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「鷹崎君、ねえ、家に居るんでしょう?急に学校を抜け出して、どうしたの?動画終わって、教室にあなたとあやのさんが居ないのに気が付いた教室は、ちょっとしたパニックになっていたわ」


 紫陽が画面を操作していることに気付いたのか、玄関越しに隼瀬が語り掛ける。それに対し、どう答えようかと考えていると、《《あやの》》が画面の中央に立ち、彼女を追い返そうと口を開く。


「どうしてパニックになるの。たかがクラスメイトが二人、教室を抜け出しただけでしょう?まあ、その抜け出したのが男女二人というのは、噂をするのには格好の的にはなりそうだけど。でも、ただそれだけの話で、パニックというのはありえないと思う。そんな教室内のどうでもいい、嘘報告をしに来たのなら、帰ってくれる?くだらない話につき合っている暇はないの。私たちは今、お互いの愛を確かめている途中だったのに、あんたが来たから、わざわざ出てやったのよ。空気読んで、邪魔者はさっさと帰ってくれる?」


「じゃ、邪魔者って。そ、そっちこそ、付き合ってもいないのに、幼馴染だからと言って、鷹崎君をあなたの都合で振り回すのはよした方がいいわ。鷹崎君だってめいわ」


「今は別に迷惑だとは思っていない」


 スマホに乗っ取られる前のあやのでさえ、今のような気色悪いことを言わないだろう。こちらが恥ずかしくなるような言葉を平気で口にする《《あやの》》だが、紫陽はあえて、話を合わせることにした。


 二人のインターホン越しの会話に割り込んだ紫陽は、隼瀬の言葉をバッサリ切り捨てる。さっさとこの場から隼瀬を立ち退かせようという幼馴染の考えに賛同する。動画を見た直後で、教室内がパニック状態なのは間違いない。それなのに、嘘までついて紫陽のもとまで来た隼瀬の真意がわからない。パニック状態の教室から抜け出し、ためらうことなく紫陽の家までやってきた。


「で、でもせっかく家まで来たのに、家に入れてくれないのはおかしいでしょ」


 隼瀬は紫陽の家に上がりたいと必死に食らいついてきた。もしかして、動画で挙げられていた人間の特徴を紫陽に見出し、確認するために来たのだろうか。そうだとしたら、余計に家に入れるわけにはいかない。


「紫陽が私のことを迷惑だと思っていないと言っているの。何も問題はないでしょう。むしろ、この場で迷惑をかけているのは《《お前》》の方だ、な」


「あ、あの、お兄ちゃんのクラスメイトだか誰だか知りませんけど、今日のところは帰ってください。お兄ちゃんは、明日も学校に行くと思うので、その時にいろいろ話を聞いてあげてください」


 追い打ちをかけるように、今まで黙っていた妹のすみれが、玄関の外にいる隼瀬に言葉をかける。妹まで味方につけた紫陽はさらに言葉を続ける。


「妹もこう言っているんだ。今日はいろいろあって、オレたちは疲れている。話は明日学校でゆっくりと聞いてやるから、今日のところはさっさと帰ってくれ」


「本人に帰れと言われたら、素直に引き下がるしかないな。残念だったな。飼い主に言っておくんだな。『今日はダメでした』と」


 三人からの面会拒絶の言葉に、さすがの隼瀬も堪えたようだ。彼女は、おとなしく紫陽の家から去っていく。去り際の言葉が気になったが、紫陽たちは彼女が去ったことに安堵した。


「明日はきっと、私とゆっくり話をする時間はないと思うわ。昨日、私の話を聞いておくんだったと、後悔しても遅いわよ」



「うむ。あの女の言葉はある意味、正しいな。むしろ、明日『学校に行く』という選択肢が頭に浮かんだお前ら兄妹の肝の据わりようが恐ろしいな」


「明日、学校で何かあるというのか?」


「今日は友達に何も言わずに帰ってきちゃったから、明日、ちゃんと説明しなきゃ」


 隼瀬が去ると、三人は明日の予定について語りあった。


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