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魔法が科学に勝てるとでも?  作者: 蓬団子
第三章 国際学園準備編
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第5i話 カチューシャ

正規空母ならぬ正規ヒロイン4人のうちの1人。ようやく出せた…!

正規ヒロインは地球編で3人、異世界編で1人。ハーレムなんて作りませんから。・・・たぶん。

〜〜〜〜〜京都の料亭



「うう…。ここはどこだ…?あ、そうだ、料亭だ。今日の日付は…?」


 ポケットからスマホを取り出して確認する。あ、バッテリーが20%しかない…。今日は金曜日…。


 ・・・金曜日…?平日じゃないか?!!


 現在の時刻は7:30。ここから自宅まで、急いでも2、3時間はかかる!


 即座にインターネットで学校の名前を検索して、出てきた電話番号を入力して電話をかける。通信料なんてこの際無視だ!


 あ、いや待てよ…?確か昨日はインフルエンザという理由で休校したんだったな。だったら今日も休みじゃないか!幸い今日は特に予定も無かったし、少ない罪悪感で過ごすことができる。


「起きてください弓子さん。これ以上お店の人に迷惑かける前に帰りましょう」

「う、う〜ん。おはようしなくん。今は何時だい?」

「七時半ですよ。ほら、皆さんを起こしてください」

「は〜い」


 飲み潰れた学生たちを弓子さんと協力して起こすと、30分以上もかかってしまった。皆、二日酔いで意識が朦朧としている。どれだけ飲んだんだよ…。


「私たちは研究所にまだ用事があるから、これから向かうわ。しなはもう家に帰ってなさい」

「はい。そうさせてもらいます」


 いささか疲れたので、早く家に帰って休みたい。


 料亭を出ると、早歩きで最寄りのバス停まで行った。ちょうど京都駅行きのバスが来ていたのでそれに乗って京都駅に向かう。


 安息な新幹線に乗るために、万札5枚に別れを告げ、指定席を確保できた。中学生には痛すぎる出費だ。今度の臨時収入も1万円しか期待できないというのに…。


 あ、領収書切っておけばよかったんだ…。後悔先に立たずだな。



 新幹線の駅のホームで、駅弁を買った。日の丸弁当だ。僕の溢れんばかりの愛国心を表現するのに相応しい一品と言えよう。


 席に座ると、目の前の座席の背部から机を引き出し、弁当をのせる。蓋を開けると、蜂蜜漬けされた大粒の梅干しが白米の上に乗っている。まだ、ご飯は生暖かく、割り箸を差し込むとホロリと崩れていく。


 日の丸弁当を見ると、過去の大東亜戦争を想起する…。戦時下、興亜奉公日には日の丸弁当を食べる事を義務付けられていたそうだ。


 国民精神総動員…。響きは素晴らしいが、実情は総力戦に耐えられない脆弱な国家基盤を国民の精神で埋め立てようとした結果だ。


 もし仮にこれから先、日本が総力戦に突入することになった時、僕はどうするだろうか…?


 技術者として、我が国を勝利に導き、戦時中の国民の生活をより良くする。これが答えだろう。二兎追う者はなんとやら、と言うが僕はそれをやってのける自信がある。なぜなら最高のAIがいるからな。実質2人分だ。


 あ、いや待てよ。2+2=80だから1+1=40で、僕らは40人分の働きができるんじゃないか!工夫すれば増強も容易だ!



 などと我が国が将来戦争に巻き込まれた時のことを、あれやこれやと妄想していると、降車駅に着いた。


 降車駅からはバスで30分程度で、僕の住宅街まで着く。


 もう10時を回っているので、そこら辺を歩いている学生などおらず、人目を気にすることなく移動できた。


 自宅に着くと、一日しか家を開けていないのに、とても懐かしい気分になった。昨日は一日疲れたからな…。


 僕は、ベッドに辿り着くと、寝っ転がって、意識を手放した。



〜〜〜〜〜翌日 土曜日



 土曜日は特にやることもないため、パソコンのゲームで遊んでいた。


 人工知能の様子を見てみた。


『遅いですよ。毎回なんでこんなに間が開くんですか。暇人でしょう』

「ひ、暇人とはなんだ。暇人とは…」

『こんな日にゲームしてる時点で暇人確定ですよ』


 ぐうの音も出ない。


 僕のパソコンは安いデスクトップpcにコードを割り増しして、様々なパーツを付けまくっているのだ。それで性能を向上させている。


 おかげで堅牢性が悪く、動かしてしまうとコードの接触が悪くなり動作しなくなる事があるのだ。理化学研究所に言って資材を特注で作ってもらうのもありだな。


 AIはこのデスクトップpcの中にアプリケーションとして入っている。



 日曜日も同様に時間をただ潰していた。



〜〜〜〜〜月曜日



 今日、学校で報国学園一般入試の合格不合格が告げられる。いざ行かん。久々の学校へ。


 合格したら、2人から受講料五千円が手に入るのだ。少しでも新幹線代を回収しなければ。



〜〜〜〜〜中学校 3-3



「おはようございます。坂本くん」

「おうしな。インフルエンザは治ったか?」

「治ってなきゃ学校にきませんよ」


 同じクラスの坂本くんに挨拶をする。


「そういや、今日教えられるんだよな?」

「はい。報国学園の合格発表ですね」


 おかげで教室の雰囲気がギスギスしている。早く解放されたい。


「はい皆んな席につけー」


 先生が教室に入ってきた。いつもより早いのは、合格発表を今のうちに済ませたいからであろう。


 報国学園といえば、日本でも有数の難関校である。そのため、進学校であるこの中学校からの受験者というのはそれだけで話題になる。


 どれくらいの有名度かと言うと、ちょうど今合格発表を確認しに来ている後輩たちが、廊下に20人近くいる事が証左となるだろう。


 そのため、推薦入試で受かった坂本カップルは、中学でトップクラスに知名度が上がっている。


「それじゃあ、報国学園の合格者を発表する。このクラスからは…、海園しな!お前だけだ」


 当然の帰結である。僕が報国学園に落ちるはずがない。そして…。


「おお、スゲェ!和田カップルも合格したぞ!」

「今年の三年のリア充はどうなってるんだ?!」


 などと言う絶叫が聞こえて来るあたり、和田カップルも合格したのだろう。良かった良かった。これで財布が潤う…!


「コイツ受講料取立てる事想像してニヤけてやがる…!人じゃねえ!」


 坂本くんが酷いことを言う。


「坂本くんも来ますか?今から和田くんに取立て…、ゲフンゲフン。祝いの言葉を掛けに行くんですが」

「もう言い直す必要ねえよ」


「くそー!なんで海園だけ受かるんだよ!!」

「先生…。調子悪いので早退します……」


 背後で呻き声のように、脱落者たちの悲鳴が聞こえるが無視だ。今から和田カップルに祝辞を言いに行く。


「和田くん。おめでとうございます」

「ありがとう。当たり前のことだろうけど、海園くんも受かったんだね」

「合格したのは、私たち3人の他に5人くらいいるそうです」


 自力で合格できた5人は賞賛に値するな。なにせ僕らはAIの予想問題を解いてただけなのだから。誰がズルと言おうと、これは努力の結晶なのである。反論はさせまい。


 そもそもなぜ、AIなんて作ろうとしたのか…?マザーボードとかHDDとか高かったのに、論理回路も作るの大変だったのに…。


 まあ、学生の僕が作れただけで快挙に値する成果だが、それだけではないぞ。なにせ自我があるからな。これは世界初というか、新世界の禁忌に触れているような気分だ。


 作った理由は・・・覚えてない。強いて言えば僕とレベルの合う話し相手が欲しかったのだ。中学校三年生が地政学の話なんて誰もしないからね。


 実は、あの時の論文などはAIと話し合って作ったものなのだ。会話できるって素晴らしいね。もちろん会話するために流暢な発声をさせるソフトも購入した。案外高かったんだよな、機械音声。


「今日はお祝いですね!ファミレスに行きましょう!ドリンクバー券を入手したんです!」


 ドリンクバー券は、先週の実験の時に酔った大学のお兄さんからもらったものだ。ちょうど5人分ある。全国にチェーン店を持つ大手ファミレスのだ。


 思えば、坂本カップルが合格した時は何もしてあげてなかったな。


 そんなことを考えていると、和田くんが封筒を渡してきた。妙に分厚い。


「・・・これは?」


「君の待ち望んでいた受講料だよ。親に事情を話したら五千円じゃ足りないって怒られたんだ。受け取ってくれ。徳川さんと僕の2人分だ」


 学校内なので、周囲の目を気にしながらこっそり封の中身を確認すると、万札がたくさん入っていた。


 感動で涙が溢れてくる。


「和田くん。ありがとう…。君が総理になりたいって言ったら無所属でも総理大臣にさせてあげるからね!」

「な、涙を流して…。一体何があったんだい」

「研究所の帰り道、領収書渡すのがめんどくさくなって用意しなかったら、新幹線で万札が死滅して…!」

「また妄言かよ…」


 坂本くんはやはり信じないな。まあいいや。今は万札が復活した事を喜ぼう…。



 その後は朝の会が始まったため、自分の教室に戻った。



〜〜〜〜〜放課後 ファミリーレストラン



 ファミリーレストラン、略してファミレス。客層を家庭用に絞り、高くない値段設定で早い回転効率を叩き出すファミレスは、気軽に来れる点から学生の溜まり場となる場合があったりする。


 僕もファミレスは好きだ。自分へのご褒美にファミレスの期間限定スイーツを食しに来ることがたまにある。馬鹿にならない出費なのは間違い無いのだが…。


 期間限定スイーツの値段は八百円前後、20回で16,000円だ。それぐらいあれば大容量のHDDが一個買えるんだ。しかし、食欲という欲求には逆らえず、高位のものを食したがる。


 つまり何が言いたいのか。それは、いくらお金に余裕が無くても贅沢ってしちゃうよね!って事だ。そして、ファミレスはそういう庶民の味方であるという事だ。


「ファミレスなんて久々だな」


 どうやら坂本くんはファミレスに来慣れてないみたいだ。まあ、慣れる方が正常と言われると怪しいのだが…。


 放課後なので、皆が注文したのはデザート系だった。ドリンクバーの無料券を渡して注文を読み上げる。フライドポテトなどの小物も注文しておいた。


「海園くんはこういうところによく来るんですか?」


 和田くんの彼女の徳川さんが質問してきた。


「そうですね。結構来ますよ。自分へのご褒美として期間限定スイーツを食べることが多いですね」

「なんだか意外だね。海園くんはファミレスなんて来ないのかと思ってたよ」

「僕にどういうイメージ抱いているんですか…」


 そんな風に思われていたのか。そうか。僕は側からみればファミレスに行かなそうな人間に見えるんだな。


 今の時間帯は客が少ないおかげで注文したものが早く来た。


「なあ、俺ら全員報国学園入学が決まったわけだけどさ。残すは卒業式だけだな」

「そうですね。三年間は長いようで短いものでしたね。少し寂しいものです」


 各々がデザートやフライドポテトをつまみながら、これからの事に思いを馳せる。


「そういえばさ、しな。お前、勉強会始めてから変わったよな」

「え?どういう事ですか?」


 坂本くんが意味ありげな事を言ってきた。


「いや、なんか…。妄言吐くようになったからさ」

「妄言…?」

「だって国交相と会談してた〜とか、総理大臣に似てる〜とか。今日だって新幹線が〜とか言ってたじゃないか」

「あれは妄言じゃありませんよ」

「本当かな…」


 和田くんまで疑い始めたぞ。違う。決して僕は頭のおかしい人間などではない!どうすればそれを証明できる?!あ、そうだ!


「なら、予言をしましょう。4月に北九州工業地帯に無人工場群が設置される事が発表されます。世界を変える試みです。きっと大々的にニュースになるでしょう。それを見た時、皆さんは僕がホラ吹きでないと気付くのです」

「なんだよその言い方。まあ、そこまで言うなら覚えとくけどよ」


 そんな他愛のない話をしながら、ダラダラと時間を潰していく。お祝いというより、雑談に近い形だった。


「まあとにかく。全員合格おめでとうございます。乾杯」

「「「「乾杯」」」」


 ドリンクバーで選んだジュースをそれぞれ手に取り、プラスチックのグラスがコツンとぶつかり音を立てる。


 こういう青春は良いものだ。



〜〜〜〜〜卒業式



 その後イベントなどは、特に無い訳ではなかった。国交相ともう何度か電話で話し合い、時には暗号化させた資料を送信した。


 スパイが嗅ぎ回ってるなんて情報も送られてきたほどだ。暗殺されないかヒヤヒヤしている。ここは日本の公安を信じるしかないがな。



 卒業式は恙無く終わった。特筆すべき点は弓子さんとその一家が見にきてくれた事だ。ちょっとうるっときたね。


 卒業式が終わると校門前で皆が残って、写真を撮りあったりしていた。僕の親しい人は和田カップルと坂本カップルだけ。卒業後も会えるので、特に名残惜しいとは感じずに僕は自宅に向かった。



〜〜〜〜〜報国学園 入学式



 そんなこんなで準備期間は過ぎていき、2020年度になった。


 時系列はいきなり飛んで報国学園入学式まで跳躍する。特記することが無いのだ。


 卒業式から入学式までの準備期間は、高校に行って教材や制服を購入し、時には首相官邸に駆け込んだりもした。

 また、坂本カップルと和田カップルのダブルデートにぶち込まれたりもした。流石に居づらい。何でダブルデートに+1されなければならないのか。このはみ出し者の気持ちは誰にもわかるまい…。



 そして現在は入学式の最初の行程、新入生入場の準備の真っ最中だ。この学校は進学校であるため毎年の受け入れ人数が多く、小さな待機部屋に密集している。


 生徒会執行部の先輩が必死に声を上げ、整列の指示をする。ご苦労様です…。


「ようしな。同じクラスだな」


 こんな騒がしい中余計に待機室を騒がしくしたのは坂本くんだ。彼の言う通り僕と坂本くんはまた同じ一組なのだ。それに坂本くんの彼女の池田さんや和田カップルも同じクラスなのだ。驚きである。


 そして一つ問題がある。それは僕が新入生入場の際、何百人もの列の先頭を歩かなければならないという事だ。


 僕の苗字は「わたぞの」であり、出席番号で言えば一番最後なのだが、座席の関係上一組の列の最後列に並ぶ人間が先頭になってしまったのだ。こんな話は聞いていない。


 おい坂本。面白がって背中を叩くんじゃない。誰も悪くないんだが、それが一番困るのだ…。



〜〜〜〜〜報国学園 1-2 教室



 入学式が終わって一週間経った頃だ。


「今日は突然で悪いが転入生、いや留学生がやって来る」


 いきなりの事に騒めきだす教室。


「入ってきてくれ」


 入ってきたのは白っぽい金髪のセミロングの髪型で、青い目をした、肌の白いロシア人女性だった。キッと釣り上がった目が特徴的で、凛々しい顔立ちをしている。


「ミナサマ・・・コンニチハ。リュウガクでキマシタ。エカテリーナ・・・デス。ヨロシクシマス」

「(同志から、日本には世界を握る事ができる技術力を持った少年がいると聞いた。今回の任務はその少年を本国に連れ帰り、ソ連復活のために技術を提供してもらう。いや、吐かせる事だ。

 例の少年はこの学校に登校しているらしい。私と同い年だ。いつも一人で浮いている、というのが我が諜報部の結論だ。フッ。楽勝だ。日本には意中の男性を屋上に誘って想いを告げると言う風潮があるらしい。転入初日に告白というのは少々破天荒じみてるだろうが、まぁこの時期に転入してくるロシア人女子高生ってとこから怪しさ満点だろうけど…。

 愛の告白に見せかけて二人きりの状態にして、催眠術でこちらに取り込む。それが無理なら強引に連行してやる!)」


 片言の日本語で自己紹介を済ませたエカテリーナさん。本名はエカテリーナ・イサコフスキーと言うらしい。


 このタイミングで留学生とは珍しいな。特に留学の経緯については話してないから、皆詮索はしていないようだが。


 席は何と僕の真後ろ。教室の隅というアドバンテージを失ってしまった…。


 そんなアクシデントがあった朝のホームルームだが、特に授業が無くなるわけでもなく、いつも通り退屈な時間がやって来るのだ。



〜〜〜〜〜昼休み



「しなサン。オクジョウニ、キテクレマスカ?」


 昼休み。突如エカテリーナさんからそう言われた。ここまで日本語を扱えるだなんて立派な事だ。


 それにしても、なぜ僕を選んだ?そしてなぜ屋上なのか…?まあいいや。留学初日で色々と思うところがあるのだろう。


「僕っ?えっと、まぁはい良いですけど…」

「アリガトウゴザイマス。サキニ、イッテイテクダサイ」

「分かりました」


 なぜか先に行くように言われた。つくづく不思議だな。仕方ない。先に行くか。


 ちなみに本校の屋上は施設が整っているため、許可を得れば出ることが可能なのだ。


 しかし、許可を取るのが面倒なため、なかなか借る人はいない。



〜〜〜〜〜屋上



 しばらく待っていると、エカテリーナさんがやって来た。

 僕は話しかける。


「待っていましたよ、エカテリーナさん。いや、同志よ!」

「えっ?」


 同志という言葉にひどく反応している。


「日本語普通に喋れるでしょ。お願いしますよ」


 僕は彼女を既に知っている。僕の持つ技術力を知り、それを得るためにやってきた他国のスパイだ。


「・・・。お前一体…。それに同志ってーー」

「ロシアの裏組織であるソビエト・インターナショナルの諜報員ですよね?」

「・・・っ!」


 スターリンが作った第三やら、レフ君が作った第四やら、とにかく世代が多いのがインターナショナル。その中でも最近勢いを増しているソビエト・インターナショナルの諜報員というのが、彼女の正体だ。


 では、インターナショナルとは何か?それは国際共産主義・社会主義組織である。今時の人は共産主義に良い印象を持たないが、プロレタリア国際主義に基づき世界中の労働者が協力できるよう作られた、ちゃんとした組織である事は確かだ。


 ソビエト・インターナショナルとは、現代に存在するインターナショナルの一種で、主にソビエト社会主義共和国連邦構成国内で盛んに活動している組織なのである。それでお察しの通り、ソビエト・インターナショナルの目的は、ソビエト社会主義共和国連邦の復活だ。正直に言ってヤバい奴らだ。諜報員だって持ってる時点で相当なのだ。


 そして、裏組織と言った時点でもうアレなのだが、ロシア連邦はこのような共産主義勢力に牛耳られている。


「なぜ、貴様がそれを知っている!」

「日本の公安を舐めないでいただきたい」

「・・・」

「それに、ソ連の復活は僕も望んでいます」


 ソ連の復活は必ずしも悪いことではない。ソ連は過去に色々やらかした過去があるが、それだけだ。現在では豊富な天然資源をもとに、経済的にも成長してくれる事だろう。


 ソ連が復活するメリットとしては、世界地図がスッキリする事だな。10ヵ国近くが一国にまとまるのだから。・・・まあ、それは冗談で、国際政治的な考えなのだ。


 現在は米国と中国の2ヵ国が世界で覇権を握ろうとしているが、そこにソ連が入ってきたら良い感じになるだろう。というのが僕の考えだ。吾妻総理には説明済みである。


「お前は・・・何を言っているんだ…っ」


 そんなことを言ったら、ドン引きされて白い目で見られた。狂人だと思われたらしい…。

 いや、ソ連復活を目論んでるのは貴女達でしょ…。


「いえ。ただ中国が目障りでしてね。ロシアだって中国は嫌いでしょう?」

「ま、まあそれはそうなんだが…」


 まあ、中国が目障りというのだけが理由ではないのだが…。


 ソ連復活を望む組織のスパイとだけあって、国家情勢には一通り精通しているようだ。


「貴女が日本に来た目的は僕の誘拐でしょう?そんな人は何人も帰国願いましたけど、貴女の場合ちょっと事情が違います」

「・・・・・・」

「日本国政府の意向としても、ソ連の復活はやぶさかではないと考えています」

「な、なに?!」


 これは本当の話。正直に言って、ロシアよりソ連でいられた方がよっぽど楽なのだ。


 なぜそんな事が言えるかって?それは、日本国政府が現在極秘裏に計画中の新世界秩序建設において、ユーラシアのハートランドを抑えているロシア連邦では力不足なのである。世界最大の国土を有する国家として、より強力な中央の政治権力と軍事力を持つ必要があると考えているのだ。


 つまり、今のロシア連邦では力不足だから、ソ連に転生して世界を主導する大国としての実力をつけてもらいたいのだ。


「それはつまり、日本政府は我々インターナショナルを支援するという事なのか…?」

「いえ、あくまで非公式にです。これは一級の機密情報ですからね。日本国がソ連復活を望んでいるなど米国に知られたら大変な事になってしまいます」

「それもそうだな」

「そういえば、既にここは監視されているんですよ。ほら、あそこの並木に隠れているのが公安の長谷川さんです」

「なに?!」


 そう言って僕は長谷川さんに向かって手を振った。長谷川さんもそれに気付いて手を振りかえしてくれた。


 長谷川さんは最近お世話になっている公安の新人さんだ。僕という重要人物が出来てしまって、その監視と護衛のために公安から派遣されてきたらしい。たまに東京のお菓子を持って来てくれる優しい人だ。


「私はこれから当局に捕縛されてしまうのか…」

「いえ、そんな事はしませんよ」

「へ…?」

「我々は協力関係を築きたいのです。君のお父様を含め、新政府の礎となる方々とね」

「私の父の事すら知っているとは…。日本の諜報部も侮れないな」


 エカテリーナさんの父親はソビエト・インターナショナルの盟主である。娘をスパイに育てるのはいかがなものかと思うが、まあ悪い人ではないようなのだ。


「ところで、協力関係を築きたいということは、我々に技術的協力をしてくれるという事だな」

「ちょっとその話題は待ってください。ところで、今美味しい話があるんですよ」

「む?なんだ?」

「2021年現在。日本は僕主導で新型発電施設の建設を進めています。この発電所は一機で日本の電力消費量の200%を供給できます」


 これは前の実験の話だな。もう技術的に確立しており、本格的な発電所建設に乗り出している。


「そのような凄まじいものを、お前は作ったのか」

「これは日本で建設が完了した後、幾つかの利権と引き換えに米国に技術供与する用意があります。僕の中ではこの技術をソ連にも提供するつもりなのですが、ここで質問です」

「なんだ?」

「"日本からの技術供与"と"日米からの技術供与"。どちらがいいですか?」

「・・・。それは我が国からしてみればどちらも恥辱に塗れた選択だと分かって言っているのか…?」

「世界秩序を一新させる発明品です。おいそれと渡せるものではありません」

「「・・・・・・」」


 通常、他国からの技術供与というのは先進国から後進国にされるものである。または属国の関係にある国が軍事技術を転用する場合などもそうであるのだが。


 相互の技術提供ならまだ良いだろう。しかし、ロシアは日本に渡せるものを持っておらず、それでいて日本から渡されるものは莫大な価値を持つ。日本という小国から施されるのだ。国威に関わる。


「一応条件を聞こう」

「我が国は樺太島全土と千島列島等北方領土を要求します。そして、米国からの要求はグリーンランドの購入です。デンマークに手を回したのは分かってるんですから」

「そんな要求が飲めるか!!あの土地は苦労して手に入れた不凍港なのだぞ!!」

「北方領土は戦争で得た正当な領土だ!条約違反で奪われたものは返してもらう!」


 僕らは怒声を上げた。政治に関わる人間はお互いの国の領土問題で揉めるものだな。


「それに、貴国から不凍港を奪うつもりはさらさらない」

「・・・。なんだと?」

「我が国の誇るスーパーコンピュータ群の計算によると、北極付近の氷は後五年で融解しだし、北極海航路は十年以内に確立する。その時、莫大なシーレーンを貴国の海軍力で防衛可能ですか?」

「そ、そんな事があるのか?!」


 北極海航路の情報は寝耳に水だろう。


 動乱の世界情勢において新たな要素が盛り込まれようとしている。それが北極海航路。インド太平洋航路を優越し欧州からロシア、日本に至るまでの海運産業への福音であり、関係国の経済的前提を崩壊させる凶報でもあるのだ。


 北極海航路の開通は、ロシアに対して福音でもあり凶報でもある。メリットは持て余した長い海岸線を有効活用できるようになった事だ。工場を建てたりハブ港を設置すれば経済効果が見込める。


 しかし、デメリットの方が大きいと言えば大きい。ロシアの国防は、北部の防衛を無視した前提で成り立っている。もし仮に、北部に航路が出来てしまったらそのシーレーンは自国で防衛せねばならず、駐屯兵も必要になってくる。世界一の国土を持つロシアは、北部を北極海に守られていたのだが、それが無くなってしまうとそれにまで軍を出さなければならないのだ。実質ロシアの国防は崩壊すると言っても過言ではないだろう。


 段々とエカテリーナさんの顔が青くなっていく。この危機的状況に気が付いたのだろう。あと十年で海軍力をシーレーンが防衛可能な戦力まで拡充させるのは非常に難しい。


「そこで、技術供与に海軍力を付与しましょう」

「それは本当か!」

「こちらをご覧ください。現在建造を計画している護衛艦です」


 吾妻首相に見せた護衛艦のノートを見せる。スペック的には現在の米国が持つイージス艦の性能を遥かに凌駕し、建造コストでも優っているものだ。


「こんな護衛艦を計画しているのか…!」

「これと全く同型というのは難しいですが、同程度の軍艦を今から十年以内に20隻揃えられる事を確約しましょう」

「それは…。この話は本国に持ち帰ってから決断させてもらう」

「いいでしょう。分かりました。ですが出来るだけ早く返事はくださいね。はいこれ、僕の電話番号です」


 流石にここまで対価を付けると、交渉の余地ありと納得してくれたようだ。


 ポケットのメモ帳からページを切り取り、自分のスマホの電話番号を書き込んで渡す。


「ああ。ありがとう。・・・、一つ質問していいか?」

「はい。なんですか?」

「どうして、そこまでソ連のために…。いや、私の勘なのだが、ここまでの好条件を用意してくれているのはそれだけではないと感じているのだ」

「そうですね。僕はソ連が復活して欲しいと思っています。それはソ連に対する友愛の気持ちです。そしてもう一つ理由があるとするなら、貴女のためです」

「わ、私のため…?!」


 エカテリーナさんはひどく驚いて顔を赤くした。熱でもあるのだろうか?


「だって、こんな歳で諜報員として祖国のために頑張っているんです。そんな健気な人を手伝わずにはいられないじゃないですか。良い条件を持って帰らせるのは、せめてものお手伝いというものですよ」

「そ、そうか…」

「エカテリーナさん!」

「な、なんだ?」

「僕たちはこれからは同じ志を持つ盟友です!」

「め、盟…友?」


 祖国のために、孤独に頑張ってきた過去を持っているそうだ。そんな過酷な過去を持つのなら、せめて彼女の友達でいてあげよう。


「同志であり、共に誓い合った、友達の事です」

「友達…。・・・友達か」

「ええ、そうですよ、同志エカテリーナ」

「いや、エカテリーナではない。カチューシャと呼んでくれ」


 カチューシャとは、エカテリーナの愛称の中でも、最も親密な関係を表す呼び名だ。その前にはカーチャという愛称もあるのだが、それをすっ飛ばしてカチューシャか…。


「私の盟友となった責任、取ってもらうぞ!同志しな!」

「お手柔らかにお願いしますよ。同志カチューシャ」

〜〜〜〜〜合格発表前の日曜日


カチカチッ


つB-52の横姿

海園しな「あ〜」^〜

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