ニャ~・・・15
僕の勘違いだった、まだまだ冬らしい寒さになってない。そうだな、夏の終わり頃で、そろそろ秋になるのかな位の気温になった。猫なのでその辺は間違えている可能性はあるけれど。
今日は僕の考えを皆に伝える為の努力をする事にした。
「ニャ~≪ハリーさん、あんまりいないけど経営者なんだから、これからの事を考えようよ≫」
「レイちゃん、お店に遊びに来たのか、お客が増えたのはレイちゃんのお陰だってシンシアが言っていたぞ、僕は仕入れに行っていたんだよ」
いない時は仕入れなのか、仕事はちゃんとしていたんだな。
「ニャ~≪ごめんなさい、怠け者で遊んでいるのかと思ってました≫」
僕の見たドラマで、料亭の材料を仕入れるオーナーは浮気をしている様な感じで日々を送っていた。だから、お店の事は女将さんで奥さんが切り盛りしていて、経営者の旦那の働きぶりを嘆いている。
そう、お店の仕入れだけが仕事の様で、ハリーさんもそんな感じなのかと・・・・・・お店にいる時が少ないので思っていた。
「今回は良いのが買えたよ。まあ、北の街は遠かったけどね」
夏の洋服は西に仕入れに行って、秋の洋服は北の街か、北の街は遠いいのか、ハリーさんを見かけないのは、仕入れに行く場所が遠いいからだな。でも、あんまり売れないんだよね。
そうか、、仕入れて来たばかりなら何処かに置いたんだよな。
店内にいた僕は、ハリーさんから仕入れの話を聞いて、洋服の入っている木箱を探す為に倉庫に向かう。
「ニャ~≪仕入れて来たんだから、入口から近いのかな、玄関の方から探そう≫」
クンクンと匂いを嗅いでみたけど分からないな、それに倉庫の中はお風呂の時しか入らないから荷物が増えた場所の見当がつかないぞ。
倉庫の中をグルリと回ってみたけど、洋服が入っていると思う木箱が沢山ある。木箱は全部同じ大きさだ。
「レイちゃん、何しているの?」
「ニャ~≪仕入れて来た洋服が入っている木箱を探しているんです、何処に有るのかな≫」
「悪戯はダメよ、洋服が汚れちゃうわ」
「ニャ~≪その洋服の入っている木箱は何処に?」
「じゃあね」
シンシアさんが行ってしまった、まだ夕飯には早いのに階段を上がって行った。
こうなったら必殺技だ。
「ニャ~、カリカリ、ニャ~、カリカリ」
聞こえているかな店内に・・・・誰も来ない。
「ニャ~、カリカリ、ニャ~、カリカリ」
ダメだ、誰も来てくれない。
こんなに沢山の木箱が在庫なのか、何個あるんだ。ついでに数えてみようかな。
端から1,2,3,4,5・・・・・・・・。
「ニャ~≪ここは16個、こっちは20個、あっちは18個・・・・多すぎて数えるのが嫌になったよ。軽く100箱以上は有るな≫」
木箱には何着の洋服が入っているんだ。木箱の数も凄いけど、中に入っている洋服は何着なんだろう。木箱の5倍か10倍位かな、千着はかるく有る事に・・・・・洋服のお店はこんなに在庫をするものなの、それよりもこんなに洋服が買えるお金がある事が凄い事だな。
ここに居ても誰も相手にしてくれないのがよく分かった、ならば店内に戻ろう。
「ニャ~《こっちに来てよ》」
猫の仕草で思い出したのが、コチに来てよだった。飼い主を振り返って可愛い鳴き声《ニャ~》、僕もその仕草を真似て実践してみよう。
「レイちゃん、なあに?」
「ニャ~《こっちに来てよ》」
ナタリーさんは黒髪丸顔の可愛い人だ、僕の鳴き声にやっと気が付いてくれたけど、僕の方に来てくれない。仕方ないので左手でこっちに来いとやってみた。
「ナタリー、レイちゃんはあなたに来いと言っているのよ、手も何やら動いているもの」
「ニャ~《ついでにジェシカさんも来るんだ》」
「あら、私にも来て欲しいの?」
「そうなんだ。ハリーさん、レイちゃんに付いて行っていいですか?」
「いいよ、お客さんもいないからね」
倉庫から呼んでも駄目だったけど、鳴きながらこっちに来てと手招きしながらお願いしたら、分かってもらえた。
「ニャ~《倉庫の木箱に来て、秋物の洋服の箱を開けてよ》」
「どうしたの、その木箱を開けたいの?」
「ニャ~《開けたいけどいつの洋服かな?》」
「それは、冬物の洋服が入っている箱よ」
付いて来てくれた二人に中の洋服の事が聞きたくてカリカリしたけど、冬物だった。ふう~、会話が出来ないのは大変だな。
「ニャ~≪この中の洋服はいつのなの?≫」
「分かった、木箱の家が欲しいのね。中の洋服を出さないとダメだから、レイちゃんにはあげれないのよ」
「ニャ~≪違うよ、どの季節の洋服か教えてよ≫」
ナタリーさんに木箱が欲しいと勘違いされてしまった。
「ナタリー、レイちゃんは木箱が欲しいわけじゃないのよ」
「どうしてですか?」
「ほら見なさい、レイちゃんが首を振っているわ」
そうだよ、早く気が付いてよ。首が痛くなっちゃうよ。
「イレちゃんが何を伝えたいのか、知るのは難しいですね」
もう一度、同じ木箱をカリカリする。今度こそ教えてほしいよ。
「ニャ~《教えて~》」
「レイちゃんは、春物の木箱をカリカリしているわね、さっきは冬物の木箱よね」
おお、この木箱は春物、この辺にあるのは春物だ・・・・・・だよね、バラバラに置かれていたら面倒だ。
次こそ秋物の洋服の木箱の筈だ。
「ニャ~《沢山仕入れたんだね、これが秋物でしょう?》」
僕は一番山積みになっている下の木箱をカリカリした。
「夏物の木箱よ、どうしたのレイちゃん、何を伝えたいの?」
ええ、僕は驚いて山積みになっている木箱を見た。夏物の木箱の数を数える。一周して数え終わったら61個の木箱が有った。
勿論、夏物の洋服を出した後の空の箱も混ざっている筈だ、季節が変わったら片付ける為の木箱があるだろう。一番多い木箱が夏物、それなら2番目に多い木箱が置かれている所が秋物の洋服だよね。
「あそこが秋用の洋服よ。季節ごとに分けているの、これがこの店の在庫よ。私とナタリーが雇われた時には、こんなに在庫はなかったのよ」
「そうですよね、凄く増えた」
ジェシカさんの説明に頷いたナタリーさんは、在庫が増えたと言って秋物の木箱を軽く叩いた。
「ニャ~≪ここにあるのが秋用の洋服なんだよね≫」
僕は急いで秋用だと思われる場所に移動して、木箱に視線を向けて驚いた。高さは低いけど横に広がっている、何処までが秋物の洋服なんだと考えたけど、まとまって置かれているんだから、この辺全部が秋物なんだよね。
「沢山あるでしょう、そこが秋物の洋服の置き場所よ、去年の残りと今年の木箱よ」
「もしかしたらもっと前の洋服も売れ残っているかもね。こんなに木箱が有るんだから」
この倉庫には何個の木箱があるんだ、一番有ると思っていた秋物の木箱は・・・・・・沢山ある。夏物の木箱は山積で61個、でも、その周りに有るのも夏物の木箱だよね。少し間が空いているけどそうだよね、夏物だよね。
倉庫全部の木箱が在庫だよ~、どんだけ買い込んだんだよハリーさんは。
「レイちゃん、何しているの?」
僕は倉庫の端から端まで走る、木箱が途切れるまで、角まで来たら曲がる、角まで来たら曲がる、曲がる、曲がる。
ねえハリーさん、仕入れを止めて、持っているお金で生活できるんじゃないの、それとも、何か商売上の秘密があるの、変でしょう、在庫があり過ぎるよ。
数えるのを止めよう、考えるな、全て空箱だ、空箱・・・・・・・ジェシカさん達は在庫が増えた、凄く増えたと言っていたよ。
そうだ、僕がしっかりしないと、ミヤちゃんとメグちゃんが可哀そうだ、シンシアさんも可哀そうだ、赤ちゃんも可哀そうだな。
僕の家でもあるからと何か出来ないかと少しだけ手伝おう思ったけど、少しじゃ駄目そうだ、頑張ろう、少し位忙しくていいか、忙しい猫もいる筈だ。
先ずは、洋服の展示替えだ。二人にはこの家の為に頑張って貰おう、どうすればいいんだ。そうか、ジェスチャーで伝えよう。
「何かしてますね」
「そうね、何を伝えたいのかしら、両手を上げたり下げたり」
「分かりました、木箱を持ってですよ、倉庫の木箱をカリカリしていたんだから」
「そうなの、じゃこの箱を持ち上げるわね」
秋物の木箱を持ってくれたぞ、お店に誘導しよう。
「ニャ~《付いて来て、展示替えをするよ》」
ドアの所で来い来いしてジェシカさんに伝えた。
「持って来いなのね」
「それじゃ私も木箱を持って行けばいいのね」
「ニャ~≪こちの木箱だよ≫、バンバン」
ナタリーさんが春物の木箱を持ち上げたので、急いで秋物の木箱を叩く。
「レイちゃんに怒られた、秋物の木箱なのね」
「秋物の木箱をお店に持って行って欲しいわけね」
倉庫からの入口のドアの所で頷いているジェシカさんは頭の回転が早いんだな。
木箱をお店に持ち込む事が出来たけど、展示を変えて貰うのも大変だった。ジェスチャーは万能ではなかった、同じ感覚の人同士じゃないと伝わらないのがよく分かった。
ハリーさんは僕のしている事に『何で展示している洋服を替えるんだ、まだ早いよ』『理由を教えてくれないかな』『仕方ないな、お客様が来てくれるようになったのも、レイちゃんが外で呼び込みをしてくれるからだしな』と自分に言い聞かせていた。
「レイ、これでいいのよね」
「ニャ~《そうです、ありがとう》」
「レイちゃん、今日も頑張ってね」
ミヤちゃんとメグちゃんは遊びに行った。
さすが僕の飼い主のミヤちゃん、僕がして欲しい事を的確にしてくれた。
「ニャ~《あまり洋服を汚さないで遊んきなよ》」
メグちゃんが手を振り、僕も手を振り返した。
《秋の洋服、販売中・・いらしゃいませ》の看板を首にぶら下げて、僕は招き猫をする。
「ニャ~《衣替えの時期だよ、今年の新作が沢山あるよ》」
季節が変わる前に展示を替えて、早めの販売だ。ハリーさん達は展示している洋服を替えるのが遅いようだ、暑くなった時にも春の洋服を売っていた。確か季節が変わる前に次の季節の洋服に替えていた筈だ。
「あら、もう売っているのね。見てみようかしら」
「ニャ~《いらっしゃいませ~、見ていくだけでもいいんですよ》」
ミヤちゃんのお陰でお店に入ってくれる人が増えるな。僕も招き猫を頑張ろう。
「ニャ~《喧嘩だ、大型犬同士の凄い戦いだ》」
毎日頑張っていた招き猫は凄い効果だった、僕が珍しいのと看板の効果で、混む事があった。
《うちの店にこんなにお客が》《シンシアさん忙しいですね》《こんなに接客ができるなんて》《レイちゃんとミヤのお陰ね》
ハリーさんは驚きと喜びで、ジェシカさん達は忙しいのが嬉しいようだ、シンシアさんはお客が増えた事が僕とミヤちゃんのお陰だと感謝してくれた。
毎日働いていたら休みがあったようで、7日に1日休みなので、週休1日だと分かった。のんびりとしていた僕にはハーリさん達に定休日が有ったのに気が付かなかった。
その定休日に朝ご飯を食べた僕は散歩に行く事にした。
寝ているミヤちゃんには『ニャ~《行ってくる》』と告げて出て来た。
馬車の道を人目に付かないように建物の近くを歩いて坂を下りていると、家と家の空きスペースで2匹の喧嘩を発見。
中学の時に喧嘩を見た事があるけれど、動物同士の喧嘩は初めてだ。
動物の喧嘩は動きが早い、2匹は抱きかかえるようにして地面を転がってる。犬の喧嘩は凄い、人間の喧嘩にはない噛み攻撃がある。この喧嘩を見ている人がいる、それも2人も。
「負けるな、ジョン」
「勝てよ、マックス」
んん、ジョン・・さん、猫のジョンさん、喧嘩している犬? は喧嘩している猫なのか、僕が知っているツッパリさんのジョンさんなのかな。ちらちら見える顔はツッパリさんのジョンさんだった。視線を男性に向けると、ツッパリさんの飼い主の男性だった。
もう一人の男性と喧嘩している猫? を見た事がない。
「ニャ~《どうなっているんだ、人間がペットを戦わせているのかな≫」
グルグル回転して下になったマックスさん、その上になってグウグウと唸るジョンさん。ところでペットの喧嘩の勝敗はどうなると決まるんだ。
「ニャ~≪つまんないので、他に行こう≫」
「ニャ~≪最後まで見ていけ、小娘≫」
「ニャ~≪神聖な勝負を何だと思っているんだ、小娘≫」
「ニャ~≪じゃれ合いなんでしょう、次に会った時もグルグルしているんでしょう、僕は行きます≫」
「ニャ~≪何、じゃれ合いだと、ふざけるな≫」
「ニャ~≪勝負だ小娘≫」
2匹の猫が僕を睨む、とても怖いここに居たら危険だ。
「ニャ~≪犬のお巡りさん、助けて~、大きい猫に襲われるよ≫」
「ニャ~≪お前が小さいだけだ、小娘≫」
追いかけてくるよ、あんな大きいんだ直ぐに追いつ・・・・・追いつかれない、小さい方が瞬発力があるんだな。
散歩は中止だ、鬼ごっこになってしまった。どこかに逃げ込まないと追いつかれる。
「ニャ~≪追って来ないでよ≫」
「ニャ~≪勝負しろ~≫」
「ニャ~≪ん、俺達の勝負が先だ~≫」
おお、助かったようだ。そうだよ、やりたい者同士でして下さい。




