にゃ~・・・219
「レイちゃん、レイちゃんを見ていてね」
「ニャ~≪お客さんが来たからね≫」
この世界はある年齢を過ぎるとお手伝い等の仕事をしている、4歳の子供でも『誰か来たよ』と大声を出して両親に知らせる。両親が共働きは当たり前で、抱っこ紐で仕事をしている人もたまに見かけるけど、店内にベッドかバスケットを置いて働いている。
我が家だけはおもちゃの家が在るので違うけど、ここダグラスの洋服屋さんにはベビーベッドが置かれている。あやしたり、おしめを取り換える事を考えたら、バスケットよりベビーベッドの方が良い。
ミラさんに頼まれなくてもレイちゃんは見てあげよう、人間の僕だからね、名前だけ。
今日もお利口さんのレイちゃん、今は静かに寝ている。僕の事を認識できているのか、近付くと撫でたりつかんだりする。胸のところに行くと抱っこをするようになってきた。
「ニャ~≪撫でられるのは、僕も赤ちゃんも気持ちいいんだよね≫」
「これはどうですか?」
「色が今一かな、青色はありませんか?」
「大きさはこれでいいのでしょうか?」
「はい、丁度いい感じです」
「では、この大きさの青色の洋服を探してきます、お待ち下さい」
「お願いします」
ご購入予定で最後は色の確認だな。
ミラさんが倉庫に洋服を探しに行った。ダグラスさんの倉庫は我が家より狭いけど、在庫は多いんだよね。買い付けには誰が行くかは決まってないそうで、エレナさんよミラさんが一緒に行ったり、ランドンさんが1人で行ったりしているそうだ。
この街からだとシーラスよりも日数は掛らないそうだ。ダグラスさん達はシーラスでも洋服を販売していたんだからもう慣れたものだな。
ただ、王都に行くにも危険らしいので大変だ。
「ありがとうございました」
エレナさんの接客が終わった。
ダグラスさんとランドンさんは夏に向けて倉庫の整理をしている。季節毎の倉庫整理が面倒だと言っていたな。
その倉庫の片隅に僕の大好きなお風呂がある。お湯を入れる仕掛けは、壁の近くにあるハンドルの付いた円の鉄を回すとお湯が注がれる。
僕のお願いを聴いてくれて、2日に1回はお風呂に入れる。毎日、入りたいのだけど・・・・・・7日に1回だったので、毎日入りたいとは言い出し辛かったな。
そうだ、お風呂に入る習慣はいつからか聞いたら、北の大陸に住んでいた子供の時の習慣で、そこでは普通にお風呂に入っていたそうだ。シーラスに来た時にはお風呂が何処にも無いので驚いたそうだ。
この頃ミヤちゃん達とお風呂に入ってないな、レイちゃんとランドンさんと一緒に入っているからな。お風呂から出るとランドンさんが拭いてくれるんだけど丁寧じゃないんだよね。
「ニャ~≪大洪水だ、エレナさん、お願いします≫」
「あらあら、すぐに拭こうね。レイちゃんは降りてね」
「ニャンニャン」
そうだ、降りたついでに干し肉を食べに行こう。
「レイ、聞いてよ。お菓子が高いのよ、それにお菓子屋さんの数が少ないんだよ」
「レイちゃん、聞いてよ。お菓子を売っている量が少ないんだよ、それに甘味が少ないんだよ」
お昼を食べた僕が寝ているとミヤちゃん達が来た。
「材料が高いニャンね、砂糖の輸送が大変ニャン」
誰もいないベビーベッドは快適だな、上からこの街の文句を聞かされなければもっといいんだけどね。
「学校を見付けたのよ。明日から通うからね」
「そうなのだ、覗いてみたら剣の練習をしていたんだよ、街の中で練習できないから、お姉ちゃんと通う事にしたんだよ。レイちゃんも来る?」
学校か、もしかしたら、この街の学校の方が冒険者向きの授業がありそうだな。西の大森林には凶暴な生物が多く生息している、でも、僕が受けて役に立ちそうなのはないだろうな。
「行かないニャン、城壁で朝練ニャン」
「レイは城壁の朝練か、分かった、2人で学校に行くね」
「レイちゃん、遊びに来てもいいからね」
「はいニャン」
2人は僕に学校に行く事を報告しに来たんだな。ミヤちゃん達が階段を上がっていく、部屋に向かったのか。
お菓子ツアーが上手く行かないのか、こんな事もあるんだな。
流通が上手く行っていないんだな、凶暴な生物がいると行商の人も大変だな。
そうだ、またまた冒険ギルドに行ってみよう、手紙の事で確認したい事がまた出来たんだ。
「見た事あるぞ、王都にいた犬じゃないのか」
「ニャ~《それは犬の鳴き声が得意な猫の事だね》」
「何言っているかしらね、どう見ても猫でしょうが、このふかふかは犬ではありません」
「手続きまだですか?」
「もう少しです、待ってね」
ここのギルドは冒険者が沢山来るんだな。
何でガラス越しの作りにしたのかな、冒険者が暴れる事もなさそうなのに。それとも、向こうのテーブルで飲み会でもする人がいるのかな。
「ほら、ギルドカードと報酬だ、気を付けろよ」
「どうも」
受付が2個あるので、ギルマスとラナスタさんは間が空いているけど隣に座って仕事をしている。
「もう少しこっちに置いてくれ撫でられない」
僕は中の受付の台のラナスタさん寄りで寛いでいる、昔見たタバコ屋さんのガラスの後ろに居る感じだ、ギルド内からも僕が見える。
今日も怪我人が多い冒険者ギルド、西の大森林で頑張って戦闘しているんだな。
薬が高騰しているそうで、ギルドで販売している薬が売れない。もしかして、高騰をしているけど、薬の在庫も少ないのかも。
「部屋で撫でていたじゃないですか、はいどうぞ、説明はした方がいいですか?」
「大丈夫です、行ってきます」
「気を付けて下さいね、無茶は駄目よ」
「ありがとう」
「ギルマス、冒険者が待ってますよ」
「次の人」
撫でるのに忙しいのか、冒険者の手続きが忙しいのかどちらだ。
「触らして下さい」
「駄目です、手を入れたら叩くからね」
「ちぇ、触りたいのにな」
向こう側の冒険者が残念そうな顔をして受付から離れて行った。
「レイちゃん、休憩に行こう」
「ニャ~《ギルマスの方が働かされているな》」
「おい、俺に用が合って来たんだから、変わってくれよ」
「ええ~、お昼食べたいのに」
「俺も食べてないよ」
「先に食べてきます」
ギルマスの方が立場が弱いのは昨日と同じだ、もしかして毎日なんだろうな。
「・・・・・・出すのは無料だが、それはギルドまでだ。取りに来て貰わないと駄目なんだ」
ギルマスよりも先にお昼を食べに行ったラナスタさんに串焼きをご馳走して貰った。
僕が食べた量を見ていたラナスタさんに、全然食べないのねと言われた。小食なんだな僕は。
『凄く可愛い、手に持って食べるんだ。ほら、もっと食べてね、凄い、大きい猫の食べ方より可愛い』
お肉はオーク肉だったけど、とても美味しかった、この時僕は思ったのだ偏見は良くないと。この街には色々な魔物のお肉が串焼きになっている、お店のおじさんは何でも美味しいんだぞと僕に教えてくれた。ラナスタさんの期待には応えられなかったけど、おじさんの話には頷いていた。僕が話しているを聞こうとしていた。
人の少ない場所なら話すけど、何処でも話すわけではないのだ。
オーク肉のお肉を食べている時に本来の目的を思い出した。手紙に関する全ての事を確認する為にギルマスの処にも来たんだと。
「僕の家に手紙を出したら、どうなるニャン?」
「手紙を送るのは無料だが、受け取りに来て貰わないと相手に手紙が届かない」
これが特Sランクの基本のサービス、他に聞きたいのは受取人が違う場合だ。
「シーラスの領主のソードさんに出したら、どうなるニャン?」
僕の前でパンと干し肉をかじるギルマスの答えを待っている僕は思う・・・・・・ギルマスなのにパンと干し肉がお昼で可哀そうだと。ラナスタさんが言っていた、毎日同じ物を食べていると。
「知り合いだったんだよな、当然、無料でお届けする。受取人が領主様だ、ギルドとしては上司に持って行くのが当たり前だ」
そうなんだ、ソードさんだと配達もしてくれるんだな。なら、違う人も聞いてみよう。
「お城のお菓子の料理長だったら、どうなるニャン?」
どうだ、これは予想できないニャンね。無料ならエレノアさんに手紙が出せる。
「お城の料理長か。手紙は・・・・・・届けないと駄目だな。微妙だが、お城だからな」
いつでもエレノアさんに手紙が届くのが決定しました。出すだけでも喜びそうだからね。
次は当然お届けしてくれるだろうな。
「お城の王宮魔法師のサラディンさんには出したら、どうなるニャン?」
「その語尾を力強く言うのはどうしてなんだ?」
威圧的に言っておけば僕に有利に事が運ぶと思ってしまった。干し肉よりも串焼きを食べている僕の方が食生活では上・・・・・・あ、いつもは干し肉だ、僕にはパンが付いてない、でも、スープが付いている、野菜が多めの。この街なら野菜が少なめだ。
「どうなるニャン?」
「まあいいか、当然届けるよ。何か伝えないといけない事だと判断するからな」
なるほど、伝えないといけない事があるんだよな。
「最後ニャン、国王様に手紙を出したら、どうなるニャン?」
「勿論届けるさ、だが、その前に手紙に危険がないか調べるだろうから、読んで貰えるようになるのには何か手順があると思う。もしかしたら、読んで貰うには数日掛かるかも」
危険物か・・・・・・手紙の自然発火とかか、それとも呪いの手紙、爆発はしないだろうな、後はカッターの刃だけど封筒がないから忍ばせる事が出来ない、手紙に留める事も出来ない。
ギルマスが教えてくれた事を総合すると、僕の出した手紙なら殆どの人に届く事が分かった。
そうだ忘れてはいけない事があった、そうだよ、手紙の紙とインクのお金は誰が出すんだ? それが無料だととても嬉しいんだけどな。
「ギルマスさんニャン」
「ギルマスでいいぞ」
お願いするのに『さん』無しはどうなんだろうな。ギルマス、この呼び方は社長に『さん』を付けるのが間違いと一緒なのかも。
「ギルマス、手紙の紙とインクは無料ニャンか?」
なんかいいぞ、冒険者がギルドに来てギルドマスターと仲良くなった感じだ。猫冒険者の僕も冒険者らしくなってきたな。
「・・・・・・どうなんだ、ちょっと待ってくれ、聞いてくる」
ギルマスなのに知らないのか、特Sランクは僕だけ? Aランクは沢山いそうだな。
何回もギルドに来ているけど、手紙を出す人と受け取る人を見た事がないな。
やはり、一般市民には手紙は高額なんだな、急な要件でもすぐに着かないからな・・・・・・危険だけど隣街なら自分で行くな。
元々、遠い人限定だ、利用する人達はお金持ちだ。ソードさんが国王様と連絡を取っていた、ギルドを通さないで屋敷の人が行きそう。尚更限定的なシステムだよね。
「分かったぞ、有料だった。知らなかったな、それでレイちゃんは手紙を出したいのか?」
有料なのか、インクはギルドで書けば無料そうだけど、紙は絶対に有料だろうな。
ランディさんにお手紙を出したかったんだよな、あとお城のサラディンさんに何種類もある魔法を伝えるのを忘れてたんだよ、ラガルトさんの足を治すのに専念していたから、僕の知っている魔法と後から知った魔法の呪文と効果を話して来なかったんだよね。
会う機会もそんなに無かったしな、お城でのんびりしてたんだよね。お風呂に入って寛いでいたしね。
「お金が無いニャン、手紙は諦めたニャン」
「そうだよな、レイちゃんは猫だからな」
「はいニャン」
有力な情報だけど仕方ないか。
領主様とかお城に手紙を出す人達は最初からその費用を貰っているんだろうな、まさか手紙を出す時にお金がありませんでは、重要な任務の報告が出来ない。
僕のは重要だけど頼まれた依頼じゃないからな。
「何だよ、その寂しそうな仕草は、仕方ないだろう。何回も振り向くなよ、俺が悪い事をしている様じゃないか」
全部タダでもいいじゃないか、手紙を出すだけ無料て・・・・・・中途半端だよ。ランク何か上がっても全然嬉しくないぞ、カードを作って貰った時から特Sランクだ。
「誰も利用しないニャン、全然嬉しくないニャン、ランクはBまででいいニャン、Aランクの依頼は要らないニャン」
何回も振り向いて、文句を言ってやったぞ。だいたいAランクの依頼が無いよ、それに依頼が有ってもAランクの冒険者がいないよ。偶然受けて貰うつもりなのか、Sランクの人はどんな事をするんだよ。
そんな凄い人達はもう冒険者じゃないよ・・・・・・お抱えの特殊技術の持ち主だよ。
スッキリした、帰ろう。ランディさんに手紙を出せば、ケーキとかクルクルクッキーを作って貰えると思ったのにな、シンシアさんが言っていた美味しいお菓子のレシピを送れたのにな、何人が喜ぶか。
シンシアさん、ジャンん、アカリちゃん、モモ、サキさん・・・・・・最低でも5人、作ってくれるランディさんも入れれば6人が喜ぶのに、とても残念だよ。もしかしたら、二組の双子ちゃん達も食べれるのにな残念だな。
造船の仕事をしているハリーさんに頼めたのは良かったんだな。返信の手紙が来たけど、皆は、お金を使ってくれたんだな。
「あれ、頭を抱えてどうかしたんですかギルマス?」
「ラナスタか、紙は有料なんだよ」
「ああ~、レイちゃんが手紙を出す時の紙の事ですか、確か、この辺に有ったよ筈ですよね、何処かな」
ラナスタさんが何か探している、ギルマスの部屋の棚の引き出しを次から次と開けている。机の上の僕とまだ頭を抱えているギルマスは何をしているのか気になってラナスタさんの行動から目が離せない。
引き出しから何が出てくのか、非常に気になる、ここはギルマスの部屋だし、ラナスタさんの仕事には関係なさそうなのに。
「何を探しているんだ?」
「レイちゃんの事が書いてある報告書です、この辺に仕舞ってある筈なんですよ」
「何で知っているんだ、その引き出しの下が報告書を入れるところだ。何がしたいんだ」
僕の報告書か、確かソードさんがロージさんに頼んだ事で他の街にも同じ報告書が送られたんだよな。
僕が特Sランクなのもその報告書に記載されている、他の事は読ませて貰ってないけど、特Sランクの事情とかが書いてあるとロージさんが言っていた。
「報告書を読んだ時に何か・・・・・・追記、レイちゃんに便宜をはかる事。レイちゃんのする事は全部無料ですね」
ああ、確かギルドカードを作る時にもロージさんが言っていたよ、確か『領主様からレイちゃんには便宜を図ってくれ』だったかな、語尾は違うかもしれないけど、同じ意味の事をお願いされたとかだった。
「無料ニャン、手紙を出すニャン、沢山出すニャン」
「何だ、書いてあるじゃないか、俺も読んだのを思い出したよ」
これでランディさんに手紙が出せる・・・・・・受け取って貰える方法を考えよう。
「明日来るニャン、さようならニャン」
何て書くか考えよう、手紙の文章を考えるのは大変だな、慣れてないからな。
お風呂に入った時に考えるか、のんびりと寛いで考えよう。
「帰しませんよ、受付で一緒に仕事です」
まあお昼を奢って貰ったんだ、撫で放題の時間だな。




