ニャ~・・・109
「レイちゃん、あそこにレイモンド君達がいるわよ」
「そうニャン、何しているのかニャン」
授業の終わった後の職員室の入口でこちらを伺う2人の少年は、僕と目が合うと帰って行った。
「あれ、帰ったんだ。誰を探していたのかな」
お金の用意が出来ないんだな、しかし一門も負けない、それが授業を受ける為に必要だからだ。
「ごめんない、お母さん、うええん」
「もうどうして、お菓子を食べたのよ」
「凄く食べたかったからだよ」
僕が学校から帰って来るとリビングから泣き声が聞こえて来た。メグちゃんがまたお菓子を食べたんだな。見付かって、シンシアさんに怒られているんだ。
「ええ~ん、ごめんなさい、もう少し食べてから怒ってよ」
「どうしてなのよ、何で、高そうな方のお菓子を食べたのよ、わざわざ、詰め替えたのに」
安そうな方なら良かったのかな。
「ええ~ごめんなさい、詰め替えるのを見ていたから、そっちの方が美味しいのかと思ったの、美味しかったよ、ええ~ん」
「それで、メグは何処にいるのよ」
「部屋で寝ているよ、もう食べれない、夕食の時に起こしてと言っていたよ」
もしかして、ミヤちゃんなのか。リビングの階段の所で盗み聞きをしていたので泣いているのはメグちゃんだと思っていた、あの懐かしいお菓子事件の再来かと思ったら、犯人は・・・・・・同じ人物だな。
「ただいまニャン、ミヤちゃんニャン、お話あるニャン」
「ああ~、レイが呼んでいる、仕方ないな、今行くよ」
「ちょっと、どうしてなのよ」
「先に行くニャン」
「レイ、ありがとう、助かったわ」
「いいニャン、美味しかったニャンか?」
「美味しかったよ」
「えへへへ、沢山食べれたね」
どうやら、ミヤちゃんの泣きは演技だったようだ。
「今度はお姉ちゃんだったね、怒られたの」
「仕方ないわ、前回はメグがしてくれたんだから、今回は私よ」
「美味しかったよ、一杯お菓子が有ったね」
部屋に戻って来た僕達はベッドの上で先ほどの事を話している、どうやら、ジャンも共犯らしい。
「イレちゃん、ありがとう、次もよろしくね」
次もあるのか、そんなに上手く怒られているところに帰って来れるかな。
「お姉ちゃん、他のお菓子は食べないの?」
「そうね、お許しが出ないと今は駄目なのよ。今度はお願いしてみようね」
「うん、早く食べたいな」
ジャンもお菓子好きか、今からこれだと大変だ。
「そうだ、お姉ちゃん、掃除をしようよ。そうすれば早く食べれるかも」
「そうね、家のお手伝いは大事よね、よし、先ずは母さんの部屋の掃除よ。次は2階ね」
「ホウキを取って来るね」
お手伝いか、下心の詰まったお手伝いだ、それもいいかも、無償でお菓子は食べれない。
お昼を食べに行こ、僕はまだだった。
「ニャ~≪モスラ君、君は見る影もないくらい変わりようだね≫」
どうなんだろう、この状態のモスラ君をツンツンしていいのかな。
どう見ても小さい木の枝、これがこの世界の蛹なのかな。ネットに載っていた写真と同じで、斜めに傾いた状態で糸の様な物で木にくつ付いている。
「ニャ~≪いつこの状態になったのかな、見たかった、それでこの蛹からいつ出て来るのかな≫」
出て来るところを見たいけど無理だな、いつ出てくるのかさっぱり分からないぞ。
「ニャ~≪そうだ、ベントン先生に聞いてみよう、趣味は山登りの様な感じだよな≫」
うん、山登りとは聞いていないけど、天気を当てたり、危険な事の注意点を教えてくれるだ、知っていそうだな。今度聞いてみよう。
「おお~、これは七色アゲハ蝶だな、凄いのを見付けたな」
ベントン先生に山の天気と虫の事を話したら見に来てくれた。
木の枝にスルスルと登って行くベントン先生は『よく登ったんだ、この辺の木に、懐かしいな』と言って降りて来て僕を抱き上げてもう一度登ってくれた。自分でも登れるけど、親切は大事だ。
「ニャ~≪あ、話して良いのか≫、いつ出てくるニャン、直ぐニャン」
「ハハ、いつかは分からないよ、今の時期の蛹になったのなら春頃の暖かくなった時だな」
ええ、そんなに先なの後100日以上先だ、春になったら時間がある時は来てみよう。
「だいぶ先ニャン、楽しみニャン」
「私もたまに来てみるよ、そうだ、七色アゲハ蝶を見ると幸せになれると言い伝えられているんだよ。私も1度だけ見た、その日に・・・・・・結婚申し込んだんだ、今でも覚えている、この近くで見た後に申し込んで、返事ははいと言われたんだ。レイちゃんも見れるといいな」
「はいニャン」
「よし、帰ろう。楽しみだな」
ベントン先生は帰って行った、僕は家が近いのでもう少し見ているつもりだ。
「ニャ~≪モスラ君、君を見た人は幸せになるらしいよ、僕も見れる様に来るからね≫」
ああ、七色アゲハ蝶の大きさを聞くのを忘れていたな。やっぱり、大きさが気になるよ、青虫の時の大きさは僕の知っている青虫よりも大きかった。
「ニャ~≪これでお金の単位がよく分かるな、授業でやらなくてもいいな≫」
この国のお金はジーロと呼ばれている、最初の硬貨が小銅貨で1枚だと1ジーロで次が銅貨で10ジーロ。そんなに難しくないな、硬貨の種類の順番が大事だな。
「お金は用意出来たよ、これでいいんだろ」
「僕も持って来たよ」
2人で相談をしたのかな、同じ金額だ。
「ニャ~≪授業は終わったニャン、付いて来るニャン≫・・・・・・・授業は終わったニャン、付いて来るニャン≫」
「ああ、それならこれだ」
「ああ、僕も抱きたいよ」
まあ、いつもの事だ、それよりも市場の露店に行こう。
「すいません、白色の髪の女の子は最近ここに来ましたか?」
「そうだな、来てくれていないな」
「そうですか、ありがとう」
「ここのお客に白い髪の女の子はいますか?」
「うちのお客にはいないな、来てくれれば忘れられないな」
「そうですよね、ありがとう」
「美味しいお菓子を買いに白い髪の女の子は来ていますか?」
「ああ、あの子達か、最近見かけないな」
「どうも、ありがとう」
「買わないのか?」
「はい」
「その子達なら、よく来てくれるよ、夏には何回も来てくれた」
「やっとか、4枚下さい」
「・・・・・・? 人探しじゃないのか、はい、4枚だね」
「まだ、1件目だよ、まだ、探すんだよね」
「ニャ~≪そうだニャン、頑張るニャン≫」
「ここは違った、そっちはどうだ」
「4枚買って来たよ」
「よし、向こうの路地に行くぞ」
効率よく別行動にしたレイモンド君達、ルーカス君が行った露店から4枚のお菓子を買って来た。
「よろしくお願いします」
「これが・・・・・・・買って来たお菓子です」
「おお~、お菓子が目の前に・・・・・・何でくれるの、返さないよ」
「いい心がけね、どうしたの二人とも?」
「さあ、よく分からないよ、レイちゃんがお菓子を買えと」
「そうなです、ミヤちゃんとメグちゃんの行き付けのお店で菓子を4枚づつ、5か所から買って来たんです」
「レイ、説明」
「メグちゃんニャン、杖を貸してニャン、二人が試すニャン、お礼はお菓子ニャン」
「おお~、そんな理由だったのか・・・・・・杖?」
「レイモンドが杖は何かと聞いているよ」
お菓子を買って帰って来た僕達は・・・・・・僕だけはお昼を暖炉の前で済ませんて、1階の倉庫に下りて来た。
リビングでメイちゃん達と遊んでいたシンシアさんにミヤちゃん達が何処にいるのか聞いたら、工房から沢山の積み木が納品されて、空いている木箱に詰める作業をしていると聞いた。
二人にはお昼抜きで、我慢して貰っている。今は二人のお願いを先に済ませるつもりだ。
「杖、メグの杖の事よね」
「私の杖、部屋にあるよ」
「だから、その杖は何なんだよ」
「強いて言えば、魔法の杖かな」
「二人に貸してニャン、お礼ニャン」
もうお礼の一部はお口の中に吸い込まれている、元は20枚、5種類でそれぞれが4枚有った。
「ニャ~≪私も私も食べるよ、早く頂戴≫」
「いいのかな、私も貰って」
「いいニャン、4人分ニャン」
そう、どうせ皆は一緒にいる、倉庫にいたお陰で外で探さないで済んだ。
僕しかこのお菓子の事と2人のお願いの事を説明できる人はいない、なので、積み木を詰め込みながら説明を聞いて貰おう。
「そうなんです、師匠にお願いしたんです」
「レイ、流石ね。良く分かっているわね、言えば貸したのにお礼を用意するなんて。二人には丁度いいわね」
「うん、貸してあげるけど、お菓子は返さないよ」
倉庫では、皆が積み木を箱詰めにしてくれている、説明が終わる前にはお礼のお菓子は食べ終わっている。返す事はもう出来ない。
「でも、偉いよね。魔法を使える様になりたくて、お金を貯めたんでしょう」
「ああ、それは大変だったよ。小銀貨1枚を貯めるのは」
「そうだよ、僕もパンの販売にお店の中の掃除をしたんだ、前借もしたんだよ。それなにお菓子に使ったのは銅貨5枚だよ」
「ああ、師匠がお金と言うから出来るだけ手伝いをしたんだ、父さん達には何に使うか秘密にしたんだ」
そうか、それなら最初に説明してあげれば良かったな、メグちゃん達に秘密にしようと思って・・・・・・頼む時まで内緒にしていたんだ。
いつになるか分からないニャンだったからなんだよね。
「おい、四角の積み木が無いぞ」
「ああ、メグの横の木箱よ」
「あ、僕も四角がないや」
「終わったら、皆で港ね、そこで試せばいいわ」
「そうだな、ルーカス、急いで詰めるぞ」
「うん、早く試したいね」
モモと僕はのんびりとみんなの作業が終わるのを待っている、僕が手伝えたのは、お菓子を用意する事。
それに、積み木を詰める人を増やす事だな。3人から5人、作業がはかどる。
「この杖のここの部分が光るのか?」
「高そうだから、落とさないでよ、僕も借りるんだから」
「ああ、何処を持っていてもいいんだよな」
「はいニャン、唱えるニャン、光るニャン」
「早くしなさい」
皆で港の岸壁まで来た、ミヤちゃん達は少し離れた所に座っている。レイモンド君とルーカス君は岸壁に立って海の方向に向いている。
いつもの様に魔法の効果が有った時の安全の為だ。杖を持っているのはレイモンド君、これから魔法を唱えるところだ。説明は倉庫でしたので分かっている。
「俺からだ、・・・フー、どうだ、光ったのか」
「どうなんだろ、ねえ、メグちゃん光った?」
「光ってないよ、・・・ルセルティフィキャ、ほら、こんな感じだよ」
レイモンド君の時には光らなかったクリスタルの部分も、メグちゃんが唱えたら黄色の混じった白色に光った。いいよな、僕も光らせたいな。
「おお~、光ってる、本当なんだな」
「奇麗だな、僕も光らせるよ」
「よし、・・・オー、また駄目だ、次ルーカスな」
「うん、頑張るよ」
「ちょっと、もう終わりなの? 他の魔法はどうしたのよ」
「俺、これしか知らないぞ」
「僕もだよ」
僕とモモは岸壁んから何か起きるかと海を見ながら寛いでいた、レイモンド君が唱えたら杖を見るのに視線を上にあげていた。モモも同じ行動をしていて、次の魔法が唱えられるのを待っていたのだが。
二人が覚えているのは2種類、火と水の魔法だけだった、授業であんなに色々な種類を唱えなさいとメイガン先生達が言っていたのに。
「そうか、だからお菓子を買って来たのね、レイ、教えてあげて」
「うん、二人は凄いよ。2種類しか覚えてないなんて」
メグちゃんが頷いている、あれは、お菓子の貢物がもっと欲しいと思っているんだな。
「その~、本当に他は知らないの?」
「ああ、覚えてないよ」
「僕も・・・・・・覚えていません」
「いいニャン、先に言うニャン、後に続くニャン」
説明は省こう、どうせやる事は同じだ、面倒だし、2人もその方がいい筈。
「おお、師匠お願いします」
「僕にもお願いします」
「はいニャン」
仕切り直しだ、僕の後にレイモンド君が魔法を唱える。2人の魔法の属性を探すぞ。
「・・・ルミエール、駄目か、俺には才能がない」
「まだ続けるニャン、次は・・・・・・他のニャン」
「他の?」
ミヤちゃん達は暇そうにこちらを見ている。珍しく、モモが起きている、唱える度に杖を見上げている。
岸壁に立って嘆いているレイモンド君、今までに終わったのは、攻撃魔法がある属性魔法だ。次からは試そうと思うのは、補助魔法とかの効果がる呪文だ。
「足が速くるニャン、ピエ・ラピッド・・・・ピエ・ラビッド」
「ああ、唱えるのか、・・・ピエ・ラビッド『ああ、光ったよ、レイモンド』、おお~、すげえ、黒色だ。やった」
黒色に光るクリスタルの部分、海の方には何も飛んで行っていないので、杖が光って属性が分かっただけだった。
「次行くニャン、ピエ・タール」
「次か・・・ピエ・タール、お、また光った」
「ああ、レイモンドが杖を光らせたよ」
「あら、本当だ」
「へ~、黒色もあるんだね」
静かな隣のモモに視線を向けると、気持ち良さそうに寝ていた。
「次行くニャン、フロテ(浮く)」
「・・・フロテ、黒か、俺は黒色なんだな」
この後も杖のクリスタルの部分は黒く光った。どうやら、レイモンド君は黒色の属性・・・・・・何か分からないけど補助系の魔法の才能があるみたいだ。
ここで、二人に交代で唱えて貰えば手間が省けた事に気が付いたけど、もう遅い。僕の知っている魔法の呪文は全て言い終えた。また最初から言わないといけないのか。
「僕の番だね、杖いいかな」
「おう、頑張れよ」
「うん、・・・フー、駄目だ、・・・オー、ああ~光ったよ、青色だ」
「ルーカスは早かったわね」
便利過ぎだ、メグちゃんの杖は、光らない僕がとても可愛そうだぞ。
「二人ともおめでとう」
「黒色か、ライラ先生の仲間だね」
「おう、ありがとう。簡単だったな、これならお菓子をもっと買ってもあげても良かったよ」
「ありがとう、嬉しいな。攻撃かな、生活かな」
「決まりね、露店に行くわよ。その前に杖を置きに行くわ」
「ニャ~≪お菓子食べれるんだ、私も付いて行くよ≫」
レイモンド君は黒色の補助魔法か、ルーカス君は水の魔法だ。
皆は杖を置きに行ったら、露店に行くようだ。
「レイちゃん、レイモンドが串焼きを奢ってくれるよ」
「ニャ~、行くニャン、直ぐに行くニャン」
いいのか、串焼きの方が高いんだぞ。皆がぞろぞろと僕の家に向かう、杖を置いたら串焼きだ。
ただ、使える可能性のある属性が分かっただけだけど、いいか・・・・・・串焼きを食べた後に練習が必要だと教えよう、それがいい、雰囲気が悪くなる。




