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「それが、スマホの人工知能の大元と交渉すること、ですか?」


「そんなことが可能なのですか?それに、彼?が私たち人間の交渉なんかに応じてくれるでしょうか」


 紫陽たちは、自分たちが置かれている立場の重要性に気付き、顔を見合わせる。《《あやの》》に連れられてきたはいいが、まさかスマホの寄生に関する機密情報を知らされるとは思わなかった。さらには、自分たちに世界の命運をかけられるとは、ただの学生には荷が重すぎる。


「悠長なことを言っている場合ではないぞ。彼女の動画はすでに見ているはずだ。その動画と目の前の彼女を比較してみろ」


 《《あやの》》が突然、動画の話を始めた。紫陽たちは池谷の話で頭がいっぱいでそれどころではない。それでも彼女の言う通りに、動画を思い出し、この部屋の主に目を向ける。


『じっと見つめられると、恥ずかしいですね。ですが、確かに彼女の言うことは正しい。私にはあまり、時間が残されてい、ま、せん』


 彼女が話の最中に急に苦しそうに胸を押さえ始めた。顔色も真っ青になり、突然の容態の変化に二人は戸惑う。しかし、この事態を予測していたのか、《《あやの》》は特に驚くことなく、紫陽たちに答えを急かす。


「早くしないと、《《彼女》》の意志は消えてしまうぞ。そうなれば、もうお前たちの力のみでの交渉となる」



 動画に出ていたのは、彼女で間違いはない。スマホがタブレットほどの大きさに肥大して左手に寄生している。とはいえ、動画と彼女が同一人物だとわかるが、どこか違和感を覚える。先に違和感に気付いたのは妹のすみれだった。


「も、もしかして、動画であなたは、声を変えていた?」


「声……。そうか!」


 すみれの発言に紫陽は《《あやの》》の言葉の意図を理解した。自分の幼馴染の変化に慣れてしまっていて、すっかり忘れていた。スマホに寄生されれば、普通は肥大化によって圧死するか、電源不足で亡くなることが多い。それなのに、部屋の中の二人は生きている。普通に生活を送ることができている。彼らの共通点は。


 彼女もまた、スマホに意識を乗っ取られている。



「あ、あの」


 女性はイスに座ったまま、がくりと意識を失ってしまった。すみれが声をかけるが返答はない。イスから崩れ落ちないかと心配した紫陽たちが駆け寄ろうとするが、その心配は無用に終わった。突如、目を開けたかと思うと、紫陽たちをじっと見つめてきた。


二人を観察するような視線に、先ほどまでの人間らしい雰囲気はなく、まるで隣で様子を見守る《《あやの》》のように機械じみたものだった。


「遅かったようだな」


『その通りだ。ただし、少しばかり時間がかかりすぎているな。ああ、お前の考えの通りだ。我はこの女の意識を乗っ取った』


 《《あやの》》の言葉に女性が頷き、言葉を発する。紫陽の心の声を呼んだかのように、彼女が声を発したが、それは今までの生身の声ではなく、機械を通した無機質な声だった。



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