第8i話 先駆ける日本
またまたお待たせしました。
何かもう、申し訳ないですが投稿ペースに関しては諦めてもらいたいです。
〜〜〜〜〜北九州市若松区 柳崎町
今日は学校の運動会を休んで無人工場建設予定地にやってきている。ちなみに、無人工場建設の場所を北九州市にしたのには、3つほど明確な理由があるからなのだ。
一つ目は紫川電機の存在。産業用ロボット操作のシステムは僕が中心となって作る予定なので、産業用ロボットを作ってくれる会社が近場にある方が助かるのだが、幸い北九州市には世界トップクラスの企業があるために好都合なのだ。
二つ目は、北九州工業地帯の生産額が他の工業地帯と比べて圧倒的に低い点。北九州工業地帯は八幡製鉄所の建設により鉄鋼業が盛んになった事がきっかけであるが、近年は地元の炭鉱を用いた工業が廃れ、他の工業地域よりも生産額が低いという現状があるのだ。これは何とかしてやらねばと思った訳である。ちなみに北九州工業地帯のきっかけとなった製鉄所は官営なので、縁を感じたのもある。
三つ目は、中華人民共和国を考慮しての地理的配置である。官営無人工場で行う事は主に、輸入に頼る機械部品の国内量産や中小企業の特許品の代理生産である。無人工場で生産を計画している品目は、通常の機械部品、緻密機械、電子系部品、電子回路などの先端技術と、多岐にわたる。これによって見込まれるのは、基礎工業力の強化や最終的な生産品の価格低下、量産性の強化がある。将来的に、関係の悪化によって中国との貿易を避けたい先進国向けに、中国より質と安さで優れる商品を提供しようという魂胆なのだ。中小企業の製品生産の受託は、国内産業保護の観点からだ。国内企業の技術力を保護しながらそれの生産力を高めるのは、正に鬼に金棒となるだろう。
日本と友好的である先進国のアメリカや欧州諸国、あと将来的に仲良くしておきたいインドやASEAN諸国の主力産業と被らないように調整しながら、最終的な生産品は見極めるつもりである。
今いるのは、北九州市の若松区の北海岸線付近である。環境未来都市北九州の誇りである響灘ビオトープの近くにある現在の場所は、小規模な埋め立て作業が行われていた。3ヶ月前までの話だが。
ちょうどいい空き地であったため、無人工場計画発足とともに日本政府がこの土地を確保した。流石に狭すぎるので、埋め立て予定地を大幅に拡大させて付近の港も確保して、コンテナ集積所も無人化する事が決定した。無人輸送艦も同時並行で開発することになっており、将来的に民間用の造船所も設置したいと思う。以前までは無人輸送船の名前で呼んでいたのだが、巨大化が見込まれるので呼称が輸送艦になった。
・・・。僕が輸送艦、輸送船と言っているのは貨物船やコンテナ船の事の総称として言っているんです。決して軍用の船として言っている訳ではないんです。
「お待たせしました。土地利用担当課長の石井です。本日はよろしくお願いします」
北九州市のロゴが入った白い乗用車が来て、今回会う予定の市の職員、石井さんがやって来た。
「こちらこそ、よろしくお願いします。と言っても、今回は計画書を交換するだけなんですけどね」
建設の進捗などを見に来た訳だが、実際のところこれと言ってやらなければいけない事は無いのだ。無人工場の外装も規格も、導入する新作の作業ロボットだって作ろうと思えばすぐに作れるまでには仕上がっている。むしろ、建設完了時期を2年後と決めてしまった手前、それに合わせなければならず待ちぼうけに近い状態なのだ。
「そういえば、今日は平日なのに学校はどうされたんですか?こちらとしては勤務時間内に済ませる事ができて大変助かるのですが…」
「あ、今日は運動会なので大丈夫です。それより、地元商工会の方達との協議は順調ですか?そこがとても心配で」
「大丈夫…?」
この無人工場の初期の生産品は、地元工場の緻密機械の代理生産を予定している。それに、将来的には日本の企業の全ての生産を無人工場で行う予定なので、こんな出だしから地元企業との摩擦なんてあってはならないのだ。
相手方に技術の進歩をしっかりと伝えて、将来の世界市場に負けない工業基盤を作るためには必要な事だとはっきり説明する事が大事なのだ。ちなみに紫川電機や地元企業への説明や建設の進行などは、厚労省と国交省の折半して出し合った結果誕生した将来工業推進局が全てやってくれている。
つまるところ、今回の北九州市の無人工場設置における僕の仕事は無いのだった。
「北九州市北部の商工会並びに町工場からの理解は得られました。現在は下関などの他県の方にも、自治体と協力して説明にあたっている最中です。ですが、やはりこの工場は先進的過ぎて、信じてもらえるのが難しいですね…」
「いえいえ、既に北九州工業地帯全域に話を回していたなんて驚きましたよ。お陰様でこの工業地帯全域の開発が前倒しで始められそうです」
この調子なら、さっそく北九州工業地帯全域の改革について協議する余裕がありそうだ。上手くいけば今年度内には追加の開発計画を国から発表することもできるだろう。
「あと、上からの話し合いで、この工場に関する公式の発言は設置面積や協力企業などの程度に抑えてもらうそうです。ホームページは、将来工業推進局が掲載する予定のホームページを元にして作ってもらえれば大丈夫だそうです」
「なるほど…、了解しました。ご報告ありがとうございます。ちなみになんですが、工業推進局は国交省と厚労省からできた組織なんですか?」
「・・・。いえ、様々な官公庁から人が入っていますので、今では省庁の間にあるような巨大な組織です。防衛省や外務省からも人が入っていますよ」
「そうでしたか。教えていただきありがとうございます。それでは仕事があるので失礼します」
「はい。ありがとうございました」
気にし過ぎであればいいが、あの職員というか、北九州市と言うべきか…。無人工場の副次的な目的についても察しがついていそうだ。まあそれがバレたところでなんら問題はないのだが。
この無人工場の件は、多国籍企業が数年後の目標に掲げるようなホラではない。日本政府が官房長官などを通して大きな声で発信してきた情報であり、建設期間は2年近くという内閣が変わる可能性も低い期間での声明だ。
無人工場とは、既に発表している通り人間の労力を一切必要とせず、自律的に生産を続けるものであり、軽い技術革新などで済ませていいレベルの建設計画ではないのだ。
世界のほとんどの国々がとっている資本主義の根本が壊れて、世界経済を大きく急変させる可能性があるこの産物は、もはやその価値が測れなくなるほどの産物に成り代わっている。こんなものをいきなり日本が作ると言い出しても、他国は納得するはずがないしできないのだ。ただの工場設置なだけに他国は口出しできない状況だが、世界中の国々の心中はこの計画の中止を望んでいるだろう。日本が核武装するよりおっかない話だ。
現在、日本の官営無人工場建設の発表に伴って世界中で反応が起きている。政治的にデリケートな話題なのでこの件に関しては多くの国々が発言を控えているが、この計画に対する対抗をする動きは少なくない。
一番乗りで声を上げたのは中華人民共和国だ。中国は国を挙げての「自動化都市建設」の計画を発表した。現行の再開発プロジェクトの投資規模を一部削減し、第一段階で3000億円規模の出資を決定し、中央企業と呼ばれる中国国有の大企業群が共同で、北京南部に位置する海岸沿いの都市である河北省の景県に、自動化都市の設置が計画されている。
米国も、世界最大級の建設会社である多国籍企業ベクテルが、同カリフォルニア州のサンノゼ市郊外に先進的な工業都市を建設する計画を発表した。サンゼノ市は米国でも有数のコンピュータ関連産業の集積地であり、シリコンバレーの中核を担っていることからその関係で選出された可能性が高い。さらにベクテルがカリフォルニア州サンフランシスコに本社が置かれているのも理由の一つだろう。
しかし、現在経済力や技術力で日本に勝る両国でさえ数年内の建設を明言したものはなく、ベクテルに至っては2040年内計画だ。このように、本来は無人工場なんて現在の人類には早すぎる話であり、今から計画したところで日本が建設を進めている無人工場のように完璧な無人工場はできやしないのだ。どうせ出来上がったところで敷地面積における生産効率は日本の方が20倍近くの差をつけられるだろう。
このような現状からもわかる通り、とにかくこの無人工場は恐ろしいものなのだ。そういうのはもちろん自国内の産業の拡張に充てるだけでなく、外交的かけ引きや安全保障に役立てるべきだと思うわけだ。上の方もそういう考えらしく、先ほど述べた通りそういった省からの関係者も関わってくるのだ。僕としては歓迎に値する傾向だが、純粋に日本の産業成長のためにしているだけでなく下心満載なのが後ろめたい...。
とまあ、副次的な目的というのは外交的な揺さぶりだな。対象国は中国にとどまらず、欧米の工業先進国や世界中の発展途上国にも及ぶ。発展途上国たちがそれに気付くかどうかはさておき、2年で工場が完成できることからわかる通り量産可能だし、建築系の向上を建てたら建設効率も跳ね上がるだろう。そして、これが完全に導入された暁には世界的な産業の席捲は確実だし、世界市場の支配だって容易になる。
もちろん、これは僕の妄言でもなんでもなく、無人工場によって可能な事なのだ。だからどうということもないのだが、これからの無人工場設置の課題となるのは他国に対する対応なのだ。
~~~~~広島市重化学コンビナート
日本がいくら工業力を得たところで、資源が無ければ意味がない。なので、次元解放式発電によるエネルギーの自給が完了したことに先立ち、他の鉱物資源の自給化も達成しようという事が決まった。
しかし、この鉱物資源の国内での安定供給にはたくさんのあてがあるのだ。日本は排他的経済水域に面積が大きく、いくつものプレートが混在しているおかげで、海底資源は豊富にあるので、それらの回収施設を量産すればいいだけだし、海中に含まれるレアメタルの回収技術も確立されていたのだ。
日本原子力研究開発機構という、その名の通り原子力に関する研究等を行う国立法人があるのだが、次元解放式発電を発明する以前に将来の発電方法として密かに研究が進められていた核融合発電というものがある。
核融合炉の開発については世界的な技術的先進国のほとんどが参加しているITER計画という国際プロジェクトがあり、日本もその枠組みの中で大きく貢献している。その開発の中で、核融合発電に必要となる三重水素を生成する材料として、レアメタルのリチウムが必要になったのだ。実はリチウムは海中にもいくつか含まれているものであり、レアメタルであるために地中からではなく海中から回収できればいいのに、と思っていたところで、しれっと原子力研究開発機構の研究グループがその技術を確立していたのだ。
さらに海水にはリチウムだけでなく海水にはマグネシウムやフッ化物もあったりする。用途の多いマグネシウムはさることながら、フッ化水素を生成する上で重要な蛍石は中国の独占市場なので、その危険性を回避できるようになる可能性があるのだ。
まさに日本チート。リチウムの回収技術を流用すれば海水に含まれる大量の金属を入手できるのだ。
で、その回収施設を広島を中心とした瀬戸内工業地域に作ろうと言うことなのだ。
しかもだ。日本には次元解放式発電という無尽蔵のエネルギーがある。このエネルギーと将来的に得られる莫大な工業力を持ってすれば、まさに無尽蔵の資源を確保できる。海水を淡水にして大量の無人輸送艦での供給網を作る事ができれば、世界の生命線を日本に集中させる事だってできる。まあ、輸入国から貰った仮想水を返すようなものだ。
仮想水とは、農業や畜産にて消費する水の事だ。どこの国だって水という資源は貴重なのに、それが比較的豊富にある日本が他国から農作物や畜産物を輸入する事で、さらに水資源を溜め込むという恐ろしいことをやっているのが現状なのである。
サウジアラビアとか水資源のために石油を売ってますから、石油より水が貴重なんですよね。僕ら日本人には理解し難い価値観だな。まあ、将来的には石油の価値も急落するのだが。
そもそも、なぜ無人工場の建設予定地の視察の帰り道に広島の石油化学コンビナートに寄っているのかというと、資源回収の施設というよりは資源の回収がきちんと行えるのかを確認しに来たためだ。
正直言って、海洋規模の流体の動き、ましてや海水に含まれる物質の動きなんて既存のスパコンでは予測する事が出来ないので、今日は試しに瀬戸内海の海流を確認するために海辺に寄ってみたかったのだ。ついでに水面まで降りれる階段があったので、空きのペットボトルを海水で何度も流して、海水を確保した。
・・・。確保した海水の使い道は全く考えてないが、いつか使える日が来ると信じてとっておくことにしよう。
〜〜〜〜〜2020年 10月5日
世界サミット(リオ+28) スイス ジュネーブ
「全く、日本は今日も化石賞か。先進国だっていうのに二酸化炭素削減の方針を未だに固めてないそうじゃないか」
「環境NGOも本気だな。この頃は毎日のように日本に化石賞を贈ってやがる」
「おい、そろそろ日本のスピーチが始まるぞ。今回はなんていうか楽しみだな」
世界サミット。それは1992年に開催されたリオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議から数年おきに開催される、環境問題を話し合う、国際連合主導で行われる会議のことである。本当は10年おきにやる国際会議のはずなのだが、気候変動枠組条約締結会議が行われる今日に、地球の環境破壊の進行速度が増加しているとの指摘から2年前倒しで行われることになったのだ。
ちなみに、なぜ僕がこんなジュネーブの国際会議所にいるのかというと、世界中からいくつかの学生が国際会議を見学する機会があり、せっかくなので参加してみた訳なのだ。もちろん、謎の力は使わずに学校を通して自ら申し込んだ。
そして、化石賞とは毎日地球温暖化対策に消極的な国に贈る賞であり、環境問題に対して口うるさい非営利組織の集まりが、環境会議中に毎日環境問題対策に消極的な国を表彰する物なのだ。僕的にはこんなの無視するに限るのだが、結構声がデカいので出席者たちの話題になったりするのだ。
僕が盗み聞いたのは、学生席の近くに座るどっかの国の環境大臣が他国の大臣と駄弁っている会話だった。ちなみにこの会場では英語しか聴こえない。
もちろん、僕がわざわざスイスにまで来たのには意味がある。これからの環境相の大森さんが演説をするのだが、それが大いに関わっている。僕は大森大臣の演説が楽しみでずっとニヤニヤしているが、そのせいで他国の見学しに来た学生さんから気味悪がられている。
大森環境大臣が演説台に登る。
拍手が送られるが、しかし小さい。
他の国、特にヨーロッパの代表のスピーチの時と比べると壇上に上がる際の拍手の音が小さかった。これは明らかに日本を馬鹿にしているという事だ。
地政学的に関係の浅い国や日本を舐めている国の代表たちは、足を組んだりのけぞったりしている。
馬鹿にしてる奴の国は覚えたからな。後悔しても知らないぞ。
「皆さん、こんにちは。本日私は日本を代表して、日本全体で行った研究の成果を発表したいと思います・・・」
大森さんの演説が始まった。開口一番に話題に挙げたのは研究の成果。無人工場の発表から一年もたっていないので、他の国々は何か破天荒な研究が行われたのではないかと勘づき始めた。
そもそも、ここにいる人間は少なからず環境に関しての知識があるはずなのに、誰一人として大森さんの発言の内容を推察できないのだ。会場全体が動揺の雰囲気になるのも無理はない。
「この成果は、この世界の常識を変えるものだと確信しています。だからこそ、私は改めて自国の研究者たちに感謝の気持ちを述べたい。そして、その成果をこの場で発表させてもらえるこの喜びを共有したいと思っています」
大森さんがそう言うと、少しづつ会場の照明が弱まる。そして、ステージの奥からスクリーンが下され映像が流れる。
映し出された映像は、木々に囲まれた白く四角い巨大な建物を上空から写したものだった。
「皆さんが現在ご覧頂いているこの白い建物は、日本人の技術と誇りの結晶です。そして、圧倒的な難問に何度も挑みながら数年かけて完成したこの建物が、世界が驚倒する形で、エネルギー問題、環境問題に終止符を打つのです」
それは僕らが確立させた、京都にある次元解放式発電施設だった。そう、僕はわざわざこの発電施設のお披露目のためにやって来たのだ。僕が作ったようなものだからこそ、発表の場には居合わせたかったのだ。
「これは発電関連施設です。この新型発電所を中心に変電所や配電所さらには蓄電所も備えられています。この発電所は京都府と滋賀県の県境に位置し、日本全体に電力を供給する事ができます」
見た事も聞いた事もない不思議な形の発電施設に、何人もの人が何の発電機か予想を言い合う。煙突がないから科学燃料による発電機だとか、現代の主流の再生可能エネルギーではないかなど言い合っているが、そんな簡単なものではないのだ。答えを知っているのは楽しいものだな。
「去年。世界の電力消費量は前年比3%アップで、約25,000TWhを記録しました。しかし、この発電所の最大発電能力は年間2,000TWhです。つまり、この発電施設1基で年間電力消費量の約12分の一を発電する事ができるのです。しかもこれは、なんら鉱物資源を必要とせずに温室効果ガスや放射能を一才排出する事がありません」
会場の混乱は最大に達した。そりゃあ、何の消費も無くとても簡単に世界の莫大な電力需要を確保する事ができる夢のような発電機なのだから。蒸気機関の発明やエネルギー革命なんて可哀そうに見えるほどの人類の大躍進となる発明であり、世界的に見た日本の立場というものがどんどん強力になっていくのは楽しいものだな。
「この発電所は本日より操業を開始しており、既に日本各地のその他の発電所は一切の運転を見合わせています。しかし、日本のエネルギー獲得における二酸化炭素の排出量は全体の4割に過ぎません。我々は今後、二酸化炭素排出量を更に減らすために産業部門における全工程の見直しを行い、さらなる温暖化対策に努めていきたいと思います」
これで大森大臣の演説は終わった。所要時間は誰よりも短いが、この場に与えた衝撃は計り知れないものになっている。しかも発電方式を全く明かしていないため他国が真似をしようにも、日本からその技術を輸入する他ないのだ。
ちなみに、電力会社の雇用や利益を守るために、各社が所有しているインフラの使用量として、電力は全て大手電力会社に提供している。また、発電施設での営業を行なっている企業には、将来的なエネルギー確保のために発電した電力を買い取る事で、現在の経済体制を存続するようにしている。
将来は全てのエネルギー事業関連の企業は国営化して、人員の再編成とエネルギー提供の効率化を目指す意向だ。
僕は呆気に取られている会場の人たちを横目に不敵な笑みを浮かべて、用事は済んだと言わんばかりに満足げな雰囲気を出して席を立つ。他の国の学生が「お前はこれを知っていたのか!」と言わんばかりの驚嘆の視線を向けてくるのが清々しい。ドラマみたいでこういうの楽しいよね!!
アニメでありそうなシーンを演出しながら、僕は会場を出て長ったらしい廊下に出る。職員やら関係者が慌ただしく動いているので、僕のことは一切気に留めていない。
「はい、もしもしー」
『おお出たか。どうだしな、そっちは人が多そうだな。こっちは学校の昼休みだが、特に話題になってないな。多分明日あたりから日本で報道されるんじゃないか』
カチューシャから電話がかかってきた。彼女には次元解放式発電の話をしており、ロシアもといソ連への技術提供を約束しているので、事前に今回のことを説明していたのだ。
『中継を見ていたが面白かったな!で、この技術を我々に提供してくれるんだよな?』
「もちろんですよ。北方領土の返還が条件ですけどね。最終的には全地域に設置する予定ですけど、ソ連の利権で運用してもらえますし、他の地域よりも10年以上のアドバンテージはありますから満足してください」
『それについては満足しているぞ。まあ、ソビエトが復活するまで待っててくれ。ところで、この技術のことをアメリカには話してるのか?伏せてたんだったらブチギレられると思うぞ』
「・・・さあ?アメリカの方は完全に外務省の仕事でしょうし、問題ないと思いますよ」
『よし。フラグ建てたな。お前がこれからどうなるか楽しみだ』
「いや、僕はどうもならんでしょう…」
ちなみに、カチューシャのアテは外れており、外務省の方で技術提供の話はまとまっていたらしい。ソ連からは北方領土の返還を求めたが、米国にはある程度の兵器開発の許可をもらったそうだ。自国の兵器の開発で他国の意向を伺う現状をさっさと抜け出したいものだ。
〜〜〜〜〜
さて、そんなこんなで計画当初は順調に進んでいたんだよね。2022年には無人工場が始動して、日本の産業の活性化や財政の回復すら見込める一大イベントを控え、エネルギー産業は大きな進展を見せており、新技術を盛り込んだ造船所の建設なども進んでいるなど、日本の憂いはある程度取り除けたと思いこんでいた。
確かにその問題は日本の真下に存在していた。しかし、我々日本人は国際社会での大躍進のせいか、その問題から目を背けてしまっていたのだ。
完全に失敗したと言わざるを得ない状況になってしまった。日本の失われた10年間なんて比べ物にならない程の大災害がこんな形でやってくるなんてね。
ある事無い事たくさん書きすぎましたので、読者世界の事実をある程度まとめました。
みなさん、これで雑学力をつけましょう。
・紫川電機は、北九州市に本社を置く安川電機と北九州市を流れる紫川を合成してできた架空企業です。ちなみにモデルの安川電機は本文のように世界トップクラスの産業用ロボットメーカーで、一部部門では世界一位のシェアを持っています。日本の誇る企業です。
・北九州工業地帯の生産額がとてつもなく低いのも事実です。北陸の工業地域より少ないとかなんとか…。現在は、環境未来都市に方向転換しておりそれなりの実績を出しています。
・米国多国籍企業ベクテルは実在します。工業都市建設計画以外は全部本当の事です。
・核融合発電の開発ITERが世界共同で行われているのは事実です。国際協力のきっかけが冷戦なのは面白い話です。もちろん、この開発組織の初代トップは日本人ですし、技術開発や実験施設などでトップクラスに貢献しているのも本当。
リチウムの回収技術を確立したのは星野毅研究副主幹率いる増殖機能材料開発グループです。
・仮想水に関してはYoutubeなどで調べたらわんさか出てくると重います。




