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ニャンだふるワン  作者: 自由人書
11/521

ニャ~・・・11

「レイちゃん、ここのドアは開けとくから帰って来たら閉めるのよ」


「ニャ~≪全力で押します≫」


僕に手を振って玄関から倉庫に向かったシンシアさんは、これから仕事だ。


ミヤちゃんとメグちゃんは何処かに遊びに行った。『夕飯までに帰るから』と言ってメグちゃんの手をミヤちゃんは引いてリビングから出て行った。


いつもなら勉強の時間だけど、最初の頃よりも勉強する日が減ってきた。それは、2人が足し算と引き算がほぼ完ぺきに出来るようになったし、言葉の勉強も少しずつすればいいところまできたと、シンシアさんが言っていた。だから勉強する日が減って、僕ものんびりとした時間を過ごす事が出来るようになってきた。


猫の僕が出来る事は少ない、何かしたいと思って街の中の散歩に出かける事にした。


「ニャ~≪いくら何でも、開けすぎだな、僕が通れるくらいにしとこう≫」


そんなに押すのが大変ではないけれど、動きだせば僕にも押せるドアだった。さあ、出発だ。


僕の家のお隣さんは雑貨屋さん、看板に雑貨店と書いてある。僕も字が読める様になった、ミヤちゃん達の勉強に付き合っていたら覚える事が出来たのだ。


「今日もいい天気ね」


「そうね、洗濯物が乾いて有難いわ」


道行く人が会話しているけど、挨拶は日本と変わらないんだな。


「南の方の街に魔物が現れたらしいのよ」


「まあ、大丈夫だったのかしら」


「魔物の数が少なかったらしくて、騎士団が倒したそうよ」


「良かった、うちの親戚が南の街に居るのよね」


日常的な会話は最初だけだったな、街の婦人が魔物の話をしているなんて、やっぱり異世界だな、ここは。


聞く情報収集は今度にして、この街の風景、街並みを見て回ろう。家でのんびり過ごすのが最高の贅沢なら、少しだけ外で遊ぶ、そうすれば最高の贅沢ののんびりが更に幸せな時間になる筈だ。


猫生のルールその弐、外で少し遊んで、家ではのんびりライフ。


「小さくて可愛いわね」


緩やかな馬車の道を歩いていたけど、道の真ん中は目立ってしまう、気を付けよう。日本の野良猫が建物の近くしか歩かないのをよく見かけた、あれを真似すれば目立たないし、何かあったら脇道に逃げれる。


「ニャ~≪僕の知っているの猫の行動バターンを実行すれば、僕も猫なんだと実感出来るな~≫」


時折建物の陰に隠れれば更に猫らしさがアップ、もう誰にも気付かれない。


猫探偵の僕は誰にも気付かれないようにして、ご近所さんの建物とその建物で何をしているのかを調べる。ドアの上の石の部分にはめ込んである看板、鉄の金具でぶら下っている看板から。


中の様子は外から確認出来ないが、窓の前でジャンプして覗く事は決してしてはいけない、目立ってしまうからだ、看板の字が読めるんだから、どんな商売のお店か分からなかったら、後日詳しく調べよう。


「ニャ~≪看板の字を読まなくても分かる、パンの匂いでパン屋さん、発見≫」


いい匂いだ、甘いのは苦手だけど、パンの匂いはいいよな。どんどん先に進むぞ。


緩やかな道の端に着いた、工場のような雰囲気の建物だ、入口のドアが両開きで片方のドアが開いてる。これは中を覗けと僕の為に開けてあるんだな。


男性が10人位いる。左手にはのみに似ている道具を石に添えて、右手の金槌を左手の道具の後ろに打ち付けている。


「カン・・・カン・・・カン」


どうやら、石の加工をしている工場だ、邪魔にならないだろうと思い、中に入って見る事にした。


工場には、大きさと種類の違う石が凄い量が置かれていた。東京の板橋区に石加工の工場があって、工場の建物の横の敷地に石が沢山置かれていたけど、ここの石の量は置いある面積が大きいのと山積みの高さが違うので凄い量の石だ。


石の移動に使うだろう、木のクレーンにはロープで結いた布があって、布の部分に石を載せるのだろう。木のクレンは何個もあるので、大きい石は人が運ぶより安全に移動出来そうだな。


「珍しい、お客さんだな」


僕は石の加工の職人さんに近づき過ぎたようで、発見されてしまった。


「小さくて可愛いか、ハリーさんが言っていたのはこの仔猫だな」


初めに発見した人の隣で作業している人はハリーさんを知っている?僕の事を聞いた事があるんだな。


「ニャ~《初めまして、レイです。この時代・・・異世界の石の加工に興味があって見学に来ました》」


「1+1=?」


足し算だ、僕に出したんだな、近くの石の前に行き。


「ニャン、ニャン」


声と一緒に石を叩く。


「4+5=?」


「ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン」


声と一緒に9回叩いて、問題を出した男性に視線を向ける。


「親方、今のは何ですか?」


「2問とも正解だ。ハリーさんがうちの猫は計算が出来ると言っていたから、問題を出してみたんだ」


この人が親方、力仕事なら任せろ見たいな雰囲気が出ているぞ、髪は黒髪だ。親方と言った若い衆は金髪だ。


面白い人だな、ハリーさんの言った事を信じて僕に足し算の問題を出したよ。普通なら疑るし、問題を出してみようと思わないよな、僕なら問題を出さない。


「今のがそうなんですか、信じられませんよ」


「それならお前が問題を出してみろ」


ハリーさんの事を知っている40代位の親方、足し算が出来るはずがないと疑っている20代位の男性、2人は似ている、そして工場内の作業員全員が僕の周りに集まってしまった。


「ニャ~≪どうも、どうも、レイです、猫なので気にしないで下さい」


「へ~、計算が出来るんだってよ」


「まじかよ、動物が出来るのか」


「小さくて可愛いな」


「あれが猫、もっと大きいよな」


「何でお前ら集まっているんだ、仕事しろ」


「いいじゃないですか親方、計算をするところを見るぐらい」


「そうだ、賭けをしないか、計算が出来ると思う者と計算が出来ないと思う者に分れて」


賭けか・・・僕に何のメリットもないよな、帰ろう、仕事ぶりを見たかったけど、今はそれどころじゃないようだ。


「今日の昼飯は終わったから、明日の昼飯を賭けないか、親方、いいでしょう?」


「まあ、計算が出来ると言い出したのは俺だからな、たいして時間もかからないだろう、俺は出来る方に賭けるぞ」


「俺は出来ない方に賭ける」


「出来る」「出来ない」「出来ない」「出来ない」「出来る」「出来ない」「出来ない」「出来ない」


後ろの方で盛り上がっているけど、僕は街の見学を続けるよ。この街は広いから何日掛かるか分からないぞ。


「待ちな、お前がいないと賭けが出来ないだろう」


のんびり歩いていた僕の前に回り込むように現れた筋肉モリモリのおじさん、その筋肉に似合わず素早い動きだ。


「ニャ~《どうせ間違えないんだ、出来るに賭けた人の正解だよ》」


僕の訴えは退けられた、筋肉モリモリおじさんの手に載せられて、皆が集まっている場所に戻された。


「よし、子猫が来たぞ」


「みんなの賭けは決まった、後はお前さんが答えるだけだ」


この人、やっぱり親方に似ているな、親子か?、若い頃の親方はスポーツの出来るイケメンだったのか。


「おい、雌猫だし、名前は確か・・・・・レイちゃんだった。お前と言うのはやめろ」


「すいません・・・レイちゃんの準備がいいなら計算して貰おう、みんないいな」


「ニャ~≪僕に謝ったのかな、気にしないで猫なので≫」


息子さんが仕切るんだな、親方は正解に賭けたんだよな・・・あれ、普通は自分は賭けないのに正解に掛けたよ。お昼を奢って貰うつもりだな。


「俺の勝ちは決まったな」


「それはどうかな」


「早く始めてくれ」


「子猫のレイちゃん、答えが分かったら、石を叩いて教えてくれ」


「ニャ~≪分かった、難しい問題をお願いします≫」


石を叩いて答える事になったので、大きい石の前に僕は移動した。その僕にみんなが付いて来た。


「用意はいいようだ、親方、問題を頼む」


「文句はなしだぞ、3+4=?」


問題が出たので、正解を手を交互にして石を叩く。


「おお~、7回叩いたぞ」「すげえ」「本当に言葉を理解しているんだな」「偶然だ」「そうだ」「もう一問出せ」


「仕方ないな、6+8=?」


「おい、数が多いぞ・・・それでは調子にの」


「ニャ~≪あそれ~、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン≫」


僕はリズムよく14回石を叩いた、調子に乗って叩きたかったけど、お昼を賭けた勝負なので真剣に答えた。正解するに賭けた人に恨まれたくないから真面目に答えた。違うか、負けた人に恨まれるけど、正解にはしないとハリーさんと親方が嘘を言った事になる、それは避けないとな。


「今の14回叩いたよな」


「そうだな、14回叩いたぞ」


「おお~、合っているぞ」「なんだよ、負けかよ」「飯おごるのか俺が」「32-27=?」


嘆いている人達の中から問題が出たぞ。


「ニャ~≪あそれ~、5回だな≫ニャン、ニャン、ニャン、ニャン、ニャン」


「本当に分かるんだな」


若い職人さんからの問題を解いた僕は帰る事にした、今度こそ。


「ニャ~≪仕事頑張ってね~≫」


別れの挨拶をしたので、手を振って外に向かった。


「おい、手を振って行ったぞ」


「親方の話を信じればよかったよ」


「まあ、奢る人数が少ないんだから、いいだろ」


「そうだ、出来るに賭けたのは3人だ。それを7人で奢るだけだ」


楽しかったな、ハリーさんの知り合いが僕の家の前の坂のカーブで、石の加工場をしている。よし、覚えた、もう少し作業を見たかったけど、気が付かれない様にしないと作業をしているところを見る事が出来ないかも。


次に来た時も賭けの対象にされたら困るな。






運動の後にお昼を食べていると、リビングの外で何か音がした。


「ニャ~≪何の音かな≫」


汚れた手を舐めてキレイにしてから、音の正体を確認しに行こう。


舐めた手がキレイになったか確認が終わると、リビングを出て音のする方に向かう、どうやら、下の階の方から音がする様だ。


階段の手前から下を見ると、1階には石の加工所の親方とその息子さんが来ていた。二人の後ろには作業を見ているハリーさんがいた。


「ハリー、この辺でいいのか?」


「どこでもいいですよ」


「お前はいつもそれだな」


息子さんとハリーさんは同年代かな?同じ位の歳に見える。息子さんはスポーツの出来るイケメン、ハリーさんはスポーツが出来そうに見えないイケメンだ。


「仕方ないだろ。専門家に任せているんだよ」


「通れればいいんだから、そんなに難しくないな。丁度いいとこに来たな、レイちゃん」


トコトコと歩いて行くと僕に気が付いた親方が丁度いいと言っている、何の事だろう。


「ニャ~≪何しに来たの、親子で?≫」


「今、レイちゃんがいつでも外に出れるように小さい穴をくり抜いて貰うところだよ」


それで階段脇の壁に向かって作業しているのか、いつでも出れるようになるのは嬉しいけど、穴なんて開けて大丈夫なのかな。


「こないだは、遊びに来てくれたありがとう。お昼を奢って貰えたぞ」


親方に似た黒髪の男性がお礼を言ってきた、あの時に足し算が正解する方に賭けたんだな。


「なんでレイちゃんを知っているんだ、それに奢って貰ったて何の事だ?」


「うちの工房に来たんだよ、その時に出した問題を正解出来るか、お昼を賭けて見事に賭けに勝ったんだよ、それで、奢って貰ったんだ」


「事実を知っているのにズルいぞ」


「悪いな、俺も奢って貰った」


ハリーさんは親方に視線を向けて苦笑いをした、まあ、知っていて正解に賭けるのはズルだよね。


「ニャ~≪あまりいい事ではないよズルは・・・でも賭けたくなるか≫」


「レイちゃん、壁の前に来てくれ、穴の大きさを親方に決めて貰う」


「ニャ~≪了解です≫」


ハリーさんの指示に従って、階段の3段目から親方の前の壁際に移動して座った。


「しかし、レイちゃんは小さいな、これなら開ける穴が小さくて済むな」


「ニャ~≪よろしくお願いします≫」


親方は僕を壁の前からどけると開ける大きさの印を付けた。僕は穴を開ける作業を見ないで寝る為に3階に向かった。





僕は今幸せだ、ミヤちゃんとメグちゃんに挟まれて寝ていると暖かいからだ、時折寝返りで下敷きになりそうになったり、手が飛んでくる事があるけど、まあ、今のところ無事だ。


みんなが寝静まるのを待っていた、2人に挟まれた状態から布団から出ると1階に向かう、階段横の僕専用の石の壁を押す。


僕が自由に出入り出来るように、知り合いの石の加工工房の親方に頼んでくれた穴は、押すだけなので僕に合ったドア?だ。


嬉しかった僕はハリーさんに初めてマッサージをしてあげた。『こんなに気持ちいいのか、シンシアはいいよな、呼べばレイちゃんがしてくれるからな』と呟いていた。


外に出た後に押し出された石を元に押せば、穴が塞がる。


「ニャ~《猫は夜行性、初めての夜の街の散歩だ》」


散歩で見つけた空き地には、これから建築で使う加工された石が置かれていた。


空き地をくまなく見て回るけど、誰もいない、猫もいない。


夜行性の猫なら空き地に集まって会議でもしているのかと思って夜に家を抜け出してきた。


「ニャ~《今日は会議がないなのか、明日も来てみよう》」






今日も誰もいない、猫の会議はどうしたんだ。


「ニャ~《ここじゃないのか、他にも空き地があるのかな》」


空き地を探すのは大変だ、石造りの建物をそう簡単に建て替えないからだ。


仕方ないので、朝までのんびりと待つ事にした。


「ニャ~≪何しているんだ、小娘≫」


のんびりとしていたら眠ってしまったようだ。


掛けられた声の主を見るとツッパリさんだった。今日もデカいな、最初から大きいのかな。


「ニャ~≪昨日の夜から、猫の会議がここで行われると思って待っていたんだよ≫」


ツッパリさんは朝の散歩のようで、20代位の男性と一緒にいた。リードで繋がれていると猫よりは犬のような扱いだ。


「ニャ~≪よく分からんが、夜は寝る事だ。それに俺達猫は、家から出るのはそんなに簡単ではないんだ。こうしてご主人様と一緒じゃないと外に連れ出して貰えない≫」


「へ~、小さい猫だ。誰かが小さい猫を飼っているて聞いたけど、君なのかな」


「ニャ~≪そうです、ハリーさんの家に居ます≫」


男性が僕を撫でてくれるとツッパリさんが僕を睨んだ。


「いや~、猫を撫でるのに屈まないといけないなんて、本当に小さいんだな。ジョン行くぞ」


「ニャ~≪おれは行くぞ、朝の散歩だからな≫」


「ニャ~≪じゃあね、ジョンさん≫」


夜の猫の会議に出たかったけど、そんなものはないんだな。それにツッパリさん・・・ジョンさん達の様に体が大きいと外に出る事が出来ないかもしれないんだな。


猫の会議が無いのなら家に帰ろう。それにしても夜に出歩いている人がいないとは思わなかったな、東京だとそんな事はないのに。


「まあ、レイちゃん、朝帰りなの、いいオス猫でも居るの?」


家の中に入って石を押して元の戻そうとしていたら、シンシアさんに話し掛けられた。


「ニャ~≪猫の会議に出席しようと出かけたけど、会議はありませんでした≫」


「そう、いなかったのね、残念だったわね」


いいオス猫の事はスルーで、猫の恋愛事情は僕には関係ない。


シンシアさんは会話が終わると倉庫のドアを開けて中に入って行った。


僕が外に出るのに石を押しているのを見ても驚かないシンシアさん、不思議だとても不思議な一家だ。

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