ニャ~・・・102
「トマト」
「トンボ」
「ボ・・・ボ・・・・・・ボク、言えた」
「栗」
「リンゴ」
「ゴリラ」
「ライオン」
「ああ~、ンがある」
「ンが付いてるぞ」
「他に思い付かなかったのかよ」
今日の僕の授業はしりとりだ、色々な言葉を考えたり、知る事が出来る。聞いた事のない単語、知っていたけど名前を知らない物、教室の皆が参加して楽しい言葉の授業だ。
「よし、今度は僕からだね、干し肉」
「果物」
「の・・・乗り物」
「の・・・の・・・・・・のこぎり」
「りんご」
「ご・・・ゴリラ」
「ラ・・・あれは駄目だな・・・ライム」
「虫」
「シ・・シカ」
「カ・・・カバン」
「ああ~、終わった」
「ごめん」
「ニャ~、よく頑張ったニャン、授業は終わりニャン」
いいタイミングで終わってくれた、他の教室は休み時間に入った様だ。
僕が教室を出て職員室に向かう時に、皆はしりとりを続けるみたいだった。面白ければ続ける、それがいい勉強になる。
「レイちゃん、この後うちこ来ないか、親父が待っているんだよ」
廊下の向こうから掛けられた声はレイモンド君だ、後ろにルーカス君がいる。おじさんが僕を呼んでいる? 呼んでいるの理解出来るのだが、レイモンド君のおじさんが僕に用があるようには思えないんだけど。
最後の授業が終わったので、帰るだけだった僕は、その申し出に従う事にした。
「はいニャン」
「僕も行くよ、楽しそうだね」
「お先ニャン、さよなならニャン」
「レイちゃん、お疲れ様」
教室から廊下に出た僕はホールの先の職員室の前に向かい、他の先生方に帰りの挨拶をした。
猫先生は挨拶のできる先生なのだ・・・・・・小さい僕が校舎にいないか確認をして貰うのが悪いと思っているので、絶対に挨拶をしてから帰路につこうと思っているのだ。
「おう、待ていたよ、レイ先生。レイモンドがこの頃、勉強ができる様になって来たようだ、鍛冶の仕事でも考えて行動する様になってきた、ありがとう」
工房に顔を出したけどいなかったので、リビングに上がって来たら、ダイニングテーブルの椅子に座っているおじさんにお礼を言われた。
「そんな事はどうでもいいだろう、レイちゃんを連れて来たよ」
そう連れて来られた、街中を歩く時も抱かれていた。余程、抱き心地がいいのだろう、撫でる手が止まる事は・・・あった。
リロイ君のおばさんからトマトを貰った、僕にくれたトマトを撫でるのに邪魔だからとレイモンド君が食べた。どうせ、細切れの物しか食べれない僕からすると、食べて貰っても構わないけど、邪魔だからと食べる発想は僕にはないな。
「おじさん、こんにちは。パンの差し入れです」
「いつも悪いな、うちのレイモンドが友達だと大変だろうに・・・・・・」
「そんな事ありません、少しだけ変な目で見られるだけです」
そうなのだ、ぶっきらぼうに話すレイモンド君は仲良くなり辛い少年だ。根は優しいのだが、言い方が直球だ。そんなレイモンド君をカッコいいと思っている女子が何人かいる。
「こんにちはニャン、勉強も魔法も頑張っているニャン」
「そうか、真面目に授業を受けているのか・・・・・・そうだ、お昼がまだだったな、母さん、お昼の用意だ」
「は~い、作っているわよ」
ここにいないレイモンド君のお母さん、台所でお昼の用意をしてくれている様だ。おじさんの声は野太い声で、おばさんの声は普通の女性の声だ。
「何だ、レイちゃんを呼んだのはお昼をご馳走する為なのか」
「違うぞ、だが、先ずはお昼だ。皆お腹が減っているだろう、食べた後に工房に行こう」
「はいニャン」
お昼だ、猫の僕が食べ物を貰う事が多い、親切な人が多いけど・・・・・・いつでも食べれるわけではない、僕が食べないと残念がる人が多い。動物だって、お腹が一杯の時があるし、食べる時間をだいたい決めているんだ。
「レイちゃんだったわね、初めまして、名前はレイチルよ、よろしくね。大好物だと聞いたので、お肉の美味しいのを用意したのよ、沢山食べてね」
優しい笑顔のレイチルさんは茶色の髪の綺麗人だ、綺麗な人が多いな。
僕が話しても驚く人が少なくなぅったな、猫先生の事を話すんだろうな、学校であった事として。親が学校はどうと聞くと、猫先生が分かり易く授業をしているよと、自分の事を聞かれたのに僕の事をはなすんだろう。
猫先生は家族の会話を増やしてあげているんだな。
猫先生として挨拶をしないとね。
「レイチルさんニャン、初めましてニャン、料理楽しみニャン」
「凄いわ~、レイモンドよりも頭が良いのね」
そうかもしれないけど、レイモンド君が起こりそうだぞ。
「はいはい、俺は猫のレイちゃんよりも頭が悪いよ」
「・・・・・・レイモンド、僕もレイちゃんよりも勉強が出来そうもないよ」
ルーカス君の慰めに、レイモンド君は頷いた、仲がいい友達なんだな二人は。
「まあ、レイちゃんは先生だ、お前達は生徒だ、比べなくていい。それよりも早く食べよう、冷めるぞ」
「そうね、二人共席に着いてね、レイちゃんはテーブルの上でいいのかしら」
「行儀はレイモンドよりもいいんだ、上でいいだろう。いただきます」
「いただきます」
「また、俺の名前が・・・・・・まあいいか、いただきます」
皆が席に着いて食事が始まった、僕は、目の前に置かれた焼肉が冷めるのを待つ。温かいうち食べた事が無いな、火傷しちゃうよ。
猫の僕が話すのに内心は驚いていたんだと話してっくれたレイチルさん、全然驚いていないふうだったのに。
楽しい食事が終わると、1階の工房に下りて来た。
「レイちゃんには内緒で作ってみたんだよ、微調整をすれば大丈夫なはずだ」
おじさんの名前はアイザックさんだったな、思い出した。僕用の最高の剣・・・・・・頼んでいないのに作ってくれたんだ。
アイザックさんの手にした鉄の棒は剣には見えない。強いて言えば・・・・・・単なる棒で先いが尖っているだけ、その棒の中心よりも尖っている方に近い所に・・・・・・確かおもちゃで有った、吹くと軽いボールが浮いて、吹くのを止めると籠に戻るパイプのおもちゃ、その籠の部分を少し潰した物が棒に付いている、籠は鉄で出来てる。
鉄の棒に鉄の籠? 剣だと思ったけど、尖った棒と籠から連想できる物が思い付かない。
籠に棒・・・・・・運動会の玉入れに似ている形だ、素材全部が鉄で出来ている、変な物。
「何だこれ」
「何に使う物なのかな」
二人も思い付かないのか、何だろうこれは。
「さあ、手を出してごらん、丁度いい筈なんだよ」
飴を上げる時の近所のおばあさんの様な言い方をされた僕は素直に両手を出した。片手だと載らないし、どちらかの手を出せた言われていないからこれでいいんだな。
「はいニャン」
「ん、左手は下げていい、右手にはめるんだ。丁度いいな、大きさはこないだ確認した。どうだ丁度いいだろ」
言われた通りに左手は下げた、右手には作ってくれた物がはめられた。水平に出した僕の右手に籠の部分がはまる様になっている、その籠の先には棒が立てた状態になっている。
床の方の棒の先端が尖っているので・・・・・・穴を掘る道具? 猫用の穴掘り道具? おお、ザックザックか。
「何かニャン? 穴掘るニャン?」
「変なのを作ったね、父さん」
「おじさん、これは何なの?」
「おう、説明がまだだったな、これはレイちゃん用のペンだ。俺達の使うペンをレイちゃん用の大きさにして手にはめられる様にしたんだ、前に来た時に文字を書いてくれただろ、その時に思い付いたんだ。いいアイデアだろ」
手にはめられたこれがペン、確かに人間の皆が使っているペンの小さいサイズのようだ。手にはめられる様になっているのは、持てない僕の為なんだな。道理ではめた後に安定感があるわけだ。
「レイちゃんの手にペンか、何か書いて貰おうよ」
「父さん、板とインク」
「そうだな、ちょっと待て」
アイザックさんは壁際の荷物を置く台の上からインクを取り、壁に立てかけてあった木の板を持ってこちらに戻って来る。
このペンで上手く描けるかな、楽しみだ。
「どうだ、書いてくれ」
「はいニャン」
作業台に載せられた木の板にペンの先にインクを付けて書き始める。
アイザックさんが喜んだあの文でいいだろ。
≪史上最高の名刀ザックソード、遂に完成。長年の夢、世界一の鍛冶職人アイザック。見届け人レイ・・・・・・雑用レイモンド、ルーカス≫
「俺はまた雑用かよ、俺も剣を作りたいんだよ」
「僕の名前も書いてあるよ」
「いい文章だ、ザックソード。いつ出来るやら・・・・・・」
このペン、少し使い辛いな、道具を使うのは難しい、人間の手の様な関節の動きが無いと滑らかな字は書けそうもない、でも、手が汚れないのはいいな。もっとペンの部分を短くすると安定する、普通のペンの様に握るところが無くてもいいんだから、僕のペンは改良の余地がある。
「ああ~、俺はこの文章の文字を全部かけないぞ」
「勉強しろ、優秀な先生か付いている、よろしくお願いします、レイ先生」
「はいニャン、分かり易い授業をするニャン、ペンありがとうニャン」
「喜んで貰えて良かった・・・・・・他の者には言えないだろ、猫用のペンを作っているなんて」
そうだな、おしゃれとかなら有りそうだけど、実用の猫ペンを作る人はいないな。
知り合いに話したら・・・・・・大丈夫かこいつと思われてしまうな、猫用だからね。
「そうだ、他にも書いてよ、レイちゃん」
「はいニャン」
ルーカス君の頼みを聞いて木の板に書く事にした。
≪美味しいパンを作ろる、ルーカス≫
≪ザックソードに負けない剣を作る、レイモンド≫
僕は楽しい時間を過ごして家に帰った。ペンとインクをくくり付けられた状態で歩くのは大変だった。
「ニャ~《よいしょう、よいしょう、ようしょう》」
我が家の僕用の入り口のドアを押している者がいる、押している動作にようしょうと掛け声らしき声も聞こえて来るけど、残念な事に石は少しも動かない。
「ニャ~《動かいないよ、どうして、それなら違うところから・・・・・・》」
石を押していた人物・・・・・・猫のモモはどこかに行った。違うところだとお店か、あそこには濮用の入り口は無い筈だけど、どうやって入ってくる気だ。
よし、先回りだ、お店の中に向かうぞ。
「あら、レイちゃん。何か用かな?」
「ニャ~《ナタリーさん、お仕事ご苦労様、お客さんがご来店ですね》」
「まあまあ、この洋服とても色合いがいいわ、暖かい季節に丁度良さそう」
「分かりますか、お客さんの様なお肌の人にはこの色が最高に似合います、生地はサシンベラさんなので丈夫で長持ちすると思います」
「まあ、サシんベラ産なのね、頂戴しますね」
「はい、お洋服はお届けしますか?」
「そうね、いつもの様に届けて下さるかしら」
「お届けします、代金はその際にお支払い下さい」
「1着だと悪いわね」
「そんな事はありません、1着でもお届けします」
「いいのよ、あの洋服とこれも届けて下さい。それと、冬物もサシンベラ産を取り扱っているのかしら?」
「はい、冬物は特にサシンベラ産が良いと評判なので、秋の半ば頃から販売の予定です」
「それは楽しみ、秋の半ばにまた来ますね」
「ありがとうございます」
僕とナタリーさんはジェシカさんの接客を静かに見ていた。お金持ちなのか、料金も買い物用の鞄も持っていなかった。そう言えば、洋服の値段を聞かなかったよ、あの女性は。
30代の女性の後ろ姿は、とても背筋の伸びた姿勢の良い方だった。頭に何か物を置いても落ちないかも。
「よく来て下さるお客さんですよね」
「そうね、いつからか忘れたけど、うちの仕入れを気に入ってくれたのよね。それで、時々、洋服を買いに来てくれるのよ、今なんか、1着でいいのに3着も買ってくれたのよ」
「見てました。凄いですよね、悪いからと2着も増えました」
何か忘れている・・・・・・そうだ、モモだ。今のお客さんが出て行った時には入って来なかったな。どこから来るつもりだ、窓は空いていない、石のドアはここにはない。
まあいいか、お昼を食べに行こう。今日はシンシアさんとハリーさんはお友達の家に双子ちゃんと遊びに行っている。
「ニャ~≪僕のお昼が無い≫」
暖炉の周りをチョロチョロと移動して探したけど、干し肉のみじん切りが無い・・・・・・お皿は置かれているのにどうしてだ。
シンシアさんが出かける時に≪レイちゃん、今日は残りの干し肉で我慢してね≫と残りが少ないのに、干し肉を補充して貰えなかった。急いで出かけるシンシアさんに干し肉の補充をしてとは、言えなかった。
それでも、お皿の上には少ないけど、確かにお肉が載っていた、ジャンは良い子でおもちゃの家で過ごしている。他に僕のお肉をどうにかする人はいない。
仕方ない、お腹がこれ以上空かない様にソファーで寝よう。
「ニャ~≪モモがいる、犯人はモモなんだな≫」
見上げたソファーに白い物体が、寝ているモモがいた。
家の中に入られない様に石を押さえていたのに、あの後、家の中に入って来たんだな。
起こしてもお昼は帰って来ない、やっぱり寝よう。僕は仕方ないので、モモの隣に移動して寝る事にした。
「レイ、行って来ます」
「レイちゃん、行って来ます、美味しいお菓子はあるかな」
「メグ、急ぐのよ、お菓子が待っている」
「待っている、行くぞ~」
「ニャ~≪私も行く≫」
「行ってらニャン、沢山食べて来るニャン」
元気な二人を送り出した。今日もお菓子を食べに行ったのか、飽きがこなのが凄い。
あれ、モモがいない・・・・・・モモの声で『私も』と聞こえた、ああ、一緒に行ったのか。ああ~、ミヤちゃんに干し肉をみじん切りにして貰えば良かったのか。
「ニャ~≪ふて寝だ、誰が来ても起きないぞ≫」
ああ~、お腹が空いたな。
「大変だったのね、でも、お利口なレイちゃんなら、ジェシカ達に頼めば良かったのに。仕事中だから悪いと思ったのね、ほんといい子よね」
「そうか、お昼ね。僕とシンシアは焼肉とシチューをご馳走になったんだよ。お土産に持って来れば良かったかな、沢山余っていたんだよ」
「焼肉ニャン、食べたいニャン」
皆が帰って来たリビングで、みじん切りにして貰った干し肉を食べた、今日の出来事を聞かれたので話して聞かせたところだ。
「レイ、野菜あげようか?」
「ありがとうニャン、ジャンが食べるニャン」
「うん」
ジャンは僕の事を可哀そうだと思ったんだな、いい子だから一緒に寝てあげるかな。それともお気に入りのウサギのぬいぐるみの方がいいかな。
「レイ、何で言わないのよ。お腹が空いたら食べないと駄目だよ」
「そうだよ、お昼を食べる、そしたら、お菓子を食べに行かないと、モモちゃんはお菓子を3枚食べていたよ」
可哀そうな僕に追加の情報が、モモの奴め、どうせお昼を食べて来たんだろうに、僕のお昼を食べて満腹になってソファーで寛いだ後にミヤちゃん達に付いて行って、お菓子を3枚も食べたのか。
「ヨダレが、出ているわよ」
「レイちゃん、汚いよ」
「レイ、拭いてあげる、こちに来て」
「ありがとうニャン」
食べたばかりなのに焼き肉の話を聞いたら、ヨダレが出てしまったようだ。
ジャンを見習ってほしいな、僕に親切なのはジャンだけになってしまったのか。
「レイちゃん、この地図に友達の家の場所に印を付けたの、レイちゃんなら行けるでしょう。焼き肉は沢山余っていたわよ」
「ありがとニャン、行って来るニャン」
床に置かれ地図の印の付いているところを確認すると・・・・・・友達の家とは、キャシーさんの家の事だった。
焼き肉が沢山余る筈だ、おじさん達はどんどん焼くだろう、遠慮する事が出来ない位に出てくるんだよな。
遊びに行けば、残っている焼き肉は食べれるけど、追加で焼いて貰っても僕には食べれない・・・行くのを諦めよう、どうせなら、友達を連れて行こう。おじさん達が喜んでくれる。
ああ、キャシーさんの家のシチューはどんな味なんだ、野菜が少なくて柔らかいお肉かも。今日は我慢だ、シンシアさん達が既にご馳走になって来たんだから。




