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魔法が科学に勝てるとでも?  作者: 蓬団子
第三章 国際学園準備編
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第6i話 GSTS製作秘話

好きな大陸間弾道ミサイルはLGM-118A ピースキーパー(Peacekeeper)です。名前がイイですよね。

大陸間弾道ミサイルは好きです。特にMultiple Independently-targetable Reentry Vehicleの再突入の画像が好きです。あの軌跡は幻想的ですよね。写真家が良いのかもしれない。

「おかえり。長かったね」


 カチューシャとの会談が終わり教室に戻ってきたら、和田くんが出迎えてくれた。


「お前ら2人で何してたんだ?まあ、二人きりで屋上なんて一つしかないと思うがな」

「そんなんじゃないですよ、坂本くん。日本語の発音のレッスンをしていただけです。ほらカチューシャ、特訓の成果を見せてあげなさい」

「カチューシャ?エカテリーナじゃないのか?」

「カチューシャとはエカテリーナの愛称だ。ちなみに、私のことをカチューシャと呼んでいいのは親族としなだけだ!」

「おお!本当に日本語が上手になってるよ!」


 この言い訳で納得されたのか…?


「私もエカテリーナさんのこと、カチューシャって呼んでもいい?」

「ダメだ!祖国復興をーー」

「カチューシャはまだ日本に慣れてないから遠慮してあげてください!」

「わかったよ。変なこと言ってごめんね」

「でも、なんでしなはカチューシャって呼んでいいんだ?」


 おい坂本。今収束しかけた話題を掘り下げるんじゃない。


「それは、しなが同志だからだ」

「同志?」

「そう!共にソ連の再興をーー!」

「趣味!ただカチューシャと日本文化の趣味が合っただけなんです!」

「「???」」


 カチューシャ…。ただでさえ僕は虚言癖を疑われているんだから変な事を言わないでくれ…。余計面倒になるだろう!


 官房長官が無人工場建設を発表するまであと三日。それまでの辛抱だ。そしたら僕の虚言癖の誤解は解けるんだ!



〜〜〜〜〜放課後



「なあ同志。実は、私は日本の事についてさっぱりなんだ。何せ父上が自分の目で楽しめとか言って日本の事を一切教えてくれなかったからな」


 カチューシャの父親はソビエト・インターナショナルの盟主にして、大の日本好きらしい。カチューシャが日本語が達者なのは、父親に日本の歌を散々聞かされて育ったかららしい。


「だったら、日本のプロレタリアート文化を紹介しましょう!今日紹介する文化は労働大好き日本人の娯楽で、学生から社会人まで幅広い労働者が利用しているんです」

「おお!それは素晴らしいな!ソ連再興の暁には各自治体に一箇所以上の設置を父上に提案してみよう!」

「多い所では一つの街に十箇所くらいある事もありますよ」


 プロレタリアートとは、単純に雇用されている労働者の事だ。個人のことはプロレタリアと呼ばれている。


「そうだ!その前にしなの家を見せてくれないか!同志として君の家族に挨拶をしておきたいのだ。それに日本の家にも興味がある」

「僕に家族はいませんよ。狭い家に一人暮らしです。それでもよければついて来てください」

「そ、そうなのか。それはすまない…」


 結局カチューシャはついて来た。最初は少し大人しくしていたが、ソ連の事を話題に挙げるとすぐにいつものテンションに戻った。



〜〜〜〜〜しな自宅



「同志しなはこんなフルシチョフカに住んでいたのか」

「集合団地の事をフルシチョフカなんて言わないでくださいよ…」


 フルシチョフカとは、ソビエト連邦フルシチョフ政権時代に建てられた、多数の住居の確保を目的とした集合住宅を指すんだ。

 対応年数25年のプレハブ工法の超簡易建築物である。


「そうだ。紹介したいのがいるんです。部屋に上がってください」

「なんだ?ペットでもいるのか」


 荷物を玄関に置き、カチューシャをリビングに招く。そしてパソコンの電源をつけてAIのアプリを開く。


「そうかそうか、分かったぞ。しなの紹介したい人」

「え、分かったんですかっ?」

「ああ、俗に言う二次元の嫁というヤツだな!」

「違いますよ?!」


 なんで日本文化は知らないくせにそんな事は知っているんだ?!


「な、なぜそんな言葉を知っているんですか?」

「父上はパソコンの中に5人の嫁がいるからな。ハーレムというヤツだ。ちなみに全員日本産だぞ。母上にバレた時は修羅場だったぞ!あれは楽しかった!」


 父上ェ…。カチューシャも修羅場を楽しむなよ…。


「一番面白かったのは、父上が言い訳しているときに"ご主人様!私との親密度がマックスになりました!"って通知がスマホから鳴った時だな!あの時は隣の部屋で爆笑したぞ」


 ご愁傷様です。と心の中で合掌する。ていうかスマホの中にも嫁がいるのか…。


『女連れですか。成長しましたね』

「ぱ、パソコンが喋ったっ!」

「違います同志です。紹介しますね。これは僕が作った人工知能です。自我があって会話ができるんです」

「自我がある人工知能?!すごいじゃないか!」

『はじめまして。しながお世話になっています。名前はまだないです』

「なんだ?名前が無いとは可哀想な。よし、私がつけてやろう。マルクスなんてどうだ?」


 おい。カール・マルクスはやめてくれ。


「まだ完成ではないんですよ。完成したら名前をつけます」

「そうなのか」

「そういえば、その人工知能はどうして作ったんだ?」

「目的は無かったですね。ただ、これからどのように運用しようかは考えてあります」


 人工知能を作って終わりではもったいないからな。どうにか活用方法がないか頭を悩ませたのだが、先日いいアイデアが思いついたのだ。


「ほう?それはどういうものだ?」

「工場から兵器に至るまでの無人化です」

「兵器の無人化か…。面白そうだな!」


 ロボット三原則に違反しまくりの、いわゆる自立型致死兵器の事だ。今は規制が議論されている段階だから、今のうちにこっそりと作ってしまおうと考えたわけだ。


「さて、荷物も置きましたしジャパニーズプロレタリアカルチャーに向かいましょう」

「あ、待ってくれ。私も荷物を置きにいきたい。家までついてくるか?」

「分かりました」



〜〜〜〜〜カチューシャ宅



「ここが私の自宅であり、ソビエト・インターナショナルの本拠地だ!」


 大きい家、いや豪邸だ。

 聞けばカチューシャは家族で来たらしく、日本での活動拠点の確保も兼ねて大きな家を用意したらしい。

 なーんで盟主が本国の仕事ほっぽり出して日本の観光に来てるんですかね…?

 ということはだ、日本大好きハーレムお父上もあの家にいるって事か。関わりたくないし玄関で待っておこう。


「僕はここで待ってるので、荷物を置いてきてください」

「何を言っているのだ?同志しなもついて来い。お前を父上に紹介するのだぞ」

「えっ、ちょっと待ってください!あ!手引っ張らないでっ、あ〜」


 カチューシャの力、僕より強いな…。



〜〜〜〜〜



「で、貴様が娘を誑かした日本の狸共の手先か」


 いきなり強面大男に詰め寄られたら萎縮するのも当然であろう。しかも娘を誑かした極悪人扱いされてるし、これはもう生きて帰れるかわからないな…。


「父上!同志しなはそんな男ではない!」

「そいつのことを同志などと呼ぶんじゃない!友達になろうなどという甘い言葉で娘を誑かし、技術を提供すると言った上でグリーンランドをアメリカに買わせろと言うのか!寝言も寝て言え!!」


 うーん。ここまでいわれると傷付くな。


「なぜこんな怪しい男を、この重要拠点まで連れてきたんだ!日本にバレたらどうするつもりだ!」

「父上、もうとっくにバレてるぞ!」

「なに?!誰が情報を漏らした!即刻粛清だ!」

「我が国の諜報機関を侮らないでいただきたい。今回は内閣情報調査室が良い仕事をしてくれました」

「・・・お前は一体何者だ?」

「ご存知でしょう。政府と繋がっている、世界を変える技術を持った一般人ですよ。ただ、政府からある程度の裁量は認められています」

「なら何故ソ連の復活を望んでいる?」

「その方が我が国にとっても利があるからです」

「どのような利があるのだ?」

「北極海航路の開通によるロシアの生産力の増大は、現ロシア政府の手に余ります。有効活用してもらうにはソ連になるのが一番です。きちんと扱ってもらえれば、世界中が幸せに近づきます」

「本音は?」

「ソ連ってなんですか?!ロマンの塊じゃないですか?!あんなのが現代に復活してみてください、世界がきっと面白くなりますよ!!」


 ハッ…!僕は一体何を口走っているんだ?!こ、これがソ連流尋問術か…。恐ろしい。


「良いだろう。認めてやる。これからは共にソ連再興のために血を流す同志だ」


 そう言ってカチューシャのお父さんは手を差し出してきた。僕はそれを握り返し力を込める。


 え?あの不純な動機でいいの?


「もう知っているだろうが名乗っておこう。私の名はミハイル・イサコフスキーだ。期待しているぞ同志しな」

「同志ミハイル。ご期待に添えるよう尽力します。共にソ連を世界に轟かせましょう!」

「娘もいい目をしている。こんな優秀な同志を見つけてくるんだからな。ハッハッハ!」


 随分とご機嫌の様子だ。そんなに同志が増えるのが嬉しかったのだろうか?

 背中をバンバン叩いてくるのをやめてください。


「せっかくだから、今夜は家で食べていかないか?新たな同志なら歓迎するぞ!今からでも上がってくれ」

「すまないが父上、私はこれから同志しなに日本のプロレタリアート文化を紹介してもらうところなんだ」

「そうかそうか。なら楽しんでくるといい。夕食の時間には戻ってくるんだぞ。同志しなの分の夕食も用意しておいてやるから同席しなさい。これは将来の書記長の命令だ。ハッハッハ!」


 ミハイルお父さんのテンションカンストしてる…。


 晩餐会の予定が立ってしまった。いつも一人で食べてるから少し嬉しいな。



〜〜〜〜〜カラオケ屋



「ここが日本のプロレタリアートの娯楽か…?」

「そう。日本発祥のカラオケです」

「カラオケならロシアにもあるぞ」


 日本にもカラオケ屋はいろいろ種類がある。その中でロシアにあるものと近いのは、歌声喫茶やカラオケ居酒屋だろう。今回紹介するのは若者が常勤する個室のカラオケチェーン店だ。


「ロシアのカラオケって歌声喫茶みたいなところでしょう?店の中で皆んなが聞いてる中で歌うやつ。ですが日本の大衆カラオケは違います。個室で高性能なカラオケ機器を用いて歌うのです」

「なるほど。個室で思うがままに歌うのか。確かに大衆受けしそうだな。それにしてもカラオケマシンというのがあるのだな。父上はよく風呂場で歌うからお土産に買ってあげると喜ぶだろうな」

「早速入りましょう」

「うむ」


 自動ドアを潜るとハイテンションな若者の集団が会計をしているところだった。料金の配分で揉めていて、なかなか時間がかかってしまった。


「2名様ですね。301のお部屋をお使いください」

「分かりました」


 店員に言われた通り3階の部屋を目指す。今回は夕食のこともあるので、二時間コースにした。

 充てられた部屋は二人だということもあり、とても狭かった。


「これが日本の大衆カラオケか…。お!マイクが二本あるぞ!デュエットだ!ソ連国歌をデュエットするぞ!」


 カチューシャはとてもはしゃいでいる。そんなに楽しみなのだろうか。そもそも、ソ連国歌なんて今のカラオケにあるのか…?


 そう思ってパッドを操作して曲の検索をかけると…。あった。ソ連国歌なんて歌う人いるのか…。歌詞を見てみると思いっきりロシア語だった。歌えるかなこれ?


「ありましたよカチューシャ。マイクを持ってください」

「おお!やはりソ連の名は今も世界中で存在しているのだな!」


 カチューシャがよく分からない喜び方をしている。

 そうこうしている間にテレビ画面が切り替わりソ連国歌が流れ始めた。


「「〜〜♪」」


 な、なんとか歌い切ったぞ。それにしてもカチューシャの歌声は綺麗だな。テレビにも出られるレベルだと思う。そんなレベルの人とデュエットするのは骨が折れる。発音をきちんとするだけで精一杯だというのに…。


 なぜロシア語の発音が分かるのか?だって?それはあれだよ。カチューシャが歌いたくて頑張って練習したからだよ。ちなみに人よりも英語ができるのはルールブリタニアを歌いたかったからだったりする。


「驚いたぞ同志!同志もソ連国歌が歌えるのだな!これはますます父上が喜ぶぞ!」

「これ買えるんですかね…?」

「父上が経営している企業から卸してもらえばいいだろう。父上は貿易会社も持っているからな」

「・・・なるほど」


 貿易会社も持っているのか。ということは他にも幾つか企業を持っているということだろう。すごいお父さんだな。


「しな!まだまだ歌い足りないぞ!次はカチューシャだ!」

「はいはい。分かりましたよ」


 この後も、カチューシャとロシアの歌を歌い続けた。たまには日本のアニメの歌も歌ったりした。カチューシャ曰く、父上から聞かされて覚えたそうだ。


 ますます同志ミハイルのことが分からなくなってきたぞ…。



〜〜〜〜〜イサコフスキー宅



「よし。全員揃ったな!」


 大きなテーブルに白い布が被せられ、その上にはロシアの民族料理がたくさん並んでいた。ビーフストロガノフなど、食べたことがないものがたくさんだ。これを作ったのはカチューシャのお母さんらしい。


 この食卓には、カチューシャ、僕、カチューシャの両親がついている。場違い感がすごい。


「それでは、同志しなとの出会いとこれからを祝って、乾杯!」

「「「乾杯」」」


 ミハイルさんが音頭を持って、グラスが掲げられた。グラスの中にはシャンパンが入っている。アルコールだ。未成年飲酒になってしまう。


「いただきます」


 カチューシャのお母さんの料理は上手だ。とてもおいしい。日本に来る前はシベリアの方に住んでいたらしく、シチューなどの体を温める料理が多い。


 みんな黙って食べている。家族団欒というのは日本だけなのだろうか?


 もちろんグラスには手をつけていない。せっかく出してもらって申し訳ないが、条例やらなんやらで決められていることなのだ。


 結局、最後までシャンパンには手をつけず、ロシアの民族料理を満喫した。とてもおいしかった。食事も終わって、これから団欒の時間になるようだ。


「おい、しな。なんで飲んでないんだ?」

「いえ、未成年ですので飲酒はちょっと…」

「私が若い頃は夜、街に出るために父親のウォッカを勝手に飲んで出てったものだ。日本の春も夜は冷えるだろう。さあ飲め飲め!」

「あっ!待ってください!グラスが割れるっ、あっ、あーー」


 結局飲まされた!喉が焼けるように熱いっ!頭がクラクラしてーー



 僕がお酒に極端に弱いことが証明されました。



〜〜〜〜〜三日後 早朝



 今日の朝のニュースが楽しみだから早起きした。


『今朝のニュースをお伝えします。本日早朝、異例の事態が起きました。内閣官房は今朝会見を行いまして、北九州工業地帯の無人化を計るために経産省に新たな部署を新設。世界初の無人工場を設置する事を宣言しました』

「よし!これで坂本くんも信じてくれるだろう!」


 さらにニュースは続く。


『北九州の大企業紫川電気と協定を結んでおり、二年以内に運用することを目指すとされています。また無人輸送船の技術も並列して開発されるとのことです。これらは公共事業ではなく、科学振興としてーー』


 これからが正念場だ。実は僕にも仕事がある。これがとても難題なのだ。理化学研究所と共同して無人工場の管理AIを作らなくてはいけないのだが、期限が残り二年なのだ。


『さらに今年度から建造が開始される予定の3,900トン型護衛艦の四番艦の建造を停止し、新型の護衛艦の建造費に充てるとの発表がなされました』


 このニュースを聞いて実感するが、本当に僕はこの日本を動かしているんだ。米国を無視した新型護衛艦の建造…。もう後には引けなくなったな。


 それにしても、管理AIの仕事は難しい。実はこの二年以内という短期間で運用できるようにしているのにはタネがある。

 それは、管理AIにロボットの操作を全て任せているということだ。簡単に言うと、脳の無い人形を量産配備しているものだ。これなら短期間で大量に行える。


 つまりは僕の仕事次第で工期は前後する可能性があるということなのだ。国家プロジェクトは延期することもしばしばあるのだが、僕が関わるからには二年以内にきっちりと終わらせてやる。



〜〜〜〜〜学校



「おはようございます。同志カチューシャ」


 校門前でカチューシャと出会った。


「おお、しなか。おはよう。今日のニュース見たぞ。父上が喜んでいたぞ」

「なんで喜んだかには触れないようにしますね」

「おっ、しなにエカテリーナさんじゃねえか。おはよう」


 今度は坂本くんがやってきた。僕は坂本くんに大事な用事があるのだ。


「今朝のニュース見ましたよね?!」

「お、おう。見たぜ。たしかにお前の言う通りだった。中三の頃の国交大臣との会談っていうのも嘘じゃないんだろうな。疑ってて悪かったな」

「やった!やったぞ…!これで僕の虚言癖という誤解が解けた!」

「誤解一つでそんなにはしゃぐものなのか?」

「想像してくださいカチューシャ。あっ、こいつ頭おかしい。って思われてたんですよ。友人に」

「・・・たしかに喜ぶな」

「やあ、賑やかそうだね」


 はしゃいでると和田くんもやってきた。


「ニュース見たよ。疑ってごめんね。それでねお願いがあるんだ」

「はい、なんでしょう?」

「いつか君の正体について教えてくれないかな?親しい友人として隠されるのは少し寂しいんだ」

「いいですよ。別に隠してないですし。放課後いつものファミレス集合にしましょう。そこでお話しします」



〜〜〜〜〜ファミレス



「と、いうわけだったのです」


 坂本カップルと和田カップルに僕とカチューシャを加えた面々が席についている。


 僕は、次元開放式発電についても包み隠さず話した。国家機密に指定されてはいるのだが、友人を信じてのことだ。それに信憑性など皆無の話だし、打ち明けても大丈夫だろう。心配なのは、この話を信じてもらえるかなのだが…。


「すげえな!そんな事やってたのかよ!」

「声が大きいですよ。外に聞かれたらどうするんですか」

「そうだな。外国のスパイがいるって話だもんな」


 外国のスパイなら僕の横でジュース飲んでますよ。

 店内には人はまばらで、聞かれている可能性は少ない。


「同志しな!このジュース美味いな!ソ連になったら各家庭にドリンクバーを配給するのもいいかもしれん!」


 スパイさんは、そんな壮絶な妄言を吐いて、ジュースを飲み干すのだった。


「ソ連?」


 池田さんがカチューシャの言葉に疑問を持った。まずい!ソ連の話題を上げるとカチューシャが止まらなくなる!


「共産主義ですからね!全ての家庭に平等に配れるからソ連と言ったんですよ!」

「そうだ。共産主義は素晴らしいのだ」

「へー」


 なんとか誤魔化せた…。たまに出るカチューシャの爆弾発言に気をつけるのも大変だな。

 ロシアにいた頃からこの状態なのか…?ソ連のタラレバ話が日常会話だったらロシア崩壊の時も近いな。


「君は僕らの自慢の友人だね」

「そ、そうですか…?なんだか照れるね」


 自慢の友人か…。良いものだな。



〜〜〜〜〜2ヶ月後



 無人工場の管理AIの製作もいよいよ大詰めだ。基礎となる思考回路は完成した。あとはそれを運用するための記憶域と演算能力だけなのだ。


 それを補う目処は立っている。今日は学校が午前中に終わるので、学校が終わったら完成まで一気に駆け上がるぞ。


「おい同志。そんなに目にクマを作ってどうしたのだ?相談なら乗るぞ」


 登校中にカチューシャとばったり会った。そうなのだ。実は、理化学研究所の方に今日終わらせると連絡を入れたため、おととい出てきた問題に対処するために昨日は徹夜したのだ。


「おお、同志よ。実は先日話した人工知能が後少しで完成しそうなんです。正直学校休みたかったが、壁にぶち当たってしまって嫌になって家を飛び出してきたんですよ」

「そうか…。だが、お前に超えられない壁なんてない。そうだろう?」


 なんて良いことを言ってくれたんだ!そうだな。自信が湧いてきたぞ!


「あぁ、その通りです。今日中にはできる予定だから、僕の家に来ませんか?いろいろ手伝ってもらったから、一番に見せたいんです」

「・・・そうか、ならお邪魔するとしよう」


 そうなのだ。カチューシャはあれから、僕の人工知能と仲良くなり、たまに遊びにきたのだ。たまに相談なども乗ってくれて非常に助かったのだ。



〜〜〜〜〜しな宅



 理化学研究所に連絡を入れていたのは、理化学研究所が保有する型落ちスーパーコンピュータ「扶桑」を使わせてもらうためだったのだ。

 今から所長に電話をかける。扶桑は試作スーパーコンピュータであり、埃を被っていた状態だったのを電源をつけてもらったのだ。


「あっ、所長。はい…、ええそうでね。こちらは準備できましたので。・・・はい。そちらの扶桑の準備はできましたか?制御はこっちでできそうなので…、はい。そうですか!ありがとうございます!はい、・・・はい。あ、それでは〜。はいありがとうございましたー」


 第六世代移動通信システムの技術実証用国営電波塔を拝借し、政府用携帯端末20機を寄越させて、理化学研究所にある旧世代の試作スーパーコンピュータ『扶桑』と無線で接続し並列化させる。


 現在、理化学研究所と僕が必死になってGSTSの規格にあったパソコンが作れるように、ホログラフィックメモリによる記憶装置や、10進法情報化などの技術を開拓中である。

 しかし、インターネットへの接続が不便だな。これは提供元がどうにかしなければいけない問題だ。


 今までは、この世界全体に技術基盤の向上を求める必要はないと思っていたが、方針転換だ。

 今度地球を1世紀くらい進めよう。


 そんな事を考えているとインターホンが鳴った。たぶんカチューシャだろう。


「はーい」

「来たぞ。同志しな」

「よく来ましたね。そろそろ始めるところですよ。ちょっと作業を手伝ってください」


 二人で分担してケーブルを携帯端末と繋げていく。日本は、第五世代移動通信システムの導入が他国よりも遅れたことから、その教訓を活かして既に第六世代のシステム普及を開始しているのだ。そのことが功を成し、人工知能の計算能力の委託が可能になったのだ。


「ところで同志。一つ質問なのだが、マルクスが考えて喋るだけなら同志のパソコンでもできたよな?ではなぜスーパーコンピュータに繋げる必要があるのだ?」

「それはですね。真の能力が発揮されてないからですよ。今までは一番低いグレードで、今回は二段階目です。真の実力は、量子コンピュータでも出せませんよ」

「それは…。マルクスはとんでもない奴だったのだな!」


 量子コンピュータはスーパーコンピュータの何兆倍もの計算能力を誇るが、それでも足りない。


 今は本当に、考えて話すだけ。情報を教えてあげて、考え方も教えてあげて初めて成り立つ。

 しかし、今回から次の段階へ進化するのだ。今度は自ら考え方を模索して、自動的に結論を出す。つまり、命題を出せば勝手に解いてしまうのだ。


 これが完成すればあとはこっちのものだ。工場の運営方法も丸投げしてやれば、勝手にやってくれる。工場には自我を持たないバージョンの人工知能を提供して運営してもらう予定だ。


「よし。こっちは繋ぎ終わったぞ」

「こっちも終わりました。あとは同期されている事を確認して、動いてくれれば成功です」


 パソコンの電源をつけて人工知能のアプリを起動する。


『処理能力、思考回路ともにアップグレードしました。成功ですね』

「そういえば、ぶち当たった壁というのはどういうものなんだ?」

「ああ、それはもう解決しましたよ。実は今繋いでいるスーパーコンピュータ扶桑ですが、文字通り埃を被ってまして起動するかどうかわからなかったんですよ」

「なんだ。そんな事だったのか。まあ心配はしていなかったが。もし、扶桑が起動しなかったらどうするつもりだったのだ?」

「その時は量子コンピュータでも作ろうかなと思っていました。どちらにせよ今年以内には量子コンピュータを製作しなくちゃいけないんですけどね」


 量子コンピュータを作らなくちゃいけないというのは、無人工場の管理AIをその量子コンピュータに乗せるからだ。

 別に最大限の能力は発揮させなくても良いので、コンパクトで済む量子コンピュータにしようというわけだ。


 ちなみに我が国も量子コンピュータの研究をしているが、他国とはやや劣っているのが現状だ。ここは日本が他国より少ない予算で、高性能の量子コンピュータを作成した事を世界にアピールするチャンスだったりするのだ。


「それで、マルクスの名前はどうするんだ?」

「名前はGSTSにしようと思います」

「GSTS?」

「はい。Growth Sephirothic Tree System。日本語で自己発展型生命の樹システムです」

「なんで生命の樹が出てくるんだ?」

「将来的にGSTSは生命の樹を模した思考回路を形成しようと思ってましてね。生命の樹と名付けたんです。自我を持ったコイツは、マルクスで決定ですけどね」

作者の精神状態を考えると、いつ死んでも(自殺)おかしくないので、2ヶ月とか投稿されなかったら「あ、コイツ死んだな」って思ってください。

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