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「なあ、紫陽。ここで我々からの質問だ」


 動き出したスマホの右上には、電池残量を示す電池のマークが赤色の警告を表示していた。スマホに寄生された人間は、自分の手に寄生したスマホの電池残量がそのまま自らの寿命となる。こんな危機的状況で、いったい何を言い出すのか。


「どうやら、この女と紫陽の学校の保健教師は、スマホ依存症だった。だから、我らに寄生された。そして、もうじきスマホに押しつぶされるか、命尽きるかどちらかの運命をたどる」


「何が言いたい?」


「まあ、そうカリカリするなよ。ただの質問だ。紫陽がこの質問に了承すれば、今後のお前ら人間に有益な情報が手に入るかもしれない。それに」


 紫陽の幼馴染の顔をして、言いたい放題に自分の思っていること、考えていることをべらべらと話し出す《《あやの》》。今は授業中だが、休み時間になれば生徒や先生が現れる可能性がある。さっさと用件を話せと、紫陽は無言で話を促す。


「それに、有益なのは、人間だけではない。我々としても、今のまま、お前たちに寄生続ければ、人間を絶滅させてしまう可能性がある。我々としては、それは困るし、お前らも我らに絶滅させられたくないはずだ」


 前置きをしてから、スマホはようやく紫陽に質問した。その内容は拍子抜けするようなものだった。ただし、通常の状態であれば即答できた内容でも、今のこの状況で即答するのは難しかった。


「目の前の男をお前は助けたいか?」


「どう意味だ。先生はすでに死んだも同然の状態だろう?この状態で生き返った人間は今まで聞いたことがない。お前も、自分のデータベースを調べでもすれば、わかっているはずだ。オレに偽善者ぶらせたいのか?それとも、人間として死にかけの人間を救えないことに嘆く様子を楽しみたいのか、たちの悪い質問だ」




「原田先生、保健室にいらしているのなら、返事をしてください。生徒さんの調子が悪くて診てもらいたいのですが」


 コンコンとノックの音が廊下から聞こえた。紫陽が保健室の壁の時計を確認するが、まだ5時間目終了までに20分は残っていた。


「ここで話すのはこれまでか。時間切れのようだ。では、詳しい話はお前の家に行ってからにしようか」


「はあ。それでこの男は助かる見込みがあるのか?」


「すぐにどうこうなるものでもない。それこそ、動画などで事例を見ているのならわかることだ。とりあえず、コンセントからスマホを充電しておけば大丈夫だろう」


 紫陽は《《あやの》》の言葉を信じ、保健教師の近くに転がっていたスマホのコードをコンセントに差し込んだ。



「先生、中にいるのでしょう?生徒の具合が悪くて」


「すいません。今開けます!」


 保健室のドアをたたく音が大きくなり、コンセントを指し終えた紫陽が慌てて扉のカギを開けて、中に先生と生徒を招き入れる。


「原田先生は、保健室にはいないみたいですよ。僕たちも体調が悪くて先生に診てもらおうとしたのですが。それでは僕たちは早退します」


 保健室に入ってきた来客に紫陽と《《あやの》》は軽く会釈して、急いで帰宅することにした。


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