第一節序章 カシウスさんのようにいきたい
初めての本格的な書き物ですので、評価やご指摘等よろしくお願いします。
頭のいい少年が兵器によって地球を支配した後に、異世界に行くとどうなるのかというお話です。
第三次世界大戦終結から8年。未だ10年も経っていないのに、人々の記憶の中で風化している先の大戦は、民衆の自由な意思が行き交うこの社会で、過去の遺物と成り果てていた。
日本、アメリカ、ヨーロッパ評議会、ソビエト連邦。これらの大国は先駆国と呼ばれ、第三次世界大戦において圧倒的な力で敵をねじ伏せた。それにより変わった世界秩序こそが、人類の過ちの名残となった。
休日の街は人がごった返し、誰もが戦争はもう起きないと思っている。
人類は適応する生物である。8年前の大戦の事など、記憶の片隅にしまい平和に生きている世界となったーー
〜〜〜〜〜異世界転移一週間前
2048年の4月1日 昼過ぎ
テキサス州 ダラス
ーーアメリカ合衆国の都市。今では当たり前となった高さ500mを越える高層ビルの外壁には、軍事技術を転用した特殊繊維吸光ガラスで埋め尽くされている。
完全に人類のコントロール下に置かれた地球の気象状況をもとに毎日毎時毎分毎秒・・・継続的に変化する太陽光を、1ナノ単位で反射率と吸光率が設定された先のガラスが街の環境が最善となるよう操作する。
それにより、ビルの窓ガラスから反射する太陽光による住民被害も無くなり、より密集した高層ビルの建設が可能となった。
人智を超えた技術と隣り合わせの先進国の都市。交差点に架かる巨大ディスプレイや、黒色に反射する企業本社ビル。並木を整備した歩道と共に何年も一切形を変えていない。そしてこれからも変わる事はないだろうーー
やぁ、みんな。僕の名前は海園しな!兵器開発で生計を立ててる研究者だよ!大国の軍事力は僕の意のまま。なんでもできちゃう最高権力者だ!
先駆国の運用する兵器のほとんどは僕の作った兵器なんだ!自己紹介終わり。
僕は今、テキサス州の大都市ダラスのとある大通りを歩いている。ユニオン駅から寝台列車に乗ってサンアントニオに向かう予定だ。
すれ違う人々は白人よりもヒスパニックの方が多い。特にメキシコと国境を接しているテキサス州は、移民の数が多く、55%以上がヒスパニックというのが現状だ。普通、移民が増えると治安が悪くなる傾向にあるのだが、アメリカ特有の多文化社会が形成され、治安の悪化や労働者の問題も起こらず安定している。
平日だというのに仕事もせずに、お出かけを楽しんでいる。正直良い行いなのか分からないので、バチが当たったのかも知れない。
今日で3回目だ…。今日一日はトラックに突っ込まれそうになったり、高いところから建材が落ちてきたり…、本当に何があったのか分からない。
今度はまた大型トラックが目の前から、こっちに突っ込んで来る。怨念にでも狙われてるのか……。
今日は雨だから、傘をさしている。黒色の大きめの傘だ。僕はおもむろに、殺意満々のトラックに傘を向け、姿勢を低くする。
別に傘を直接盾にして身を守るわけじゃない。ただ、そろそろーーー
突如。辺り一帯が強い風と破裂音に包まれる。コレは物体が音速を超えた時に発生するソニックブームだ。周囲への影響に配慮して、マッハ5と少々速度が落とされた直径30mmの砲弾が、右前輪のホイール近くで静かに爆発してトラックの軌道を逸らす。僕の右を通るように、トラックは左に逸れた。
だが一筋縄では行かない様子。流石に三度目となると学習しているのか、さらに車輪を左に向けて無理やり横転しようとした。横転して荷台を僕にぶつけようとする、大胆で強い執念を感じさせる行動だ。
大型トラックの積載重量は5トン前後。当たったらひとたまりもない。
だが今度も、砲弾が飛んできて荷台と車体の接続部を破壊する。そうする事で荷台部分だけが分離して、倒れずに真っ直ぐ進むようになる。そして、自分の左後ろの消火栓に突っ込んだ。
「ハーハハハハ!!今日もアクティブプロテクションシステムは絶好調だぁ!」
僕はいつ命を狙われてもおかしくないから、戦闘機とかに自分の身の回りを護衛してもらっている。それがアクティブプロテクションシステムだ。
備あれば憂いなし、とはまさにこの事である。
アクティブは能動という意味。プロテクションは防御。システムは仕組み全体を意味する。簡単にまとめると「攻撃を受ける前に防御する仕組み」だ。
今日のアクティブプロテクションシステムを担当する兵器は、上空から守ってくれる混成戦略機編隊と、海からの大規模攻撃を行う米海軍第七艦隊所属の潜水艦隊だ。
「あー。面白かった」
さっき突っ込んできたトラックは無人運転だった。
・・・・・・やっぱりさ、人為的な何かだと思ってしまう。今日で三回目だぞ。命を落としかねない事故に遭うのは。どれも無人運転車両や無人機材運搬機みたいに、機械が不調を起こしたかのように見せかけてるが、ここまで連続すると怪しくなる。
しかし、僕を狙うほどの組織がそんなヘマをした後も未練たらしく何度も襲ってくるというのは考えづらい。事実、調査しても本当に機器の不具合なようで、関わっている人も、ハッキングされたデータもない。
ここで、ラノベを結構読んでた日本の少年なら"究極の悪運"よりも"異世界転生"という思考になるはずである。
僕もその類だと自覚している。だからこそ言おう。
「僕は交通事故なんかで異世界なんて絶対行かないからなぁ!わかったか?!フーハハハ!」
「・・・・・・」
一通り、周りの人から変な目で見られたところで、警察が来ないうちにすたこらさっさと駅に向かった。
予定は変更だ。楽しみにしていた寝台列車旅行を諦め、メールでキャンセルの連絡をした後、ヒューストン州に行くために高速線(電車)を利用して、さっさと軍港に向かう予定を立てる。ヒューストンの港に速力の高い軍艦を1隻手配した。
ふと、今日がエイプリルフールだという事を思い出したが、ありえないと自分で否定した。だってそりゃこんなのする人いないでしょ、普通は…。
〜〜〜〜〜ヒューストン沖合500m
「メガロポリスはやっぱり海から見るのが一番だな」
今日の運の悪さが怖くなったので、今はハワイ級電磁力フリゲート艦三十五番艦オアフ に乗って、メキシコ湾からアメリカの東海岸を通ってルイジアナ州の軍港まで向かっている。
このフリゲートだけでも20世紀末のアメリカと互角に渡り合えるほどの戦闘力があるのだから、時の流れというのは本当に恐ろしい。まあ、作ったのは僕なんだけど。
現在のメガロポリスは昔とは一風変わって、というか随分変わっている。十数年前は普通に大都市が連なっている巨帯都市が点在していたのだ。高層ビルは一部に集中しており、その周りは数階建てのビルや民家が一面に広がって、都市間は緑と細い道路だけ。
だが今は、アメリカ東海岸数千kmに及んで高層ビルが絶え間なく続いているのだ。そして、各都市の中心には高さ1000mを超える超高層ビルが立ち並んでいる。海岸線にはビーチだけではなく工場が群がり、波浪貫通タンブルホーム船型の輸送船が行き来する。
ここまで発展してると、スペースコロニーとか作っても違和感ないと思う。
この航路を通ってると分かるんだが、フロリダ州って邪魔だよな。本当に迂回するのが面倒くさい。日本の中部横断運河みたいに適当に穴開けたい。
〜〜〜〜〜
ヒューストン港出港後数十分。艦首に出て、ボーと海原を眺めていると、不意に目の前に口を大きく開けたサメが映る。
「へ?!」
いきなり出てきて驚いたけど、一瞬にしてサメは死んだ。吹き飛ばされながら頭部の2箇所から血を吹き出して、海に沈んだ。沈んだ場所一帯が赤く染まる。
血を嗅ぎつけた他のサメがあたり一帯に群がり、共食いを始めた。
さっきサメを撃ったのは45mm連装機関砲 八咫と呼ばれるCIWSの一種だ。
CIWSというのは接近を許したミサイルなどを乱れ撃ちで迎撃する兵器の総称だ。
単発で撃たれた45mm徹甲炸裂弾が、爆発しながらサメの頭部を貫通したんだろう。
レーダーの探知状況を確認してみたけど、どうやらあのサメは突如として出現したようだ。発見できていない何らかの文明からの干渉かもしれないが、時空間異常が見つからなかった。
単純にワープさせてきたものだったらどれだけ良かったか…。つまり、あのサメはその場でいきなり体を構成して生み出させれ、僕を捕捉して食らいつこうとしたって事だ。
こんな芸当は、物理学を信奉する者には不可能なものだ。そうなれば神の力とでも形容しなければいけない。
でもな…。軍艦にサメを仕掛けてくる馬鹿が神なわけないだよなぁ!!バカだろ。しかもこの艦は最新鋭電磁力艦。戦闘力は先にも述べた通り。しかも、この艦は人工知能による運用がなされているため、さっきのような急な事態にも簡単に対処してくれる。
何でそんな船に乗ってる僕にサメ如きで通じると思っているのか……。犯人は神じゃないと思う。
一応警戒はしておかなければならないな。日本に帰ったら筑波で神に関する研究でもまとめてやってもらおうか。
もう少し潮風に当たっていたかったが、命は大事なので艦内に戻る。
〜〜〜〜〜ルイジアナ州 米海軍基地沖3km
とうとう到着した待ち合わせ場所。
ここで電磁力制圧群と呼ばれる大艦隊と合流する。80隻を超える電磁力艦で構成されており、先駆国以外の大陸なら簡単に制圧できるくらいの力を持っている。オアフからモンタナ級電磁力戦艦十五番艦サウスダコタに乗り換え、戦艦の艦首甲板に佇み海を眺める。ちなみにこの艦隊は全て無人で動いている。
話は脱線するが、海上自衛隊の護衛艦隊は米海軍の電磁力制圧群を圧倒するほどの戦力を持っていて、海上自衛隊の護衛艦隊1個と戦う時は電磁力制圧群3個を動員しなければ勝機がない程なのだ。
しかし、電磁力制圧群の数は12個に対して、護衛艦隊の数は20個なのである。日本強くね?
決して米海軍が頼りないなんて事はなく、アメリカにある別宅に一番近い軍港のあるバージニア州ポーツマスまで向かう。
今回僕の護衛にあたるのは、メキシコ湾並びにカリブ海、大西洋中部のシーレーンの補強を目的としている第三電磁力制圧群である。
沿海から見える米国屈指の大都市は高いビルが立ち並び、人が往来する歩道の横には路面電車が走っている。機械に塗れてしまった現代も、人の活気が社会を暖かく感じさせてくれる。
ふと周りを見渡せば、巨大な軍艦が広大な海の中を固まって移動している。この威風堂々とした姿はいつ見てもカッコいいと思う。
でも、そんな風にゆったりとした船路はすぐに終わった。謎の現象は諦めが悪く。ずっと僕につきまとってきたのだ。その都度フォローしなければならない僕の負担は大きくなっていった。
空から無人の民間空輸機が降ってきそうになった時は、揚陸艦から艦載ヘリを飛ばして吊り上げて対処した。
季節外れのゲリラ豪雨に見舞われた際は、無理に攻撃せずに潜水艦で抜けた。
一番恐怖を感じた攻撃?
そうだなぁ。目の前に女性ものの下着が現れて顔面にかかったときだな。ほのかに温もりを感じたから背筋がゾッとした。怖くなって急いで海に投げず捨てた後、雷撃処分したけど。
今までで一番怖かったかもしれない。
だが、そんなに余裕があるばかりでは無かった。脅威は着々と迫ってきていた…。
〜〜〜〜〜
『時空間異常と重力の歪曲を検知。ワームホールの形成プロセスに酷似しています。推定抽出質量17t。空間中和作業を開始。・・・・・・失敗。強力な時空干渉です』
艦に搭載された人工知能のアナウンスと警報で脅威を知らせてきた。こんな警報用意してたけど、実際に聞くのは初めてだから心底恐ろしい。即座に戦闘を決断する。
質量は17t。装甲車くらいの重量しかないが、異空間からの襲来だ。警戒は最大限にしておくべきだろう。
ちなみに現在の状況を受けて、世界規模で極秘裏に警告を流した。
そのおかげで、世界中の大都市の防御システムのランクが最大限に上昇し、緊張状態が走っていたりする。
「全艦全機戦闘用意!空母は航空機を展開。原子防護艦は該当域を隔離。各艦の一番砲塔には神殺弾頭を装填」
各艦に搭載されている大量の艦砲が一瞬で旋回し、射角を上げてその空間を狙う。百門をゆうに越える電磁火薬複合砲が、電気で自在に操られ。
500mを超えるワシントン級空母からは、電磁カタパルトから一斉に9機、次々と20機以上のF-45戦闘機が垂直離陸を行う。それも5隻から、つまり150機以上の第七世代機が1分で展開。たったそれだけで、一国の軍事力を軽く凌駕する。
ここまでして、ようやく落ち着くことができる。なにぶん自分は不老ではあっても、不死ではないからな。
・・・ッ!来た!巨大なドラゴンが頭部から捻り出てくる。僕の勘がこれを脅威だと伝えている。
突如として何もない空間から出てきたのは、西洋によくある胴体の大きいドラゴンだ。赤色で、爬虫類の目をして鱗に体を覆われた正真正銘のドラゴンだ。
羽を羽ばたかせ、その巨体に見合わず悠々と浮遊している。正直気味が悪い。
ああ、こちらを補足したな。僕の方をしっかりと睨んでいる。これは危ない目だ。
「空軍の支援を要請!第八世代機のスクランブルだ!!」
即座に付近の米空軍基地からの支援を要請する。最悪の事態も備えなければならない。こんな異次元の敵と対峙することなんて初めてだ。
突如ドラゴンがこちらに向かって突進してきた。どうしても奴が敵対的である証拠が欲しい!相手が知的生命体であった場合、こちらが無差別に攻撃するのは宣戦自由を与えかねない。
「UAVを目標の前に出せ!」
ドラゴンの意思を確認するために無人航空機をチラつかせる。さあ、本性を見せてみろ。
ドラゴンは突然目の前に来た無人航空機に驚き、それを撃墜した。
チェックメイトだ!!敵対行動と見做して正当防衛を開始する!
「大義名分ゲット!!各自、通常兵器にて全力攻撃!レーダー観測を厳となせ!」
レーザー攻撃兵器、重粒子ビーム砲、ロケット発射機、ミサイル発射機などなど無数の砲火がドラゴンに向かっていく。
砲弾やミサイルの雨で爆煙が視界を遮る。圧倒的だ!山を吹き飛ばすほどの威力だ!それ程の火力投射を受けて生き残る生物などいるわけない。
だが、嫌な予感がする。さっきフラグも立てちゃったし、ちょっと警戒しなければ。
「攻撃停止。・・・・・・やっぱりか……」
ヤツの体面の鱗は燻り、見るからに衰弱しているのだが、こちらに対して憤怒の眼差しを絶えず向けている。しぶとい爬虫類だ。
無傷ではないが殺せていない。何故奴は死なない?生物ではないのか?
ここで、これがエイプリルフールのイタズラの一環であるという考えは消え去った。人類が用意できるものではないのだ。僕でも再現するのは不可能だ。
『レーダー観測の結果、目標は現実空間との亜空間に存在しています。出現時に亜空間に実体を生成した結果だと思われます』
ここでレーダー観測の結果がきた。ヤツはこの空間との狭間に身体を生み出した。つまりどんなに攻撃を与えても半分以上のダメージを与えられないのだ。
例えれば、紙のようなものだ。表と裏は決して交わらず、その紙は貫通できないとする。
そしたら表側から攻撃できるのは表に出ている半分だけなのだ。
「やっぱり幽霊みたいなものか。まぁ、それで済んでよかったよ。全艦!各主砲にに神殺弾頭装填!」
半分以上のダメージを与えられない。どんなに攻撃しても生き残れる化け物。しかし、神殺弾頭の前ではそんな出鱈目も無意味となる。
神殺弾頭とかいう物騒な弾頭は、中に高濃度反物質が貯蔵されていて信管の作動と同時に強力なエネルギーを放出して、空間ごと滅ぼす兵器のことだ。
空間を丸ごと滅ぼす。つまり表裏関係無しに抉り取るのだ。
神様でもたぶんやれるから神殺弾頭という大層な名前を付けている。
「再度照準!撃ち方よーい!!
全門、一斉撃ち方始め!」
僕の号令で、全艦の砲口が一斉にに火を吐いた。
全弾命中。とてつもない轟音と閃光で、とっさに目と耳を覆い隠した。
もちろんさっきのドラゴンは跡形もなく消滅した。サンプルが手に入らなかったのが惜しいところだ。
ボスを倒した気分で、残りの道中は悠々と大西洋を北上する。
〜〜〜〜〜ノーフォーク海軍造船所
ノーフォーク海軍造船所
ーーノーフォーク海軍造船所はバージニア州ポーツマスにある米海軍最大にして最古の造船所である。決してイングランドのカウンティのノーフォークではない。
そうやって波乱すぎる航海は終わりを迎え、ようやく母なる大地を足で踏みしめた。
「お帰りなさい。道中大変だったわね」
そう言って出迎えてくれたのは、血は繋がってない姉の山本 青海だ。家事ができる姉御の様な人でとても頼りになる。僕らの暴走を止めるストッパーとしていっつもありがたい存在だ。
「3時のおやつを用意してるわ、一緒に食べましょう。今日の事について色々聞きたいから」
「おー!それは楽しみだ!。お茶はチャイでお願い」
「りょーかい」
姉はいつも、フレンドリーに接してくれてとても気が楽だ。こういう会話を100年続けたって飽きる気がしない。
〜〜〜〜〜自宅
ノーフォーク海軍造船所から徒歩4分と、造船所内にあるためアクセスが非常に楽だ。この自宅は日本にある第一の自宅に次いで第二の自宅と言ってもよい。
何故第二の自宅なのかって?そりゃ300年以上住んでるからね。ハハ。
「おにーちゃん達お帰りなさーい。今日は珍しく早いね〜」
「ただいま薫。今日はちょっと悪運が凄すぎて怖くなったから早めに帰ったんだよ」
青海姉さんと血の繋がってる、妹の薫だ。ややこしい。しっかり者だが妙に子供っぽい。
「ただいま。お茶の用意はしてくれた?」
「うん!一人で頑張ったからお兄ちゃん褒めて〜」
「よしよし、偉いぞ〜」
「えへへ〜。ありがと!」
薫がこっちにやって来るなり抱きついてきた。そういうのは嬉しいんだが、依存されててちょっと不安がある。兄離れできるのだろうか…?
姉さんが早速チャイの準備をしてくれている。チャイって何かって?インドの激甘ミルクティーだよ。姉さんは料理が上手い。
「はい、準備完了。早速だけど今日あった事を洗いざらい話してもらうわよ」
「私も気になる!お土産話聞かせて!」
〜〜〜〜〜数分後
「今日はこんな感じで事故にたくさんなりかけたんだ」
「アンタお祓いしてもらいなさい」
「日本でお祓いしてもらったら?」
僕が話してる途中静かに聞いてた二人だったが、開口一番お祓いしろと言ってきた。確かにそれが一番かもしれない。
「よし。じゃあ今から急いで日本に行って身を清めてもらおう」
〜〜〜〜〜ノーフォーク国際空港
飛行中に何か攻撃を受ける可能性もあるので、民間旅客機ではなく軍用輸送機に乗って、航空宇宙自衛隊木更津基地に行こうと思う。都内の神宮に直行してお祓いしてもらう。
SC-55 大型戦略制圧戦闘輸送機に乗って行く。「戦略制圧戦闘」輸送機とあるが、戦闘できる輸送機という意味ではない。どっちかというと、圧倒的な戦闘をお届けする輸送機という意味だ。「お前の死をプレゼントしに来たぜ☆」みたいな感じ。
完全迷彩光学、Passive Negates Stealth System、高い静寂性、戦車大隊を輸送可能な能力、マッハ20を超える飛行速度。まさに制圧戦闘をお届けする輸送機だ。
もちろんこれも僕主導で作った。
「職権濫用反対よ。こんなの飛ばしたら国際社会の緊張が高まるわよ」
姉さんがコレに乗るのに反対してきた。そりゃ確かにやり過ぎだとは思ったが、ドラゴンがまた攻めてきても困るのだ。
「バレなきゃいいんです。死にたくないから仕方のない事なのです」
「私これ乗るの初めて!ねぇお兄ちゃん、後で探検してもいい?」
「ああ、いいよ」
もちろん姉妹も一緒に来た。タクシーで空港まで行った後、さっさと裏口案内されて空港の業務用車に乗って光学迷彩が既に施されているSC-55に乗り込む。
席に着くなり垂直離陸で上昇する。
〜〜〜〜〜40分後
12,000kmの距離を30分近くで飛び、木更津基地に到着。さっさと移動だ!お祓いしてくれる神社はサーチ済みだ。WWWの情報提供を司るウェブサーバの管理権はほぼ100%握っているから深層ウェブのサイトも見放題だ。
人通りの多い道を避け、最短距離で目的の神社へと向かう。東京大都市圏の情報網は侮れない。もし、アクティブプロテクションシステムでも発動しようものなら民衆にバレてしまう。
〜〜〜〜〜とある神社
「今日はよろしくお願いします。はい。あ〜、そうなんですか。わざわざありがとうございます。はい」
「はい、そうなんです。実は悪霊のようなものが…」
「あ、別に悪寒は強くないんですが、今日1日で10回以上事故に遭いまして…」
「はい。わかりました。はい」
「え?取り憑かれてるけど悪霊じゃない?もっとすごいもの…。それって守護霊か何かですか?」
「あっ。いえいえ、調査とかは結構です。ただ、原因がそれなら祓ってもらいたくて」
「はい。大丈夫です。お願いします」
〜〜〜〜〜
「やっぱりお坊さんは徳が高いね」
丁寧に対応してくれるし、徳の高いお話を一つして頂いた。なんでも、「世の言う運というものは巡るもので、人との繋がりが多ければ幸も不幸も舞い込んでくるのは人の定」だというのだ。お坊さんに説法をされたからこそ非常に心に染みるものなんだな〜、と感じた。
ちなみにしっかりとお祓いしてもらった。
「さて、家に帰ろうか」
「それってどっちの家?」
しまった。今は日本にいるのにさっきまでアメリカの自宅第一支部(仮称)でくつろいでたから、どっちの家に帰ればいいのかよくわからない。
「だったら私。下関の方がいいな。久々にふぐ料理が食べたくなっちゃって」
下関の方とは本当の意味での自宅であり、山口県下関市最南西部の山の斜面に沿ってある住宅地の中にある一軒家だ。位置的に関門海峡や皿倉山の他に、世界最大級の北九州工業地帯を一望することができる景色の良い場所だ。
自衛隊の合同レーダーサイトも見れて、最高の眺めだ。
「そうだね。じゃあ下関の方にしよう。そうだ、新幹線で行かない?なんだか新幹線の気分なんだ」
「新幹線の気分が何かはわからないけど別にいいわよ」
新幹線ってなんだか雰囲気が好き。
〜〜〜〜〜数時間後
歩いて東京駅まで行った。結構疲れた。
東京駅からは東海道新幹線で新下関駅まで行く。新幹線車内では駅弁を食べて、ペットボトルの緑茶で冷えたお米を流し込む。意外とイケた。
新下関駅からは高速バスで移動した。
〜〜〜〜〜
「ハァ、ハァ…………。なんで杖、忘れたんだろう…」
景色とは、高い場所から見下ろさなければ美しいものを見ることは難しい。高い場所であるからこそ絶景が見えるのだ。つまり、前述したような絶景を手に入れるため、勾配10度の坂を登り続けるという重すぎる代償を払った場所に自宅はあるのだ。
「やっぱり貴方の弱点は体力ね。フランスの外人部隊に入ればいいと思うわ」
フランス外人部隊とは誰でも過酷な訓練を受けれる場所だと思ってくれていい。
「僕を殺す気なの?!」
「お兄ちゃんはそんな事しなくても十分凄いから。ね?」
「か、薫!なんていい子なんだ!」
姉さんはちょっと僕に対してキツイ気がする。妹はその分僕の癒しでもあるのだ。
ふと、左を見ると関門海峡が広がっていた。視界の端には関門橋が映り、今にも沈みそうな夕焼けが空中に架かる関門橋のケーブルを光で揉み消していた。
そして、視線を少し下にずらすと。海の向かいに、その夕日をも遥かに凌ぐ輝きを放つ港と工場が並び、巨大でスマートな輸送船が3桁はいる。これらはそのほとんどが無人艦で、貨物の陸揚げや運搬なども全て無人で行われている。
眼下に広がる広大な工場群は、世界最大級の生産額を誇る北九州工業地帯である。この工業地帯から生産された加工品や工業製品は、無人輸送艦で隣国や東南アジア、ヨーロッパにまで送られる。
もちろんこれらは全て無人である。中小企業が3割、大企業が5割、国の管轄で2割が運用されている。
2022年より操業を開始した世界初の完全無人工場である北九州工業地帯は、日本政府によって建設され、日本特有の財政難状況から初期は官営工場として、莫大な利益を得ながら国債の返済を行った。
そして国債を返済し切り、日本の財政が安定した軌道に乗った2028年に、大部分が民間企業に提供されたのだった。
もちろんコレも僕が作った。高校生の時にね!
「うーん。いつ見てもいい眺めだー」
工場を目尻に、再び急勾配を登り始める。
「大丈夫?ほら、買ったフグが悪くなるわよ。さっさと帰りましょう」
「お兄ちゃん早くー!」
ああ、この生活がいつまでも続けば…。いや続くんだ。こんな夢のような事が。・・・本当に………。
「・・・待ってもいいでしょう2人とも」
〜〜〜〜〜深夜 しな自室
「ああ、今日の件はそっちにお願いしたい。こっちは明日以降観測施設に立ち寄って、今後の対策ならびに報復を考えている」
『報復とはまた物騒な…。まあ命を狙われたんだったら当然ですね。空間の観測方法をさらに拡張する必要がありそうですね。各電磁力艦は確か2050年大規模改修が行われるんですよね。その時のレーダーも並行して開発しておきますね』
日本の優秀な人材が集まる理化学研究所のスタッフ。流石、話がわかるし期待以上の理解を示してくれる。
「ああ、よろしく頼む。君たちは本当に頼りにしているよ。今度ボーリング行こうな」
『分かりました。来週の9日は空いているので観測部のみんなで行きましょう。ゴチになります』
「うい。んじゃまた、なんかあったら報告してくれ」
『了解しました。それではまた』
通信が終わった。あと10日もすれば意思疎通くらいできるんじゃないかな。それまでを楽しみにしておきますか…。
題名の"カシウスさんのようにいきたい"の意味がわからない人は、「聖ロンギヌス」で調べてください。




