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ニャンだふるワン  作者: 自由人書
17/521

ニャ~・・・17

ミヤちゃんの誕生日の朝は、のんびりと始まった。


ミヤちゃんとメグちゃんはまだ寝ていたけど、僕はいつも通りの時間? に起きたつもりだ。時計が無いので分からないけどいつも通りだ、朝の食事を食べているとシンシアさん達が現れたんだから。


「レイちゃん、夜は二人の誕生日よ。食事の時間にはリビングに来てね」


「ニャ~≪了解です≫」


「いや~、人間の言葉を理解してくれる猫か、利口で助かるな」


「ハリー、レイちゃんは利口だけど、私が勉強を教えたから人間の言葉が出来るのよ」


「ああ、そうだったな」


「もう~」


人間の言葉を教えてくれたのは、キャロット母さんだよ。文字を教えてくれたのがシンシアさんだ。


毛づくろいは止めとこう、これから日課の海で落下の練習だ、少しは上達してきたと感じている。泳ぐ事は凄く上達した。


玄関前の看板は『マッサージ、止めました』になっている、次は『マッサージ、始めました』になるのだろう。


今日はミヤちゃんの誕生日、明日はメグちゃんの誕生日、約1ヶ月前がシンシアさんの誕生日、ハリーさんの誕生日はいつだ、ハリーさんの誕生日が近づくと『マッサージ、始めました』になるのだろうか。


「ニャ~≪行って来ます≫」


「いってらしゃい~」


シンシアさんに見送られ、海に向かう僕。さあ、頑張るぞ。






「ニャ~≪寒いニャン、もう駄目だニャン≫」


ニャンニャン言いたい程寒い、まさか海がこんなに寒くなっているとは思わなかった。


ミヤちゃんの誕生日の為にマッサージを始めたのが15日位前で、その前日はまだ海の水は冷たくなかった。


どうするかな、このまま続けるかそれとも家に帰るか・・・・・・帰ろう寒いのは苦手だ、それに明日からは海に飛び込みはしない、体力作りだけにしよう。


「ニャ~≪冬が来たら暖炉でぬくぬくだ、楽しみだな≫」


先ずはブルブルしないと、あそ~れブールブル、ブールブル。


そうだ、最後の仕上げだ。


「ミャー、ミヤー≪簡単だな≫」


よしこれなら大丈夫だ、今日は誕生日、夜まで暖炉の前のんびりしよう。





「ニャ~≪痛いよ、誰か僕を攻撃した?≫」


海からの帰り道、坂をとぼとぼと歩いていると頭に衝撃が来た。凄い衝撃だったのだろう、僕はその場に倒れてしまった・・・足を投げ出して地面に倒れた? 筈だ。


まあ、猫の基本姿勢になったのは頭に何かが落ちて来たからだ、別にこの家の前で寝たいからじゃない。


通りの端を歩いている僕の頭に何かが落ちて来たので上を見たけど、建物の窓は僕の上にはないな。


窓がないならどこから落ちて来たんだ、そうだ、何が落ちて来たんだ。


「ニャ~≪何だこれは、巾着に見えるな≫」


何が入っているのかな、取り敢えず触ってみよう。


ジャラジャラと音がする、この巾着に$マークを付ければお金の入った袋に見える、革の巾着の財布だ。中にはお金が入っているんだな。


「ニャ~≪誰か落としたよ、お巡りさん~≫」


お巡りさんはいないか、落し物は誰に渡すんだ。


道を歩いている人で建物の近くを歩いている人は坂の下の方にはいない、なら坂を上っている人はいた。ハリーさんの洋服屋さんで売っている洋服よりも高級そうだ、上着には何種類もの色の布が使われている。この財布には沢山のお金が入っていそうだから、あの男性が落としたのだろう。


あの人に知らせに行くと財布から離れる事になる、そうすると他の人が拾ちゃうよ。ねこばばされてしまう。おお、僕がすると本当の猫ばばになるな。ねこばばの由来が知りたくなったぞ、猫に関係あるのかな。


楽しんでないで咥えて追いかけよう、革の口の部分を甘噛みして傷を付けないようにして・・・・結構重たいな、ジョンさんなら紐の方を咥えても地面にする事もなく歩けるけど、僕は小さいから紐の方で運ぶのは無理だ。


首を上げながら歩くのは大変だな、でも見失う事がないなこの姿勢なら。






首が痛いよ、坂だから財布の底がぶつかりそうだったよ。


「ニャ~≪大きい家だな、庭付きだ≫」


僕は坂の上の方に行った事がなかったな、ついも坂を下りて海岸の方に向かってた。それと、L型の街の向こう側には行った事がない。僕の行動範囲は意外と狭いな、今度行ってみるかな向こう側に。


遠くから見えた男性はこの家に入って行った。僕の家の前の坂道を上がった突き当りにある家、屋敷と言ってもいいかも。


入ってもいいよね、落し物を届けに来たんだから。


僕て本当に小さいんだな、鉄の柵の間を通れるぞ、ジョンさんとマックスさんだと縦の棒を1個取ってもはいれそうもないな。どんだけ違うんだ、ジョンさん達の体の大きさと僕のこの小さい体は。


建物には窓が沢山有る、街の建物には窓が少ないのにこの屋敷には窓が沢山ある、窓がある所は部屋なのかな、それとも廊下。


「ニャ~≪そうだ、お財布を返さないと≫」


うわ~、僕が小さいのでドアが大きく見えるぞ。呼び鈴には手が届かないから、いつものカリカリしかないか・・・・ノックすればいいのか、つい猫らしくカリカリしたくなるな。


「トントン、トントン」


あまり叩いたらいけないよな。


「お父さん、誰か来たわよ」


「すまない、出てくれ」


「は~い、今行きますね」


話し声が聞こえた、僕が叩いたノックに気が付いてくれたんだな。


外側に開いたドアから声の主の女性が見えた、茶髪の女性だ。


「あら、誰もいないわ、お父さんノックは聞き間違いよ」


「ニャ~≪こんにちは、猫のレイです。落とし物を持って来ました≫」


「そんな筈はないだろ」


「ああ、猫ちゃん。訪問マッサージをしに来てきれたの?」


あれ、僕がマッサージをする事を知っている、誰だろう。


「ニャ~≪訪問・・・出張の事だよね、マッサージではなくて、お財布を届けに来たんだよ≫」


玄関先に置いた財布をトントンして見せた。


「あら、お財布ね、誰のかしら? 私のではないわ」


「誰と話しているんだ?」


開いたドアの前に僕はいないので、中の男性には僕は見えないんだな、小さいから気が付かないかもしれないけどね。


「マッサージしてくれる猫ちゃんよ、こないだ話したでしょう」


「ああ、猫がマッサージをするて言っていたね。あれは本当なのか、冗談だと思っていたよ」


マッサージは今いいんだよ、お財布を落としたか聞きたいんだよ。


「本当よ、ねえ、猫ちゃん」


「ニャ~《財布の話題に戻ってよ》」


お財布を再度、トントンすれば気が付くはずだ・・・・・・見てないよ。


「ニャ~《あそ~れ、トントントン、トントントン》」


「ジャラ、ジャラ」


「ああ、そうね、お父さん、財布がここにあるんだけど見覚えない?」


「財布?・・・落とした、何処に落としたんだ。探しに行かないと」


「お父さん、財布は猫ちゃんが運んで来たみたいよ」


「何言っているんだ、直ぐに・・・・・・私の財布だ。こんなに小さいのに猫なのか?」


慌てて出て来たのは初老の男性で茶髪だ、少し毛が薄くなっているように見える。


「もう、珍しい猫だと言ったでしょう、信じてなかったのね」


「まあ、すまん。小さい猫がいるとは、見た事も無ければ聞いた事もないんだ、まさか、本当にこんなに小さい猫が居るとは」


驚いていた男性は僕の持って来た財布を拾ってくれた。


良かった持ち主に届ける事が出来て、長い道のりだったな。





「どうだ美味しいかね、猫ちゃん」


「ニャ~《とても美味しいです》」


「沢山あるのよ、お代わりしてね」


財布を届けた後にお昼をごちそうになっている、それもステーキだ。僕が猫舌なのが分かっているのか、冷えるまで僕の前にお皿が置かれなかった。


男性の奥さんも何処からか現れて『まあ、可愛い仔猫ちゃんね、もうすぐお昼よ、食べていってね』と言ってツンツンされた。猫らしく指にじゃれる仕草をするのには疲れた、色々なバージョンの仕草はマスターしていないんだよね。それに、そんなに知らないんだ。


「行儀が良いのね、マッサージの時も無駄な事をしないのよね」


「ニャ~《プロのマッサージ師です・・・・・・自称》」


みんなも同じステーキにパンとスープを食べている、僕のステーキはサイコロステーキのように切ってあるので食べやすい。


「財布を届けてくれて、ありがとう」


「ニャ~《いいのです、ねこばばの汚名着せられるより、届けた方がスッキリします》」


「会話しているみたいね、私達の言葉がわかるのかしら」


「お母さん、猫ちゃんは分かっているのよ。マッサージの代金を聞いた時にテーブルの上のお金で代金を教えてくれたのよ」


「動物がそんなにお利口なのかしら、不思議な仔猫ちゃんね」


「どれ、実験をしてみるか」


「何をするのつもりなの、お父さん?」


お金持ちは食事中に話をしないのかと思ったけど、よく喋るな。それに実験て何をするのかな。


このお肉は凄く美味しいな、人間の時に食べたステーキより美味しいな。肉はいいな、毎食食いたいよ、ミヤちゃんのおじいさんが持って来てくれた新鮮な野菜を沢山食べる羽目になったんだよなぁ。皆が野菜をあまり食べないからね。


「ここに全部違う硬貨がある、この中から好きな硬貨を財布のお礼にあげよう、どれがいいかな?」


「まあ、硬貨の価値を知らないのではないかしら、それに、本当に私達の言っている事が理解出来ているのかしら」


「どうなんだろ、マッサージの時は銅貨2枚しか置いてなかったし、私が置いてきたのも銅貨2枚だったのよ」


テーブルの上で食事をさせてもらっていたけど、ステーキのお皿の横に硬貨が並べられた。


財布のお礼か、実験とも言っていたよな、一番高い硬貨を選んだ方がいいのか、財布の中身の1割位を選んだ方がいいのか、それとも適当がいいのか。


それなら僕も実験してみようかな。並べられているのは、小金貨、銀貨、小銀貨、大銅貨、銅貨、小銅貨で、小金貨、銀貨、小銀貨は初めて見た。用意された硬貨が一桁ずつ違うなら、小金貨と銀貨の間には硬貨、大銀貨は存在しないのかもしれないな。金色の硬貨が金貨の可能性はあるけど。


「ニャ~≪これにしようかな≫」


僕は小金貨に右手お伸ばして、小金貨の前で右手を下ろした。硬貨に手が触れたらそれがいいと言っている事になると思ったからだ、すると男性の表情がホッとした。


やはり、触れた硬貨がお礼と考えて良さそうだ。なら、次の行動はこれだな。


「ニャ~≪これが良さそうかな≫」


僕の左手が銅貨の方に伸びると男性が喜んだ。面白いな、僕が分かってないと思ってるから表情を隠すことなく見せてくれる、分かっていると思っていたら小金貨に手が伸びても当たり前の行動だと思って≪ああ、一番高価な小金貨を取るよね≫と納得した表情をする筈だ、でも銅貨の前で左手をテーブルに落とす。


今度は右手が銀貨に向かうとやっぱり困った表情をする、右手を下ろして左手を小銀貨に伸ばす、すると嬉しそう、なるほど小銀貨までは僕にお礼としてくれても良いと思っているんだな。


「お父さん、猫ちゃんに遊ばれているわよ」


「そうね、顔に出ているわよ、あなた」


「何がだ?」


「猫ちゃんはお父さんの顔を見て喜んでいるのよ」


「仔猫ちゃんは、わざと選ばないでテーブルに手を落としているのよ」


「まさか、そんな事をしている筈がない、ははははぁ、いくらなんでも考えすぎだよ二人とも」


笑って試していたのかな、猫って笑えるのかな。


「猫ちゃん、一番高価な硬貨はどれですか?」


「ニャ~≪簡単なんだな、小金貨だよ≫」


「ほら、小金貨に手を乗せたわ」


つい乗せてしまった、まだ男性と遊んでいたいのに、でもいいか、そろそろ帰ろう。


「賢すぎだろ、何で一番高い硬貨が分かるんだ、小金貨をあげないといけないのか」


「ニャ~≪ごちそうさま、美味しかったです。悲しそうなのでお礼はいいです≫」


僕はテーブルから降りてドアに向かった、この広い屋敷の外に出るには誰かがドアを開けてくれないと出れないよ、振り返ると娘さんが僕の付いて来てくれていた。


「待って、帰るなら玄関まで送るわ」


「おい、お礼は要らないのかな?」


聞いてくれるのは嬉しいけど、声が悲しそうだよ。


「ニャ~≪猫はお金を使いません、ミヤちゃん達は自分で稼ぐので僕があげる必要がないんだよ、じゃあね≫」


「お父さん、送って来るね」


「ああ、財布を拾ってくれてありがとう」


「ニャ~≪気を付けてね、お巡りさんはいないんだから≫」


僕は開けて貰ったドアから玄関に向かって走る、帰ってのんびりしよう。


「待って~」


遠くから娘さんのお母さんの声が聞こえた。






お財布を届けて僕は帰って来た。


「レイ、マッサージをして来たんだ」


「す・ご~い」


疲れたけど、メグちゃんの≪す・ご~い≫が聞けて少し幸せになれたな。


「ニャ~≪訪問マッサージをしてきました、そのお金はミヤちゃん達にあげます≫」


ミヤちゃんは驚かないで、僕の首にぶら下っていた僕用巾着からお出したお金を見て喜んでいる。


帰る時に≪まだマッサージを見てないわよ≫と聞こえたので振り返ると、僕を引き止めたのは財布の持ち主の奥さんだ。娘さんにマッサージをしていところを見たいと言われた。マッサージを受けれると喜んだお姉さんは≪今日は長いやってとね≫と言い出したのだ。お姉さんは情報通なのか、僕のマッサージの長い時間をお願いしてきた、奥さんはマッサージをしている僕を見て≪凄いわね、小さい手をあんなに一生懸命に動かして、マッサージをしているわ、私も同じマッサージをしてね≫と気軽に言われてしまった。


仕方ないので真面目にマッサージをして帰って来た。


マッサージの代金を首からぶら下げて帰って来たらミヤちゃん達とバッタリ家の前で遭遇した。2人は買い物の帰りのようで、昨日買ったバックを肩に掛けていた。


「このお金は誕生日のプレゼント?」


「ニャ~≪そんなような、そうでないような。マッサージの代金です≫」


「レイちゃん、ありがとう」


「レイ、ありがとう」


「ニャ~≪うん、もう疲れたので夕食まで寝ます≫」


トボトボと歩き出したらメグちゃんに抱き上げられた、このままリビングに運んでもらおう楽ちんだ。

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