ニャ~・・・105
「ニャ~≪美味しいぞ、小娘。美味しいですご主人≫」
「ニャ~≪こんなに美味しいお肉があるのか、良い思いをしているんだな小娘、ありがとうございます≫」
「ニャ~≪あの~、そろそろ、名前で呼んでも貰えませんかね、こうして美味しいお肉をご馳走しているんですし、先日はホットケーキの試作品を何回も食べたんだから≫」
何故か僕にだけ態度の違う二人、別に嫌ではないのだけど、いつも怒られているような感じなので、この機会に言って変えて欲しい、良い人たち・・・・・・いい猫の二人なので悪いイメージで聞こえるのは良くないだろう、中には仲間でも口だけ悪い人がいるだろうけど、ジョンさん達は礼儀正しいし人当たりもいい、僕以外には。
「ニャ~≪致し方ないな、確か小娘はレイだったな。お代わりをお願いする≫」
「ニャ~≪レイ、俺もお代わりだ≫」
「おじさんニャン、お代わりが欲しいニャン」
「ええ~、レイちゃんが話しているよ、猫だよね」
「何でだ、今のはレイちゃんの声なのか、凄いな」
「そうか、良い食べっぷりのだな。キャシー、お客さんは食べるのが早いぞ、どんどん焼け」
「は~い」
僕が話す事を初めて知った二人は驚いているけど、当たり前のおじさんは二人を気にしないで焼肉の追加を頼んでくれた。
ここにジョンさん達がいるのは、岸壁でキャシーさんの家に行くと決めた僕が西側の向かって歩いているとジョンさんに会った。勿論飼い主さんも一緒だ。
そうだ、溺れた時のお礼をしていない、自分で用意する事は出来ない。それで、一緒に付いて来て貰い、お肉をご馳走しようと思った。
たまにしていた仕草、こっちに来てをジョンさんの飼い主さんにした。ジョンさんには付いてくると美味しいお肉が食べれるよと言った。なので、ジョンさんに引っ張られる、僕に付いて来る様に誘われた飼い主さんは『僕に用があるんだな、よし、付いて行くよ。何処に行くのかな、楽しみだな』と言って付いて来てくれた。
東側から西側の港近くの道を歩いていると、今度はマックスさんに会った。モモを助けてくれたマックさんにもお礼をしたいので付いて来る様にお願いした。マックスさんの飼い主さんもジョンさんの飼い主さんの様に付いて来る事になった。
『俺も行くよ、面白そうだ。マックスとジョンの勝負以外に何かあるようだな』
僕が食べたかった美味しいお肉、僕だけだとおじさん達の喜びは少ないだろう、僕が食べれるのは串焼きなら3本か4本だ。焼くのが反対に面倒な量。しかし、大人数なら面倒な事がやりがいに代わる。
おじさん達が喜ぶ、僕はお礼が出来る、ジョンさん達は美味しいお肉を食べれる、いい事だ。
リビングにいないキャシーさんはお肉を焼いてくれている。そして、おばさんは・・・・・・お肉をさばいている、解体とも言う作業を『あら大変お肉が少ないわね』と心配になったようで、追加のお肉を取りに行った、だが、食べ始めてもいないうちから、焼けてもいなかっが・・・・・・初めからお肉を取りに行ってくれているおばさんは、まだ、戻って来ない。
僕はいつもの様に冷めるのを自分の皿の前で待っている。この家にはマイお皿が常備置かれている、僕専用の小さいお皿、ジョンさん達のお皿はとても大きい。2人に丁度いい大きさだから、大皿だ。
「お待たせ、キャシーの所にお肉を置いて来たわ、どんどん焼くように言って来たから、沢山食べてね」
「はい、ありがとうございます」
「美味しいお肉をありがとうございます。遠慮くなく食べさせて貰ってます」
「ニャ~≪追加があるのか、嬉しいな。ご馳走様です≫」
「ニャ~≪なんと素晴らしい家族なんだ、遠慮は無用なんだな。ありがとう≫」
「ありがとうニャン」
付いて来た皆は大喜びだ、西側のお肉の問屋で一番いいお肉を扱っているのはここだな。良い人達だから絶対だ。
「レイちゃんが溺れたのを助けてくれたのか、ありがとう。もっと焼肉を食べてくれ」
「はい、ありがとうございます、しかし、もう食べれません」
「私も沢山食べさせて貰いました、これ以上は何も入りません」
「あら、キャシーには休まず焼けと言ってあるのに、残念だわ」
もう誰も食べれないだろう、食べ終わって雑談をしているのだから。ジョンさん達はお腹が一杯になって寝ている。飼い主の2人はお腹押さえて満腹なのを表現している。
僕も寝たいけど、僕が寝るのは駄目だよね。
「レイちゃん、海で遊んでは駄目よ、海賊が来るかもよ」
「そうだぞ、悪い海賊は小さい猫を捕まえて逃げたんだ、その理由を知る者はいなかったと伝えられている。確かそうだったよな」
「僕も聞いた事があります、凄い昔の事ですよね。当時、この街に居た一匹の猫が海岸で連れ去られたと」
「俺も聞いた事があるよ、街には攻め込んで来ないで、港から直ぐに引き返したと」
「気を付けるんだレイちゃん、次に狙われるのはレイちゃんだ」
そんな事を言われても、それに僕を撫でている状態で注意されてもそうだね、注意しますとならないよ。
「大丈夫よ、レイちゃんは走るのが速いから、キャシーが言っていたわよ」
「ニャ~≪何、走るのが速いだと、レイ、俺と勝負だ≫」
「ニャ~≪勝負か、俺もするぞ。誰が速いか勝負だ≫」
どうして、聞いていたのかな、勝負なら二人ですればいいのに、それに勝てる筈が無いよ、僕が歩いて6歩位行かないと、ジョンさん達の前に出れないのに。
「レイちゃん」
キャシーさんに呼ばれたので、台所に行こう。ふみふみをする事になるだろう、食後の運動には丁度いいな。
キャシーさんの家から帰る事にした僕達に、お土産を持たせてくれたおじさんとおばさん。
僕は持てないので、ジョンさん達の飼い主にあげた。2人は普段持ち歩いているバッグに沢山詰め込まれていた。
帰り道に僕が話せると分かった二人からされた質問は『俺の事をどう思っているか』だった。
僕が今まで聞いた、飼い主さん達の良い所を『と言っていました』と付け加えて、覚えている時の事を話した。それと、猫が人間の言葉を理解していると教えたら『俺の事は好きか?』と質問したので、ジョンさん達に、頭を下に下げてあげると『うん、はい』だと教えて、その仕草をするように勧めた。
飼い主さん達は大喜びだった。
別れ際にお礼を言われて僕は家に向かった。
「ニャ~≪レイちゃんは、早く≫」
「ニャ~≪全速力で走ると疲れるぞ≫」
朝の食事が終わった僕をモモが迎えに来た。
僕達が向かっているのは、砂浜だ。あの日溺れた時のゴールが砂浜、モモはブクブクさん達と遊びたかったようで・・・・・・思い出したので、僕を迎えに来たんだ。
ブクブクさん達もそんなに暇ではない、いつもいるとは限らないし、最近は目撃情報もない。
「おお、レイちゃん、釣りの仲間入りか、楽しいぞ」
「ニャ~≪また今度、付き合います≫・・・・・・今度一緒にするニャン、今は行く所があるニャン」
「そうか、次は一緒じゃ、楽しみにしておる」
岸壁を走る僕達に気が付いたロイ先生のお誘いを断って、まだだいぶ先にある砂浜を目指す。
「ニャ~≪頑張れ、カニさん達≫」
「ニャ~≪頑張れ、ブクブクさんの家族たち?≫」
目的地に着いて僕とモモが見た光景は砂の見えない砂浜、視界一杯にブクブクさんとカニさんを囲むように沢山いるカニさん達。
「ニャ~≪少し低いよ、次のカニさん早く乗って≫」
「ニャ~≪勝っているよ、落ちない様に中心近くに乗るんだよ≫」
砂が見えなかったのはカニさん達が沢山いたからで、今は行われているのが、カニさん達のピラミッドの高さ競争? だ。
一番下にいるのが僕とモモの友達のブクブクさんとカニさん。岸壁を走る僕達が見たのは、ブクブクさん達の甲羅の色、薄い茶色、薄い肌色、薄い赤色、ここにいるカニさん達は薄い色の甲羅の持ち主だ。濃い色のカニさんはいない様だ、茹でたら濃い色になりそうだけど、声に出す勇気はない。
待っていただろうブクブクさん達は、僕とモモが階段を下りて来ると両手を上げるダンスの様な挨拶をしてくれた。砂浜にいるみんながしてくれたので、凄い光景だった。
「ニャ~≪私の方のカニさんが少し高くなったよ、まだまだ先は長いよ。慎重に乗ってね≫」
我が妹が、難しい言葉を覚えている、アカリちゃんの家の影響だろう。
次々に乗って行くカニさん達、これから乗るカニさん達は砂の上で次に乗る人を決めるのにどちらが大きいか他のカニさんに決めて貰っている様だ。
時折、大きさが小さいかったカニさんが、残念そうに眼の方を下にして、自分の大きさだとここだと思う所に割り込む様にして並びなおしている。
反対側でも同じ事が起きている。後ろに並ぶカニさんよりも大きいと自分の番で、よっこらしょと言って登っているのかも。
「ニャ~《凄い、上の方が見えないよ》」
モモの言葉に僕も見上げる。本当だ、ある高さまでしか見えない。それにしても、カニさん達は上手く倒れない様に乗っているな、足を器用に縮めて、上に乗るカニさんの邪魔にならないようにしてる、上の方のカニさんも同じようにしているんだろうな。
「ニャ~《カニさんの甲羅が積み上げられているみたいだな》」
「ニャ~《もう少しで勝負がつくよ、残りのカニさんは5人だよ》」
「ニャ~《こっちも、五人だ。頑張れブクブクさん》」
ブクブクさんとカニさんの近くに並ぶ小さいカニさんは5杯・・・確か杯で合っている筈。人間以外は匹にしてほしいよな、日本人以外を外国人と言うんだから、人間以外の生き物の数え方は統一してくれればいいのに。
最後のカニさんに視線を向けると、俺は頑張るみたいな仕草をして手をカチカチとリズムよく叩いている、モモの方のカニさんも同じ事をしているな、カニさんの世界の何かの仕草なのかな。
それにしても、一番下のブクブクさん達の頑張りは凄いな。
「ニャ~≪レイちゃん、高くて怖いよ≫」
「ニャ~≪僕も怖いよ、モモ≫」
ブクブクさんの上に乗ってから何個かの甲羅を階段の様に登って来たのだろうか、隣の甲羅の山をモモも登っている。
「ニャ~≪レイちゃん、あと、どの位登ればいいのか見える?≫」
「ニャ~≪沢山だよ、半分よりは上に来れた筈だよ≫」
もう下を見るのも怖いくらい登って来た、木に登るよりも凄く怖い・・・・・・揺れているよ、倒れるんじゃないのかなこのままだと。
甲羅を上ると次の甲羅が少し小さいので登って来れたけど、上り辛い。
カチカチ叩いていたカニさんは僕とモモが登るのを応援していたのか、早く登れと急かしていたのかどちらかだ、自分達は上らないで、僕のお尻を下から押していた。
お尻を押していたカニさんは僕よりも大きかったので、頂上のカニさんは僕よりもだいぶ大きい事になる、地上なら喜んで乗るけど、そこまで上がって行って乗りたいとは思わない。それはモモも一緒だろう。
「ニャ~≪ああ、上のカニさんが見えて来たよ、手を振っているよ≫」
モモの言葉にモモの登っているカニさんタワーを見上げる、ああ、頂上だ、モモの方のカニさんも手を振っているな。
「ニャ~≪モモの方も、手を振っているよ≫」
「ニャ~≪やっと着くんだ≫」
頂上が見えたけど、慎重に登る僕とモモ、一段一段落ちない様にして登って行く。
最後のカニさんの甲羅に手を掛ける、下は見たくないので顔は常に上向きをキープしている。長かった、何でこんな変な競争をしているのかと途中に思ったけど、考えても分からない。何個も重なった甲羅はうまい具合に登りきるまで倒れなかった。
ブクブクさんとカニさんの勝負で、僕とモモが参加しなかったは、ハマグリ拾いだけだったな。だから、最後に上らされたんだな。途中の役目は絶対無理だ。
「ニャ~≪私の家が見えるかな≫」
モモの言葉に視線を山の斜面に向けたけど、沢山在る建物は似ているから自分の家を見付ける事は出来ない、あの馬車の道でも見えれば、どの辺なのかおおよその見当は付いただろうけど、目印になる物がここからは発見できない。
どうなるんだこれから、僕とモモは何をやらされているんだ。




