ニャ~・・・100
「オギャー、オギャー、ブー」
「バブー、バブー、ォギャー」
「なかなかやる姉妹の妹は双子だったのか」
「俺も娘が欲しいな、一緒に剣の練習をしてくれなくてもいいから、山に行きたいな」
仕入れから帰って来ていないハリーさん、今頃どの辺にいるのかな。
街全体の休みの一日前、学校が終わってメイちゃんマヤちゃんとお昼寝をしていると、先生達が僕の家に集まって来た。最初に来たのはロイ先生、ジャンと積み木で遊んで疲れるとお昼寝中。
おもちゃの家の中はお昼寝する人達の集まりになった、そこに次から次と先生が現れた。最後に来たのはロバート先生で、その前に来たのはパール先生、二人は来たばかりなので、我が家の双子ちゃんにご挨拶をしているところだ。
「しかし、この家の子はみんな同じ顔だ、旦那さんのハリーさん以外は瓜二つ? ・・・・・・」
「お前は、シンシアさんも子供に入れているな」
「そうか、お母さんか」
まだ寝ているけど、ライラ先生達が起きる前にどこかに行こう、おもちゃの家の人口は密度が危険な状態だ。
「行って来るニャン」
「行ってらしゃ~い」
手の空いているナタリーさんに出かると告げると石のドアに向かう。僕よりも大きくなっているモモは狭いと言うけれど、僕にはピッタリの大きさの穴だ。体が大きくなるのは諦めた、おそらくこのままのサイズなんだろう、小さい子猫のままの方がみんなが喜ぶ、自分で鏡を見てうっとりしているのは内緒だ。神様が可愛いままでいろと言っているのだろう。
港で体力作りでもしよう、魔法を練習するのは違う言語を知ってからだ。この世界の人間の言葉、猫の僕が唱えても光らなかった、違う言語をいつか知ったら、メグちゃんにお願いして杖を貸して貰おう。いつか光らせてやる。
「レイ、ありがとう。私の剣を作ってくれるように言ってくれたのね」
何の事だろうな、最近の僕の行動は・・・・・・あの日の事かな。アイザックさんが暑い中、剣鍛冶屋さんの基本の工程を見学させてくれた時の事か。
史上最高の名刀があの瞬間に出来たんだ・・・・・・・言葉だけだけだけど。
「ニャ~≪頼んでないよ≫」
「こいつめ、いい仕事をしたわね」
浮かれているミヤちゃん、とても可愛いのだが、気持ち悪くなって来た。回転を止めてくれ、あ、声に出してないや。
「目が回るニャン、気持ち悪いニャン」
「そお、そんなに回してないけど」
湯船の上で何回転もタライを回された、乗っている僕は凄く気持ちが悪い。
「レイちゃんが、回転して遊んでいる、私も回転したい」
「ニャ~≪レイちゃん、楽しそうだね≫」
シンシアさんとジャンが出た後にお風呂に入って遊んでいたら、皆が来たぞ。最初に来たのはミヤちゃん、グルグル回されて気持ち悪くなっていたところにメグちゃんとモモが来た。アカリちゃんも後から来るだろうけど、サキさんと双子ちゃんと一緒に入るだろうから、今は来ないだろう。
・・・・・・回転したいと言っていたメグちゃんが、僕の乗っているタライを回し出したぞ、回転したいんじゃなくて、僕を回したかったんだな。
「ニャ~≪私も乗せて、回りたいよ≫」
「ニャ~≪モモ、飛び乗るんだ、モモなら出来るよ≫」
「ニャ~≪ジャンプ~≫」
「二人を一緒に回してやる」
モモが一緒なら回転が遅くて、気持ち悪いのが何とかなりそうだ。ああ、良かった。
「とりゃ~」
ああ・・・・・・・気持ち悪くなってきたよ、本気のメグちゃんには勝てない。
「メグ、レイが気持ち悪いって言っていたよ」
もう、遅いのだ、既に限界だ。
「レイちゃんの口から何か出てるよ、変な匂いが」
「ニャ~≪レイちゃん、汚いよ。あっちに行って≫」
口から不吉な物体が、ああ、酸っぱい感じがする。ああ、これが乗り物酔いだ。
あれ、何か大事な事を聞いたよ、アイザックさんが剣を作ってくれる? ・・・・・・断られていたのか、良かったな、作ってくれる気になって。
すいません、もう耐えられません・・・・・・モモ、楽しそうだね。
「ああ~、レイちゃんが倒れたよ」
「やり過ぎた、ごめんねレイ・・・・・・」
意識が薄れて行く時、2人が謝ってくれていたが、モモは駄目だよこんな所で寝ちゃと呟いていた。
「レイ、どんな魔法を使ったのよ。アイザックさんは世界で一番いい剣はお前には売らないと言われたのよ。それに、一番いい剣はそんなに簡単ではない、後何年か掛かるとか分からないんだとも言っていたのに、どうして?」
あの日・・・・・・自分で書いた願望を僕に読ませて浮かれていたアイザックさん、ついでに、僕からも史上最高のお言葉を頂いて、天にでも昇ってしまったんだろう。それで、作れるか分からないけど確約したんだな。
まあ、僕のお手柄だ、いつか史上最高の名刀ザックソードはミヤちゃんの手に。
「おだてたニャン、時に役に立つニャン、単純な人はいちころニャン」
「おだてる、いい言葉ね。レイ、凄く可愛いわよ、新しいお菓子が食べたい」
「う~ん、新しいお菓子・・・・・・私も食べたい」
船酔いから覚めた僕の隣で起きていたミヤちゃんと話しているとメグちゃんが起きた。
ベッドの上にはアカリちゃん達もいる、夏で暑いから布団を掛けていないので皆が見える。起きたのはメグちゃんだけで・・・・・・ミヤちゃんの新しいお菓子の言葉で起きたんだな、なんて凄い執念、願望かな、寝ていても鼻の利く猫の様だ。
「どうなのレイ、新しいお菓子はいつ食べれるの?」
「そうだよ、いつなの?」
二人の目が怖い、何か思い出せ・・・・・・何かキーワードを前に聞いた筈だ。何処で聞いたんだろう、この街にはもう新しいお菓子は見付けられないだろうとミヤちゃんが言っていた。それはどんな会話の流れで、思い出せない・・・・・・ああ、ローラさんが異国のお菓子の話をしてくれたな。
新しいお菓子の事は思い出せないけど、温かいお菓子、実際に見ていないけど話を聞いた時に思ったのが、ホットケーキだった。
「そのうちニャン、思い出すニャン」
「そうか、明日食べれるんだ」
「明日なんだ、嬉しいな」
「ニャニャ? 明日ニャン?」
「明日・・・・・・」
「メグは寝たのね、もう眠るわ、レイも早く寝るのよ」
「はいニャン、お休みニャン」
食べれる事になって? 直ぐにメグちゃんは寝た。ミヤちゃんは僕が起きるまで起きていてくれていた様なので眠いだろ、まだ寝てない様だけど顔がニヤけている。このまま寝付いたらニヤたまま寝る事が出来るのかな、観察してみよう。
ミヤちゃんは寝た、寝息が聞こえる・・・・・・変な笑みを浮かべて寝る事が出来たな。そうだ、レシピだ、ホットケーキのレシピを考えないと、自家製で作った事が無いからどうしたらいいんだ、ランディさんに相談しよう、そうしよう。
「問題解決ニャン、プロにお任せニャン」
眠くないけど寝よう、今日は沢山遊んだ。
猫学生はズル休みをして、ランディさんに相談に来た。
「温かいお菓子か、お菓子の基本は焼く事だから温かい物が多い。カステラも焼き菓子も出来立ては温かいけど、冷ました方が美味しくなる、温かいまま食べて美味しいお菓子を俺は知らないんだ」
そうか、温かいままのお菓子はそんなに無いのか、思い付くのは、一番がホットケーキだ。似た様なのは同じ物と考えると、違うのはアップルパイとかだよな。
お菓子にたこ焼き、もんじゃ焼き、お好み焼きは入るのかな。大阪の人達だとお好み焼きとたこ焼きはご飯のおかずとして食べるんだよな・・・・・・ご飯も食べるらしいので、東京に住んでいた僕からしたら不思議な食べ方なんだよな。
「温かいお菓子が出来たらアカリも喜ぶわね」
サキさんは厨房に置かれた双子ちゃんのベッドで二人のおしめを代えてあげている。どうやら、同じ時におトイレをする様だ、同じ時間に食事をするからなのかな。
「俺は思い付かないな、どうやれば作れるのか」
カステラの材料を木のヘラでかき回しているランディさんは、温かいお菓子の事と作り方が思い付かない様だ。
「僕も考えるニャン、頑張るニャン」
「おう、頑張ってくれ、俺には無理だ」
「私なんか全然よ」
なぬ、ランディさん達を当てにしていたのに考えるのを止めてしまったぞ。
ここは現物を食べた事のある僕が頑張らなければ・・・・・・そもそも、玉子と小麦粉を混ぜればだいたいの焼き菓子は出来る筈だ。もう少し大人になってから死んでれば、材料にどんなものが知ったかもしれないが。いや、知っていても仕方ないか、この世界に材料が無ければ作れない。
そうか、カステラとケーキは似た様な作り方だよな、ホットケーキは違う作り方だよ。粉を混ぜて焼くだけなのがホットケーキだ。それなら、思い付く材料を混ぜて焼けばいいんだよ・・・・・・お好み焼きと同じ感じだな、お好み焼きでもいい感じに思えてきたぞ。
「甘くないよ、レイちゃん」
「甘くない」
「甘くないよ」
「ニャ~≪辛いよ≫」
簡単に出来たお好み焼き、野菜もお肉も沢山入っていて美味しい筈だけど、お好み焼きは甘くないよな。
学校から帰って来たミヤちゃん達に出したお好み焼きは甘い筈がない、忘れていたんだ、お菓子が食べたかったんだよな。
「美味しいじゃないか、この食べ物は」
「そうよ、面白い食べ物よね」
「美味しいニャン、良かったニャン」
「レイ、甘いお菓子はどうしたのよ。楽しみで走って帰って来たんだからね」
「そうだよ、休みなしだよ」
「私は付いて行けなくて、モモと急いで帰って来たんだよ」
「ニャ~≪甘いお菓子が食べたい≫」
楽しみで走って帰って来たのか、歩いて1時間位で、走ったら20分ぐらいかな、二人は体力が付いたよな。
お好み焼きに砂糖を入れてみれば良かったかな? ・・・・・・新しい料理を考える時は、こんな感じなのかな。
「いつ食べれるのよ、新しい甘くて美味しいお菓子は?」
「明日ニャン、明日には完成ニャン」
「約束だよ、レイちゃん」
「はいニャン」
「ニャ~≪明日食べれるんだ、楽しみ≫」
「明日もうちでお昼だね、待っているからね」
そうだ、少しずつ何かを変えていこう、いつかホットケーキになる筈だ。
先ずは、お好み焼きに入っている具を全部入れないで焼いてみよう・・・・・・サキさんには沢山食べて貰おう、僕には無理だ。
「見てくれたか、私の船の骨組みが全て揃ったんだ。造船作業が加速しているんだ、これで早く完成する」
「おめでとうニャン、完成はいつニャン?」
「あと3年あれば出来るだろう」
前回会った時には、もっと早く完成すると自慢してたのに、思い通りに進行してないんだな。
まあ、お財布さんが嬉しそうならそれでいいか。
「完成したら乗せてニャン」
「いいだろう、レイちゃん専用の客室を作ってお待ちするよ」
「もうお父さん、3年も先よ。レイちゃん、遅くなってごめんね、ミヤちゃん達が待っているわよ」
3年先、予定通りいくといいんだけど、全ての材料が揃っているのかな。
「はいニャン、ありがとうニャン、船の完成楽しみニャン、さようならニャン」
「またね」
「ありがとう、また来てくれ」
午前中はメイちゃん達と遊んだ、夏の暑い中で体力作りが出来るほど僕には暑さ対策が出来ない。なので、夕方の少しだけ涼しくなった時に岸壁の前を走った。
港で作業をしていたローラさん親子にばったり会った、出会いがあればマッサージを頼まれるのが、ローラさんと僕の関係だ。
夕食前には帰れると思っていたけど、お財布さんからもお願いされて、2種類のマッサージを施術した。疲れと暑さ対策のマッサージだ、それは血流を良くするマッサージとリンパマッサージだ。
二人にそれぞれ2種類したので遅くなった。
疲れが取れた事と気持ち良かった事でお財布さんは上機嫌になった、それで、今作っている船に僕の客室を作ってくれると冗談で言ってくれた。
異世界の夜は、小さい明かりが漏れた窓の光と月の明かりだけが街灯だ、とても暗いけど何か落ち着く雰囲気だ。街の中なので安全なのが素晴らしい、外の世界だと何かの音でビクビクしちゃいそうだ。
「ニャ~《キャロット母さんに会いに行った時の夜は怖かったな》」
今思い出すだけでもゾッとする、木の上で寝ていたけど、生き物の戦いは生きるか死ぬか。パキパキと噛み砕かれている音が今でも耳に残っている。あとむしゃむしゃと食べられている音は最悪だ。
「ニャ~≪家が見えて来た、ミヤちゃん達はまだ起きているようだ≫」
現代の日本に今も訪問マッサージを仕事にしている人がいるか分からないなけど、営業時間は夜から夜中の皆の寝ている時間に働いているんだよね。
「おかえり、レイちゃん。それとただいま」
あれ、何をしているのかな。
「待っていたわよ」
僕の入り口をリュックを傷つけない様に何とか通り抜けたら、ハリーさんとシンシアさんが階段に座っていた。ハリーさんは仕入れから帰って来たんだな。
「ただいまニャン、ハリーさんお帰りニャン」
あれ、待っていたわよとシンシアさんに言われたんだよな。
これはもしや、猫の僕にも門限があってそれでお叱りを受けるパターン? 2人の顔は普通だ、強いて言えば穏やかかな。
「夕食を食べながら話そうね」
「はいニャン?」




