ニャ~・・・14
「まあ、可愛いいわ・・・・・・猫なのよね」
「凄く小さい、小さい猫を初めて見たわ」
「小さい猫・・・・・・動かないけど、生きてるのかしら」
「珍しい猫の置物だな」
今日からお店の前で招き猫をしている、シンシアさんのお願いを聞いて頑張る事にした。
問題は招き猫はお客を呼ぶ事が出来るのかだ、この世界に招き猫の様な風習、習慣、習わし、言い伝え、まあ、そんな認識はないので効果はないだろうな。
「ニャ~≪デザインの良い洋服があるよ、見ていかない、お店の中に沢山洋服が有るよ≫」
「まあ、可愛い鳴き声ね」
「ニャ~≪撫でてくれてありがとう、でも、お店には入ってくれないんだね」
招き猫の姿勢を維持するのが大変だ、よし、招くように手を動かそう。
「す・ご~い」
「レイ、何しているの?」
道行く人に喜んで貰っていたけど、お店に入ってくれた人はいなかった。店の前で招き猫をしてから30分位したら、ミヤちゃん達が来た。
「ニャ~≪招き猫だよ、お客さんの呼び込みだよ≫」
「レイちゃん、もっと動かして」
ニャニャニャニャニャ、招き猫の連続招きだ。
「レイ、楽しそうね。一緒に遊びに行く?」
「ニャ~≪今日はここで店の前を通る人を観察するので、遊びには行かないよ≫」
僕は首を振って行かないと伝えた。
「そう、メグ、遊びに行くよ」
「うん、レイちゃん、またね」
2人は行ってしまった、2人が声を出して呼び込んでくれた方が沢山の人に伝わったんじゃないのか、いや、遊び盛りの子供に頼ってはいけない、招き猫を続けよう。
「ニャ~≪今度はロボットの招き猫だ≫」
ゆっくりとした動作で手を動かす、物真似のメンチカツさんの様にするぞ、猫のロボットだ。
「手が動く置物なのね」
「どうやって動いているのかな」
そうか、この世界にロボットはない、架空のロボットも存在しないんだ、置物が動いているようにしか見えないんだ、残念だ。
「小さい猫なのよ、珍しいわ」
「そうなのか、初めて見たぞ」
カップルらしき2人が近づいて来た、道行く人は必ずバックを下げているけど、この2人も下げている。
「ニャ~≪お店の洋服を見て行ってよ≫」
「可愛いわ~、このお店の人が飼っているのかしら」
「まあそうだろ、店の前に居るんだから」
「ニャ~≪ドアを開けてよ、中に入りたいんだ≫」
そうだ、ドアをかきかきすれば、爪を出さないで・・・・・・開けてくれるかな?
「入りたいのか、開けていいのかな?」
「そうね、私がこの子を抱いていれば、開けた後に悪戯が出来ないわ」
若い女性に抱き上げられた。そうだね、開けて僕が悪戯をしないか心配だよね。
「よし、開けるよ」
「この服は、どうかしら?」
「良い感じだね、水色で君によく似合っているよ」
2人は僕を店の中に入れてくれた。ここが洋服を売っている店だと知っていたけど、店内に入った事がないと、2人は綺麗な洋服が並んでいるのを見て感激した。
『暑い時期に着る服だね、さっぱりとした形と色がとてもいいのが揃っているな』
『そうね、街の人達で綺麗な服を着ている人達はここで買ったのかしら』
『どうだい、ここで1着ずつ買わないか、僕が支払うから?』
『いいの、高そうだけど』
『いいさ、君が綺麗な服を着たのを見たいんだよ』
入口で店の中の様子が分かった2人は、洋服を購入してくれる気になった。
僕はシンシアさんに渡されてカウンターにいる、2人は洋服を楽しそうに選んでいる、その近くにいつでも対応できるようにジェシカさんがいる。
「レイちゃん、偉い、お客さんを連れて来てくれたのね」
シンシアさんは小声で僕に話した。
「ニャ~≪それは偶然です、先ずは店内を見て欲しかったんです≫」
やっぱり、お店のウインドウは店内に売っている物の中で、お勧めが飾ってある、洋服屋さんならマネキンにコーディネートされたお勧めの洋服が飾ってある。このお店にも窓はあるけれど小さい窓なので、店内の洋服を外から見る事が出来ない、なので、中を見て欲しくなった。
お客さんとしてドアを開けて貰った訳じゃなくて、店内を見て欲しかっただけなんだ。開けてくれた人が皆お客になってくれるなら、毎日ドアをかきかきするだろう。
「レイちゃんは、お利口さんでちゅね」
止めて下さいナタリーさん、赤ちゃんに話し掛ける様に話すのは。
「あなたには、この色がいいわね」
「この色は・・・・・・何色て言うんだ」
「その色は緑色と黄色が混ざった色で黄緑です」
色の説明だけして、一歩下がるジェシカさん、余計な事は言わないんだな。
「黄緑か、僕の持っている服の中に無い色だな」
冬の服と違って生地が薄くて柔らかそうだな、冬の服はごわごわしていて硬そうに見える。
「よし、僕はこれに決めた。君はどうする?」
「水色のこの服にするわ」
売れたニャン、売れたニャン。
「すいません、この2着を買います」
「はい、ありがとうございます」
素晴らしいカップルだな、いい洋服を選んだな。
「レイちゃん、その踊りは何?」
「ニャ~《喜びの舞だよ》」
両手を交互に動かし、体を左右に動かす、喜びの舞バージョン1。続いてバージョン2、お礼のお辞儀。
「ニャ~《お買い上げありがとう》」
立った姿勢からのお辞儀、次は右手をお腹に当ててお辞儀、お礼のお辞儀終わり。
「まあ。お辞儀してくれているわ」
「凄い賢い猫なんですね」
「そうなんです、レイちゃんは計算も出来るんです」
「ええ、猫ですよね」
「はい、猫ですね」
驚いた女性に笑顔で応えるシンシアさん。
「シンシアさん、レイちゃんに計算して貰いましょう、私、見たいです」
僕に計算、ペンは持てないから書けないし、言葉も話せないから伝えづらいよな。
「いいわ、ちょっと待ってね、準備するから」
「手伝いますか?」
「大丈夫、硬貨を出すだけだから」
ナタリーさんの申し出を断ったシンシアさんは、カウンターの引き出しを開けてお金をカウンターの上に載せた。
「あれ、どうしたんですか、洋服はバッグに入れましたよ」
ジェシカさんは違う台で購入商品の服をバックに入れていたので話を聞いていなかったようだ。
バッグは2人が持っていた物だ。もしかして、購入する人が入れ物を用意しているのか、それで外を歩いている人がバッグを必ず持っているんだな。この世界に紙袋もレジ袋も無い、自分で入れ物を用意するんだな。
「今からレイちゃんが、洋服の代金の計算をするのよ。ジェシカ、男性の服と女性の服の値段を教えて」
「男性の服が大銅貨1枚と銅貨2枚で女性の服が大銅貨1枚と銅貨5枚です」
木の値札を見て答えたジェシカさんは言い終わると、シンシアさんに値札を渡した。
「さあレイちゃん、今の金額を足し算してくれるかな」
カップルの2人、シンシアさん達3人、合計5人の視線が僕に集まっている。
代金の合計は大銅貨2枚と銅貨7枚だ。よしそれなら、これでどうだ。
「ニャ~《答えを並べるよ》」
台の上に置かれたお金は大銅貨5枚と銅貨10枚だ、これを大銅貨3枚を右に、真ん中に大銅貨2枚と銅貨7枚、左に銅貨3枚を置いた、出来た事を知らせる為にお辞儀をしよう。
「ん、これは何の並びなの?」
「さあ、真ん中が合計金額になってますね」
「ああ、僕が大銅貨3枚出した時の答えになっています」
「凄いです、こちらから見ると、支払いに出した金額、洋服の金額、最後がお釣りになってます」
「そちら側から見ないといけないのね」
「凄いです、シンシアさん」
「シンシアさんが教えたんですよね」
「まあね」
シンシアさんが自慢顔で僕に視線を向けた。
「計算より凄いですよ、僕が出すお金の事も考えた事になります、それにお釣りまで並んでますよ」
「小さいのにお利口さんね」
「面白いのが見れたよ、では支払いますね・・・・・・ああ、残念だ、丁度あったよ」
男性はポケットから小銭・・・・・・硬貨を出したけど、大銅貨3枚では払ってくれなかった。
「はい、丁度受け取りました」
「はい、お二人の洋服はそれぞれのバックに入っています、ご確認して下さい」
カップルの2人にそれぞれのバックを手え渡して、中に入っている洋服を確認して貰った。
「ありがとうございます、買い物が楽しかったです」
「また来ます、今度は冬服を」
「ありがとうございます、お待ちしております」
「ニャ~《また来てね、そして購入して下さい》」
手を降ってお見送りだ。
「凄いわ、手を降ってくれてる」
「本当だ、子猫ちゃん、ありがとう」
カップルは帰って行った、売れたな洋服。大変だな商売は、他にお客さんはいないもんな。
「キャ~、レイちゃんありがとう、洋服売れたわ」
「凄いです、店にお客を呼び込んでくれるなんて」
「そうですよ、支払いの計算を間違えてるのかと思いしたよ」
「そうよね、反対から見るとよく分からなかったわ」
みなさん、撫で回すのは止めましょう、悪戯されているようです。
「ニャ~《頑張って疲れたので休憩です》」
「レイちゃん、また外にいてね」
シンシアさんの対応の早さに困ってしう。ドアを開けて外に出された僕は、ドアが閉まるとリビングに向て歩きだす。
「ニャ~《猫は気まぐれ、のんびりと暖炉の前でくつろごう》」
玄関の入口横にマッサージの看板が置かれていた。
《マッサージ、止めました》
「ニャ~《お買い上げありがとう》」
呼び込みは少し成功してる、店内の洋服を見ても買わない人がいるのは当たり前。でも、前よりもお店に入ってくれる人は増えた。
僕はお店の前で招き猫をしてる、ここまでは前と変わらないけど、首から下げた板には《いらっしゃいませ~》と書いてある。
毎日僕が呼び込みをしていると、『レイ、毎日ご苦労様、いいもの作ったよ』とミヤちゃんが作ってくれたのがこの看板だ。
僕がいくら声を上げてもニャ~とニャンとしか聞こえないのだから、呼び込みの声出しとしては失敗している、僕の容姿が珍しくて近寄ってくれたり、撫でてくれる人がいるけどお店に入ってくれる人は少ない。
優しいミヤちゃんが考えてくれたのがこの看板だ。メグちゃんも『す・ご~い、今日も頑張ってる』と言ってくれている。す・ご~いを聞くのが少し楽しい。
ドアから出てきた若い婦人は嬉しそうだ、自分に合った洋服が見つかったんだな。
ここに居て気が付いたのが男性があまり洋服に興味がな事だ、男性だけで店内に入った人はいない。お客さんの呼び込みは、男性だけの時には声をかけない。
「猫ちゃん、いい洋服が買えたのよ、着れる期間は少ないけど、来年も着れるから買っちゃったのよ」
「ニャ~《そうなんだ、季節が変わるんだね》」
僕はお辞儀して手を降った、若い婦人は驚いた顔をした後に手を降って坂を下りていった。
「ニャ~《季節が変わると僕は寒くて暖炉の前だな》」
そうか、寒くなるなら、僕が産まれてから1年位になるんだな、色々あったな。
母さんは元気かな、もしかして僕の兄弟が新しく生まれていたりして。兄さん達も元気かな、母さんの近くに住んでいそうだから、母さんのところに遊びに行っているのかな。
「ニャ~《いらしゃいませ~》」
僕が考え事をしていたら、お客さんがドアを開けた。
「キャ~、生きてるんだ、置物かと思ったわ」
生きてます、お姉さんも生きてます。
まだまだ知らないことだらけ、でも問題なし。今のところ猫生は楽しいです。




