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もやのすきまから

見渡す限り真っ白な世界。空も駅から見える川岸も水面もいつもの世界とはまるで違って見えた。後ろから聞こえる車の行き交うエンジン音がとても遠くに聞こえる。そこに黒い鳥が一羽やってきた。車の音が消えて、私の鼓動と羽ばたく翼の音だけが私の耳に届く。田舎の無人駅のサビついたトタン屋根の下、私から出る息もその世界を壊すことのない白色で、そしてすぐに消えて見えなくなった。



「またボーっとしてるよ、水希は目力あるから一点を見つめてたら見てるこっちが怖いんだけど」

花奈が手をひらひらさせながら私の顔を覗き込んでいる。

はっと我に帰る。いかんいかん。小さい頃からご飯を食べる時にボーっとしてしまい、よく怒られていた。高校生になった今でもその癖が抜けていない。

「ごめんって。でもボーっとしてる時の方が頭働いてるらしいよ。今の私は花奈より頭いいかもよ?」

「はいはい。じゃあそれより頭じゃなくて手動かしたら?次移動教室だよ。」

「え!時間ないじゃん!弁当食べ終わらないって。」

急いで余っていたおかずを無理矢理に押し込む。口いっぱいに頬ばる私を花奈がニヤニヤしながら眺めてくる。

「え?誰が私より賢いって?」

「ふん!」

私の頬を触ろうとする手を必死によけながらどうにか弁当をしまう。

「ごちそうさまでした!」

「ほらいくよ!」

「ちょ、ちょっと待ってよ」

花奈の長いポニーテールが揺れる背中を追いかけて教室を後にした。


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