ニャ~・・・2
母さんに少しだけ人間の言葉を教えて貰ったけど、言葉よりも体力を付けなさいと言われた。木箱から自分で出れるようになったけど、ジャンプして椅子に乗ったりはまだ出来ない。
床は木造で、引っかき傷を付けないようにして走り回るのは大変だ、兄さんは短い足なのに速く走る事が出来る。一生懸命に追いかけているけど、差が開くばかりだ。
「ニャ~《兄さん、どうしてそんなに速いの?》」
「ニャ~《さあな、先に生まれたからだろ》」
おかしい、生まれるのにそんなに時間の違いがあるはずないのに、何でこんなに追い付けないんだ。僕の体は運動が苦手なのかな、でも、兄さんのように走れるようになるよね、同じ猫なんだから。
「ニャ~《運動が終わったら、勉強の時間よ。頑張ってね、2人とも》」
「「ニャ~《《は~い》》」」
僕と兄さんの返事が重なった。
寝てる時間が多いいので、運動と勉強をすると眠る時間が来るのが早いな。勉強が終われば、おそらく寝ちゃうだろう。
産まれて声が出るようになった時から猫語を勉強した、ニャ~しか言っていないようだけど、強弱や伸ばしたりして僕達猫は会話をしている。人間の言葉と違って単語が少ない、色々な表現がないので、覚える事が少なくなかった。
人間のおじいさん達の会話を聞き取るのは凄く大変で、何にも分からないけど、僕達の猫語はとても簡単だと思った。
母さんは僕達に一所懸命教えてくれる、頑張ろう。
「ニャ~≪よく聞くのよ、単語が多いから、直ぐには覚えられないだろうけど、猫語と同じ意味の言葉を覚える事から始めましょう、お腹空いた、よく使うから覚えるように≫」
「ニャ~≪お母さん、お腹空いた≫」
「ニャ~≪しょうがないわね、母乳を飲みながら、お腹空いたを覚えるのよ≫」
「ニャ~≪は~い≫」
兄さんはお腹が空いてしまった様だ。
「ニャ~≪僕もお腹すいた≫」
「ニャ~≪いらっしゃい、食べたら勉強の続きをしましょうね≫」
「ニャ~≪は~い≫」
僕もお腹が空てしまった、お腹が一杯になったら寝てしまいそうだ、腹八分目位にしとこう。
「こんにちは、・・・・・・・・」
暖炉の前で兄さんとじゃれ合っていると、人間の男性が来た。服装はおじいさんと同じ感じで、まだ外が寒いのだろう、ポンチョを着ている。
お母さんとの勉強で、挨拶の言葉が分かるようになってきて、男性の話した言葉の最初の『こんにちは』が分かった。おじいさん達が『おはよう』『おやすみ』と母さんに言っているのも分かるようになった。
「・・・・・・・・・・・・・・」
おじいさんと男性が話しているけど、おばあさんはここには居ない。
猫の僕は見上げるのが辛い。よく見かけるシーンで飼い猫と飼い主が離れているのは、猫が見易いように飼い主と離れているんだな。なので、暖炉の前の木箱に入って遠くから、おじいさん達を観察する事にした。
2人は話していて、時折、僕達に視線を向ける。
男性がこちらに歩いて来て、兄さんが抱き上げられた。
「ニャ~《何かようかな》」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
兄さんの質問に2人が答えている事はないだろう、男性は兄さんに視線を向けてから、ポケットからお金を出すとおじいさんに渡してお辞儀をした。
「ありがとう・・・・・・・」
「・・・・・・・ありがとう・・・・・」
もしかして、お兄さんが貰われていくのかな、この男性がお兄さんの飼い主になるんだ。
「ニャ~《兄さん、元気で幸せになってね》」
「ニャ~《ありがとう、お前も幸せになれよ》」
「ニャ~《まあ~、坊や、行くのね、元気でね》」
暖炉の前で寝ていた母さんが、起きたようだな。
「ニャ~《母さん、勉強ありがとう、ひとりでも勉強を頑張ります》」
「ニャ~《まだ小さいんだから、運動もするのよ》」
「ニャ~《は~い》」
下から見た男性の顔は優しそうで、兄さんを包んだ布から出ている頭を優しく撫でている。
兄さんは気持ちが良いのか、目がトロンとしている。
「・・・・・・・・・・さようなら」
「さようなら」
おじいさん達の別れの挨拶が終わると、男性が出ていった。その後をおじいさんがお見送りをするのだろう、後に続いて出ていった。
「ニャ~《母さん、兄さんが居なくなって寂しいね》」
「ニャ~《そうね、さあ一緒に寝ましょう、寒がりなんだから毛布はちゃんと掛けるのよ》」
「ニャ~《は~い》」
人間と違って、家族で一緒にすごせない僕達、生まれたばかりなのに兄弟と過ごせたのは30日位だったかな、僕にも飼い主が現れるだろうから、それまで色々な事を学ぼう、前世が人間で記憶も残っているから猫らしくするのが自然に出来ないかもしれない、頑張らないとね。
あれ、母さんはまた寝るんだな、まあいいのか、猫は人間の2倍位は寝て過ごす生き物だからね。
「ニャ~《さあ、おじいさん達の会話をよく聞くのよ》」
「ニャ~《は~い》」
おじいさん達は夕食を食べながら会話をしている、その会話をよく聞いて、聞き慣れるれ勉強をしている。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「ニャ~《おじいさんが『今日のシチュー柔らかいな』、おばさんが『じっくり煮込むことが出来たのよ』と言っているのよ」
「ニャ~≪もう1回、同じ会話をしてくれれば分かりやすいのに≫」
「ニャ~≪しょうがないわね、私達が言葉の勉強をしていると思ってないもの≫」
同じ会話や同じ単語を何回も聞かないと分からないのに、その会話をもう一度言ってもらう事が出来ない、人間の言葉の勉強は大変だな。
「ごちそうさま」
「ごちそうさま」
『ごちそうさま』『いただきます』は何回も聞く事が出来るので、覚える事が出来た。
言葉の勉強で、少しだけど、会話が分かるようになってきた。寝ている時でも会話が聞こえてきたら、聞くことで、慣れようと思う。
おじいさん達は食事が終わると、この部屋から出て行った。おじいさんは夕食後に本を読むのが好きなので、ロッキングチェアで読むだろう、おばあさんは洋服などの繕いをする。
おじいさん達の食事の前に、僕達の夕食は終わっていたので、暖炉の前で毛づくろいをして、おじいさん達がこの部屋から寝室に行くまで起きている。
猫は毛づくろいで清潔にしたり、ノミやダニを除去しているようだけど、この部屋にもいるのかな。
毛づくろいは、人間から見たら可愛いい仕草で、それを自分がやる羽目になるとは思わなかった。母さんの真似をしているけど、なんか変な気分だ。
「ニャ~《母さん、おはよう》」
「ニャ~《おはよう》」
猫語で朝の挨拶をすると食事の時間だ。僕達猫の食事は好きな時に食べる、決まった時間に食べているわけではない。
今起きたのは僕だけで、母さんは既に起きていたようで、暖炉の前で毛づくろいをしている。
水はあまり飲まないけど、おじいさん達はきれいな水に毎日2回取り替えてくれる。お皿に盛られたお肉を何回かに分けて1日で食べる。母さんのお皿は大皿で、僕のお皿はその半分位だ。
少ない食事の量に見えるけど、まだ小さい僕には1日で全部を食べれないので、母さんの大皿に少しだけ、移動させている。
「ニャ~≪ちゃんと食べなさい≫」
どうやら見られていたようだ。
「ニャ~≪は~い≫」
返事はしたけれど、お肉はそのままのにしておいた。母さんが食べてくれるだろう。
お腹が一杯になったので、運動をする事にした、おじいさんの椅子に飛び乗るのが毎日の日課だ。
「ニャ~≪とりゃ~≫」
最初の頃と違い、一発で上る事が出来る様になった、これを続けていけば窓枠の出っ張った板に飛び乗れるようにそのうちなるだろう。
「ニャ~≪もう、窓枠に飛び乗れるんじゃないの?≫」
「ニャ~≪僕に出来るかな、自信ないな≫」
そうなのかな。母さんの指摘に窓の前に向かって板の高さを確認すると、凄~く高くて、あんなに飛べるのかと不安になった。
「ニャ~≪こうやるのよ・・・・・・ほら≫」
なるほど、窓の前で飛ばないで、横から飛ぶのか。最初から間違えるところだったよ、母さんが飛ぶ前に居た場所でジャンプだ。
「ニャ~《痛い~》」
飛んだ角度が悪かったのか、飛び出た窓枠の板の下にぶつかった。前から飛んでたら壁にもぶつかったんだな。
「ニャ~《しょうがない子ね、もう一度見せるからよく見て飛ぶのよ》」
窓枠からひらりと下りて来た母さんが、ふわりと窓枠の板に乗った。綺麗なジャンプだな、僕も同じ様に飛ぶぞ、イメージを頭の中で思い浮かべて、その通りになるように自分の場所と窓枠の板の位置をよく確認をして・・・・・・よし飛ぶぞ。
「ニャ~《母さん、次こそは上手く飛びます》」
窓枠にいる母さんは、僕がジャンプするので場所を空けてくれた。
「ニャ~《や~・・・・・・落ちる~》」
「ニャ~《上れた後も気を付けなさい》」
危なかった、着地までは上手くいったけど、勢いを吸収できなかった、バランスを崩して落ちそうになったところで母さんに助けられたよ。
「ニャ~《ありがとう》」
窓枠の高さから落ちると痛いのかな、それとも、失敗しても足から落ちるから大丈夫なのかな。
まあ、上れたんだから外を見よう。
窓の外は一面が雪に覆われていた。家の前にあるだろう畑にも雪が積もっているので、何を育てているのか分からない。
ぽつぽつと家が建っているのが見て取れるけど、大きい街とか大きい村には見えない。田舎の農村とかなのかな、雪のせいで外に出歩く人がいないのか、昼間なのに誰もいない。
兄さん達は、この村にいるのかな。迎えに来てくれた人達が、おじいさんの服装に似ていたからこの近くに住んで居るのかな。
「ニャ~《寒いよ》」
「ニャ~《そうかしら》」
母さんは大丈夫なようだけど、僕にはとても寒く感じる。
窓の外を見れたし窓枠にも上れたので、寒いので暖炉に戻って休憩だ。
「ニャ~《お母さん、おじいさん達の話しているのが分かるようになったよ》」
「ニャ~《よく頑張ったわね。こんなに早く覚えられるなんて、いい子ね》」
母さんに褒められて嬉しい、おじいさん達の会話が分かるのがとても嬉しい。
「おじいさん、猫達がよく喋るわね」
「そうだな、お腹が空いたのかな、好物の干し肉をあげるか」
もう人間の言葉が分かるようになった、母さんの教えは正しかったのだ。
おじいさんは読んでいた本をテーブルに置いて出ていった。
「ニャ~≪母さん、干し肉をくれるんだって≫」
「ニャ~≪私の好物なのよ、優しいおじいさん達はよく干し肉をくれるのよ≫」
言葉が分かれば迷惑を掛けなくて済むな、でも、僕達が言葉が分かっている事をおじいさん達は知らないんだよな、でも、母さんの事はよく知っているんだよな。母さんを撫でる時には母さんが喜ぶ場所を撫でてくれるし、今も母さんの好物の干し肉をおじいさんは取りに行った。
「キャロットには大きい方を子猫ちゃんには小さい方をあげるよう」
母さんの名前はキャロットなのか、いい名前だな。
「子猫ちゃん、のどに詰まらせると大変だからよく噛んで食べてるのよ」
「ニャ~≪いつもありがとう、おじいさんとおばあさん≫」
「ニャ~≪よく噛んで食べます、ありがとう≫」
暖炉の前で寛いでいた母さんと僕の前に、干し肉の載ったお皿が置かれた。
僕達の口の大きさより小さく切ってあって、母さんの干し肉は、僕の3倍の量がお皿に載っている。母さんが食べ始めたので、僕も食べよう。
「ニャ~≪頂きます≫」
お肉の匂いがよく分かるな、猫は鼻がいいんだな、人間よりも優れているかも知れないな。
干し肉は美味しいぞ、ご馳走だ、よく噛んで食べるぞ。
そうだな、人間の時に干し肉を食べた事がなかったけど、初めて食べるのが猫なんて面白いな。日本は色々な料理があるから干し肉を一番食べそうなのは・・・犬なのかな、スーパーの売り場で売っているのを見た事があるなぁ。
工場で作っているのをテレビで見たけど、人間が味見しているのは本当の事なのかな。
「ニャ~≪早く食べなさい、おじいさん達がお皿を片すのが遅くなるわ≫」
「ニャ~≪はい、初めてで感動してたんだ≫」
「ニャ~≪そうでしょう、美味しいのよね≫」
考え事をしながら食べていたので、母さんに急ぐように言われちゃったよ。
おじいさん達に悪いので急いだ食べよう、母さんにも食べて貰おう、僕はそんなに食べれない。




