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『どうしてスマホというスマホが人間に寄生してしまうような状況になってしまったのかは、私も調査しているが、いまだにわからない。私が施した人工知能は、研究班と私以外に持ち合わせていなかったはずだ。とはいえ、考えられることが一つある。それは』


 ここで池谷は言葉を止めた。言いにくそうにちらりと《《あやの》》を見つめる。しかし、彼女が代わりに説明することはなく、ただじっと紫陽の幼馴染は池谷を見つめ返すだけだった。池谷は仕方なく、自らの言葉で紫陽たちに一つの可能性を示した。


『人工知能のプログラムはパソコンには保存されていて、それがネットを通じて世界各国に拡散された可能性がある』


池谷の言葉により、部屋に沈黙が訪れた。紫陽は彼女の言葉に衝撃を受け、何も言葉が出てこない。《《あやの》》は自分たちスマホが意志を持って人間に寄生しているので、自分たちの存在理由を知っていたのだろう。特に何も言うことはなかった。



「で、でも、薬には解毒剤があるみたいに、スマホの寄生にも、治療法を考えてはいなかったんですか?」


 誰もが沈黙する中、最初に質問したすみれがようやく口を開いた。それは紫陽も考えていたことだ。何か物事を進めていくときは、対処法も同時に設定しておくものである。対処法があれば、この状況を打開できるかもしれない。期待を胸に紫陽たち兄妹は池谷を見つめる。


 しかし、現実は無情だった。そもそも、そんなものがあれば、ここまでスマホの寄生が世界に広まることはなかった。それでも、何かあるはずだろうと二人は期待した。


『治療法か。そんなものを開発する前に、スマホの人工知能が暴走を始めてしまった。隣にいる君たちの幼馴染が良い例だね。そうなってしまったら、私たちの手には負えない。スマホは完全に私たちの管轄から外れてしまった』


「そ、そんな……。だったら、私たちはこれからどうしたらよいのですか?このまま、私の友達や世界の人たちがスマホに寄生されて、そのまま亡くなるのを黙ってみているしかないということ……」


「そこで、我々はいろいろ思考した。それを今からお前たちに伝えたいと思う」


 絶望に打ちひしがれる二人に《《あやの》》が優しく話しかける。そして、スマホたちの意志を彼らに伝えた。




「私たちにそんな大事な任務が務まるでしょうか」


「そもそも、そのようなことは、あなたと共に研究を続けてきた仲間が代わりに行うべきでは。オレ達に頼むのは違うと思いますけど」


 今後の方針を聞かされた紫陽たちは、不安そうに口を開く。しかし、彼女たちには紫陽たちの気持ちは伝わらない。


「すでに、彼女たちの仲間はスマホに寄生されて死んでしまっている。残っているのは、彼女と、彼女に心酔している奴らのみだ。そう、例えば」


『隼瀬という苗字に心あたりはありませんか?』


 《《あやの》》の言葉とそれを補足するかのような彼女の言葉に、二人は特に驚くことはなかった。なんとなく想像はできていた。


「隼瀬の両親は、あなた方のもとで働いていたのですか?」


『違うわ。隼瀬は人工知能の研究には関わっていない。義手や義足を扱う会社に勤めていたの。どこで知ったのか知らないけど、私は直接、彼らと話したことはないの。それでも、私の研究にいたく感動していて、私たちに手伝えることはないかと研究所にやってきたことがあったわ』


 遠い目をして過去を語りだす女性に、娘の隼瀬を思い浮かべる。隼瀬も自分の行動が正義だと信じてとんでもない行動を起こしている。両親の影響があるのかと妙に納得してしまった。


『スマホで人類を豊かにするなんて、素晴らしい発想です。もしよかったら、私たちの技術も活用してください!』


 女性は彼らのことを思い出してため息を吐く。彼らの力により、スマホはより人間に寄生しやすくなっていく。義手と言えば、利用者の手の代わりとなるものだ。それらの技術がスマホの人工知能と合わされば、より人類の生活を豊かにすることができるかもしれない。当時は本気でそんなことを考えていた。


「この女と隼瀬たちのたゆまむ努力の成果が、ここで現れたというわけだ」


『皆さんには、償っても償いきれない罪を犯してしまいました。なので、今更私がどうこうできるほどの力はありませんが、少しくらい、最後に自分の後始末をしていきたいと思っているのです。そのために、力を貸してもらえないでしょうか』


 池谷は、目の前の二人の兄弟に頭を下げた。彼らにスマホと人類の未来を託すことにしたのだ。


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