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「もしそうだとしても、興味のない人間からのメッセージに、いちいち反応しないわよ。少なくとも、私はあなたに全然興味がないの」


「私も同じよ。今まであやのさんは、ただのクラスメイトとしか思っていなかった。でも、最近、彼のことが気になって、その彼と幼馴染という《《あなた》》だからこそ、興味を持ったの」


「奇遇ね。私も彼と親しくしている《《あなた》》は、幼馴染として、とても興味深いわ」



「おい、いつまでそんな茶番を続けるつもりだ?」


 自分を取り合うかのように、剣呑な雰囲気でお互いをけん制している会話に紫陽は無理やり割り込んだ。このまま放っておけばいつまでも、無駄な会話を繰り広げそうで見ていられなかった。


「鷹崎君が近くにいるの?」


 紫陽はすっかり自分の立場を忘れていた。《《あやの》》がせっかく気を利かせて、通話をスピーカーモードにしてくれ、隼瀬との会話を聞いていたのに、それを台無しにしてしまった。こっそりそばで聞いているつもりだったのに、とんだ失態である。隼瀬の怪訝そうな言葉が返ってくる。


「あなたはお兄ちゃんのクラスメイトなの?」


なんといってごまかそうかと必死に考えていたが、その考えを無駄にするかのように、今度は妹のすみれが電話に話しかける。


「あやのさん、あなたいったいどこで電話をしているの?これじゃあまるで」



「そろそろ、電話を切ってもいいかしら。声を聞いてわかると思うけど、私は今、彼の部屋にいて、彼とその妹さんと一緒にお話をしているの。暇ではないから、ここまで話を聞いてあげただけ感謝することね。じゃあ、また月曜日に教室で会いましょう」


 隼瀬の返事を聞く前に、《《あやの》》は電話を終了させていた。手に張り付いたように寄生しているスマホからは、通話の終了音のツーツーという音が聞こえている。


「まったく、あの女、よほどお前に執着しているようだな。いったい、彼女と何があった?いや、言わなくてもいい。理由は想像がつく」


「隼瀬に執着される理由は特にないと思う。ただ、お互いにスマホを持っていない者同士で、気が合っただけだ。今となっては、スマホを持っていないというのが本当かどうかわからないが」


「私、今の人苦手かも。お兄ちゃんはあんな女が好きなの?」


「それはないな」


 妹のすみれが隼瀬との仲を誤解したような質問をしてきたので、紫陽は即座に否定する。彼女とは本当に、スマホを持っていないという共通点で接点があったくらいである。それ以外で共通点は見つからない。彼女はクラスの人気者とまではいかないが、ちらほらとクラスメイトが話しかけているのを見たことがある。


 それに引き換え、紫陽の周りには人があまり寄り付かない。スマホを持っていないということに加えて、紫陽は他人に対して笑顔を見せることをしていない。そのせいで、クラスメイトからは近寄りがたい存在として認識されてしまった。幸い、幼馴染のあやのが何とかクラスのつなぎ役をしてくれているお陰で、いじめなどには至っていない。


「オレは別に彼女のことが嫌いというわけでもないよ。好きというわけでもない。ただ、さっきも言った通り、スマホを持っていないことが俺たちの接点だった。だから、オレ達の間に恋愛感情はない」


 自分のクラスでの立ち位置を思い出しながら、ぽつりぽつりと妹に対して、隼瀬との関係を弁解する。すみれと《《あやの》》は黙って聞いていた。そして、紫陽が話し終えると、すみれはほっとしたような安堵のため息をつく。


「はあ、よかった。お兄ちゃんには、あやのさんがお似合いだよ。今はちょっと性格がスマホに乗っ取られているけど、あやのさんの意識を戻すために頑張ろうね!」


「我はこのまま成長が止まって、この女の人生をもっと楽しみたいな」


 二人からの熱い視線を感じるが、各々の心に秘めている思いは違っている。正反対と言ってもいい。それなのに、一途に自分を見つめる姿が妙に微笑ましくて、つい紫陽は笑ってしまう。


「オレはお前らのことは気にかけているよ」


 三人の間につかの間の平穏が訪れていた。


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