ニャ~・・・18
「ミヤ、メグ、誕生日おめでとう」
ハリーさんが誕生日のお祝いの言葉を言って、小さい木箱を渡した。
「お父さん、ありがとう」
「ありがとう」
最初に木箱を開けたのはミヤちゃんだ。
「ブラシだ、私の好きな青色だ」
「私のは赤色だよ」
貰ったブラシを直ぐに試す二人、気に入ったようだ。鏡の次はブラシか、喜びそうな物を考えるのは大変だな。
「ミヤ、メグ、お誕生日おめでとう。はい、プレゼントよ」
対面から二人の前に置かれた凄く小さい木箱・・・この大きさはシンシアさんにあげたプレゼントの時の木箱位だな、するとペンダントかな。
「ハートのマークに綺麗な青い宝石が付いてる」
「私のは赤色の宝石が付いてる、凄く綺麗」
ハートの形のリングの内側の真ん中に小さい宝石が付いている、女の子が喜ぶハートの形に自分の好きな色の宝石、首から下げる為の鎖が付いているのでペンダントだ。あれ、ネックレスとペンダントの違いはなんだろう・・・・・・まあいいか、どちらも同じなのかもしれないな。
「お母さん、ありがとう」
「お母さん、ありがとう」
最初にお礼を言ってのはミヤちゃんだ、続いてメグちゃんもお礼を言った。
シンシアさんはセンスがいいんだな、喜ぶ物をちゃんとあげた、ハリーさんのブラシも喜んで貰えて良かったな。
それなら僕もプレゼントをしよう。
「ミヤ、ミヤ」
「え、レイ、今、ミヤて言った?」
「ミヤ、ミヤ」
食事の終わった僕は、暖炉の前でプレゼントを貰うミヤちゃん達を見ていた。ハリーさんとシンシアさんがプレゼントを渡し終わって、僕の番だと思い・・・・・前から予定していた名前を呼ぶ事をプレゼントにした。
椅子に座っていたミヤちゃんが急いで僕を両手で持ち上げた。
「凄いわレイ、私の名前を呼ぶ事が出来るのね」
「ミヤ、ミヤ」
実は難しくないのだ、おそらく、初めて会った時にも言えただろう、ミャ~と鳴く事が出来るのだから。ヤをはっきりと言う発声練習をした、でも1回目で出来てしまったんだよね。
「す・ご~い。お姉ちゃんの名前だ」
感激したミヤちゃんはテーブルまで戻った。
「レイ、私の名前は?」
テーブルの上で両手で持たれた僕に、期待の視線を向けて、もう一度呼ぶように言われた。
「ミヤ」
「凄いぞ、猫が名前を憶えて、呼ぶなんて」
「レイちゃんだもん普通でしょう」
「何言っているんだシンシア、レイちゃんの普通とは・・・・・・なんだろう」
興奮していたハリーさんだが、最後の方は興奮が冷めたのか声が小さくなった。
「レイちゃん、お姉ちゃんの名前は?」
「ミ・ヤ、メ・グ」
「す、す・ご~い。私の名前も呼んだ」
頑張ったのはメグちゃんの名前を発音だ、毎日の日課で海に行った時に練習をしていた。
みんなが話している言葉が聞き取れるから、僕が話した言葉がどれだけ正確に発音が出来ているのか調整する日々だった。
「レイ、メグの事も呼べるの?」
「ニャ~≪呼べるよ≫、メグ、メグ」
「す・ご~い、連続で呼ばれた」
「ほら、レイちゃんは凄いのよ。なら私の名前は?」
期待を込めた視線を背中に浴びている筈だけど、見えません。
シンシアさんの名前か、言えなくもないけど、練習してないのでパスです。
「ニャ~≪シンシア≫」
「シンシアの名前は呼べないのか、僕の名前はどうだい?」
「ニャ~≪ハリー≫」
「お父さん達の名前は呼べないみたいね」
ハリーさんの名前も呼べそうだけど練習しないと駄目そうだな。全ての発音を練習すればいいのだろうけど、猫は気分屋さんです、のんびりと練習します。
今日の誕生日の主役だけでも呼べるんだ、それでいいのだ。
「さあ、食事にしましょう」
「そうだな、レイちゃんが名前を呼べるのは凄いが、先ずは誕生日の料理を食べよう」
「「は~い」」
食事を食べる皆のためにテーブルから下りて暖炉の前に向かおう。
「レイ、私の名前は?」
「ミヤ」
「レイちゃん私は?」
「メグ」
「私は?」
「ミヤ」
「私は?」
「メグ」
そろそろ寝てほしい、交互に名前を言わされるのはいいのだけど、30分は続いている。
「私は?」
「メグ」
「私は?」
「メグ」
二人の体温を感じてぬくぬくだ、ああ幸せだ・・・・・・
「おはよう、レイちゃん。僕は冬物の仕入れに行ってくるよ、一緒に行くかい?」
「ニャ~《外はもう寒いです、のんびりと歩くにはいいのですが、馬車の荷台は寒いので僕は行きません》」
僕は首を振って行かないを伝える。
「ハリー、レイちゃんが首を振っているから、いつも通り、リードさんと行って来てね」
「まあ、ミヤ達に怒られるから聞いてみただけだよ」
まだ暖炉を使うほどではないのか、こないだは火が付いていたのに。毎日使って欲しいな、ポカポカは幸せの気分にしてくれる。
朝の食事にミヤちゃん達がいないことが多い、シンシアさんが起こしに行かないからだ。お腹が少し膨らんできたけど、ゆったりとした洋服を着ているので目立たない。
そうだ、こないだのミヤちゃん達の誕生日で、ミヤちゃんが8歳、メグちゃんが6歳になった・・・5歳と3歳だと思っていた僕はだいぶ間違えていたようだ。そうだよな、弥生より大人ぽい。
「朝食も食べたし、リードさんの所に向かうか、シンシア、体調が悪くなったら無理しないでくれよ」
「はいはい、大丈夫よ、ミヤ達もいるし、ジェシカ達も居るわ」
「そうだな、行ってきます」
「いってらしゃい」
「ニャ~《行ってらしゃい》」
ハリーさんは冬物の洋服の仕入れに向かった、できれば日程を早くすればいいのにと思う、帰って来た時には冬になっているだろう。
帰ってくるのが遅いなら去年売れなかった冬物の洋服を沢山売っとけば、ハリーさんが仕入れて帰って来た時には直ぐにお店に並べられる、秋物の洋服の時と同じように早めに展示を替えて貰おう。
「ニャンニャンニャン」
「もう、運んでるわよ」
「そうです、レイちゃんは応援しているだけだからいいけど、運ぶのはジェシカさんと私なんだから」
「ごめんなさいね、私も手伝いたいんだけどこの体だからね」
カウンターの椅子に座っているシンシアさん、カウンターの上で応援している僕。
「いいんですよ、シンシアさんは元気な赤ちゃんを産んで下さい」
「そうそう、レイちゃんが言い出さなければ、ハリーさんが戻ってきた後だったんですから」
「ニャ~《ハリーさんは役に立たないニャン、荷物運びが出来るだけの経営者、だいたい、展示替えしてから行けば、ジェシカさん達の苦労は少なかったんだよ》」
「レイちゃんが、頑張れ、可愛いぞと言っているわね」
「レイちゃんに言われてもね」
「言われてもね」
美人さんと可愛いさん、お仕事している姿はとても素晴らしいです、でも、異性は誰も見てませんけど。
「ニャンニャンニャン」
「レイ、何しているの?」
「ミヤ、メグ、ニャ~《洋服の入れ替え、少しでも在庫を減らすためだよ。去年は僕を向かいに来てくれたのであまり売れていようなので、そのお手伝いだよ》」
応援しているだけだけど、手伝いをしている気分だ。
「レイちゃん、遊びに行こうよ」
「ニャ~《そうだね、荷物運べないもんね》」
メグちゃんの出した手に近づくと抱き上げられて首に巻かれた、メグちゃんはミヤちゃんの真似をするのが好きなので、まあ、こんな状態になるよね。
「ずる~い、いい出したのはレイちゃんなのに」
「ナタリー、どうせレイちゃんは運べないのよ、いいじゃない」
「ごめんね、急がないのでのんびり替えましょうね」
「ニャ~《急ぎなさい、我が家の売上は入れ替えにかかっている》」
ジェシカさん達は木箱から冬物を出して、入れ替えを始めてくれた。遊んで帰ってきたら全部終わっているといいな。
「メグ、行こう、今日はギルドよ」
「は~い」
メグちゃんの首に巻かれて入った建物は・・・・・冒険ギルドだった。
冒険者だろう人達が何人かいる、剣や盾を持っている人、防具を着ている人、旅人のような格好をしている人、それぞれが大きい荷物を持っている。
「ニャ~《冒険者か、僕も人間に生まれていたら冒険したのかな、それとも農家かな》」
異世界小説の好きな友達が主人公は農業を手伝っている事が多いと言っていたので、異世界転生したら農家関係の家に生まれると思った・・・・実際には猫だったけど。
「どれどれ、いい依頼はないかな」
「いい依頼?」
「街の中で出来る臨時の仕事の事よ」
「ふ~ん」
ミヤちゃん達は何しに来たんだ、冒険ギルドの依頼書を見ているみたいだけど、依頼を受けるつもりなのかな。
どんな依頼がるのかな、石の積み下ろし・・・建築現場のお手伝いだな、料理の準備・・・下ごしらえとかの準備かな、料金の集金・・・・絶対に嫌だ、払えませんとか言われたらどうするんだ、商品の配達・・・配達員、茎から葉を取る・・・料理?、依頼は臨時のものばかりだな。臨時とは今回限りの事だよね。
「この依頼は、いいわね」
「へ~、簡単だね」
「ニャ~《どれの事だ、面白い仕事かな》」
ミヤちゃんの視線の先には、猫探しの依頼だな・・・・・・《マッサージをする猫》、ほお~、僕以外にもマッサージをする猫が素晴らしいな、いなそうだけど。
「レイ、これあなたの事よね」
「そうだね、レイちゃんだよね」
「ニャ~《そうだね、僕以外にいないよね》」
ミヤちゃん達はちゃんと字が読めるようになったんだな、どんな字も完璧だな。
それにしても、変な依頼だよね、何でマッサージをする猫を探しているのかな、僕に会った事がない人だよね。
「変な依頼だよな、マッサージする猫だってよ」
「ああ、よくギルドが不確かな依頼を受けたな」
「もしそんな猫がいて、依頼主はマッサージをして貰うのか」
ギルド内のテーブルで雑談している冒険者? がミヤちゃんの見ている依頼の事を話している。
「その猫を見つけて報告すると小銀貨5枚だ、安いのか高いのか分からない報酬だな」
「そもそも、そんな特殊な猫がいたら誰でも知っていそうだな」
「ああ、そうだな、依頼書を出さないでも探せそうだ」
「それにだ、マッサージが出来る人を探すのも大変だぞ」
「そうだな」
まあ、そうだよな。聞き付けて依頼を出した人は、なんで噂を聞いた人に聞かなかったんだ、それが一番の近道なのに。
「メグ、残念だったわね」
「なんで?」
「ギルドに登録が出来るのが10歳からなのよ、登録が出来ないと依頼も受けれないのよ」
「そうなんだ、後2年後だね」
ギルドの登録は10歳からなのか・・・ここには何しに来たんだ。
「さあ、受付に行くわよ」
「は~い」
赤毛の女性の後に付いて来た僕達、茶色の混ざった赤色の髪はとても強そうに見える。
「さあ、着きましたよ」
見るからに凄い人が住んでそうな大豪邸だ。僕の家の前の坂を上った突き当りの家はお金持ちの屋敷で、この屋敷は、高貴な方が住んで居ると誰でも分かるだろう、門番さんも要るので。
この大豪邸が建っているは港町の反対側の山の上の方で、ここの斜面は僕の家の方よりも緩やかなので建物を建てやすいだろう、こちら側の方が横に広い建物が多い。
「大きい家だね」
「す・ご~い、家だね」
二人も初めて見たようで驚いている。
この大豪邸だけ違う存在に見える、ここまでの道のりで見た建物は、どれも同じ位の規模の建物だった。この一軒だけは別物だ。3階建てで横に広い建物の窓は、1階に10個あるので30個の窓がこちら側にある。
「すいません、冒険ギルドのロージーです、依頼の猫の件でお伺いに来ました」
「分かりました、直ぐに確認してきます、少しお待ち下さい」
「はい、お願いすます」
見張りの人は急いで走って行ったけど、着ているのは鎧で腰に剣をさげていた。何を攻撃する為なんだあの剣は、それにこの大豪邸の持ち主は何者なんだろう。
あの男性の鎧は本物なのかな、まあ、走るのが遅いから本物の鎧で決定だな。
「お姉ちゃん、あそにいるの犬だよね」
「ほんとだ、猫と同じ位なんだね」
メグちゃんの視線を追って行くと、ジョンさんと同じ位の大きさの犬がいた。犬の種類で知っているのがブルドックソースのブルドックだ、見た事はないけどソースのラベルはブルドックだろう。名前で知っているのは秋田犬と柴犬だ、本当の話なのか知らないけど日本人が食べた事がある赤犬。犬は苦手なので何にも知らない、近づいて噛まれたくないから近づかないようにしていた。
メグちゃんの首からは絶対に離れないようにしよう、タオルの様に掛かっているだけだけど、ここが一番安全だ。




