


「そうですか、お邪魔します」


サキさんは何か慌てているようだ、倉庫から2階に行くようだ。






「レイちゃん、どこにいますか?」


あれ、サキさんの声だ、少し前にシンシアさんを探していた筈でだけど、僕に何の用なんだ。


「レイちゃんならカウンターの下で寝ていましたよ」


「レイちゃん、お願いよ招き猫をして下さい、お客が来ないのよ、売り上げが落ちているのよ」


薄目を開けて声の主のサキさんを見ると、とても切羽詰った顔をしている。


「サキ、レイちゃんはいたの?」


「いたわ、今頼んでいたところよ」


「ニャ~≪招き猫、売り上げ・・・・・・サキさんのパン屋さんが売れないパン屋さんになったのどうして、ミヤちゃんがパンを買い占めしているのに≫」


あれ、ジェシカさん達の話は終わったのかな、聞ていても仕方ないから寝ちゃったんだな。


ついに会得した自分の体温で幸せの睡眠、穴の無いドーナツの様に寝れば可愛い猫の出来上がり。もう少し身長があれば穴のあるドーナツだ。


「レイちゃん、サキの店の緊急事態よ。このお店の様に売り上げをあげるまで帰って来なくてていいわ、頑張るのよ」


「ニャ~≪何でそうなるの、招き猫をしてもそんなにお客さんは増えないよ≫」


「その嫌そうな顔は何、何かいい作戦があるでしょう、よく考えるのそして実行する、そうすればパンが売れる、30日も私達がいなかったから迷惑をかけたのよ・・・家を空けると言って行くのを忘れたのよ」


「シンシア、それも大きい問題だったけど、本当にお客が少なくなったのよ、柔らかいパンも売れなくなってしまったのよ」


シンシアさん達が僕にお願いしている時に、向こうの方で悲しそうな表情をしているハリーさんがいた、お店の売り上げが増えたのとお客さんが増えたのが僕のお陰だと話したシンシアさんの言葉に経営者として駄目だと言われている気になっているのかな。


招き猫と季節前から売り始めているだけで、特に凄い事はしていない。出来ればバーゲンセールがあると売り残しの洋服がなくなるけど、流行があまりない世界みたいなので、急いで在庫を減らす必要はない。


「ニャ~≪協力したいのですが、猫だけに飲食店に入るわけにいかないので今回はパスでいいですか?≫」


「レイ、アカリのお店が緊急事態よ手伝うわよ」


「レイちゃん、よろしく」


「今度はどんな事をするのレイちゃん?」


どこかから現れたミヤちゃん達、みんなもパンの売り上げに貢献したいんだね、でも、メグちゃんの口の周りに付いているお菓子はとても深刻そうな、この場の雰囲気に合わないよ。


「ニャ~≪招き猫を頑張ります、明日からよろしくね願いします≫」


皆に頼まれたので、やるしかないな、でも、どうすればいいのかな。


「サキ、レイちゃんがやる気になったわよ」


「そうなの、ありがとう、これで安心ね」


「そうね、お茶でも飲んで行く?」


「問題も解決しそうだし、ごちそうになって、行くかな」


「私達も飲む~」


安心するのが早い皆は2階に向かった、ジェシカさん達も仕事の終わる時間なのでみんなに付いて行った。


「どうして僕に聞いてくれないんだ、いい作戦が浮かぶかもしれないのに、ジャンお前は困った事があったら一番に相談してくれよ、父さん頑張るから」


「ニャ~≪取り合えず、ジャンを連れて来てね、僕は抱っこできないので≫」


僕がお店を出て行く時もハリーさんはジャンに話し掛けていた。


「ほら、言ってごらん・・・・・・・・・・・」

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