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第二十一話 剣士と決戦!!

 誤字報告並びに訂正ありがとうございます。誤字報告受けてたのに気付かず申し訳ないです…。以後気をつけます。はい。

 星河さんが行方不明になってから、三日。僕は彼女の捜索のためにただでさえ少ない有給を強引に行使し、監視衛生などを増設して捜索していた。

 重力、熱、電磁波、ニュートリノ、放射線。持てる全ての術を以って捜索しているが、捉えた瞬間には消滅。唯一分かるのは、魔物を倒して回っているということだけ。ロストフタだけでなく、他国まで活動範囲を広げて、各地で強力そうな魔物を狩り尽くしていた。


 僕は何もすることができず、ただロストフタの街並みを歩いていた。

 そしてたどり着いたのは、三日前星河さんと別れてしまったあの広場だった。


 何も考えずに歩いていたのだが、自然とここへ歩みを進めていたようだ。

 不思議なことに、あの時は鬱陶しいほどにいたこの街の住民は見当たらず、閑散としていて、静寂に包まれた空間になっている。


 ふと、一陣の風が僕を横切った。気配を感じて振り返ると、そこには泥だらけになった星河さんが立っていた。とてつもない衝撃を受けた。


 服装はあの別れた時のままだ。外傷は確認できないが、目の死に具合が増し、体中が泥に塗れており、赤黒い跡が散見でき、衰弱しきった様子だった。

 さらに見覚えのない刀まで腰に帯刀している。高野が言っていたのはこの刀のことか…?


 僕は言葉を失い、杖を放り投げて彼女のもとへ駆け出した。


「星河さん!無事ですか?!ーーッ!」


 首筋にゾッと悪寒を感じ、立ち止まった。すると、喉仏に痛みが走った。


 目だけを動かして下を覗くと、日本刀が僕の首まで一直線に伸びていた。星河さんの刀がいつの間にか抜かれており、僕に向けて突き出していたのだ。


「先生…、ごめんなさい…っ。これ以上、近づかないで…」


 星河さんは刀を突き出しながら、両目から涙を溢していた。あまりに突然の事に理解が追いつかなかったが、少し冷静になれた。


「・・・分かりました」


 僕は一歩一歩後ずさる。10mまで距離を置くと、ゆっくりと星河さんは刀をしまった。


 10分近く経ったのだろうか。落ち着いた星河さんはいつも通りの口調で話し始めた。


「先生。いきなりごめんなさい」

「いいんですよ。走った僕も悪いです。それより星河さん。大丈夫でしたか?」

「・・・先生はもう。千歳って呼んでくれないんですね」

「そ、それは…」


 そりゃあ、僕のせいで彼女が気分を害して逃げ出してしまったのだ。申し訳ない思いから、親しげな呼び方は避けてしまう。


「先生。理由は言えません。でも、私に殺されてください」


 星河さんの放った言葉は、僕を10秒近く唖然とさせた。


 殺されてください、か…。教え子に殺されるというのもまた一興かと思ったが、理由を教えてくれないのは困る。なんとかコミュニケーションをとって、情報を得なければ。


「それじゃあ、なんで僕が近づいた時に殺さなかったんですか?」

「・・・」


 今度は彼女が言葉に詰まる。僕は別に長生きしたから、死んでもいいと思ってる。親しい人には申し訳ないが、人間死ぬ時は死ぬからな。だからと言って自殺願望は無いが。


「事情が分かりません。僕を殺すのは別にいいですけど、理由くらい教えてくれないと納得できません」

「理由を話したら、先生は殺させてくれるんですか…?」

「理由によります。別に今から切り掛かってもいいですけど、その時は抵抗しますよ。話したら楽になるかも知れませんし、話してみませんか?」

「ごめんなさい。もう決めた事なんです」


 決意は堅いな…。僕はどこで間違えてしまったのだろうか…。帝国博物館に誘ったのかいけなかったのか…?


「・・・分かりました。まさかこのような展開になるとは思いませんでしたよ。とは言え、それが貴女の決断ならばそれを尊重しましょう」

「そう言ってもらえて助かります。今までの先生との時間は、本当に楽しかったです」

「では、今までなんて言わずに、この後にでもまたあのカフェに行きましょう」

「もう時間がないんです。今日までに先生を殺さないと…」


 だいぶ思考が歪んでいるな。いつもの星河さんらしくない。


「でも、理由を話さずに僕を殺すと言うのなら、それなりの覚悟はしてくださいね?僕は…、なんで言えばいいのかな…?とにかく僕は最強です。地球においても、この世界においても。そんな僕から一本取れるとは思わないで下さいね?」

「何ですかドヤ顔は。こんな顔(・`ω・)しちゃって」


 星河さんの顔真似可愛いなおい。


「あー。何ですかその顔?僕そんな顔でしたか?」

「はい。こんな顔してましたよ。自覚ないだなんて重症じゃないですか?」

「こらっ。先生に、重症なんて言うものじゃありません」


 なんだよこの茶番。


「・・・ップ。ハハハハハ!」

「ウフフフ」

「「・・・・・・・・・」」

「・・・・・・もう、戻れませんよ。良いんですか?」

「何度も言わせないでください。決意が揺らいでしまいそうです!」


 この程度で揺らぐ決意なら、早く捨ててもらいたいところなんだけどな…。


「僕なら……。僕なら貴女を救う事ができます!僕の全能力を以って助ける事ができます!ですから!」

「やめてっ!!これ以上私に夢を見せないで!先生を好きにさせないでよぉ!!」

「なっ!」

「もう、戻れないのよ…。もうダメなの…。だから!私は先生のためにやります!いざ、参ります!!」


 一瞬の早技だ。そもそも刀なんて使えるのか疑問だったが、お祖父さんの家が道場だったから、きっとそこで鍛えられたのだろう。

 姿勢を低くしたと思うと、刀の柄に手を添えて足を踏み込んだ。


 アニメなんかで見たことがある。これは抜刀術だ。それにしても10mの距離で抜刀?イヤな予感がするな!防御策を講じなければ!


「発射炎防御隔壁召喚!」


 これは、国防武装特政都市のミサイル発射機から出る発射炎を防御するために、歩道などに内蔵されている隔壁だ。発射炎の防御だが、都市内の防御網構築に貢献するほどの強度を持つ。核爆発にも耐える丈夫さだ!ちなみに透明バージョンだ。


 星河さんの柄に添えた手がブレたかと思うと、防御隔壁はバラバラに崩れた。これ、隔壁を召喚してなかったら僕は即死だったんじゃないか?!

 やばい。クローンなんて作ってないから、僕は死んだらそれでお終いだぞ?!もっと慎重にならなければ。


「で、最強が何ですか?先生」

「魔王を単騎で屠れる実力はあると思ってましたが、これほどとは思いませんでしたよ…。単純に比較はできませんけど、これって核爆発を耐えるんですよ…」


 防御に回れば、僕は一瞬で粉微塵になってしまう!彼女は本気だ。攻勢に転じて畳み掛けなければ勝機はない!


「召喚!陸上アクティブプロテクションシステム!さらに、異界派遣聯合艦隊は支援を開始せよ!」


 出し惜しみ無し。召喚したのは第八世代戦闘機F-0に攻撃ヘリAH-82、戦略爆撃機B-60、観測機E・UAV-9。対人戦闘に適した二五式戦車に三五式自走155mm汎用砲、六式高機動対空戦闘車両だ。

 それに、レイランサー自動拳銃も召喚しておく。


 すぐにシステムを起動させ、所定の位置につかせる。位置取りを間違えると戦力が瞬殺されてしまう。なるべく距離をとらせて、遠方からの一方的な火力投射を継続させ、決定打を叩き込む!


「全衛星、対魔法時空間干渉波投射開始!!」


 今、上空を周回している軍事衛星8機から、全力で安定波を投射させた。

 これで、僕も彼女も能力が使えなくなる。彼女の能力が衰えなかった場合はすぐに解除するけど。


「E・UAV-9レーザー砲牽制射撃!出力ミニマム、撃ち方始めぇ!続いてエネルギー指向系兵器、対人妨害波投射始め!」

「甘いです!!」


 薙ぎ払われるレーザーを瞬間移動の如く速度で躱す。魔法妨害波は投射しているんだぞ…、身体能力だけであんな動きが可能なのか?!

 それに、対人妨害波で吐き気や方向感覚のズレが発生しているはずじゃないのか?!


「なかなかやりますねぇ!案外こういうのも悪くない!」


 不利を悟られないために、少しでも去勢を張る。


「そうですね。それより、そんな弱気で大丈夫ですか?そろそろ本気出しますけど」


 まだ本気出してなかったの?!待って、ごめんなさい。最強だなんて調子こいちゃってごめんなさい!貴女が最強ですはい!

 ええい。僕も手加減していられないか!


「そうですね…。心苦しいのですが、この世界には回復魔法というのもありますし、多少のダメージは覚悟してもらいますよ!」

「遅いですよ!!」


 星河さんは、一瞬で距離を詰めてきた。どうやったらそんな速度が出せるんだよ!このチートめ!しかし、僕は一人じゃない。


「炸裂今ぁ!」

「なっーー」


 星河さんを包むように、小規模の爆発が起こる。

 先程召喚した自走砲から発射された155mm粉塵炸裂弾だ。斬れないから効果はばつぐんだ!


「良い精度だ…。次は三式弾で行きますよ?覚悟してください!」

「やりますね…。でも、先生にやられてばっかりだと癪に触ります。一撃くらいは入れさせてもらいます・・・ねっ!」


 爆炎が晴れてそこから現れたのは無傷の星河さんだった。あ、ありえるのかそんな事!彼女の身体能力と服の頑丈性は僕の想像を超えている!


「三式弾、信管作動0.01。直接射撃、てぇ!」

「甘いって言いましたよね?遠慮は無しです!」


 三式弾は、汎用砲などに装備される対空砲弾の一種だ。砲弾内に大量の30mm機関砲の弾頭が内蔵されており、外殻が弾けて内蔵された30mm砲弾数百発が、星河さんの目の前で散布され、近接信管が作動して、数百発の小爆発が起こる!はずだった…。


 星河さんが剣を振り払うと、砲弾ががすべて軌道を変えて通り過ぎる。それと同時に踏み込んで来て、僕との距離は2mまで縮まった。やばい!


「くっ…!」

「いきますよ!」


 星河さんは、地面を蹴り飛び上がったと思うと、落下しながら僕に斬りかかって来た。


 すかさず右手の拳銃を千歳さんに向ける。当たらないだろうから牽制射だ。発射された銃弾は簡単に剣で弾かれた。


「もらったわ!先生のその余裕な笑みを砕いてあげます!」


 彼女が振り下ろした斬撃を銃身で受け流す。止めれなかったら右肩から胴体切断だぞ…っ。


「一本ですね!」

「・・・っ!」


 体を傾けたかと思ったら刀身をレイランサーの照星に引っ掛けてきた?!腕力が足らず手を離すしかない!

 拳銃が吹き飛ばされて僕は無防備になる。


「先生。これでおあいこですね」

「何がおあいこかは全然分かりませんが、これは少々不味いですね…」


 僕が持つ遠距離武器を失ったのは大きいな…。


「やったわっ!先生から一本取れるってなかなかのことじゃないですか?」

「そうですね。魔王を無傷で倒した僕から一本取ったのなら凄いことだと思いますよ。それじゃっ、次、行きますか」


 偶然近くに、先程放り投げた杖があった。杖を手に取るり、持ち手を捻ってロックを解除し、杖の中に忍ばせてある日本刀を抜き出す。


「今度はこっちで行きますよ…」

「先生の杖って仕込み刀だったんですか?!」


 近接戦闘は最大限の注意を払わなければならない。彼女が手数を増やして攻撃して来ると、流石に防げはしないだろう。


 前傾姿勢で瞬間加速。マンガとかで"縮地"と言われるものは本来、仙術や古武術などで「相手との合間を一瞬で縮める」事を目的とした足捌きや歩行術に名付けられる名称であり、今自分が行っているのは"それに似た何か"だ。


 彼女は身体能力面から、さも仙術のように一瞬で何百メートルもの合間を縮められそうだが、自分はもちろんそんな事できないので、なるべく慎重に攻めようと思う。


 彼女の攻撃に警戒しつつ距離を詰め…。近づいたところで、右から低めに刃を侵入させ薙ぎ払う!これは普通にバックステップでかわされる。


「・・・せい!」


 すかさず体を前に倒してもう一撃斬りあげる!

 これも後退でかわされたが、斜め後方の二五式戦車の115mm長ライフル砲から粉塵炸裂弾が発射される。


 危うく僕も粉塵爆発に巻き込まれるところだったが、しっかりと爆炎は星河さんを包んでいる。

 大人気ないと思うが畳み掛ける。


「対空機関砲斉射始め!」


 六式対空車両から雨のように毎秒36発の40mm砲弾が降り注ぐ。さらに10秒毎に6発の50mm砲弾も投射され、黒煙が振り払われる。


 ちょっとやり過ぎたかと思ったが、心配は無用だった。


「先生って普通に刀の心得があるんですね。どこで習ったんですか?」


 何事も無かったかのように立ち振る舞っている。恐ろし過ぎでしょう…。今、星河さんの戦略性は過去の中華国に匹敵するものになりましたよ…。


「心得って言うほど大層なものではありません。自学ですよ。さて、そろそろ次のフェーズに行きますか」


 今までの火力投射は、ハッキリ言って1割も実力を出していない。滞空している戦闘ヘリやF-0もある。F-0の航空陽電子砲とか、まだまだ高威力の兵器は残ってるし、じきに電磁力艦からの支援も届くだろう。


「先生も、少しは本気を出したらどうでしょう?このままだと決着がつきませんよ」

「そうですか?ならお言葉に甘えて…。全火器の市街地使用制限を解除、自由射撃開始!」

「っ!!」


 星河さんがサイドステップで回避行動に入る。そして、一拍遅れて砲弾とミサイルの雨が先程までいた場所に到達する。さらに、対人戦特化武装のB-60からADF-004C航空機搭載型自律小型戦闘支援機が50機近く射出される。

 ADF-004は航空機のハードポイントに搭載できる、パルスレーザーが主兵装の無人機だ。菱形の見た目が特徴的で、高い機動性を持つ。今回はB-60戦略爆撃機のロータリーランチャーから射出された。


 ADF-004が、地面を抉りながら星河さんに向けてレーザーを照射し続ける。行動範囲がどんどん狭まり、追い詰めているぞ!


「仕方ないか…。先生!タイム!!」

「はっ?えっ?・・・、ストーップ!撃ち方やめー!」


 なんだ?!いきなりタイムって!


「先生。そろそろ電磁力艦隊からの支援も来ますよね?」

「はい。そうですけど…」

「だったら魔法妨害波かけるのやめませんか?」

「何言ってるの?!」

「それに、このままだと人払いの結界の効果が切れて、民間人がやって来ますよ」

「あ、人がいなかったのは星河さんの仕業なんですね」


 サラッと結界を作ったとか、すごい能力だな。


「・・・分かりました。要求を呑みましょう。あと、その前に一ついいですか?」

「はい、なんですか?」

「回復魔法持ってますか?」

「ええ、持ってますけど。無制限に回復できる能力があります」


 なんだよそのチートみたいな能力。まあいい。それならある程度全力を出せるというものだ。


「ならオッケーです。はい、解除しました。それでは戦闘再開しますね」


 僕の言葉と同時に、周囲の自走榴弾砲とADF-004が爆発四散した。やっぱり妨害波かけてた方が良かったな…。

 僕の周囲に重機関銃を大量に召喚して、星河さんに向かって乱射する。


「刀剣召喚!」


 星河さんはそう唱えると、大段平の刀が大量に召喚された。僕と同じような、無制限に召喚できる能力みたいだ。文字通りの剣幕によって機銃掃射は防がれた。


 次の瞬間、星河さんは姿を消した。きっと転移したのだろう。僕は海岸の方に発射炎防御隔壁を召喚すると、身を伏せた。


「もらっーー?!」


 星河さんが背後から現れると同時に、視界が光で埋め尽くされた。艦隊の近接防御火器システムの一つ、フォルトのオルガン砲数百基から発射された、十億をゆうに超える弾丸の雨だ!

 さらに、追加で召喚したF-0に同じオルガン砲を20基ずつ装備させており、25機のF-0から5億発の銃弾が空から落ちる。二十億を超える銃弾の中には一千万の曳光弾が含まれており、その曳光弾のお陰で一面が明るくなったのだ。


 さらに、この銃弾は炸裂弾だ。星河さんの直撃コースの弾だけでなく、跳弾した弾も爆発していく。


 しばらくして銃弾の雨が止むと、距離を置いて星河さんが立っていた。


「これで僕の勝ちにはなりませんか?」

「い、いえ…、まだ、です!」


 体を貫通する弾は防げたようだが、幾つか切り傷が目立っている。しかし、彼女の傷はすぐに回復し、いつもの状態に戻った。


「こちらは殺さないように加減が難しいんですよ。ここら辺で降伏してくれませんか?電磁力艦隊をその目で見たのなら勝機は無いと分かっているでしょう」

「それでも!私は、先生を殺さなくちゃいけないんです!」


 それほどまでに本気で僕を殺そうとしているのに、なぜ星河さんは、そんなに悲しい顔をするんだろう…。


「先生。これで決めます」


 星河さんは意を決したように僕の目を見ると、彼女の周囲から何百本、何千本もの刀が出現した。そして、そのまま僕の方へと突っ込んできた。


 砲弾やミサイルを撃ち込んでも軌道を一切変えない。ベクトルが固定されているのだ。防御隔壁も豆腐のように貫通し、僕と距離を詰めてくる。戦車や戦艦の装甲も無意味に終わり、最終手段として、大山祇型原子防護艦を召喚して、原子固定虚軸振動波防御壁システムを起動させる。いわゆるバリアだ。

 大山祇型は広場に突き刺さる形で召喚した。


 しかし、先頭の一本だけ防御壁の展開が間に合わずに、領域内に刀が入り込んでしまった。


 刀は一直線に僕に向かってくる。うーん、どうしたものか…。操作されてるわけだし、自由にさせると首を狙われそうだから確保したいんだけど、このまま直進すると僕のお腹にぶっ刺さるんだよな…。


 胴体の真ん中を貫かれると、腸が破れて排泄物が体内に漏れ出して大変なことになるから嫌なんだよなあ。・・・仕方ない、脇腹で受けるか!


 刺さる瞬間に身体をずらして、刀を脇腹で受け止めた。が、痛がる暇はない。しっかりと刀の柄をつかみゆっくりと引き抜く。アイタタタタ…!


「ぐっ…!」


 刀をしっかりと握り、痛み止めを召喚する。痛覚神経を一時的に麻痺させる薬だ。第三次大戦でシャーロットが怪我をした時に作ったものだ。

 判子みたいな形で、細かい針がいくつか付いている。傷口に当てることで痛みを感じないほど細い針が5mmほど皮膚に侵入して、強力な神経麻痺剤を浸透させる。段々と痛みが引いてきた。

 布などは召喚できないので、ハンカチを確保した刀で二つに切って前と後ろの傷口に当てる。配線コードを召喚して無理矢理巻いて固定する。


「あ……。ご、ごめんなさい!!本当は傷付けるつもりじゃなくて、きっと先生なら受け止めてくれると思って……。だ、大丈夫ですか?!本当にごめんなさい!!」


 あんなに殺意盛り盛りだったクセに、傷がついたら決意をすぐに捨てるだなんて…。


「いい加減素直になって下さい!」

「えっ……?」

「やっぱり、こんな事望んでいなかったんでしょ?だったらハッキリと「イヤ」って言ってくれれば…」

「でも、このままじゃ…。このままじゃ先生はもっと酷い結末を迎えるんです!!何も言えないけど、信じてください!お願い…だから…っ!」


 やはり、僕がどうにかなる前に自分の手で殺そうとしたということか…。無理心中にも似た思考だな。僕を殺した後に本当に自殺していたかもしれない。


「安心してください。例え、何かあったとしても逃げれば良いんです。僕と千歳さん。そして、僕の知り合いたちの力があれば、退けられない脅威なんて無いんです」

「で、でも!・・・グス…。う、ううぅぅ……」


 ゆっくりと歩み寄って、崩れ落ちる千歳さんを抱き留める。


「落ち着いて。ゆっくりで良いから。落ち着くまでずっとこのままで良いですから」

「は、はいっ。・・・ウワァァ〜〜ン!ーー」



〜〜〜〜〜



「落ち着きましたか?」


 千歳さんを落ち着かせて、3日前と同じベンチに腰掛けた。


「はい…。その、取り乱してみっともない姿見せてしまってごめんなさい」

「良いんですよ。傷の事も心配いりません。それよりも、きちんと話してください」

「・・・本当にいいんですか?先生も死ぬかもしれないんですよ?」

「千歳さんだって殺そうとしてたでしょう」

「うっ……」


 どうしてこんな事になってしまったのだろう。明らかに彼女の行動原理が矛盾している。


「後悔はしないし、させません。絶対に…。それにどうせ死ぬんだったら、真実を知って、抗いたいですし」

「そうですよね。私がどうかしていたんだと思います。先生に最初から正直に話しておけば良かったのに…。」


 ようやく、まともな思考ができるようになったみたいだ。


「私の彼氏、高野雅行からデートDVを受けていた話はしましたよね?」

「ええ。しっかりと覚えています」

「実は、その高野が異世界に召喚された結果、憎神ディアバスの寵愛という能力を受けたんです。その能力が、ほとんど神様になったみたいなもので、なんでもできる。それこそ、時空を操ったり人間の思考を弄ったりなんでもです」

「なるほど。その高野に抗う事は不可能だから、僕が高野に惨殺される前に僕を殺そうとしたと」

「その通りです…」


 なるほど。そういう事なら追い詰められるのも当然か…。しかし、この事態は既に高野にバレているだろうな。


「もう、高野は怒り狂って私たちを殺しに来ると思います。いえ、死よりも苦しい事をしてきます。だから最後に、こんな汚れた私で良ければ抱いてくれないですか?」


 そうか…。確かに、神に準ずる絶対的な存在に対して、諦めを抱くのも当然だろう。だがしかし、ここは神を殺すことを目標の一つにしている僕がいる。そんな悲しい決意を抱かせはしない!


 千歳さんを抱擁したい衝動に駆られたが、理性を計画動員して手を握るのに抑える。


「せ、先生ぇ?」

「安心してください。もう、千歳が不幸になる事なんてありません」 

「へ……?」

「恐れる事は何もありません。本当に、打ち明けてくれてありがとうございます。もう千歳さんが苦しむ必要はどこにもありません。必ず貴女を救済してみせます。どんなに心の傷が深かろうと、どんなに敵が強大だろうと!絶対に千歳を幸せにしてみせます!!ですから今は僕、を信じてください」


 今、人生で一番恥ずかしいセリフを言った確信が持てる。ちょっとダメージがきたのだが…。

 ここは、先程のセリフを有耶無耶にするために千歳さんに抱きついた。セクハラでは断じてない。カウンセリングだ。


「あっ……」

「一つ聞きますが、幼馴染みが死んでも心残りはありませんか?」

「はい…。はい!あんな奴はもういいんです。だからどうか…、私を救ってください!先生ぇ!!」


 よし。救援要請を受け取った。これで思う存分介入できるぞ!

 ついでに、すかさず抱擁を解く。


「もちろんです!さあ!それでは早速、問題解決に向けて行動を開始しますよ。もう有給が残ってないんです…」

「え、ええ…」


 思いっきり引かれた…。仕方ないじゃないか!就職してすぐに3日間の有給を取ったんだ。幸い明日は休みだから良いんだけど、もう有給は取れないんだ…!


「と、とにかく。高野雅行と、敵勢力として介入してくる可能性の高い憎神ディアバスを仮想敵とします。それで良いですね?」

「はい。憎神ディアバスは、高野をえらく気に入っています。高野に何かあれば、すぐに行動を起こすと思います」


 なるほどな。敵の能力は未知数だが、こちらは全力で挑むだけだ。


「ところで、千歳さんの戦闘能力ってどれくらいなんですか?結構な戦闘力があると思うんですけど…」

「私は幾つか能力を持ってるんです。さっきまでに使ったのは完全探知、空間切断、絶対切断、遠距離切断、刀剣召喚、刀剣操作、転移、自由結界、時間操作、突発性未来予知、無制限回復魔法とかですね。さっきまで、レベルアップのために世界中の魔物を倒してたんです」


 なんだよ、その、一つでも持ってたら物語の主人公になれるレベルの能力の闇鍋…。


「それぐらい力があるなら、決戦の時は僕も守ってくださいね。戦ったのでわかると思いますが、僕はマジカルパワーには弱いんですよ」

「分かりました。先生には傷一つつけません!」

「頼もしい限りです」


 きっと、結界とかのスキルで防御壁を張ってくれるだろう。本当に頼もしい。戦車師団が人型に凝縮したような戦闘力だな。


「先生。今、私に向かってものすごい失礼な事を考えたでしょう」

「い、いいえ。別にそんな失礼な事ではないと思いますけど」

「話してください!」

「・・・。戦車師団を擬人化したような戦闘力だなぁ。と考えてました…」

「・・・」


 やばい。下を向いて黙ってしまった。いくらなんでもデリカシーが無かったか?!


「先生のことを好いている乙女に向かってなんたる言い草ですか!!」

「え、いや、その…、えっ?あのーー」

「んっーー」


 なんだ?!いきなり唇に柔らかい感触が…!

 ・・・って、分かりきってることだよね。教え子の女子高生にキスされちゃったよ…。僕の人生、終わるんじゃないかな?


「先生の返事…、聞かせてください…」

「・・・」


 無言で不老薬を召喚して差し出す。


「これは…。不老薬…?」

「これを飲めば、僕と共にずっと生きる事になります。それでも良いのなら、不老というものを体験してみてはどうでしょう?退屈はさせませんよ」


 星河さんは薬を手に取ると、一気に飲み込んだ。


「末長くよろしくお願いします。しな先生!」

「ええ。よろしくお願いします」


 これで僕は、彼女いない歴と年齢の等式が成立しなくなった。しかし、教師と教え子の禁断の関係というやつか…。学長にだけはバレないようにしないと…!


「先生。私たちは、強大な敵を前に永遠の愛を誓った仲ですが、強大な敵は逃げてくれません。どうするんですか?結界を作って逃げ込みますか?」

「いいえ。諸悪の根源である憎神ディアバスを殺します」

「えっ?殺す?!」


 本当は自衛隊をこの世界に呼び込んで、有害鳥獣駆除の名目で撃破してもらうかと思ったが、流石にそれだと物語的にロマンがないので、僕が直々に手を下してやろうと思う。


「自衛隊でもできる事ですよ。知られていませんが、神殺弾頭と呼ばれる特殊弾薬を装備しており、高次元生命体や他の知的生命体からの侵攻を撃退する任務も盛り込まれているんです」

「え?てことは、神は倒せる存在って事ですか?」

「いいえ。確定ではありません。実際に戦ったことがないので確証が持てないんです。しかし、理論上は神を殺す事は可能です」

「じゃあ、自衛隊の兵器を出せる先生も…」

「はい。神と交戦する戦力は揃えられます」

「・・・。それじゃあ私は、先生に相談すれば解決した可能性があるという事ですか?」

「そうですね」

「てことは、私の悩み損?!」


 確かにそうだな。僕は、彼女の悩みを根本的に解決する手法を持っていたわけだ。


「でもまあ、この戦いを通して仲が深まったわけですし良いじゃないですか」

「そ、そうですね!でも、神と戦うといっても相手が易々とこの場に来てくれるとは思いませんよ?」


 そこら辺は心配いらない。作戦は既に考えてあるのだ。上手くいけば、敵を倒すだけではなく、別のものを得られるかもしれない。


「作戦はあります。先ずは高野を強襲します。今は高野がこっちに向かって来ているでしょうし、裏をかいて攻撃を仕掛けるんです。問題はここが市街地ということですね」

「それは分かりましたけど、憎神をどうやって誘き出すんですか?」

「高野は、攻撃を防御する時などに別次元への魔力の流れが発生するんです。おそらくその流れの元に憎神がいるはずです。そこの座標に向かって、ニダヴェリールからワームホールを展開して戦力を投入、異次元に突入します」

「わ、ワームホールも作れるんですか…」


 投入戦力については、ほとんど考えている。初めての試みなので、出来るだけ全力を投入したいのだ。最適な戦力ではなく、最大の戦力を以って叩く。


「作戦名はどうするんですか?」

「そうですね…。天の川作戦なんてどうでしょう?」

「天の川作戦…?」

「星河って名前は天の川と同じ意味です」

「なるほど。私におもしが置かれた作戦っぼいですね。それで良いと思いますよ」


 よし。本人から作戦名の許可ももらった。


「それでは、星河千歳救済作戦。天の川作戦の実行準備を開始します。ニダヴェリールのデフコンを4から1に移行。全艦、警戒体制を構築。戦闘車両はニダヴェリールから50kmの範囲に展開。航空機は二千万機にナイトラジェン弾頭搭載の空中発射型弾道ミサイルを装備して空中に展開。ニダヴェリールの固定武装を完全展開。防御壁の負荷起動を開始。空間安定化を最大値まで展開、以後60時間は防御領域を持続。ニダヴェリール工業地帯は弾薬並びに兵器の生産を奨励、計画経済に移行。新砲台の建設を開始せよ。さらに特別建造艦の就役準備を完了させ、空中牽引装置を至急開発せよ」


 一通りニダヴェリールに、携帯端末から指示を送る。デフコンを1に定めて、全力の戦闘に備える。だが、まだまだ準備は終わらない。


「対人戦特化の即応航空編隊を本座標上空に至急派遣せよ。ロストフタ派遣艦隊は海岸部まで接近。ロストフタ王立海軍へ、緊急事態を打電し協力を仰ぐこと」

「先生!高野がこっちに向かって来ています!」


 そうか。高野に対して魔法妨害波を投射し続けていたが、神の力とやらを抑え込むには少々足りなかったか。今度専用の同期周回衛星を建設しないとな…。


「よし!それではこれより、国際連邦秩序維持軍は秩序回復のために、軍事行動に出ることを宣言します。よって、主目標となる高野雅行と憎神ディアバスに対して降伏勧告を実施。・・・。応答がないため、敵性勢力として、目標に対する武器の無制限使用を許可。これより、天の川作戦第一段階、高野殺害を開始します!」

「それでいいんですか…」

しな「フッフッフ…。例の三番艦の建造も完了しているし、四至神も60機が配備されている。憎神カチコミ部隊の準備は万端だ。あ、そうだ。どこかの時間軸での僕が言ってたように、どっかの神に120cm列車砲をお見舞いしてやらなきゃいけないんだった。もういいや、憎神で済ませてしまおう。

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