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第二十三話 天の川作戦後編

前回の失態に懲りずに2ヶ月も間を空けてしまうとは…。

許してください。何でもしますから。自分のできる範囲内であれば…。

「それでは決戦の戦力を招集しましょうか。と言ってももう準備してあるんですけどね」


 ロストフタに派遣しているため、数百隻分の桟橋が空いているところに来ている。静かな海しか見えないが、実はそこに決戦兵器があるのだ。


「それではお披露目しましょうか。地球において陰ながら日本や世界の安全保障の中核を担っていた大和型護衛艦と四至神です!!」

「や、大和型護衛艦ですか?そんなの聞いたことないですよ?」

「あれ…?反応薄いな…。まあ非公式のものですからね。それにしても、四至神は知ってるんですね。防衛白書の空自の装備欄に記載されているくらいしか見る事はないと思うんですけど」

「戦中に唯一開発された兵器って事で有名ですよ。あと、誰も四至神を見たことがないって事も有名です」


 あっ、そういえば四至神の予算の請求欄に「本土上空防空体制の補完を目的とした多目的無人航空機百機」って書くのがめんどくさくて、「無人航空機四至神」って名前つけて提出してしまったんだよな…。ていうかなんで僕が政務の書類仕事やってたんだよ。官僚に任せろよ…。


 確かに四至神とCAF-022くらいしか、大戦中に開発から生産まで急ピッチで進めたやつはないな。基本的に2030年代には軍需産業は発達させきったし、対応可能だったからだ。


 大和型は戦時前には完成していたが、中華国がタブーを破ったため、こちらもCAF-022を開発して、大和型の武器共通プラットフォームを取り替えて装備させたのだ。

 ちなみにタブーというのは、群性の小型航空機の事である。これ、正直言って百万単位で襲ってくると第八世代機でも苦しい。


「それじゃあ呼びましょうか。こーんにーちはー!ほら、千歳さんも一緒にっ」

「え、ええ?こ、こーんにーちはー!!」


 ふざけた呼びかけによって、僕らの見ている景色が大きく変わった。目の前の海面から巨大なレーダー群と艦橋が這い上がり、完全に浮上した時には350m近くの高さの艦が姿を現した。さらに、レーダーや航空管制装置を含めると500mの巨体になる。

 主砲は58cm三連装砲15基に加え、副砲の46cm三連装砲38基装備。VLSは13,000セルに、対空火器は800基以上。さらに小型航空機CAF-022を千万機運用でき、原子防護艦のように防御領域を形成することも可能な、全長1,400mに全幅91m、満載排水量百万tの完全潜水可能な超大型艦、大和型護衛艦。


 さらにそれだけではなく、空からは1,000mの巨大な航空機が30機群れて降りてきた。攻撃衛星を持てない日本が、それの代わりに作り出した防空兵器、無人航空機、四至神。1kmという巨大にはVLSが3,000セルに無人機が1,700機、第七世代機が300機に第八世代機が100機と強力なレーダーが装備されているだけでなく、新型兵器であるレーザー・陽電子砲が多数装備されている。


「本当に出てきた?!先生!あれは一体何なんですか?!」

「四至神と護衛艦ですよ」

「・・・。先生、ちょっと待ってください。あのですね、私たち一般人は、世界最大の軍艦と言ったら、獲加多支鹵型原子防護潜水艦の620mが最大だと思ってる訳ですよ」


 原子防護艦は他の戦闘艦と違い大型化する傾向にある。水上艦の原子防護艦も全長は600mほどある。まあ排水量はそこまで多くはないが。


「そうですね。公開されているものの中ではそれが合ってます」

「それに、艦砲の最大口径は46cm砲ですし、それを5基も装備した満載22万tの長門型が最強の戦艦だっていう事は一般常識です」


 欧州の戦艦は380mm四連装砲で、アメリカとソ連の戦艦は406mm連装砲が主砲だ。まあ本当は508mm砲もあるのだが。


「地球人はみんな戦艦が大好きですもんね」

「確かにですよ、護衛艦を漢字表記に戻して、46cm三連装砲を開発するとか、海上自衛隊が旧帝国海軍寄りになってるのも分かってました。陽炎型駆逐艦とか作ってましたし、信濃型空母とか作ってましたし」

「待ってください。長門型も陽炎型も信濃型も全部護衛艦ですよ」


 駆逐艦とかはまだいいけど、戦艦とかは憲法的にアウトなのだ。だから潜水艦と海防艦以外は全部護衛艦の名前で統一している。


「そりゃあ、46cm砲を装備した艦のネームシップが長門っていうのはちょっと残念でした。日本人はみんな大和の名を冠する護衛艦を待ち望んでましたから」

「そうですね。僕も子供の頃は相応しい護衛艦に大和って名前をつけて欲しいと思ってました」

「でも結局、10年以上大和って名前の護衛艦は出てきませんでした。で、ですよ?」

「・・・。何ですか?」

「いきなり、大和型護衛艦です!とか言われて、どんな戦艦が出てくるのかと思ったらコレですよ?そりゃあ全長700mくらいはいくのかな?とか思ってましたけど、流石に1,400mは頭が追いつきませんって」

「・・・。まあ、確かにそうですね」


 千歳さんの主張はもっともだと思った。確かに驚くよなあ。でも、数ヶ月後にはもっとインパクトのあるやつが出来上がるから、その間に耐性をつけていて欲しい。


「それに何ですか?あの主砲、あの横に並んでる小さい三連装砲って46cm砲ですよね?あの主砲の諸元は何ですか?」


 46cm三連装砲の全長は47mくらいだ。学校の校庭とかに置いたらそれだけで大部分が埋まってしまうくらいには大きい。


「砲口径580mm、砲身長70口径長の40.6m、砲塔全長22.5mで全長63.1mの三連装砲ですね。要求射程は2,200kmで砲塔1基につき毎分30発の投射が可能です。46cm砲も合わせると、片舷に集中投射した場合、毎秒20発の大口径砲弾が投射可能です。ちなみに二番艦の名前は武蔵ですね。今あるのは、日本で追加建造した三番艦の黄泉です。産地直送ですね」


 姉さん達がこの世界に来たように、ワームホールに突っ込ませて送ってきたのだ。ちなみにこの大和型護衛艦三番艦の黄泉は、この世界に来て地球との連絡が確立した時に建造を依頼していたものだ。神様が地上に過干渉する世界なら必要になると思ってたからだ。


「ちょっと待ってください!疑問が倍増しました!!ま、まず、大和型は海自所属の護衛艦なんですよね?」

「はい。秘匿艦隊、皇海守護艦隊の中枢として日本周辺のシーレーンを確保しています」


 皇海守護艦隊は、その他の潜水艦の神龍型や伊四〇〇型、獲加多支鹵型など合わせて140隻から成る、世界最大の艦隊だ。VLSは総数16万セルで、航空機も有人機が7,000機に小型無人機が20,000機以上、さらにCAF-022は2千万機を運用できる。

 この艦隊、現在は特別戦略潜水艦隊って名前なのだが、設立当初の皇海守護艦隊という名前が気に入ってるので、僕はその名前で呼んでいるだけである。


「・・・。疑問が増えました…。それで、大和型護衛艦は潜水艦なんですか?」

「はい。完全に潜水可能な護衛艦ですね」

「あんなに大きいのが潜って何ノット出るんですか?頭隠せませんよね?」

「船足を足したら全高は520mくらいですね。遠洋での活動が主任務ですから浅瀬とは無縁ですよ。100ノット出せるようにしようとしましたけど、絵面が気味悪かったので40ノットが最高速です」


 もちろん、戦艦は簡単に沈まない。潜水能力を付与するのは非常に大変だった…。それに、300m近い艦橋が海中でもの凄い抵抗を生むため、それを克服するのにも苦労した。


「大和型護衛艦の事も、もう少し詳しく聞きたいんですけど、もっと他に聞かなきゃいけないことがあるんですよね…。あの飛行機…、いやなんて言えばいいんですか?あれ」


 四至神は、全長1,300mの巨体に大小合わせて45門のレーザー・陽電子砲を装備しているのに、空いてるスペースに航空機を載せたら空中空母になってしまった無人機だ。


 千歳さんの言う通り、これは戦中に構想され建造された。対中華国戦を遂行する上でさらに強力な防空網の形成を目的に、初期段階では大型レーダーを搭載した大型警戒機として、その後にレーザーを装備させて迎撃システムの中核としての能力を搭載するようにしたが、宇宙空間での戦力を持たない我が国は、この防空艦を宇宙戦力としての数合わせにしようとしたのだ。

 しかし、宇宙空間での活動を主体とした場合、厚い大気を貫通させて地上の敵性戦力に対して十分な打撃を与え得るエネルギー兵器が必要となるのだ。その結果できたのが、対消滅反応のγ線を磁場で収束させて撃つレーザー攻撃能力と、磁場によって覆った反物質をそのまま投射する攻撃能力を兼ね備えたレーザー・陽電子砲が装備されるようになった。


 だが、四至神の魔改造は続いた。ただでさえ45門の反物質兵器によって、毎秒戦略核が降り注ぐくらいのエネルギー投射量になったというのに、あまりに巨大になり過ぎた結果、僕は考えてしまったのだ…。「あれ?航空機乗せれんじゃね?」と…。

 その結果、大和型護衛艦という実績を持っている僕は、通常の有人機に飽き足りず、大量の小型無人機を搭載したのだ。結果は言わずもがな…。初期の思惑とは裏腹に火力インフレを起こした四至神は、最終的に大和型護衛艦には劣るが、それでも空中を飛行すると言うアドバンテージもあり、最強クラスの兵器になったのだ。


 しかし、話はここで終わりでは無い。漢字の羅列で気づかなかったかも知れないが、これは100機建造されている。100機なのに、これが日本の上空に80機だけ展開されている。つまり残りの20機は4機を欧州評議会上空に、そして第三次世界大戦の敗戦国上空に防空任務として就いているのだ。4機づつ。

 欧州評議会は友好国だからまだ良いのだが、敗戦国は哀れである。迎撃の難しい高度1,000km上空に1分もあれば全都市を破壊するほどのエネルギーが投射できる兵器が4機も跋扈しているのだ。一応秘匿されているが、ステルス性は無いため中小国のレーダーでも見つけられるだろう。だから敗戦国の首脳部は、国家の喉元に鋭いナイフが日本によって添えられている事を知っているのだ。攻撃衛星よりもよっぽどおっかない。


 正直、千歳さんの疑問は僕も抱えている節がある。大和型は護衛艦と言い張れば何とかなるのだが、流石に全長1,300mの航空機とVLSを装備した反物質動力の航空機の分類なんて知らない。


「僕も悩んでるんですよね。まあ、四至神って呼んでやってください。世界の平和を守る良い子なんです」

「腑に落ちない…。私たち国民に隠してこんな戦力を揃えるなんて、民主主義国家としてどうなんですか…?」

「べ、別に隠してはないですよ?!ちゃんと国会で予算を請求しましたし…」


 そうなのだ。ちゃんと予算は承認を得ているのだ。昔は装備開発費って書き込んどけば問題無かったが、防衛費の拡大は野党の目に掛かってしまい、もの凄い追求を受ける羽目になってしまったので、それはもう事細かく説明する必要があったのだ。大和型護衛艦だって、「水上戦闘における優位を確立するための装備開発」と言う名目で予算を10億円程度請求している。


 仕方ないのでその時の記憶を必死に掘り出して、その時に作った書類を召喚することにした。


「ほら、これは大和型の時の提出書類ですよ」

「そんなものまで出せるんですか…。って、これじゃあ誰も分かりませんよ!ていうかこれが10億円なんですか?!」

「いえ。ほら、ここを見てください。ここに研究施設向け菓子折り代が12万円に、開発期間電気代が152万円、模型作りに1,700万円に、研究員移動費が230万円、随伴艦(潜水艦)追加建造費に5億円充てられてるでしょう。で、二隻建造されたので、一隻2.4億円ですね」

「安っ?!えっ?いや、超大型艦の建造費が高級外車よりも安いのっていいんですか?!」

「マルクスも言ってましたが、現代の資本主義経済には交換価値しか無いんですよ。しかし、我々政府は管理通貨制度を操ってますからそこら辺をいじればいいんですよ」

「国家の闇だ?!」

「まあそんな事はどうでも良いんですよ。これからが害虫駆除の本番なんですから」

「その前に高野をやった兵器について教えてください!」


 そうだった。高野との戦いで見せてから誤魔化してたんだった。


「四至神の船体下部には、大小合わせて45門のレーザー・陽電子砲が装備されています。この陽電子砲は、既存の航空陽電子砲と違って圧縮した反物質をそのまま射出します。磁場によって守られているので空気中で対消滅する事はなく、着弾と同時に磁場を押し退けて陽電子に衝突した電子と対消滅を起こし、そのエネルギーで消滅します。この際には極度の時空の歪曲が起こり、その空間の一点にインフレーションが発生されて付近を別宇宙としてこの宇宙と切断されます。これが高次元生命体やそれに準ずる者への攻撃手段ですね。これが高野を消滅させた方法です」

「なるほど…?と、とにかく、その兵器で憎神に攻撃するのは分かりました。でも、肝心の憎神までどうやって辿り着くんですか?」

「それは問題ありません。憎神は高野に支援を送ってましたからね、それをレーダーで辿っているので場所は分かっています。この宇宙に付属する3.22次元ですね」


 高野に供給され続けていた力の源は、おそらくその次元に含まれる真空エネルギーだろう。小数点の付く次元は形が歪になる所謂フラクタル次元だ。自然界においてこの現象を観測する事は生涯ないと思っていたが、この世界では面白い事が起きているようだ。

 しかし、心配いらない。憎神を含める神は全て三次元で構成されている高位生命体だと予測できる。高次元の空間に、それより低次元のものが存在する分には何ら問題はない。もしその次元が低次元よりのフラクタル次元ならなおさらだ。


「その3点なんちゃら次元って、行っても大丈夫なやつですか…?」

「大丈夫ですよ。一応結界は貼っておくので安心してください。次元のズレくらい無視できますから」

「というか、何でそんな複雑な次元にいるんですか?」

「多分ですけど、一方的に干渉できるからでしょうね。彼ら神々は五次元時空を支配するような力は無いんでしょう。だから、四次元時空よりちょっと大きい次元を作って引きこもってるんですよ。この時空からは干渉するのに莫大なエネルギーと道標が必要ですからね」


 僕らが会話している間にも戦闘の準備は着々と進んでいる。四至神にワイヤーを巻きつけて黄泉を持ち上げるという頭のおかしい輸送方法で憎神に突撃するためだ。四至神のペイロードが34,000tくらいあるから、30機集まれば1,000,000tの大和型護衛艦も持ち上げられるわけだ。しかも、向こうの空間は無重力だろうから、四至神の対消滅推進エンジンを使えば、ものすごい速度で総質量2000万t超えの合体兵器が突っ込む事になる。もちろん四至神は無人航空機なので僕らが乗るのは黄泉になる。


「先生、今更ですけど勝てるんですか?相手は神ですよ。世界そのものみたいな奴ですよ」

「だい、じょうぶじゃないですかねたぶん」

「不安な言い方ですね…」

「もし神が、九次元の存在だったのだあ!!とかなったら困りますけど、この世界に干渉してくる時点でたかが知れるので三次元か四次元空間の生き物である事は確かです。それに対して此方は十一次元からの空間エネルギーをそのまま運用しているんです。負けるはずがありません」

「根拠は全く理解出来ませんでしたけど分かりました。あの艦橋に転移すればいいんですね?」

「はい。よろしくお願いします」


 星河さんは、こういう所の理解が早くてとても助かる。


 転移した艦橋は、だいたい海抜350mの全周モニターが施された近未来チックな所だ。艦の制御は基本的にAIに任せているが、自分で動かしたい時は音声入力で指揮をとる。


「よし。全天周囲投影。ニダヴェリールのワームホール生成実験施設と同期。あとは…。一応周辺を警戒して、各航空隊を大陸上空に派遣しておきましょう。パラディナンにも送っといてやる!」


 という事で、憎神からの報復攻撃が怖いので航空方面隊を送る事にした。神殺弾頭装備のそれぞれ10万機づつの戦力だ。フッ。パラディナンの野郎も精々恐れ慄くといい。

 え?領空侵犯?・・・。パラディナンの大陸だけは領空ギリギリを巡回するようにしよう。


「あ、すごい…!巨大戦艦が浮いてる!」

「面白いでしょう?この全天周囲モニター。いろんなゲームを参考に情報処理システムを作ったんですよ」

「先生ってゲーマーなんですか?」

「いえ、クソ雑魚ポイント製造機です」

「・・・」


 なぜ僕は頭がいいのにゲームができないのか…?いや、そもそも頭がいいとゲームが上手いのか…?というか僕は頭がいいのか…?んん…?


「あれ…?先生、先生!黄泉が離陸?しますよ!」

「え?あっ、はいはい。よし。排水開始!艦底回転軸重心制御システム停止後、後部艦橋航空管制塔に中央の機体と固定。・・・。よし、あとは全火器の最終点検を。1,000基近くの砲熕兵器を搭載してますからね」

「対空火器モリモリなんですね。本当に潜水艦なんですか?」

「いえ、海上自衛隊でも潜水艦は潜水艦って言いますけど、大和型は艦種が護衛艦ですからね。正確には潜水艦じゃないです」

「海自の艦種詐欺は常套手段ですもんね」

「海上自衛隊が詐欺してるみたいな言い方はやめてください」


 海上自衛隊の艦種は護衛艦と潜水艦しかない。空母だって護衛艦だ。一体何を護衛しているのかは長年の謎だから触れないほうがいい。

 黄泉の水上航行に必要なシステムを全て停止させ、本格的に飛行態勢に入る。そもそもこんな使い方は想定されていないため、行き当たりばったりな感じが否めないな。


「おおっと、ちょっと揺れますね」

「不安になってくるんですけど大丈夫なんですか…?」

「安心してください。そろそろ四至神どうしの接続が完了しますから。上を見たら分かりますよ」

「上ですか?あ、P-21輸送機だ。なるほど、それで間を繋げるんですね」


 世界最大の輸送機P-21は、全幅1kmを超える大型の主翼を持ち、1,000m程度の高層ビルを単機で輸送する安定性を持っている。P-21のエンジン部分が重ならないようにして四至神どうしを繋げれば骨組みとしての役割を果たしてくれるわけだ。


「それにしても随分ゴツゴツになりましたね。ロボット戦隊モノみたいになってきました」

「そりゃあ初めての実戦ですからね。本来なら第七世代機一機でも対応可能な事例ではあるんですけれども、なにぶん神様が相手なので不足の事態に備えられるようにしているんです」

「えっ?ちょっと待ってくださいっ。第七世代機ってあのF-4戦闘機とかですよね?」

「そうですよ。月詠でも神殺弾頭ミサイルを発射すれば勝ちです。残りのハードポイントに大量のジャミング装備を持たせれば圧倒できるでしょう」

「神殺弾頭って高野を倒したあれですか?」

「同じ仕組みのものですね。高野を倒した四至神の陽電子砲は直接反物質を生成させて発射してますが、ミサイルや砲弾はそういうわけにはいかないので、砲弾に反物質を詰めてるんですよ。視程外戦闘では重宝しますからね」

「地球って結構恐ろしい兵器を量産していたんですね。一般人の知らないところで神様を殺すための兵器が開発されていたと思うと、異世界より異世界してる感じがします」


 たしかに地球も結構異世界していたりするのだろうか?22世紀にもなってないのに積極的な宇宙進出をしているところを考えると、剣と魔法のファンタジーじゃなくてスペースファンタジーな感じの異世界になりそうだ。


「でも、どうして神様を親の仇のように殺す準備をしてるんですか?もしかして地球に悪さをしてるとか?!」

「いえ、全然干渉なんてされてませんよ。でも異世界転移者は昔から観測してますし、神という存在は知っていたので手遅れになる前に用意したって感じですね。ようは脅しの材料です」

「神様すら脅迫の対象にする人間が魔王のいる異世界に行ったら、そりゃ最速で魔王討伐するのも納得ですね」

「流石に魔王を倒すだけじゃありません。魔王勢力から一部領土を奪還して国際連邦派遣基地を設置して、国際連邦へ加盟させて在外基地を設置して世界平和に貢献しているんです!」

「誇らしげに言ってますけど、それってただの侵略では?」

「先程の会話の記録を消去するように」

「情報統制?!」

「よし。ワームホールも生成されましたし、行きますか!」

「先生って人間世界にいちゃいけない人間なんじゃないですか…?」

「・・・」


 わ、ワームホールと言っても今開かれてるのは別次元との通り道だ。真っ黒なゲートのように見える。なんだか急に入るのが怖くなってきた。


「せ、先生、本当にこの中に入るんですか…?」

「案ずる事はありません!いざとなったら宇宙戦闘艦が助けに来てくれます」

「・・・はっ?宇宙戦ーー?!」

「突撃ーー!!」



〜〜〜〜〜



 目の前は宇宙空間のように色がない。エネルギーもほとんど観測できず、真空エネルギーでさえ感知することができない。

 やっぱり、敵のいる空間は限りなく真空状態に近い。というより憎神のいる場所以外は絶対真空空間と言っても過言ではないほどだ。ワームホールから僅かに逆流した元の世界のエネルギーは、瞬間的にある一点に向かって不自然な移動を見せた。


 なるほど、どうやら憎神が神として力を保有している仕組みは、この半高次元空間の掌握にあったわけだ。今は分子振動固定波によって結界を作っているから問題無いが、このバリアがなければ僕たちは今ごろ憎神の元に吸い寄せられていただろう。

 非常にイレギュラーだ。一切の概念が存在しない絶対真空空間に無限の圧力をかけ、エネルギーの全てを憎神のいる一点の空間に集約させる。そうすることによって四次元時空の宇宙空間の保有する量を超えるエネルギーを保持しているんだ。神というものはなかなかに知恵があるらしい。

 しかし無意味だ。もし、この憎神が全力を。つまり僕らが存在する四次元時空を一から作り出せるほどのエネルギーをこちらに充てたとしても、十一次元空間の蟻ほどの規模のエネルギーで十分に凌駕できる。


 よし。僕の信じる自由主義に則って、敵を排除しに行きますか。


「舵を目標へ。全エンジン最高出力にて航行!原子防護幕の強度を1,000^20ANまで上昇させ、全火器には神殺弾頭を装填!」

「ところで先生、憎神はどこにいるんですか?」

「一応この空間も観測して、憎神の場所は掴めてましたから近くにワープできたんですよね。だから、そろそろ接触できると思いますよ。ちなみにメートル法が適用できるんだったら、あっちの方向に300kmの距離ですね」


 既にこちらは憎神の全体像を捉えている。奴はこの世界で三次元空間の身体を持ち、存在自体がこの宇宙空間で曖昧になっている。召喚一週間前のドラゴンと同じ原理で、先ほどまでいた世界にも半分の実体を置いているのかもしれない。


 そしてしばらくして、急に体にかかる空気の感触が変わったような気がした。


「せ、先生!嫌な予感がしますっ!」

「大丈夫です。空間固定は正常に作動しています。が、一応周囲の警戒を…」

「はい、分かりました」


『異世界人よ、褒めてやろう』


 突如として人工音声の音で褒められた。きっと絶対真空空間内だから、振動だけを観測してそれを翻訳してくれたのだろう。


「なんだか偉そうで腹立ちますね」

「やっぱり先生って緊張感が持てない人間なんですか?!」

「緊張してるんですか?」

「だって神様と対峙するんですよ?!緊張しない方がおかしいですよ!」

「いえ、僕的には楽しみにしていた局面なんですけどね。神様と正々堂々やりあえるの」

「えぇ…?」

「ほら、85の国防武装特政都市も最終的な目標は神の超越です。我らが地球を守る要の一つとして大量の武装を装備している意義はそこにあるんですよ。でも実際のところ神様なんて会ったことないので机上の空論。ようやく試せるんです。これまでの20年近くの科学技術の進歩の成果を」


 国防武装特政都市の武装は基本的に対人戦闘を想定しておらず、大量の艦載砲や艦載ミサイル発射機を装備し、山の斜面には大量の固定砲台と列車砲が配備されているので、まあ大小あれど50万セル以上のVLSや1万門以上の火砲がある。


「国防武装特政都市ってそういう事だったんですね。なんだか、先生ほど熱狂的な有神論者は地球にいない気がしました」

「おお、良いこと言いますね。どんなに熱狂的なイスラム教徒よりも、神を殺すことに邁進した僕の方がよっぽど神を信じ縋っている。いいジョークですね!」

「プフッ。先生のおかげで少し緊張が解れました。ありがとうございます」

「言うほど僕のおかげですか?というか褒めてやろうで音声止まってるのって面白いですよね。次にどんな言葉が来ると思いますか?」

「でも、ボクのオモチャを壊しちゃった分は償ってもらうよ。とかじゃないですか?」

「ボクっ子ですか…。僕も一人称が僕なので複雑な気持ちですね」


 高校時代に作文で僕を使ったら、子供っぽいって理由で添削されたんだよな…。


『ボクのオモチャに酷いことしてくれたね。君たちが代わりに僕のオモチャにならなきゃ、地球をボロボロにしちゃうよ?』


「惜しい!結構いい線行ってましたね!というか人工音声でその台詞は面白いな」

「そっか、代わりにオモチャになーれ。のパターンだったんですね」

「でも待てよ。これって相手が喋ってるのが日本語でないのだったらボクっ子ではないかもしれませんよ。一人称単数代名詞の種類が豊富にあるのは日本語くらいですからね」

「でも人工知能がそういう風に訳したんだったら、そういう意味合いだったってことじゃないですか?」

「確かにそうですね」


『不思議な結界を張ってるみたいだけど、せっかくだから君達のステージで戦ってあげるよ!』


 また何か言ってきた。コイツのテンションはバグってるんじゃ無いだろうか?


「これから死ぬっていうのに、相当にテンションおかしいヤツですね。憎神って」

「大和型護衛艦より巨大なブーメラン、初めて見ました」

「そんなこと言ったら、直にアース級宇宙戦略戦闘艦並みの大きさのブーメランを見ることになりますよ」

「ちょっと待ってくださいっ。やっぱり宇宙戦艦って何ですーー?!」



〜〜〜〜〜



 艦橋の全天モニターが青白く染まった。これは青色超巨星だろう。画像処理がされているため問題ないが、この大きさは太陽の150倍近い質量を持つため、太陽と比べて軽く数千万倍の光量を放っている極超巨星だ。

 物質が存在しているという事はつまり、どの宇宙かは分からないが四次元時空に来たという事だろう。強力な妨害網を敷いていたにも関わらず強制的に転移させられたという事は、あの半高次元空間そのものが四次元時空に落とされたという事だろう。こちらのホームで戦場を用意してくれるとは随分余裕そうだ。


 幾つか問題があるのだが、今は気にせず神殺しの実証を行うとしよう。


「先生!あれって恒星ですよね。てことは元の世界に戻ったんですか?!」

「わざわざ帰してもらえましたね。まあでも、こっちの方が実験としても価値が高まりますのでありがたく戦わせてもらいましょう」

「というか護衛艦って宇宙で戦えるんですか…?」

「無理ですね。レーダーがそもそも違います。LY単位の戦闘に対応した対球兵装すらありません」


 宇宙空間においては当然360度全周囲に敵の存在する余地がある。それに対してこの合体兵器の兵装は半球の範囲が精一杯の攻撃範囲。宇宙空間での砲戦では光秒以上の距離は確実であり高速度のエネルギー兵器でなければ攻撃なんて命中しない。陽電子・レーザー砲しか使えないが、決定打を与えられる反物質凝縮弾は光速度での攻撃はほぼ無理。詰んでるな。


「先生!死にたくありません!!」

「大丈夫ですよ。いざとなったら何とかなります」

「説得の根拠がマイナス方向にいってますよ!」


 なんだか千歳さんは新しいタイプのツッコミ担当になりそうな気がする。いや、今はそんな事を気にする暇はないな。久々に頭を本気で働かせよう。


「ZWCSをGSTSにより無重力環境下戦闘に仕様変更。水素ビーム砲から重水素を放出し、分子操作波を併用し質量防御殻を構成。無重力環境下が負ける理由になるはずがない!3,000秒の未来予測戦闘を容認、全砲門全力射!!」

なんか半高次元空間やら四次元時空やら紛らわしいと思うので無視して結構です。ようは神様はすごいって事ですね。はい。

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