ニャ~・・・25
「赤ちゃんを見せに遊びに来てくれたのね」
「そうよ、ハリーが皆に見せに行こうと言ってくれたのよ」
シンシアさんの実家は大きかった、入口から入ると暖炉のある広いリビング、暖炉の前にリビング用のソファとテーブルがあるけれど、テーブルが楕円形なのでソファも楕円形だ。ここまでは普通の事だけど、テーブルもソファも凄く大きい、何人座れるのか分からない。皆がバラバラに座っているので、詰めて座れば14人以上座れそうだ。
「お姉ちゃんの子供を紹介してよ」
「そうね、メグとジャンよ、ミヤには会っているでしょう」
「メグちゃんか、初めまして、お母さんの妹のアイシャよ」
馬車で1日しか掛からないのに初めて会うのか。
「初めまして、メグです」
「ベッドで寝ているのが、ジャンなのね。いつ産まれたの?」
「春よ、30日位経ったかな」
体が痛いよ、猫にも筋肉痛があるんだな、何時間位走ったのかな。
「さあ、お茶が入ったわよ。ミヤちゃん、皆の前に置いてね」
「は~い」
ミヤちゃんはお手伝いをしていたようだ、お婆ちゃんと呼んでいいのかな、凄く若いんだけど。言われた通りに皆の前にお茶を配っているミャちゃん、とても新鮮だ。
「ジャンちゃんはいつ産まれたの?」
「30日位経っと思う」
「そうなの、あまり赤ちゃんに無茶させないでよ」
「しょうがないでしょう、お母さん達に見せる為に来たんだから」
「それは嬉しいわね。ライナーは野菜を持って出かけるけど、私は留守番なのよね」
シンシアさんのお母さんはイレーヌさんでどう見てもお婆ちゃんに見えない、ここにいる全員が年の離れた姉妹で通るだろう。
「姉さん達いつまで居るの?」
「30日位の予定よ」
「まあ、そんなに、だからハリーさんはあんなにお土産を買って来てくれてのね」
「レイ、眠いの?」
「ニャ~≪走り過ぎました、疲れたのでもう駄目です、おやすみ≫」
「その子がレイちゃん、ライナーが小さい仔猫を飼っていると言っていたわね」
「ええ~、猫だったの、モグラだと思った。こんなに小さい猫がいるんだ」
「レイちゃんは優しくていい子なんだよ」
「間違って仕留めなくて良かったわね」
何か聞こえているけど、疲れたのでもう駄目です、ジャンのベッドで寝るのは危険なのでここで寝ます。丸くなって寝ると暖かいな、起きたら筋肉痛が治っているといいな・・・・・。
「レイ、そっちに行ったわよ」
「ニャ~≪了解、居たぞ、待て待て≫」
大きな穴から頭を出したところを横から激突だ。
「レイちゃん、大丈夫?」
「メグ、レイはいいからモグラを捕まえて」
「は~い、捕まえたよ」
モグラは捕まったの、ああ、頭が痛いよ。
「これで3匹目ね」
「ミヤ、ミヤ」
僕は頭を擦りながら、休憩をしたいとミヤに訴えた。
「もう疲れたの、まだ3匹目よ」
「お姉ちゃん、私も疲れた」
「仕方ないわね、休憩ね」
シンシアさんの実家に来てから、何日か過ぎた。カレンダーがないんだから仕方ない、猫は何日経ったのか数えないのだ。
僕が寝ている間に解体の終わった男性陣を交えて夕食を食べたようだ、僕は走り過ぎて食い気よりも寝る方が大事だった。
次の日は筋肉痛だったので、ご飯を食べた後はジャンの布団に潜り込んだ。ジャンをくすぐったり、話し掛けたりして、ジャンと遊んだ。ジャンはご機嫌で泣く事がなかった。
リードさん達は荷物を降ろしてその日は泊ったけど、朝には出発した。
「メグ~」
「レイちゃん、撫で撫でしようね」
メグちゃんに抱かれて頭を撫でて貰う、顔には手が届くけど頭のてっぺんには手が届かないので自分で出来ない、ミヤちゃんはメグちゃんが捕まえたモグラを麻袋に入れている。
「メグ、今度はメグが探す番だよ」
「休憩が終わったら、探す」
「レイ、痛いのね。もう少しだけ頑張ってね、目標は5匹よ。そうすれば美味しいお菓子が食べれるわ」
「そうだうよ、美味しいお菓子が食べれるんだよ」
メグちゃんはお菓子の世界に旅だったようだ、僕を見ていた目には僕が映っていないだろう。既に僕の頭を撫でていた手が止まっている。
「おじいちゃん達も喜ぶよ、モグラに穴を沢山あけられて困っていたんだから」
「ニャ~≪そうだな、これも人助け、少し位は痛いのは我慢しよう、毎日お湯を沸かしてくれるんだから≫」
おじいさんは風呂好きだ、でも、汗を流すのに布で拭いたり、水浴びで我慢している。おじいさんは僕が風呂好きな事を知って・・・・・・まあ、少ないお湯でいいので、僕とジャン用にお湯を沸かしてくれる。
そんなおじいさんの為に僕はモグラを捕まえる事を頑張っている。
畑にモグラが出るので作物が育たなかったり、土が悪くなると言っていた。ミミズが食事をすると土の中に糞をする、その糞が作物が育つ為に必要の栄養になっている。
モグラを捕まえるのはとても大変で人にお願いしても捕まらないそうだ。罠を仕掛けても捕まらないらしい。モグラは育てた作物は食べない様なので、ミミズを食べ、地中に穴を掘るので根が傷つけられて枯れてしまう。だからモグラを捕まえるのだ。
「だいぶ休んだね。レイちゃん、探すから直ぐに捕まえてね」
「ニャ~≪僕は穴から出てきた時に頭突きをしているだけなので。ミヤちゃんが捕まえる役目だよ≫」
「やる気になったのね、直ぐに捕まえるわよ」
みんなにやる気だ、二人はお菓子の為、僕はおしいさんの為だ。
「レイ、美味しい?」
「ニャ~≪美味しいニャン、串焼きは美味しいニャン≫」
「お菓子も美味しいよ、レイちゃんも食べる?」
冷めていても美味しい串焼きを食べながら、メグちゃんを見て頭を振った、これで要らないと伝わる。
「レイは甘い物を食べないわね、美味しいのに」
「美味しいのに」
「ニャ~≪いいんだよ、猫は甘い物は食べないんだよ、それよりも串焼きの塩がとても美味しいよ≫」
「お姉ちゃん、シードル飲む?」
「残りはメグが飲んで」
「は~い」
シードルは子供が飲んでもいいようにアルコール度数が低いようだ、水は飲んではいけないようで、子供でも薄いお酒を水代わりに飲んでいる。ミヤちゃん達もアルコールを低くした果物の果樹酒を飲んでいる、勿論甘い飲み物だ。
ミヤちゃんとメグちゃんは連日遊び歩いていて、街で美味しそうなお菓子を発見したらし、それとモグラを買い取ってくれる・・・・売って欲しいお肉屋さんも発見した。動物の肉なら何でも買い取ってくれそうだ。猫と犬はペットで飼っている人がいるので買い取りが禁止だと言っていた。良かったよ。
「ドロボー、僕の財布を返せ~」
物騒な世の中になったな、ドロボーはお財布を持って・・・・・・逃走中だな。
僕からだと上の方は見えないけど、地面に近い所はよく見える。市場の方からこちらの方に走って来るのは人がいる二人だ、前の人がドロボーならから後ろの人が被害者かな。
「お姉ちゃん、ドロボーだって」
「人の物を取るなんていけない事なのに、よし、助けてあげよう」
「どうするの?」
「ドロボー」
池袋とかで≪ドロボー、その人捕まえて~≫と叫んでいたら、通行人は協力してくれるのかな、あんなに人がいるんだから助けてくれ・・・・・あれ、ミヤちゃんに掴まれたよ。
「とりゃ~、レイ、お願いね」
「ミヤ、ニャ~≪投げる前に言ってよ、でも、犯人らしき人の方に飛んでるな、あたり前か≫」
どうすればいいんだ・・・・・・何かで見た、あれをすればいいんだな。体を広げて顔が目の前にあれば、がしっと掴めば前が見えないだろう。
「何だ、前が見えないぞ、痛い放せ、痛い」
「僕の財布を返せ」
「うるせい、俺は取ってないぞ」
「これは僕のだ」
もういいみたいだ、財布が戻って来て良かったな。
「ごちそうさまです」
「ありがとう」
「いいんだよ、財布のお礼だ」
「取った人、逃げちゃたね」
「まあいいさ、財布が返って来れば」
髪は金髪で年齢はニルスさん位かな、ニルスさんの年齢は知らないけど、アイシャさんが19歳だからそれよりも下だな。皮の防具? みたいな装備? 洋服? 洋服の上に着ているんだから防具でいいのかな、あと、剣が腰に差さっている。
冒険者ふうの人はよく見かけるけど、街の中で会うだけなので、どんな事しているのか少し興味があるな。猫に転生したけど人間なら冒険をしてみたかった、悪い何かと戦ったり、仲間と旅をしながら楽しんだり・・・まあ、猫なのでのんびりと過ごす方がいいな。
「美味しかった、ありがとうございます、私達、家に帰るので失礼します」
「そうか、ありがとう、気を付けて帰るんだよ」
「ふふ、お兄さんが気を付けないと駄目だよ」
「ああ、そうか」
金髪のお兄さんは苦笑いをして手を振った。
僕はミヤちゃんの首に巻かれている状態で手を振った。
「じゃね~」
おじいさんの家は街から30分位にある農家、街には城壁があった、中に入るのは自由だけど門番さんに街に来た目的等を聞かれた。
街の大きさは分からない、僕が小さすぎるのとミヤちゃん達の行動範囲が市場限定なのでそれ以外の場所には行かなかった。
美味しい串焼きが売っているだけで嬉しい、自分で買い物は出来ないけどミヤちゃん達が買ってくれるので、また来たいな。
「レイちゃん、アイシャと行ってみようね」
ソファに座ったアイシャさんに両手で掴まれて名前を呼ぶように言われている僕。
「アシャ、アシャ」
「違うでしょう、≪イ≫が抜けているのよ」
「レイちゃん頑張れ」
あれ、僕の名前に≪イ≫が付いているな、最初に自分の名前を練習すれば、自己紹介が出来たし≪イ≫が言えるようになっていたんだな。
今は≪イ≫の発音を練習するのが大事なのか、よしやってみよう。
「レイちゃんこうやってやるのよ、さあ、≪イ≫て言ってみて」
何処から現れたのか、アイシャさんに両手でホールドされている僕の口を横に広げで≪イ≫を言ってとシンシアさんに言われた。
「イー、イー」
「やれば出来るじゃない、良かったわね、アイシャ」
満足したシンシアさんは2階に上がっていった。
「おお、お母さん、す・ご~い」
「さあ、言ってみようね」
凄く期待している、アイシャさんの視線が怖い。
「アイシャ、アイシャ」
「遂に言ってくれたわね」
「レイちゃん、私の名前は?」
「メグ」
「おお、それいい。私の名前は?」
「アイシャ」
「よし、言えるようになったわね。スッキリした」
満足したアイシャさんは外に出て行った。
「よく頑張ったね、次は誰の名前を呼ぶのかな」
期待されているので、暇な時に練習をしよう。
「こんにちは、ニルスいますか?」
ソファで寝ていると誰か来た。
「ミヤ、ミヤ」
僕の横で寝ているミヤちゃんの頬を撫でる、起きる様子もないのはいつもの事なので、猫の得意技の飼い主のお腹で寝るを実行した。
「ニャ~≪温かくて気持ちいな、今度からお腹で寝る様にするかな、温かいのは幸せだ≫」
ミヤちゃんは起きない様だな、仕方ないよね、気持ちいいもん・・・・・
「まさか君達が、ニルスの家族だとはね」
「そうだね、凄い偶然」
「財布は大丈夫?」
「ああ、もう取られないように服の内側に結わいてあるよ」
「財布を取れれるなんて間抜けだな」
「もう取られない、それでいいんだ」
話し声が聞こえるな、いつの間に寝たんだ・・・・・・そうか、お客さんが来たのに寝ちゃったのか。
ミヤちゃんの足の上に抱かれていたようだ、お客さんを見る為にテーブルに手を掛けて前を見ると、ニルスさんの横に男性が座っていた。
見た事ある人だな、あ、財布の人だ、2人は知り合いなんだな。
「それで何しに来たんだ?」
「剣の稽古さ、たまにはいいだろ。それに何かある時の為に鍛えとかないと駄目だろ」
「そうだな、近頃は魔物も出ないけど、街から離れれば遭遇するだろう、よし、稽古をするか」
魔物? たまに会話に出て来るけどまだ見た事がないんだよね・・・・・・見る事が出来たら僕はここにいないかもしれないな。
「剣の稽古、見ててもいい?」
「ああ、いいさ、ウインが恥ずかしくなければな」
「何、俺だって日々鍛えているんだ、いつもの様には行かないぞ」
「そうか、お手並み拝見だな」
剣の稽古か、猫の僕には出来ないのでここで寝ていよう。
「どうだ、参ったか?」
「まだまだ」
稽古の最初は凄かった、最高の剣士同士の力が均衡しているような雰囲気が漂っていた。僕は二人が対峙してどうなるのかとドキドキして待っていた、最後のシーンの様になるのかと思っていたけど違った。
2人は間合いを詰めて一撃の攻撃をしたけど、横から見ていた僕の目には木刀が全然届いていないのが分かった。
真剣だともっと長いのかもしれないけど、長さが違うだけで、相手に届かない攻撃をするものなのか、運動はそこそこで、剣道とかの経験もない僕は、二人の最初の攻撃が何だったのか分からない。
その後も動きがちぐはぐで、プロ野球の選手が自分のホームを身に付けているのとは違って、基本の知らない初心者みたいだ。
ニルスさんの方が少しはまともに見える。
「とう~」
「や~」
ミヤちゃんとメグちゃんも稽古を見ているけど、飽きてきているのか、最初の頃より真剣に見ていない。
「お姉ちゃん、イノシシを倒せたのは偶然なのかな」
「そうね、レイが疲れさせていたので倒せんだね」
「そこの2人痛い・・・ウイン、ちょっと待てあの2人と話してくる」
「ああ?」
どうやらこちらにニルスさんが来るようだ。
「ミヤちゃん達、聞こえていたよ、イノシシを倒せたのは実力だからね、疲れてなくても倒せるからね」
「そうなの?」
「そうさ、その話は後でしよう。先ずは稽古だ」
話が聞こえていたんだな、抗議する為にここに来たのか。まだまだな、稽古なら集中していて話し声が聞こえない、気にならないが普通だろうに、ミヤちゃん達の方が集中力があるな。
「どうだ、少しは強くなっただろう」
「畑仕事ばかりしているのに強くなるか」
「体力作りになるんだよ」
「俺だって素振りを毎日200回もしているんだぞ」
次元がどんどん低くなってきてるぞ、2人は何を目指しているんだ。
「つまらないね、どうするメグ?」
「ジャンの所に行こうよ、つまらない」
「ニャ~≪ジャンの所は危険だ、僕が≫」
「レイも行きたいのね」
ここにいるよりはいいけど、捕まると放してくれないんだよ。
「降参しろ」
「お前こそ」




