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次の日も、テレビでは話題のほとんどが「スマホが手から離れない」というニュースで持ち切りだった。


「いってきます」


「行ってらっしゃい」


 スマホを持っていない自分には関係ない。妹のすみれは友達のことが心配で、様子を見に行くと言って家を早めに出たが、紫陽はいつも通りの時間に家を出て学校に向かった。




今日も、電車内ではスマホをいじる人が大半だった。しかし、いつもと様子が違い、彼らのスマホの画面を見る視線は、やけに厳しいものが多かった。スマホをいじる乗客の一部は、スマホを親の仇だとでもいうような目で画面を見つめている。


 そんな乗客を見ているうちに、不意に紫陽は隣の家のあやののことを思い出す。紫陽はあやのと一緒に登校しないように、電車の時間を少し早めにしている。そのために、一緒に登校することはない。


「あやのも、スマホの話題に夢中だろうな。あいつも、結構なスマホ依存症だからな」


 学校で会ったら、すぐにスマホの話題を持ち掛けてくるだろう。なるべくなら、学校で声をかけないで欲しいが、彼女にそんな思いやりは通用しない。はあとため息をこぼすが、紫陽のため息をとがめる者はいなかった。みな、目の前の自分のスマホに夢中で、他人のことを気にする余裕はないらしい。



 紫陽はいつも通りの時間に登校し、教室に入る。紫陽が登校する時間は始業20分くらい前で、大抵の場合、クラスの半分くらいがすでに教室に居た。


しかし、こちらもいつもとは様子が違っていた。紫陽が教室に入ると、クラスメイト数人がいるだけだった。どうやらまだ、大半が登校していないらしい。昨日は教室がやけに騒がしかったのに、今日は逆に静かで気味が悪い。



「おかしい」


 すでに紫陽が教室の自分の席に着いてから、すでに10分が経過していた。始業開始10分前だというのに、いまだにクラスメイトの大半が来ていない。いったい、クラスに何が起きたのだろうか。


 インフルエンザの集団感染、電車事故での遅延などの学校に来られない状況が発生したとでも言うのか。しかし、紫陽は普通に登校することができており、人身事故等の電車による遅延の可能性は低い。紫陽が使っている鉄道を使用する生徒は多いが、その鉄道で事故が起きてはいないだろう。同じ電車を利用している生徒がいたので、その可能性はなくなった。


 そうなると、インフルエンザなどの集団感染が考えられるが、昨日までは皆元気そうで風邪をひいている生徒は一人もいなかったはずだ。いきなりクラスメイトの大半がかかるとは考えにくい。


「おはよう。鷹崎君。今日はなんだかクラスメイトの人数が少ないようだね。まあ、それも仕方ないことなのかもしれない」


「おはよう、隼瀬さん。いったいどういうこと?」


 紫陽がクラスメイトの大半が来ていない理由を考えていると、隼瀬あきらが話しかけてきた。彼女はクラスの大半が登校していない理由を知っているようだ。


「知らないの?ニュースでも持ち切りだったと思うけど。スマホが手から離れなくなったというニュース」


「知っているけど、それとこれが関係あるというのか?」


 ニュースでも話題になっていたし、クラス内でも同じ症状の生徒がいた。さらには妹の友達の話も聞いている。しかし、それが何だというのだろうか。


「はあ。鷹崎君、スマホを持たないのは個人の自由だから、勝手にすればいいと思うけど、世間で騒がれていることについては、もっと貪欲に情報を集めた方がいい」


 なぜか、紫陽の言葉に隼瀬あきらは呆れたような声で非難する。その反応にイラっと来たが、それよりも彼女の言葉の意味を考え、それを口にする。


「世間で騒がれているって、まさか、そのスマホのやつのせいで、学校に来ない……」


「ようやく気付いたようね。ご名答。おそらく、今学校に来ていない生徒のほとんどがスマホにやられているということよ」


 なんてことだろう。そんなことが現実に起こっていることが紫陽には信じられなかった。スマホというのは、人々の生活を便利にしてくれるただの電子機器だったはずだ。それがどうして、手から離れなくなっているのだろうか。


「キーンコーン、カーンコーン」


 隼瀬あきらと話しているうちに、始業時間のチャイムが鳴り始める。改めて教室内を見渡すが、紫陽が登校してから、教室内のクラスメイトの人数に変動はなかった。あやのの姿を探すが、彼女も学校に来ていないようだった。


 予鈴のチャイムが鳴ったので、登校していた数少ない生徒は自分の席に着く。隼瀬あきらも自分の席に戻る。昨日クラスの話題の中心にいた高橋の姿もなかった。


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