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閑話NO.4 元大魔王カティラニアの受難 中編

またまた1ヶ月ほど経ってしまい申し訳ない。もう慣れてもらう他ないのかもしれない…。

この間話もここまで長くする予定は無かったのに…。今のドラマと被るから早く話を進めたい…!

「ニダヴェリールだったっけ?あの基地みたいに背の高い塔が沢山あるわね。それに、ロストフタよりも緑が整備されてるんじゃないかしら。ちょっと意外ね」


 僕らは車窓から過ぎる都市の景色を眺めながら呆けて過ごしていた。なぜ全員が一様に脱力をしているのかは、無人乗用車の乗り心地が良過ぎるからだ。

 異世界での移動は、舗装が行き届いていない道を徒歩や馬車で進むために足腰への負担がすごいのだ。それに比べて、この無人乗用車は普通に高級なものなので、座席がしっかりしていて走行も静かで安定している事から、過酷な環境の違いが僕らを無防備にさせる。


 一ヶ月近く、異世界の古い環境に慣れてしまったせいで押し寄せてくる感動は引くことが無く、背もたれに寄りかかって体を動かす事なく、首だけ動かして外の景色を見ていた。


「あ"〜〜。異世界に帰りたくない〜」

「やっぱり地球の方がいいわ…。この快適さを思い出したら、あんな田舎に帰りたくない…」

「地元が言いたい放題言われるのは癪だけど…、この快感を知ってしまったら田舎批判も頷けるのよね…」

「私の隠居先、日本にするわ!」

「密入国者は取り締まりますからね。正式な手順は踏んでください」


 全員に覇気が無い。僕にはそもそもそんなものを持ち合わせている自覚が無いのだが、周りの人たちも明らかに貫禄というものが消えている。この座席は人間をダメにさせる究極の椅子なのだろう。


「そろそろ着きますよ…。降りる準備をしてください…」

「いや〜〜」


 返事の悲鳴が誰のものだか分からないくらい、僕らが思考を放棄していたのは確かだ。



〜〜〜〜〜海上保安庁総合庁舎前



 高さ3,000mを誇る海上保安庁第三管区二号総合庁舎はもともと横浜市にあったものなのだが、横浜市の都市化と工業化による敷地不足に陥ったために東京湾の新規埋め立てが行われた際に、海上自衛隊の庁舎がある近くの空き地に移転したのだ。海自の横須賀艦隊司令部の方が観艦に最適なのだが、気軽に入れる場所じゃないので一般公開されている海上保安庁の方に来た。


「近くで見ると余計大きいというか…。逆に大きさ以外の形容ができないわね。一体何人の人間が詰め込まれてるの?」

「こういう高層ビルにはそんなに人はいませんよ。確かに日本の都市の人口のほとんどが住宅ビルに集中しているんですが、大きいやつだと1棟で80万戸近くの居住能力を持つものもあったりしたんですよね。逆にこのビルとかは作業をするための場なので、殆どが機械で埋まってたりするんです。だから精々2千人位ですね」


 ちなみに戸数だけで普通の国防武装特政都市並みの数を誇る2,000mで80万戸の住宅ビルなのだが、再開発のために強制的な立ち退きを受けた人が補償を受けるまでの間に使われたりした、災害時のプレハブ住宅みたいなもので現在は使われていないのだ。

 超高層ビルは、住宅、事務所、公共機関、商業施設、インフラ、工場、防衛装備など多岐に渡るが、都市部にあるほとんどは最初の4つくらいなのだ。しかし、基本的には外見から想定される容量より床面積はずっと小さい事が当たり前だ。生活性の向上のために各階の間隔は5m近く離されるのが一般的なのだが、さらに事務所や公共機関は制御用のコンピュータ群が大量に設置されているため、機械階としてビルの内容量の半分以上を占める場合が多々あるからだ。

 そういうものは全て地下に収容することも考えたが、地下の大規模輸送網の建設を妨げる可能性があるので不要な施設も地上階に晒されているのだ。中堅企業のビルですら昔のスパコン並みの規模の量子コンピュータが設置されていたりする。


「そういえば、生まれた時からの光景だったから違和感を持てなかったけど、何で先進国のビルってあんなに高いんですかね?」


 美琴さんの質問を聞いて、自分の年齢というものを不意に自覚してしまった。そうだった、僕たちはかれこれ40年以上前に生まれた人間なのだ。時の流れというべきか、人間は20年もせずに常識が形成されていくのを鑑みると、20年代以降の世代の若者達は当時の日本の大躍進を実体験として感じることができないのか。仕方の無い事だろうが、それが少し残念に思えてしまうな。とは言え美琴さんの質問は良いものなのできちんと説明してあげよう。


「ビルが大きい理由は、単にそれほどの設備を要求するようになったからですが、高層ビルの理由は景観と通信のためですね。地下に建てたら倒壊の心配をしなくていいんですけど、情報通信技術が発達した現在において光ファイバー通信だけでは限界なので、送受信を外界を通して行う必要があるんですよ」


 この海保の庁舎は、1階から80階までが業務スペースで、そこから350階までコンピュータが詰め込まれた機械階になっており、420階までが観測階となっていたはずだ。そして地下に共同指揮所が設置されている。機械階の270階は業務用エレベーターでのみ行ける場所で、通常のエレベーターの場合は機械階のある1500m以上をスルーして上下することになるが、それぐらいだったら分間3,000mを誇る現代のエレベーターにかかれば問題無い。


「この庁舎は、民間が設置できる上限の2,000m以上の高さの3,000m近くに展望台を設置していますから、地元民や観光客にも人気の場所なんです。こんな場所で長話しても目立ちますし、早速入りましょう」



〜〜〜〜〜上空2,985m 海保総合庁舎展望室


「うわ!えっ……?」


 エレベーターの扉が開いた瞬間、学長がこの世のおぞましい物全てを見たような表情で顔を引き攣らせた。

 確かに、ガラス張りに見える壁の海一面に鐵色の軍艦やら、灰色の軍艦やら、真っ白な輸送船が密集しているのだ。東京湾にこれほど密集するのは観艦式くらいのものだろう。

 ちなみに海上のものが海岸付近の高度3,000mから見れるはずもなく、本当はこの壁一面に投影用のパネルが設けられており、高さ150mから300m辺りの風景を映し出しているのだ。そこら辺の階にも展望スペースはあるのだが、観光客が多いのでこっちに来た感じだ。


「あの点って、全部あの時と同じ軍艦なのよね…」

「何でそんなに恐ろしそうな顔をするのよ?」

「カティラニア、貴女は知らないでしょう。この世界の軍艦の恐ろしさを…」

「それなら知ってるわよ。ユガだって一種類だけ白いあの軍艦にやられたんだもの。あれが一番強いんでしょ?」

「あれは外国の軍艦よ。私の見た限り、この国の軍艦は黒濃い色をしたものなの。例外はあれど、それぞれの国によって色で違いを出しているのよ」

「それは分かったけど、それがどうしたの…?」

「分からない?あの身勝手の権化のようなアイツの母国の軍艦が、他国の軍艦と同等かそれ以外な訳ないじゃない」

「確かに…」


 誰が身勝手の権化やねん。自覚はあるけど、これでも今までセーブしていた方なのだ。それで身勝手と言われるのなら僕はどうしたらいいんだ…。


「それに勘違いしてるようだけど、軍艦の大砲だけが脅威だと思わないことね。艦載機は音の速度の数倍の速度で飛行して、ミサイルは一番小さいものでもワイバーンを塵も残さず消滅させて、それが数千発も搭載してたりするのよ」

「・・・。90億の人口といい、海園しなといい…。この世界はどうしてそんなに恐ろしいのよ…。良い隠居先だと思ったのに…」

「・・・。同情するなら領土を下さい」

「何で懲りないのよ!」


 領土を欲するのは、国家の版図を広げることで国家そのものの強度を上げることができるからだ。自国の中核とも言える本土を守る事こそ最終的な国防であり、有事の際には大規模な租界だって可能になる。そこにレジスタンスの可能性がある民族がいないのなら、持っているだけ得になるのだ。


「酷い茶番ね…」

「そ、そうですね…」



〜〜〜〜〜



「せっかくだし、我が国の護衛艦について詳しくお話ししましょう!」

「え、いや別にいらないわ…。それに何で興奮してるのよ」

「されたところでどうにもならないしね…」


 異世界組の反応が薄い。薄過ぎる!

 僕はもっとこう…、「知りたいわ!」とか「是非教えてちょうだい!」とか言われる予定だったのだが、異世界の兵器に興味がないのか?!しかし、僕は今護衛艦の説明をとてつもなくしたいのだ!こんな生焼けの気持ちを持ったまま他の場所に向かうなんてできないね!


「一番簡単なものから解説していきましょうか。まずは根本的な護衛艦の定義からです」

「誰も興味を示さないのに一人でに話を進めたら友達できないよ、お兄ちゃん」


 一時の友達よりも自分の欲求を優先することができるのか、できないのか。正直ボッチでもインキャでもいいので喋りたいのが本心である。しかし、千歳さんもいる手前、変に変人ぶるのも憚られてしまう…。


「私は先生の話を聞きたいです!そういう知識ってネットで見たことしかないので興味があります!」

「現代兵器の解説において僕より右に出る人はいませんからね。ながーくふかーく教えてあげましょう!」

「あー、スイッチが…」

「まずは護衛艦と嚮導護衛艦の違いです。簡単な話ですが、大口径砲又は多数の艦載機を装備した水上艦艇には基本的に艦隊規模の指揮能力が付随しているために、小規模の任務部隊を編成する際に部隊の旗艦を簡単に決められるようにするためですね。他国ではそもそもそのような艦種を戦艦や空母と呼称しているため、その艦種に付き従う指揮艦としての印象があるため問題ないんです。しかし、実情は三千隻を抱える海上自衛隊の個別の艦名を全て覚えるのが難しく、艦種が護衛艦で統一されているため見分けがつけられなかったので、嚮導護衛艦として字面だけで区別できるようにしたんです」

「確かに、ニュースで護衛艦の名前が出ても、映像が出なきゃハッキリとは思い出せないことがありましたね」

「ちょっと待って…?え、あそこにいるのが全部じゃないの?え、これの6倍近くが本来の数って言うの?」


 カティラニアさんが戦々恐々しだしている。外の風景を見た学長よりも顔色が悪くなっているが心配だ。


「だ、大丈夫ですかカティラニアさん?具合が悪いならタックスヘイブンにでも行きます?」

「なんなのよそのタックスヘイブンって…」

「富裕層向けの免税地域ないし国です。昔はただの無法地帯だったんですけど、現在は国連の管理の下でちょっとづつ不良債権の逓減化を進めているところです」

「わたしには無縁の土地じゃない。どうやったら具合悪いのにそんな所を薦めるのよ」

「良いリゾート地なんですよ。そりゃあもう、快適な気候に高水準の衣食住しか集まらずに治安や文化が素晴らしい場所なんですよ?」

「私たちの勢力範囲の管轄を認めてあげるからそこに住めるだけのお金をちょうだい」

「考えさせてもらいましょう」

「ひ、酷過ぎるッ!」


 カティラニアの自堕落とでも言うべき一面を見て薫が絶叫する。しかし、タックスヘイブンは隠居を考えているカティラニアさんには最高の立地だろう。とは言っても、僕はそんなに好き勝手できるお金を持っていないのが実情なのだ。国連の繁栄のために気が進まないが金儲けも考えなくてはならないな。


「さて話を戻しますけど、我が国の海上自衛隊の護衛艦は基本的に無人で運用されます。隊員が少ないですからね…。非常時とか戦闘が予想される際にしか隊員は乗艦しないようになっています。もちろん、暇なら乗っても良いんですけどね。何人か船の上で暮らしてる人もいますし」

「え、そうなんですか?!」

「自衛隊員だけですけど、数ヶ月陸に上がれない事を除けばリモートワークで業務はできますし、乗艦している間はさらに手当が出ますからね」

「わ、私も海自に所属したら船に乗り放題なんですか?!」

「特例がない限り所属艦だけですよ」

「そっかぁ…」


 千歳さんはそんなに護衛艦が好きなんだろう。僕もその気持ちは分からなくない。


「責任が問われる状況で隊員は乗せますけど、仮に戦闘になっても無人の方が最高効率で戦闘が行われる手前、もう少し人数の縮小が期待できそうなんですよね」

「ん?無人だと最高効率だって言うのはどうして?」

「地球で無人と言うと人工知能により完全に自立して管理されている事を表すんですよ。人間より遥かに高い認識力と判断力で寸分の狂いも無く操るんですから、マニュアルなんかとは比べ物にならない性能を発揮しますよ」

「なるほど。ユガとの戦いの時、あの正確な攻撃ができたのはそういうタネがあったからなのね。でも、そこまで依存していると危険性もあるわね」


 人工知能は最早人類にとって無くてはならない存在となっている。人類の機械工業のほとんどは人工知能によって管理されており、ライフラインの設備維持にも欠かせない状態だし、地方行政だけでなく国家管理すら自国の人工知能で行われているので、確かに危険な状態だろう。もし仮に人工知能が全て機能不全に陥ったとしたら、今の人類が文明から離れて暮らせるかどうか…。しかし、対策はしてあるんだがな。


「そうだ。何か聞きたい事とかあったら受け付けますよ」

「そうね…。軍艦の種類とかどうでもいいから、攻撃手段と対抗手段を教えてもらいたいわね。戦ってもいいようにしたいの」


 別に戦闘を起こすつもりは無いのだが、友好に繋がるのならそのような目的であっても情報の開示はした方がいいだろう。


「僕が管理できる先駆国の海上戦力は、コンセプトが違えど運用兵器はほとんど共通化されており、通常の攻撃の主力は艦砲射撃とミサイル攻撃です。弾が安いし多く搭載しているので基本的に艦砲で済ませられるものは済ませます。ミサイルは高脅威度目標や高度な処理に求められますね。その他の対空砲やロケット砲、魚雷なんかも似たようなものです。違いがあるのはレーザー砲やビーム砲ですけど、これはエネルギー兵器のため妨害に弱いことから、対空防御用くらいにしか用いられませんね」

「注意するべきは艦砲とミサイルと言ったところね」

「あと、もう一つ特筆しておかなければならないのが航空機です。これは特定の艦種のみが運用可能な攻撃兵器で、この攻撃兵器を運用するために作られた艦種がかれこれ100年以上続いてますからね。運用思想から見ても他の艦とは圧倒的に異なるのは確かですね。海洋の浮力を利用して戦闘力を陸上よりも効率的に運用するのが通常の水上戦闘艦なのですが、空母とその航空機に関しては圧倒的な差別化を実現する航空機を運用するために移動可能な海上基地という感じです。論理的には航空機とは攻撃プラットフォームをわざわざ空力を用いて空中に上げるという非効率的な兵器に思えますが、攻撃性能とその戦略性は計り知れず、艦砲、ミサイル、航空機が戦闘艦の主兵装と呼べるでしょう」


 攻撃用途によって弾頭は自在に変えられるから、ミサイルと艦砲の違いはほとんどない。対空戦闘はもはや対空ミサイルだけの仕事では無く、長距離の対空迎撃も艦砲がこなせる様になっているのだ。


「艦砲もミサイルも運搬能力は数百kgから数tの範囲で、突入速度と合わせた攻撃力はその範囲内です。最小は自由に調節できますが最大火力は反物質弾頭で数tだから、1発で大きい山くらいなら蒸発するんじゃないですかね。突入速度は音速の25倍あたりでしょうか」

「そ、そんな速度で攻撃が飛んでくるの…」

「大和型嚮導護衛艦ならその威力の攻撃を毎分1,500発で5分くらい投射できますよ。深海から衛星軌道、惑星の裏側まで攻撃を命中させることは可能ですからね。下手に地下とかに逃げたらマントルを露出させるかもしれませんね」

「な、なんなのよ。この世界というかアンタは一体どういう神経してたらそんな恐ろしいものができるのよ」

「・・・。歴史を愛する心、ですかね…?」

「そんな馬鹿な回答求めてないわよ!」


 カティラニアさんも学長と同様に面白い反応をしてくれるので説明のし甲斐があるものだ。


「諦めなさいカティラニア」

「ユイシア…?」

「コイツは私たちの驚く反応を見て楽しんでるんだから、感情は表に出さないであいつより有利な立場になった時に復讐できるようにしておくのよ」

「そうね、わかったわ。一緒にアイツの尊大な傲慢さをメッタメタにしてやりましょう」


 ちょ、調子に乗りすぎてしまった…。


「と、東京湾だけじゃなくて我が国の誇る東京首都圏も見てみてください!数百を超える高高度超高層ビル群に国家の運営を行う省庁が並んでいるんですよ!ビルの隙間には鉄道路線がよく見えるでしょう!東京首都圏を網羅する鉄道網は、都市圏では最大の人口とGDPを支える最高傑作の輸送網なんです!数値にしてみれば一日で約10億人を快適に輸送する事ができるほどの能力があるんです!」

「確かに、さっき見たやつよりも飛び抜けて大きいのがたくさんあるわね。・・・。見間違いかと思ったけど馬鹿みたいに大きいわね…」

「10億人分なんて絶対いらないわよ…」


 東京首都圏は世界トップクラスの規模を誇る都市だ。その人口、生産性、利便性、影響力の強さなど全ての面を総合すれば世界一と言っても過言ではない。

 東京首都圏は、先程も説明した通り鉄道によってほとんどの輸送が行われている。狭軌鉄道の流れを汲みながらも他国との共通化の余地を残した新規ダイヤシステムは、無人運転による高度化した加減速システムに支えられて、ほぼ最高の効率を叩き出している。将来的にはこのシステムを他国に輸出することも考えているのだが、その国々の特色ある鉄道文化をいかに存続させながら日本式の過密ダイヤが導入できるかが鍵になる。


 話が逸れてしまったが、日本は高高度超高層ビル発祥の国であり、東京都の再建に伴い高度なビルが集中的に建設されているのだ。

 国家管理を行う首相官邸や国会議事堂は、国家の象徴として全高10,000mを超える世界有数のメガストラクチャーとなっている他、他にも防衛省や外務省などの特に重要な省庁は5,000mを超える建築物になっている。それに、復興の象徴として東京都西部に建設された東京スペースツリーなんか旧国際宇宙ステーションよりも高いからな。

 これを作った当時の僕は頭が相当イカれていたのは確かだろう。よくやった。


「人間の手で作ったとは考えられないくらい大きい建物があるのだけど、あれは一体なに…?」

「無論、我が国の国政を担う国会議事堂と首相官邸です。北九州工業地帯で段階的に製造されたブロックを輸送機で設置して積み上げていく作業で建設に5ヶ月近くを要しましたが、やろうと思えば3日もかからずに設置することは容易いですね。世界最大規模の経済と産業を持つ日本の国家運営機能のほとんどを管理する施設を備え、OCTOによる国際的な経済市場予想の中核を担う最重要施設でもあります。OCTO(オクト)は日米欧蘇の戦勝主要国4つの包括的国家同盟の事で、経済市場予想はOCTOで独自に行われている未来予知の様なもので、絶え間なく変動する市場を予測して通貨価値の制御や国家の成長率の調整を行います。ちなみにこの経済市場予想は最重要の機密事項ですからオフレコでお願いしますね…。話が逸れましたが、一方だけ少し背が高いのが全高11,000mの国会議事堂ですね。我が国の国体である間接民主主義を行う場であり、国家予算の算出や福祉など国民に深く関わる業務を行う場所です。もう片方が10,800mの内閣官邸合同庁舎です。外交や行政、地方自治体の補助を行うのがこの建物であり、事実上我が国の最高決定機関です」


 大洋統制条約機構OCTO(Ocean Control Treaty Organization)はその名の通り名目上はシーレーンの保護などを行う機関なのだが、先駆国だけが集まる機関なんてこれくらいしか無いので、世界の覇者としての業務をここで済ませているのが現状だ。



「この世界の常識を持ち合わせていないから断言はできないけど、コイツの言動とこの都市は異常だって事は分かる気がするわね」

「私たちの世界で何をやらかすのか、困ったものね…。この世界の穏健派に接触してコイツの暴走を止めてもらおうかしら」

「それは良い考えかもしれないわね!」


 なんか、別に違うけど、対仏大同盟を組まれた時みたいな疎外感というか絶望感というか、別に帝政前からのフランスもそこまで孤立してたわけではなかったし、というか力で仲間を服従させてた訳だが、僕は多様性を尊重できる人間なので、自然とこんな感じになる事は偶にある。


「それはともかく…、そろそろ別の場所に行きますか?まだここでの景色を見たいのならそれで良いんですけど…」

「いや、もういいからもっと平和そうな場所に案内して。私はさっさと降りるわ」

「そ、そうですか。ここそんなに物騒でしたか…」


 平和そうな場所って一体どこだろう…。


「そうだ!京都に行こう!」

「京都か〜」

「京都?東京と響きが似てるわね」

「京都は昔の日本の名目上の首都として1000年以上存在していた歴史ある都市です。王政時代は都が京都周辺に置かれ、京都府と奈良県はその中心地として、現存する文化的遺産が多くあるんです」


 京都、奈良の歴史的な文化圏は恒久的な保存が決定されて、文部科学省と国連文化機関(UNCO)の合同で多数の文化財の管理を行なっている。日本という技術国家の利便性は他国の観光地よりも優位性を持ち、世界でも有数の観光地として盛んになっている。流石に欧州の観光産業には劣るが…。


「あの世界では見られない風流な歴史的遺産を楽しめると思いますよ。新幹線で行きましょうか」



〜〜〜〜〜



「早くて速いわね〜」

「こんなのが国中に張り巡らされていたら、転移魔法なんて要らないわね…」

「新幹線に乗るのは久々だなー」


 新幹線は現代においてもその需要は衰える事なく、活発な輸送機械の一つとして数えられている。全てがリニアモーターカーに移行しているのだが、形状や運用形態は数十年前とほとんど変わらないのは珍しい事だ。時速700kmを余裕で記録する速度で移動するため、車窓の景色を楽しむ機会がないのが残念ではあるが、僕も久々に乗るので新幹線を楽しみたい気分になってきたから、いつか暇ができた時にでも副線で走らせている低速路線にでも乗ろうと思う。僕は鉄オタではないが鉄道を楽しむ風情を持ち合わせているため、車輪時代の速度で移動する路線は観光目的で存続させているのだ。


「これが駅弁というやつです。異世界組のためにフォークも用意したので頑張って食べてくださいね。あと40分で到着ですよ」

「まあ、初めて見るけど美味しそうな食べ物ね!」


 観光用の低速路線用の食事なのだが、食べたくなったので人数分買ってしまった。修学旅行でも駅弁が一番美味しいと言う人種が一定数いる事に納得してしまう美味しさだ。


「こんなに速く動いてるのに優雅に食事が取れるなんて不思議な感覚ね…」

「外国にはもっとふざけた奴がいますからね。真空列車とかすごいですよ、アレ。まあ僕も制作に携わってた訳なんですが位置情報を示すマークがヌルヌル動くのが気持ち悪くて苦手ですね」

「な、何ですかその感想…。味わってみたい…」


 いやね、アレは気持ち悪い。最大まで縮小したメルカトル地図を開いてシベリア真空鉄道に乗ってみたら30分でついたからな。ウラジオストックからハバロフスクまでは良かったんだが、不幸にもノヴォシビルスク通過のヤツに乗ったためにすごい速度で北アジアを横断したのだ。今でも思い出したら引き笑いが出てしまう。


「あ、早く食べないと京都駅に着いてしまう!」

「食べ終わってないのお兄ちゃんだけだもんね」

「あ、待って!瀬田川抜けちゃったんだけど!」



〜〜〜〜〜



「お待たせしてしまい申し訳ありませんでした…」


 結局、京都駅までに食べ終わる事は叶わず、駅のホームで独りで食べた。恥ずかしいとの理由で他のメンバーは先にホームを降りてしまったのだ…。千歳さんは残ってくれようとしたが学長たちに連れられてしまった。ブルシット…。


「女子より食べるのが遅いのは男としてどうなのよ…?」

「ごもっともでございます…。よし!それではまず、京都市を一望するために京都タワーに登りましょう!」

「あ、話逸らした」

「また展望台に行くの…?別にいいけど」


 昔のことは忘れた。それよりも一日で済ませるためにも素早く観光を終わらせなければ…!


 京都タワーは、やはり京都駅の目の前に設置されている、デカくて景観をぶち壊している建物だ。過去に京都景観論争が巻き起こったのも頷ける。逆に四代目京都駅にとって良い隠れ蓑になったほどに、今も昔も景観をぶち壊している。ちなみに2030年辺りで改装が行われて、高さが130mから3,900mと30倍に進化している。流石に景観を壊し過ぎているので、建物には珍しく全体に光分子擬似透過板が施されており、下から覗くか特別なものを通さないと見えない様になっている。そんな事するくらいなら建てるなよと思った。


「今回はデッキに出ますからね、もっと楽しめると思いますよ」

「昔の国の街並み、楽しみね」



〜〜〜〜〜



「「「おお〜」」」


 異世界組だけでなく、学生組も感嘆の声を上げる。いささか風が冷たいが夏に差しかかる時期なので心地よいくらいだ。

 何度か来たことがあるが、とてもいい景色だ。流石に駅ビルの京都駅を越える高さではないので南側は見えないが、南側は高層ビルが並んでいる場所なので逆に都合が良い。清水寺なんかは僅かだが見ることができるし、京都の碁盤の目の大通りはそれだけで芸術に感じられる。


「いい景色ね〜」

「ここは古都や洛中などの美称で呼ばれてもいます。当時の大国唐の洛陽という都市を真似て建設した都市です。本来の洛陽は戦時期に解体されて僅かな面影しか見ることができませんが、オリジナルもいい場所でしたよ」

「こうして歴史を俯瞰するように見れると、種族の違いで争うことの愚かさをかんじられる気がするわ」


 やはり、知性がある限り別の生物を殺傷する事に対する罪悪感というのは生まれるのだろう。こういう感情が広まれば、平和な世界も作れるのになぁ。


「だったら是非国際連邦に加盟しましょう!戦争ができないほどの絶対的な国家安全保障を約束しますよ!」

「アンタまだ懲りてなかったの?!」

国際連邦文化機構(UNCO)。国際連邦の本来の略称はWFなのでWFCOという訳ではなく、あくまでUN表記です。変な世界観を押し付けてしまい申し訳ないのですが、UN表記が好きなのでご了承を。

理由としては、国際連合よりも超国家的体制を築いたものの、そもそも国家主権を認めた組織なので連邦という語句自体が破綻しており、日本語での国際連邦の正式名称はNext generation United Nations(UNN)。日本語では表記が面倒なので国際連邦と言っているだけという設定です。


近いうちに世界観やらまとめたページを作りますね。最初の方にあるかもしれません。

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