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魔法が科学に勝てるとでも?  作者: 蓬団子
第三章 国際学園準備編
24/41

第十七話 ユイシア・ユグドラシル 後編

今回はちょっとだけ長めです。

好きなミサイルは核弾頭搭載型P-1000対艦ミサイルです。核弾頭っていうロマンと、性能がいいですね。

「それでは国際連邦基地の説明に戻りたいと思います。この基地の真価は無人という点にあります」

「無人…?どういう事なんだ」

「人工知能と呼ばれる機械が自ら物事を判断して、それによって基地の全てを管理されているのです。この艦隊も同様に人工知能が全てを操作しているのです。こういうのは自立型致死兵器システムと呼ばれていますね」


 自立型致死兵器システム。国際連合の頃に使用に関して規制の議論がなされていた。

 僕が考えていた無人艦隊の実現が不可能になる可能性があるため、早々に規制をしないよう手を回したのだ。


 現代では通常装備となってしまった自立型致死兵器システムだが、21世紀初頭は、禁止や規制の動きが強かった。ひどい時とかは、学者が千人規模で集まって抗議してきた。彼ら曰く「非人道的」なんだそうだ。


「この艦隊は本当に無人で動いているのか?誰かが遠隔で操作しているのではないのか?」

「いえ。そんな事は一切ございません。まあ、最大の権限を持つ僕が号令すれば、それに従いますがね」

「我々からしてみると、想像もつかない技術が使われているのでしょうね。この艦隊もそうだが、地球の国々の技術を保有しているニダヴェリールとは、是非とも安全保障条約を結んでおきたいものだな」

「安全保障の件は後日、国交締結の機会にでもよろしくお願いします」


 安全保障条約か…。結んでくれたら、在ロストフタ基地を置かせてもらおう。

 よーし。国際連邦の覇権をこの世界にも轟かせちゃうぞ。


 しかし、国際連邦管轄下にあるニダヴェリール基地だが、現在僕はニダヴェリール基地を国のような振る舞いで扱っているため、少々ややこしくなっているのだ。

 国際連邦には無断で国交を結ぶわけだが、異世界の事なんて誰も追求してはこないだろう。


 不意にポケットに入れていた液晶端末機から、通知が来た。

 あまり触れていなかったが、これは軍用通信端末を僕用に改造したもので、前世代のスーパーコンピュータと遜色ない性能を発揮してくれる。

 衛星通信に対応しているため、基地建設に合わせてニダヴェリール工業地帯で新調したものだ。


 すぐさま取って確認する。


 通知の内容は「恐竜に酷似した飛行生物の接近」だった。画像が幾つか添付されていたので見てみると、ドラゴンと呼ぶには些か小さなものだった。さしずめワイバーンだろう。


 普段なら音声アナウンスで知らせてくれるのだが、空気を読んで通知にしてくれたのだろう。


「失礼。学長、あっちの方向に飛行している生物がなんだかわかりますか?」

「え?なに急に?あっちの方向?あー。いるわね」


 学長は遠くを見る魔法で飛行生物を確認したそうだ。魔法は人間自身が発動媒体となっている点が非常に優れているな。悔しいが科学では勝てないところもある・・・かもしれない。しかし、絶対に科学は謎動力の魔法なんかには負けないからな。


「あれはワイバーンよ」


 やはり仮想物語ではお馴染みのワイバーンだった。どの世界にも雑魚キャラとして君臨するんだよなあ。


「あれは撃ち落としてもいいですか?」

「そうね…。人間を襲ってくるし、駆除するのが妥当じゃないかしら」

「なに?!こんな洋上にワイバーンが出たのか?!すぐさま避難しないと…!」


 お偉いさんが避難しようとする。待ってくれ。デモンストレーションをする良い機会なんだ!


 と言っても何を見せようか…?艦砲射撃、ミサイル、レーザー兵器、ビーム兵器、エネルギー指向兵器…、いっぱいあって迷うな。

 いや待てよ。標的艦には艦砲射撃をするし、レーザーやビームは絵面が弱い。ならミサイルが正解か!


「落ち着いてください。今から対空迎撃戦闘を行います。ひとまず目標が視認できるところまで移動しましょう。面舵転舵30度!」

「そうか、この船も軍艦だったな。ワイバーンに対抗できる兵装を搭載しているのか。大きすぎて船だということを忘れていたよ…」


 しばらくすると見えてきた。あれがワイバーンか!

 高度80mのところを飛んでいて、飛行性能は時速100km弱、機動性はそこまで高くないな。羽ばたいていない様子を見る限り、鳥と同じように基本は滑空している。


「あれほど高所を狙うのなら、砲の仰角が足りないのではないか?」

「いえ、全ての艦砲は両用砲と言って、対空射撃もできるように作られているんです。ですが、今回使用する兵装は砲ではありません。ミサイルを使います」

「ミサイル・・・ですか?」

「ええ。地球では砲や銃に並ぶ主兵装ですね。砲よりも射程、精度、汎用性、機能性に富むんですが、高い技術を必要として、その上構造も複雑なため、砲弾よりも高価な兵器なんです」


 ミサイルについては語る事が多い。

 ミサイルは基本的に、推進装置と誘導装置を持つ兵器を言う。推進装置だけだとロケットだ。


 対地、対艦、対空、対潜の他に、巡航ミサイルなどがある。巡航ミサイルは分類が特殊であり、翼を持ち水平に飛行するなら、対艦ミサイルでも対地ミサイルでも巡航ミサイルになったりする。


 弾道ミサイルも特殊であり、大気圏の内外を弾道軌道を描いて攻撃するものを言う。これにも対地弾道ミサイルや対艦弾道ミサイルがある。


 細部まで語ると大変な事になるので、今は考えるのはここらでよしておこう。


 ちなみに今回ワイバーンに向けて攻撃するのは対空ミサイルだ。


「そ、そんなに悠長にしていていいんですか?!ワイバーンが襲ってきますよ!」

「そうですね。では早速撃ち落としましょう。艦の後方を見ておいてください。決して見逃さないように…。SM-12 SR発射始め!」


 そう言うと、後部の飛行甲板と同化していたEVLSの閉鎖弁が開き、警報が鳴った。EVLSとは、ミサイルの発射機と保管庫を同一化させた、ミサイル垂直発射システムである。


 警報が鳴り終わると、小さくて細長いミサイルが速い速度で空中に射出され、その後速度を落とさないようにエンジン部分に点火して、滑らかな動きでミサイルは上空に弧の煙を撒いていった。


 EVLSは、装置内部でエンジンを燃焼させるホットローンチ式ではなく、電磁力で空中まで射出するコールドローンチ式をとっているため、このような発射シーンが見られる。


 コールドローンチの利点は、装置内部の耐熱性を気にしなくて良いので、精密機械がある程度自由に設置できる点にある。それに排煙機構も作らなくて良いので小型化できる。


 発射されたミサイルはSM-12 SRである。個艦防空ミサイルのような大きさだが、能力は艦隊防空ミサイルとして十分な性能を持つ対空ミサイルである。


 SM-12にはARとSRの2種類があり、4,300kmの長射程を誇るARと、910kmと短射程だが圧倒的な搭載数を誇るSRだ。

 SRは艦隊の防空能力を数倍に引きあげていると言っても過言ではない。なにせEVLS1セルに64発の搭載が可能だからな。16セル割り当てるだけで1,024発の長射程ミサイルが装備できるのだ。


 短SAMの特性上SM-12 SRの機動力は高い。最高速度に関してはARの方がマッハ30と優秀で、SRはマッハ10までしかない。しかし、マッハ10でも十分早い。

 しかも100Gまでの旋回負荷に耐えられるように設計してあるため、極超音速飛行体も簡単に迎撃できるようになっている。


 「コ〜」というジェットエンジンの噴出音で、即座に最高飛翔速度のマッハ10まで加速する。わけでもない。

 射程900kmのミサイルが高々直上高度80mの目標に対して最高のポテンシャルが発揮できるわけではない。しかし、加速性能は低くないためマッハ4くらいまでは速度は出ている事だろう。


「は…、何あれ?!あれがミサイルなの?!」

「あれが次世代の兵器か…」


 学長が相当驚いている。この世界の人を驚かすのは楽しいなあ。


 あ、もう直撃する。速すぎるから何が起きたか解説しなきゃ。


 直撃する瞬間、大きな爆発を起こしワイバーンが黒焦げになって墜落する。あー。呆気ない。


「キャッ!」「うわ…っ!」

「ワイバーンに何が起きたか説明しましょう。まず、収束型弾頭という棒が高速で射出されてワイバーンの体を串刺しか貫通します。そして、HE破片効果による破片散布でワイバーンの身体を満遍なく傷付けます。その後、燃料気化爆弾によりマッハ6を超える爆風によって、広範囲に五感を破壊して皮膚内臓の順に損害を与えます。そして高性能爆薬によって撃ち漏らしを撃滅します」

「え、えげつないわね…。私もあれを防御するのが精一杯だと思うわ…」

「人間に撃ったら、外部の肉が完全に破壊され、内臓も回復不可能な損害を受けるんですが…、ワイバーンは丈夫な造りをしているんですね」


 見ると、ワイバーンは腹部が完全に消失しており、両翼は捥げ取れていた。グロテスクだなぁ。死骸は付近の海に落ちた。


 航空機などの硬くない目標に対して有効な収束型弾頭とHE破片効果の攻撃。そして、対艦弾道ミサイルなどの実体弾などに対して有効な高性能爆薬、柔らかい目標に対しての燃料気化爆弾。

 これを防御できる学長もずいぶんと人間離れしていると思う。この弾頭でも魔王を一回殺すくらいはできそうなんだがな。


「これでもミサイルとしては弱い方なんですけどね。ワイバーンって結構弱いんですね。地球のお話では強いイメージがありましたけど」

「いや、ワイバーンは十分強い魔物の部類に入るわよ。それより、他のミサイルってどんなのがあるの?」

「射程が4,000kmあるさっきと同じようなミサイルだったり、射程6,000kmを超えるコスパの良いミサイルだったり、マッハ40を超えるミサイルだったり、都市を一撃で消失させられる射程10,000kmを超えるミサイルだったりですね」

「ミサイルとはそういうものなのか…!」


 ミサイルが万能みたいな風に聞こえるが、実はミサイルもそれほど万能ではない。

 簡単な欠点として、単純に大きいのだ。推進装置を取り付けている関係、攻撃力に対するミサイルの大きさが、砲弾と比べると圧倒的に効率が悪いのだ。


 そのため、大量に搭載すればするほど、艦や車両の攻撃力というものは落ちてしまう。ちょうどいい割合で、ミサイルと砲を両立するのがいいのだ。


「ところで、ずっと気になっていたのですが、無人化した場合、歩兵はどうなるのですか?」


 いい質問が飛んできた。ちょうど陸上戦力について教えようと思っていたのだ。


「現代の地球において、歩兵は珍しい兵科なのです。現代の歩兵は戦闘を主体とするのではなく、無人化された兵器の後始末をする仕事を担っているのです」

「兵器の後始末ですか…?」

「ご覧ください。これが現代の無人兵器です」


 召喚するのは陸上自衛隊の車両。二五式戦車。一〇式戦車の後継として、日本全土での運用を目的に開発された第六世代主力戦車だ。

 全長9.6m、全幅2.7m、全高2.4m。他国の主力戦車と比べても小型軽量で、主兵装には115mm長ライフル砲を装備している。


「あ、私の護衛の鉄の塊だわ」


 ソ連の超重戦車にも引けを取らない防御力を実現するのは、第三世代多層鍛造鋼複合装甲。主砲の射程は500km超。

 一番の特徴は防御力ではなく、機動性にある。最高速度は時速115kmに加え、軽量である事から実現できる高機動走行間射撃。日本という独特な地形を踏破し、撃退する任務において異常な能力を発揮してくれている。


「これは戦車という車両です。高い防御力と機動性に加え、大口径砲からは射程500kmを超える砲弾を投射し、陸上戦において主戦闘を担う兵器です」

「これまた巨大ですね…、これが一つあるだけで戦況を大きく変えてしまうでしょうな…」

「この兵器の恐ろしい点は指揮統制と物量にあるのです。無人であるという点から、進軍は昼夜問わず可能であり、士気という概念もありません。そして、この戦車は基本的に千両から一万両単位で運用されるのです」

「な、なに?!」


 一両で通常歩兵数千に匹敵する戦力を持つ第六世代主力戦車が、一つの戦域にも数千両もの数が展開されるのだ。


 正直現代の陸戦を見て、「あ、やり過ぎたな」って思ってる。中華国侵攻作戦において、世界中からかき集めた八千万両の無人車両が、中国領土を進撃する様子は流石にゾッとした。


 中華国の造船能力が毎月100隻の主力艦を生み出すという馬鹿げた生産力を発揮したために、陸上戦力の方も同じように警戒して、各地に最低限の防衛戦力を残して、残りをありったけ集めて一か八かの一大攻勢に出たのだ。

 その際の航空戦力も計り知れない量があった。


 とにかく、そんなことが可能なのだ。この無人車両は。


「以前八千万両で大国を轢き潰したことがありましたからね……」

「は、八千万?!そんなにしないと倒せない国なんてあったのね…。あ、それが例の中華国か」

「そこまでの数を揃える工業力というのも興味があるな。一体どれだけの人口を動員させたのか…。いや、まさか生産も無人で…!」

「その通りです。工場も全て無人で稼働しています。我がニダヴェリール基地にも、地球の工業地帯と比べても遜色ない工業地帯を備えているんです」


 なかなか鋭いなバイス氏。実は2022年という昔から無人工場は稼働しており、日本国内でも兵器産業は代表的な工業製品の一つとなっているのだ。


 規模にもよるが、工業地帯と呼ばれる場所は、機械産業の、輸送機械、一般機械、電気機械、精密機械、兵器の5つが仲良く併設されており、協力して生産されている。ニダヴェリール工業地帯も同じ感じだ。


「そういえば、護衛には他にも鉄の塊があったけど、あれも戦車なの?」

「いえ、他にも対空車両がありましたね。あれは六式高機動対空戦闘車両というものです。対空戦闘に特化した車両ですね。召喚しましょう」


 そう言って六式高機動対空戦闘車両を召喚した。六式は対空ミサイルや対空砲、レーザー砲をバランス良く搭載した車両で、装輪車両なのだ。

 他国の同じような対空砲は無限軌道式なのだが、他国を侵略する事も無く、日本の自動車道の舗装率の高さから選択された結果だった。


「他にも自走砲やミサイル発射機、ロケット発射機、指揮車両などもありますよ」

「全部見せてくれないか?」

「分かりました。ではまず自走砲から。召喚、三五式自走155mm汎用砲」


 三五式自走155mm汎用砲は、二二式自走砲155mm榴弾砲の後継で、榴弾砲、迫撃砲、カノン砲など様々な弾種を発射可能な自動汎用砲を装備した無限軌道式の自走砲だ。


 射程は1,000kmで、発射方式は真空電磁加速砲システム。いわゆるレールガンだ。ちなみに戦車も同じ発射方式だ。


「自走砲とは、高火力の砲を車両に搭載し、砲の機動力、安定性、防御力を高めたものです。欠点として数が揃えにくいというのがありますが、それを十分カバー可能な射撃能力を持っていますよ」

「なるほど。今はまだ軍馬に引かせているが、いずれはそのような形になるのだな」

「地球での戦術はどうなっているのですか?」

「基本的に味方陣地後方から、敵戦線や敵陣地に対して砲撃を行います。ほとんど全ての目標に対して有効打を与えることができます」


 ほとんど全ての目標に対して有効なのである。歩兵に対しては榴弾で半径200m内の敵兵を殺傷し、戦車に対しては徹甲弾。対空戦闘能力が高い目標には、迫撃砲でほぼ垂直に落下していく砲弾で撃破する。


「それでは、発射機というのはどういうものなんでしょうか?」

「発射機は、先ほど見せたミサイルやそれに似たロケットを発射するための車両です」


 召喚するのは、ソ連のBM-25 グラート122mm60連装ロケット砲と、魔王戦でお世話になった米国のM230高機動ミサイル発射システム HIMAMSだ。


 陸自の車両ばっかりだと偏りがあるから、他国の兵器も紹介しようと思ったので、このチョイスになった。


 グラートはトラックのようなもので、発射機が架装されているのだ。HIMAMSも似たようなものだ。


 ロケット発射機は第二次世界大戦の頃からある、長い歴史を持つ兵器なのだが、ミサイル発射機はミサイルの登場後もなかなか作られることはなかった。

 その後は対空ミサイル発射機や対艦ミサイル発射機などが誕生したのだが、それでも対地ミサイル発射機や汎用的なミサイル発射機の登場は最近だったりする。


 対地攻撃の火力投射量は圧倒的にロケット発射機の方が高い。しかも、最近のロケットにはGPSの緻密誘導装置が付いているため命中精度も高い。

 しかし、弾道性能はミサイルに軍配が上がる。弾道の自由度や飛翔速度などは、ロケットには真似できない能力がある。目標到達率は段違いだ。


「なるほど。発射機はあくまでミサイルを輸送するためのものに過ぎないんですね」

「鋭いですね。その通りです。自走砲などとの違いはそういう点にあるんです。それ以外の本質は実はあまり変わらないんですよね」

「将来の兵器が見学できただけで、十分な収穫ですね」


 そういえば話が脱線しまくっていたな。ニダヴェリール基地の話に戻さなければ。


「話を戻しますが、ニダヴェリール基地には、この世界の人々全員に食糧を提供できる能力を持つ食糧生産プラント群があるんです。もし食糧危機が起こっても、感知して輸送船が世界中に食糧を届ける仕組みができてるんです」

「なんと素晴らしいんだ!まるで過去にあった世界樹のようではないか!」

「世界樹ですか?それにも同じような能力がーー」

「その話は後で教えてあげるわ。それより、特別火力演習をするんじゃないの?」


 学長が世界樹の話を無理矢理遮って、話題転換を持ちかけてきた。学長の顔を見ると穏やかじゃない顔をしていたので、大人しく従おうと思う。


「そうですね。標的艦も所定の位置についたようなので、異界聯合艦隊特別火力演習を始めたいと思います」


 標的艦は、30mくらいの大きさの海賊船5隻だった。僕の要望通りそれぞれの船の間隔は10km近く離してもらっている。標的艦は艦隊から10km、那須から15km離れている。


 最初は全艦の一斉射撃で一隻撃沈したいと思う。


「それでは、はじめは左端の標的艦を、艦隊の一斉射撃で撃沈させたいと思います」


 そう言うと、視察団の半分くらいの人が望遠鏡を持って、目標となる左端の船を観察し始めた。きっと、射撃を見る人と着弾を見る人に分かれているのだろう。


 向けられる全ての主砲と副砲が一斉に旋回し、固定されると、全体に警報が鳴り響いた。ほぼ零距離射撃なので、砲の仰角はほぼ0度になっている。


 今回の射撃はTOTと呼ばれる射撃方法で行う。Time on Target、日本語で同時弾着射撃だ。その名の通り、射撃時間や弾道を調整して、同じ地点に同時に着弾させる射撃方法だ。


 360隻からなる艦隊での一斉砲撃だと砲弾同士の接触もあり得るのだが、GSTSの計算能力によって緻密に弾道が割り当てられるのだ。


 発射する弾種は榴弾。数千発の榴弾が一斉に炸裂するわけだから、すごい密度の爆発になるな。きっと船の塵も残らないだろう。


「射撃よーい!撃てえ!!」


 僕の号令と同時に、はじめの砲声が聞こえたかと思うと、段階的に絶えず砲声が鳴り響いた。もちろん、今乗艦している那須も射撃に参加するので、15.5cm砲120門の射撃音が大きく聞こえた。


 そしてすぐに、強烈な爆発閃光が確認できた。着弾したのだろう。


「す、すごい砲撃音ね!」

「これでも抑えた方なんですよ」

「嘘でしょ?!」


 抑えたというのは本当だ。最大能力で、初速はマッハ50近くまであげることができるのだが、それでは鼓膜を破壊しかねないので、全砲マッハ15程度に抑えているのだ。


 学長は射撃音に驚いており、標的艦の結果はそこまで気にしていないようだ。


「すごい砲撃ですね!」

「標的艦が跡形もなく…。この艦隊の緻密な打撃力は驚異的だ」


 視察団には案外好評だった。よかったよかった。


 あ、ちなみに強請られてもこの世界のどの勢力にも、地球の技術を提供するつもりはない。コントロールできない兵器は脅威でしかないからね。


 先駆国の兵器群も、きちんと僕が掌握できているから使わせているという面が強い。


 遅れて榴弾の爆発の衝撃波が届いた。TOT射撃なだけあって、爆発音がお腹に響く。


「次は巡航ミサイルによる攻撃をお見せします。また左端の標的艦を狙いますよ。発射艦は本艦那須です。発射するミサイルはファイナルトマホーク巡航ミサイル。射程6,000kmの対地対艦用ミサイルですね」


 すかさず次の標的艦を攻撃する。こういうのは相手を飽きさせないテンポが重要なんだ。


「トマホークミサイル発射よーい。撃てえ!」


 先ほどのSM-12 SRのように、コールドローンチ方式で発射されたトマホークミサイルは、直径30cm全長10mと、異様に細長い形をしている。完全にミサイルが空中に放り出されたところで、エンジンが点火し上昇し始めた。


 上昇をしてすぐに降下を始め、海面スレスレを飛翔した。白煙が海に一本線を描いて飛翔を続けていると思ったらーー。


 大きな爆発炎で標的艦の船体を吹き飛ばした。


「おお!あれが対艦攻撃用のミサイルの威力か!」

「想像以上に強力ですね!」

「海面を飛行するのには理由があるのだろうか…?」

「海面スレスレを飛行するのは、探知されずに敵艦に近づくためなんですよ」

「なるほどな。たしかに目視されにくくなるな」


 本当は目視ではなくレーダーの目を掻い潜るためなのだが…、指摘するだけ野暮というものだろう。


 次は何をしようか…。正直5隻も提供してもらえるとは思ってもなくて、ネタを考えていなかったのだ。


 そうだ!雷撃にしよう!いや待て、雷撃は派手だから最後にとっておこう。そうだな…。レーザー砲で燃え上がらせるか。

 そう考えると、最初に一斉射撃をやってしまったことが悔やまれる…。


「通常、兵器には砲かミサイルやロケットのどちらかしかないんですが、例外もあります。それがレーザー兵器です。光を収束させることによって、攻撃性を持たせることができるんです」

「ほう。それは想像し難いですな」

「実際にレーザー攻撃をしてみますので、左端の艦をご覧ください。レーザー照射!」


 艦隊の外縁に位置する艦からレーザーが照射される。木製の標的艦はすぐに発火し、大きく燃え上がった。


 レーザー兵器は、目標でレーザー光を収束させることで、目標を超高温にして撃破する兵器だ。

 レーザー兵器の利点は、弾速が光速であるという点だ。照射から着弾までがほぼ同時なのだ。


 実はレーザー兵器は利点よりも欠点の方が大きい。それは天候によって運用できるかどうかに関わる点だ。大雨だったりすると、雨水の屈折でレーザーの軌道が大幅にずれてしまうのだ。


「兆候がないのが恐ろしいですね」

「木造船に対しては大きな効果を発揮するのだな」

「お次は近接防御火器による防空網をご覧に入れましょう。近接防御火器とは、ミサイルや小型船舶から大型艦を護衛するための兵器です。最後の砦ですので、濃密な弾幕による圧倒的な防御力を誇っています」


「それでは左の標的艦にいきますよ。対艦攻撃始め!」


 那須の周囲に位置する艦艇の近接防御火器が、一斉に火を噴いた。大体5秒かけて投射された感じだな。


 対空ミサイルを装備した近接防御火器もあるのだが、今回は見た目重視のためにお休みだ。


 砲弾のみによる攻撃だが、数発に1発仕込んである曳光弾が砲弾の軌道を美しく見せている。見惚れてしまうものだ。合計数千万発の砲弾が一斉に発射されるんだからな。主にフォルトの投射量が凄まじい。


 軍用通信端末の映像測量機能を利用して、ズームして標的艦を見てみた。


 数千万発の砲弾に当てられた標的艦は、船体が蜂の巣のようになり、ぼろぼろと崩壊していった。


 よし。フィナーレは雷撃だ。62cmの長魚雷をとくと味わえ。


「最後は潜水艦からの雷撃です。潜水艦の主兵装はミサイルと魚雷です。砲を載せてることもありますが、基本的に格納できる兵器が主体ですね」


 潜水艦から発射される魚雷は長魚雷と呼ばれており、炸薬も多く強力な兵器だ。炸薬量は1tにもなる。


 そして、魚雷の恐ろしい点は水中で爆発するということにある。水中での爆発の場合、バブルパルスという現象が起こるのだ。水中で爆発が起きた場合、音速(水中は空中の約5倍)の水の衝撃波が発生するのだ。


 その後バブルジェットにより、下から水流が突き上げてくる。これも強力な破壊力を持つのだ。この二段階攻撃によって、目標に対して大きなダメージを与えるのだ。


「そろそろ着弾すると思います」


 そう言うと、視察団の人たちが一斉に望遠鏡を覗いた。なんだか面白い光景だな。学長も最後の標的艦の方を向いている。多分魔法で見ているのだろう。


 着弾した瞬間バブルパルスにより、木製の標的艦は竜骨ごとバラバラに崩壊させられた後、バブルジェットにより吹き上げられ、100mを超える水柱が上がるとともに、標的艦の破片が完全に吹き飛んでしまった。


「我々も魚雷を運用しているが、あそこまでの破壊力に至るまでにどれほどの技術が必要か計り知れないな…」


 ロストフタで実際に運用されている兵器での実演は、視察団に大きな衝撃を与えた。まあ、頑張ってここまで来てね。


 ともあれ、これで特別火力演出は終了した。


 視察団の皆さんは梯子を降りて、装甲艦ハーランドに乗り帰っていった。


 これで学長と2人っきりだ。


「さて、聯合艦隊を見るという目的も達成したし、私たちも帰りましょうか」

「そうですね」

「あ、そうそう。帰りにちょっと寄りたい場所があるから、航空機を出してくれない?」

「分かりました。回転翼機を出しましょう」


 コロンブス級電磁力揚陸艦から発艦したOH-46 偵察ヘリが、那須の飛行甲板に降り立った。


 偵察ヘリなだけあって静寂性が高く、街中でも市民にバレることなく運用できるのだ。


「さあ、乗ってください」

「本当に色々な兵器があるのね。ビックリだわ」


 次に僕が乗り込むと、扉が自動で閉まり、上昇を始めた。


 ロストフタ上空に到達すると、航空写真を撮影して、操縦席の映像画面に投影された。


「どこに行くか教えてくれますか?」

「えーと・・・、ここの公園ね。お願いできるかしら」

「了解しました」


 場所は、山の斜面に位置する広い公園だった。なお、日が沈みかけているため、人はいなかった。



〜〜〜〜〜公園



 ヘリが到着して扉が開くと、僕から先に降りその後に学長が出た。そして、学長は歩いて公園のベンチに腰掛けた。


「貴方も横に座って」

「失礼します」


 このベンチから見る景色は、美しかった。国際学園に王城、ビッグベンのような巨大な時計塔、古風の趣ある建築物が並ぶロストフタを一望でき、今はもう見ることのできない古き良きヨーロッパを見ているような気分になった。

 夕日のおかげで都市全体が橙色に染まり、さらに美しさが増していた。


「・・・いい景色ですね」

「そうでしょう?私のお気に入りの場所なの。ねえ、少し昔話をしてもいいかしら?」


 学長の顔を覗くと、昔を思い出しているような顔で、寂しそうにしていた。


「僕でよろしければ、聞きますよ」

「ありがとう…。実はね、この公園は私が無理言って作ったものなのよ」

「そうなんですか?」

「ええ。ここがまだ木々で生い茂っていた頃にね、勇者がこの景色を見せてくれたの。勇者はロストフタに召喚された召喚人でね、ふらふら旅をしていた私の腕を見込んで、魔王討伐のパーティに誘ってくれたの」


 そう言う学長の顔は、昔の頃を思い出して恥ずかしそうにしていた。


 どうやら、南大陸から本大陸に上陸して暴れ回った、アグレッシブな魔王がいたらしく、それを討伐するために召喚人を召喚したらしい。


「私がパーティに入った時は、他に2人いて、みんなと仲良くやっていたわ。でもね、ちょっとした認識の違いがあったの。それは、故郷愛とかそんな感じね。私は故郷を捨てて旅をしてたから、魔王に領土が侵攻されても何も気にしなかったんだけど、他の子たちは悔しそうにしててね、ちょっとだけパーティの中で亀裂ができちゃったの」


「その時、勇者がここに連れてきてくれて、ロストフタの美しさを語ってくれたのよ。街が綺麗で人はみんな優しいんだ、ってね。それでちょっとづつパーティのみんなと、仲を修復することになったのよ。勇者がね、ロストフタを私の第二の故郷にしてくれたの…」


「それで、魔王を討伐した後、元の世界に帰るのかと思ったら、学園を作るって言い出して、勇者の伝で世界中から優秀な人材を集めて教師にしちゃったの。で、勇者がこう言ったの。

 俺はもう地球に帰る。だから学園の事は一番信頼しているお前に頼みたい。

 って」


「私はね、分かってたの。勇者が元の世界に帰りたがってる事を。それに寿命が合わないの。だから勇者との恋には落ちないって決めてたの。でもね、帰っちゃった時、すごい喪失感だったわ…」


 そう言った学長は目から涙を流していた。


「今はもう彼の事はいいのだけれど、ここに来るとどうしても懐かしくなっちゃって、儚くなっちゃって…」


 行き場の無い学長の手が、震えていた。


 僕は、手を握ろうか迷った。しかし、泣いている女性を前に何もしないのはダメだと思い、優しく学長の震える手を握った。


 ああ、明日馘首されるかもしれない…!


「・・・ありがとう」


 僕が手を握ったことに対して、学長はただ、それだけ返した。


「なんで貴方をここに誘ったのか、自分でも分からないわ。こんな無様な格好を晒すって分かってたのに…。でも貴方にならいいと不思議と思ってるわ。勇者と似てるところなんて全然無いのに…」


 ギュ、っと学長は握った手を握り返してきた。


「もっと古い話をするけどね。さっき私、故郷を捨てたって言ったわよね。ハイエルフって種族はね、今は私1人しかいないの。滅ぼされたのよ、人間と魔王に」


「ハイエルフは、誇り高き世界樹ユグドラシルの守護者。世界に遍く魔力を提供し、困った者には幸福を与える世界樹の守護者。最初の故郷では、そう言って育てられたわ。でもね、まだ小さい頃に、世界樹の力を求めたある王国と魔王が、競うように世界樹を攻撃してきたの」


「同族は必死で戦ったわ。でも敗れたの。ハイエルフの中で一番若かった私は、同族の決死の行動で助けられたの。私には死んでいったハイエルフ全員の重みが宿ってるの。あと、世界樹も。世界樹は自壊したの」

「さぞ、大変だったでしょう……」


「別に人間は恨んでないわ、だってここは第二の故郷だもの。でもね、私は故郷を守るために人間も何人も殺したわ」


「そもそも私は自分の事をエルフだと偽って生きているから、気づかれないのだけれど、ハイエルフだと知られれば、人間と争った種族の唯一の生き残りだと思われるわ。それがどうしても…」

「・・・僕の話をしましょう」

「・・・え?」


 学長の辛い過去は分かった。人間を殺したことに強い罪悪感を持っているのだろう。僕よりよっぽど立派な人だ。


「僕は自らの手で40万人近くの同族を殺しました」

「えっ…」

「間接的には2億3千万人の人間を殺しました。でも、それだけの人間を殺した罪悪感はちょっとしか感じていません。貴女は罪悪感を感じ過ぎているんですよ」

「・・・」


 学長は喋らない。


「僕のせいで、第三次世界大戦が起こりました。難民の数は10億人を超えます。僕は10億人の人々の生活を破壊しました。でも、悪いのは攻めてきた方です。原因があっても無くても、攻めてきた方が悪なんです」

「それは暴論よ…」

「ですが、戦争中、僕も罪悪感を強く感じたことが幾つかありました。例えば、戦争中に保護した少年兵の身体に爆弾が仕込まれていて、収容所にいた人々も丸ごと吹っ飛びました。僕のせいで、僕より若い未来ある少年が兵器にされたんです」

「そんな…っ」


「地球は、この世界よりよっぽど残酷です。学長の人生も残酷ですが、僕の人生も残酷です。僕も最初こそ、罪悪感に苛まれましたが、今は言い訳をして逃れ続けています。罪滅ぼしのために、たくさんの善行を積んでます。それで許されると、僕は信じています。もし、学長がそれでも僕のした事は許される事ではなく、腹を切って詫びるべきだと言うのなら、一考しますが」

「そ、そんな事は言わないわよ!貴方のおかげで世界が平和になったのも事実だし、生活もより豊かになったでしょう?十分許されると思うわ」

「なら学長。貴女も十分許されるべきです。人に優しく、自分に厳しくでもいいですが、厳しすぎると自分が壊れてしまいますよ」

「あっ…」


 学長はハッとして、しばらく黙り込んだ。


「そうね…。ちょっと自分に厳し過ぎたのかもしれないわ。ありがとう…」

「いえいえ、この礼は職場で返させてもらいますよ」

「抜け目ないわね」


 フフッ、っと笑う学長は、何もかもが吹っ切れた様子で、とても・・・美しかった。


「ずっと相談できずに溜め込んでいたから、拗らせちゃったみたいだわ。貴方に相談してよかった」

「でも、なぜ僕に…?」

「それは、貴方が不老の存在だからよ!」


 あれ?学長には不老薬の事は話していなかったよな。


「・・・気づいてたんですか」

「私の見る目はすごいわよ。貴方が外見詐称の年寄りだっていうのは見抜いてたんだから」

「これは一本取られましたね」


「本当にスッキリしたわ。今日はありがとう。それじゃあ、今日はここで解散!明日からの仕事、しっかり頼むわよ」

「学長こそ、後ろ盾お願いしますね」


 学長は、握っていた手を解き立ち上がると、魔法で空を飛び学園の方に飛び去ってしまった。


 さてと、僕も帰るか。


「おい、君!」

「は、はい?!」


 だ、誰だ!


「この時間帯は立ち入り禁止だぞ!署まで来てもらおうか!」


 は、嵌められたー!!クッソ!学長め!一瞬キュンってなったが、もう許さないぞ!


 明日から仕事があるっていうのに補導なんてされてたまるか!


 OH-46 偵察ヘリがホバリングを始め、こっちに機首を向けると、僕の背後からライトを照射し、警邏の目を潰した。


「グワッ!」


 それと同時にヘリに飛び乗り、急いで離脱した。

Q:SM-12 AR 諸元 直径0.2m 全長10.7m

 ↑これ、細長過ぎませんか?縦横比53.5もありますよ。

A:海園しな「クッ…。ええ、認めましょう!僕は細長いものフェチです!!細長い兵器を見るとあ〜 ^〜

ってなるんですよ!!」


〜〜〜〜〜

蓬団子「どうしよう、どうしよう!学長はパッと出キャラのはずなのにヒロインみたくなってるよ?!ええいままよ!サブヒロインにしてやる!!」

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