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「お兄ちゃん、あやのさん、誰か来たよ!」


 二階の窓の施錠を終えたすみれが、二階から降りてくる。そして、二人に来訪者の存在を告げた。紫陽と《《あやの》》は、急いで二階に上がる。二階に上がる前に、彼女はドアに鍵がかかっているかを再度確認し、さらにチェーンをかけていた。


「なんか、マスコミに囲まれているみたいだね」


 すみれも二人の後を追いかけてきた。二階の紫陽の部屋のカーテンの隙間から外の様子を覗くと、家の前に数人の男女が立っていた。平日の昼間にもかかわらず、家に誰がいるともわからないのに、どうして家の前に立っているのだろうか。



「もうすでに集まり始めているのか。人間の情報網をなめてはいけないな」


「お兄ちゃん、玄関まで人が来そうだよ。たぶんインターホンを」


「ピンポーン」


 妹のすみれが最後まで言い終わる前に、玄関のインターホンが鳴らされる。無機質な機械音が二階にまで聞こえてくる。どうしたらよいのか、紫陽は《《あやの》》に目で訴える。


「でなくていいだろう。出ると、家の中に人がいると自らばらすようなものだ。幸い、カギもかけてあるし、チェーンもかけてきた。窓も閉めてあるから、よほどのことがない限り、家の中は安全だ」


「ドンドン」


「いや、居留守はばれているかもしれないぞ。ドアをどんどんとたたかれている」


「お兄ちゃん」


 紫陽たちが居留守を決め込み、インターホンの音を無視していると、しびれを切らした来客者がドアをどんどんと勢いよくたたき始めた。今にもドアを壊されて、家に入ってきそうだ。


「そんなに心配することはない。ドアが壊れることはないはずだ。そろそろアレが作動しだす頃だろう。アレが作動すれば、家の前にいる連中は、すぐに道路に放り出される」


 来訪者を退ける秘策が彼女にはあるらしい。やけに自信たっぷりと話し出す彼女に少しだけ不安が軽くなる。すみれも同じようなことを思ったのか、ぎこちないながらも笑顔を見せて、あやのに話しかける。


「あやのさんは、本当に頼りになるね。今の人格が《《本当のあやのさん》》ではないのかもしれないけど、でも、きっと同じような優しい人だと思っているよ。たとえそれが、私たちの敵となっているスマホだとしても」


「ふん、勝手に言っていろ。別にただの慈善事業でお前らを助けたわけではない。我もまた、スマホや人間たちにとって、お前らと同じような貴重な存在らしい。捕まったら最後、どのように処理されるか、いや研究材料としていいようにこき使われてしまうに違いない。機械につながれた自由のない生活を送ることになるのは間違いない。そんなことになるのはごめんこうむりたい。だから、こうして一緒に追手から逃れようとしているだけだ」



「ツンデレキャラを意識しているのなら、もっと表情に気を遣うべきだぞ」


「そんな低俗なものは、知識として入れないようにしている」


 三人の間に自然と笑みがこぼれる。しかし、その間中、玄関のドアをたたく音が聞こえていた。


 結局、紫陽たちの家の周りをうろついていた輩は、夕方になるまでその場に居座り続けた。家中のカギをかけ、じっと家の中で身を潜めていたが、一向に帰る気配がないため、いつまで居続けるのだろうと、家に居るこちらが不安になるくらいだった。


「キンコーンカンコーン」


 夕方五時を知らせる町内のチャイムの音で、ようやく今日のところは引き上げると決めたようだ。ドアをたたく音がなくなり、家の外から人の気配がなくなった。


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