表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法が科学に勝てるとでも?  作者: 蓬団子
第三章 国際学園準備編
23/41

第十六話 ユイシア・ユグドラシル 前編

すいません。長くなったので、前編後編に分けます。

〜〜〜〜〜国際学園 正門 正午



「お待たせして申し訳ありません。学長」

「今来たところよ。ウフフ」


 昨日は、国際学園の教師としての採用が決まり、完全に上司と部下という関係ができた。僕が部下で彼女が上司。


 地球では僕が誰よりも偉かったので違和感があるが、こういうのも面白そうだと思っている。日本人は誰かのために何かをするのが好きだからね。


 今回は仕事の一環ということで、極力人員は減らしている。結果、僕1人になってしまった。姉さんと薫はキフエル一家と共にロストフタ観光だそうだ。少々気不味いのだが…。


 そんな事は嘆いても仕方がないな。今日は一番上の上司を、我が艦隊に招待するのだ。家にあげるのと同じ感じがする。柄にもなく緊張してきたぞ…。


「まずは港に向かってもらい、輸送艇で信濃型護衛艦に移動してもらいます。そこから艦隊旗艦の大鳳型護衛艦那須に乗艦し、ロストフタ王立海軍の協力のもと特別火力演習を行うので、それをご覧になって頂きます」

「う〜ん。60点ね」


 60点?何か不味い事でもあったか…?


「何か機嫌を損ねる事でもありましたか?」

「違うわよ。どうせこれからすぐに港に向かうんでしょ?」

「はい。そうですが…」

「ダメね。いい?男と女が一緒に行動したら、それはもうデートなのよ」


 で、デート?!この人いったい何を言ってるんだ?!


「私、まだお昼ご飯ないの。普通ならここで、洒落たカフェの一つや二つ案内して腹ごしらえをするものなのよ。まだ初心ね」

「・・・分かりました。バルコニーのあるカフェを道中見かけたんです?良さげな雰囲気なのでどうですか?もちろんお代は僕が」

「よろしい!ではエスコートしてちょうだい」



〜〜〜〜〜カフェ



 カフェに向かって歩いている途中、手を繋がないかと誘われたが、丁寧にお断りした。


 お金は、昨日の夜宿に泊まれなかった教訓を活かして、きちんと金融機関で換金をしてもらった。


「こちらがそうですね」

「あら?結構いいじゃない」


 外の席をとり、学長の後に腰をかける。


「ここに来てまだ2日の子にオススメを聞くのは酷ってものよね。紅茶とチーズケーキにするわ」

「では、自分はコーヒーとチョコケーキを。注文してきますね」

「ありがと」


 店内にいた店員に声をかけ、先程の品を頼む。料金は先に払う仕組みだった。


 先ほどから視線が痛い。原因は分かる。学長だ。ハイエルフだからかどうかは知らないが、結構容姿が良いのだ。いや、世界でもトップを争うくらいには…。そんな女性と相席しているというのは、嫉妬の対象になるらしい。

 相手は学長なんだよ、こんちくしょう。


 実は僕、異世界に出会いを求めているんだ。別に地球でもいいが、ここ数十年地球で暮らしても良い出会いが無い。だから、異世界ならきっとあるだろうと期待しているのだ。


 正直なところ、学長は悪くないと思っている。まだ好意を抱いているわけではないが、デートとか言ってたりで、思わせぶりな発言をしてきたり、ヒロインフラグでも立ってるんじゃないかと期待してしまっている。


 でも、相手は学長なのだ。とっても上にいる上司なのだ。そんなものを表に出した瞬間死ぬ。


「お待たせしました」

「待ってるのも暇ね。なんでもいいから、貴方が転移する前の地球の話をしてくれるかしら?」

「分かりました。では、国家の話でもしましょうか」

「いいわね!さっそく始めて」


「まず、地球には先駆国と呼ばれる四大国があります。日本国、アメリカ合衆国、ソビエト社会共同主義国連邦、ヨーロッパ中立評議会国連邦です」

「勇者様の故郷の日本も先駆国なのね。それって貴方が兵器を与えた大国達のこと?」

「そうですね。まずはどの国から紹介しましょうか?」

「ソビエトってところがいいわ。社会共同主義っていうのが気になるの」


「分かりました。ソビエト社会共同主義国連邦ですね。彼の国は地球最大の領土を持つ国家ですね。国土はロストフタの約3倍です」

「そ、そんなに大きいの?!」

「でも、人口は4億2千万人ほどですよ。国土が広大なため、陸軍力は世界最強。常時500万人を動員可能であり、最高で6,000万人ほどを動員可能です。保有艦艇は1,100隻ほどで、総合した軍事力は世界二位ですね」


「参考までに、他国の面積と人口を教えてくれる?」

「はい。面積10,000,000平方kmで人口3億5千万人のアメリカ合衆国」

「ソビエトの下位互換的な国ね」

「そんな事はありませんよ。総合した軍事力はソビエトと同率の二位ですし、地理的環境に非常に恵まれていますれています」


「へえ〜。次は?」

「面積6,000,000平方kmで人口7億4千万人のヨーロッパ中立評議会国連邦と、面積500,000平方kmで人口1億3千万人の日本国です」

「ヨーロッパは人口がトップクラスね。さすが中立と言うだけあるわ。けど…、日本はいささか他の先駆国と比べると見劣りするところがあるわね…」


「それはちょっと違いますね」

「え?何か間違ってた?」

「軍事力トップはヨーロッパだと思いましたよね?たしかに日本は国土、人口ともに他の先駆国に劣ります」

「ええ。概ねその通りだわ」


「軍事力トップは日本です」

「ええ!だって、日本は!」

「それは後でお話しします。まずはソビエトの話です」

「そ、そうだったわね」


「ソビエト社会共同主義国連邦はちょうど20年前に成立した新しい国家です。前身となる国は37年前に崩壊したソビエト社会主義共和国連邦です」

「ややこしいわね」

「ソ連は、その名の通り19ヵ国からなる連邦国家で、社会主義を発展させた社会共同主義のもと政治を行なっている国家です」

「アースナシア自由帝国と同じ社会主義ね。どの世界にも社会主義ってあるのね…」

「社会共同主義というのは、社会主義的な政治運用をしながら、政府のもと合理的な経済を行う主義のことです。国が思うがままに経済を操れるのが利点ですね」


「アメリカ合衆国は250年近い歴史を持つ世界の警察です」

「世界の警察って不思議な言い方ね」

「アメリカは世界中に自国の軍を派遣して駐在させることにより、世界情勢を管理し、圧倒的な政治力と資源で世界を牽引きてきた歴史があります。昔はソビエト社会主義共和国連邦と、二大超大国として争ってましたね」

「普通にすごい国なのね」

「現在はさまざまな中小国に基地を派遣し、局地的なコントロールを行っています。地理的優位性が高く、国家として最高の状態にあると言えます」


「お次は、ヨーロッパ中立評議会国連邦です。地域統合を果たした国家連邦ですね。そのため、構成国の中での格差が大きく、人口や国土並みの力は持っていません。昔はこの地で世界大戦が起きていましたよ」

「統合して、高い水準が普遍的に広まった時が、ヨーロッパの本領発揮ってところかしらね」

「そうですね。人口や工業力は他国に劣らない可能性を秘めています」


「さて、次は本命の日本ね」

「ええ。この国は、世界最強の軍事国家でありながら、世界最大の工業国家でもあるのです」

「そこまでくると恐ろしいわね」

「強大な軍事力の秘訣は海軍です。艦艇数は3,445隻、他の先駆国が結託しても海戦では絶対に負けません」

「さんぜん?!」

「さらに日本は防衛に特化していて、国防結界島なるものが本国周辺を防衛しているのです。おかげで、先駆国が束になっても日本には勝てません」


「いったいどこにそんなポテンシャルが…。いや、貴方という最強の人間が日本にはいたからなのね。ミガルズはとんだ化け物をこの世界に召喚してしまったのね」

「人を化け物みたいに言うのはやめてください。ほら料理がきましたよ」

「あらそうね。それじゃあ、話の続きはまた今度ね」

「ええ。それでは頂きましょうか」

「「いただきます」」


 このお店のコーヒーは酸味が強く、苦手な味だった。しかし、チョコケーキは非常に美味しかった。濃厚なチョコが何層も重なってて、良い柔らかさだった。



 学長は熱心にチーズケーキを食べている。美味しそうだな。ん?学園がこっちを見てニヤリと…?


「はい。アーン」


 そう言うと一口分に取り分けたチーズケーキを刺して、こちらに差し出してきた。学長は不敵な笑みを浮かべている。


 ・・・ここまでからかわれると、対抗心というものが湧いてくる。いいだろう。その挑戦、受けて立ってやる。


「いただきます」


 体を前のめりにして、差し出されたチーズケーキを一口でいただく。


「おいたが過ぎますよ。学長」


 注意をしたが反応がない。怒っているのだろうか?いや、でもアーンをしたのは学長の方だし怒られるいわれは無いはずだ。


 学長を見ると、顔を赤く染めてプルプルと震えていた。やっぱり怒っているのか。


「それはこっちの台詞よ!か、かか、間接キスだなんて?!」


 違った。めちゃくちゃ恥ずかしがっていた。


「・・・」

「そ!そんな目で見ないでちょうだい!長生きしてると、実経験のない知識ばっかり溜まっていって、やってみたくなったのよ!」


 学長が、可愛い…!


 だ、ダメだ!相手は学長だ!例えどんなに可愛くてもそんな感情は持ったらいけない!


 学長は急いでチーズケーキを平らげ、紅茶を飲み干すと勢いよく立ち上がった。


「仕切り直しよ!先に港に向かってるから!ごちそうさま!」


 そう言うと早足で立ち去っていった。


 なぜか、周りからの視線が同情と哀れみに変わった気がする。


 ゆっくり歩いて行くか…。



〜〜〜〜〜ロストフタ首都軍港



「お待たせしました」

「やっと来たわね。ねえ、どれが輸送艇なの?」


 まだ軍港には輸送艇は停泊していない。そろそろ来るはずだ。


「あ、もしかしてあれ?」

「そうですよ」


 やって来たのは、一号型輸送艇。海上自衛隊が運用する汎用揚陸艇だ。全長80mで、全幅15mの大型揚陸艇で、島嶼奪還の要だ。

 最大速力は50ノット。時速90kmは出る。


「大きいわね。これが貴方の艦隊?」

「こんなもので大きいと言わないでください。これは装備の一つですよ。さあ、乗り込んでください」


 桟橋に横付けに停泊すると、艦側面のバウランプが下りて、道ができる。


「大きいわね。輸送艇って言ってたけど、どういう任務を行う船なの?」

「敵勢力の海岸線に上陸して、陸上部隊を輸送するんですよ」

「なるほどね。地球ではそういう戦術があるのね。で、このおぞましい鉄の塊は何?」


 鉄の塊とは失礼な。これは、日本の技術を結集して生み出された第三世代多層鍛造鋼複合装甲で作られた、二五式戦車と六式高機動対空戦闘車両だ。


「日本の陸上戦力である戦車と対空車ですよ。輸送艇は非力なので、学長の護衛のために付けてきました」

「なるほど。護衛なのね」

「それでは出港します」


 輸送艇は後進を始め、回頭すると、最大戦速で信濃型護衛艦に向かった。


「速いわね。最初に乗るのってあの船?」

「そうですよ。あれが信濃型護衛艦です」

「不思議な形をしているわね。平たいけど…?」

「後で紹介しますよ」


 信濃型護衛艦は汎用空母だ。全通飛行甲板やウェルドック、戦艦主砲を装備した大型艦だ。


 ウェルドックには、この一号型輸送艇を3機格納する能力があり、航空機は260機を運用できる。


「・・・ねえ、まだ着かないの?だいぶ進んだと思うのだけれど…。あと、あの船大き過ぎない?」


 艦隊は外洋に待機させてあり、学長を迎えるために信濃型護衛艦だけ、近海に寄越したのだ。


 そろそろ信濃型護衛艦に近づいてきた。信濃型の艦尾にウェルドックがあり、そこから入るのだ。


「ちょ、ちょっと大き過ぎない?!学園並みの大きさだわ!」

「そうですね。この船は艦隊でも大きい部類の船なんです」


 艦尾のウェルドックが開き、輸送艇がゆっくりと侵入する。



〜〜〜〜〜信濃型護衛艦



「うわあ…。異世界に来たみたいだわ」


 信濃型護衛艦の内部構造を見てとても驚いているようだ。確かに、広くて照明が照りつける秘密基地みたいな場所だ。


 一号型輸送艇の艦首部分にあるバウランプが下り、外縁へと移動する。


「広いところね。まるで学園の体育館だわ」

「ここは、小型艇を運用するための施設なんです。これでも小さい方なんですよ」


 一番大きなウェルドックを持つのは、コロンブス級電磁力揚陸艦だ。この一号型輸送艇なら8隻以上運用できる。


「こちらです。この先が航空機格納庫となります。驚かないでくださいね」

「え、ええ…」


 航空機格納庫は少々薄暗いため、不気味なのだ。


 扉を開き、吊るされた通路に出ると見えるのは、効率よく収容された、主翼の折り畳まれた航空機。


 目に写るのは心許ない一本の通路と、全周囲に見れる巨大な航空機。


「な、なんなの…、磔にされているものは…?」

「これが、この信濃型護衛艦並びに航空母艦の主戦力。航空機です」


 航空機が磔にされている事こそが、現代空母の搭載航空機数の増大の要因。スペースの無駄無く、百機をゆうに超える航空機が運用できるのだ。


「航空機…?あの飛行船とか複葉機の?」

「ここで扱う航空機は、空を、地上を、海を制圧する、単騎でも圧倒的な戦闘力と戦略性を持つ兵器です」

「そんなに強いの…?」

「仮に、このうちの一機が指令を受けて飛び立てば、帝政ロストフタは1時間以内に全国土を灰に変えることでしょう」

「そ、そんな事が…。それがこんなに…!」


 学長といえど、流石に恐れ慄くか。そりゃ魔王以上のものがここにたくさんあると言われれば、誰でも怖がるか…。


「さあ、早く次に行きましょう」

「あ…」


 震えている学長の手を取り、先導する。これくらいの事は許されるよな…?


 吊るされた通路を早足で抜け、重々しい扉を開く。

 扉を抜けた先は信濃型護衛艦の第一整備室だ。


「これまた広いわね。でも、何もないわ…」


 手を解こうかと思ったが、学長が強く握ってて放せない。しかも指を絡めて恋人繋ぎになってるぞ…!


 顔を覗いたところ赤くなってないので、きっと無意識なんだろう。

 このまま放っておいて、無意識のうちに外れることを祈ろう。それが一番丸く収まる。


「っ!な、なんであの航空機が出て来たのよ!ロストフタを滅ぼすつもり?!」

「違いますよ!あくまでデモンストレーションです!」


 格納庫と整備室は隣同士なため、期待の搬送が簡単にできるのだ。航空機用の隔壁が開かれ、奥から航空機が搬送されて来たのだ。


 あ、驚いた拍子に手が解けた。


「ここは、あの航空機に武装や整備を施す場所です。ここで整備されて万全の状態になった航空機は、あの場所で飛行甲板に上げられます」

「あ、翼が広がったわ。よく見ると鳥みたいな形をしているわね。薄っぺらいし、今じゃ考えられない形をしているわね」


 あの航空機は第七世代戦闘機のF-4 高等航空支援戦術機。愛称は月詠。主翼はテーパー翼で、大きい尾翼が特徴的な、航空自衛隊と海上自衛隊が運用している固定翼機だ。


 整備を終えたF-4は、近くにある大型エレベーターまで自走した。


「僕らも一緒に飛行甲板に上がりますよ。こちらです」

「改めて見ると不思議なものね…。これがロストフタを滅ぼせるんですもん。これがあれば、ユグドラシルだって守れたかもしれないわね…」


 ゆっくりと大型エレベーターが上がっている間、学長はそう呟いた。僕がその話を追求する事はなかった。


「この船に乗って何度も驚かされてきたけど、これが一番驚きね。船の上がこんなに広いだなんて…」

「あの航空機を運用するために、平たく巨大な甲板が装備されているんです。今から航空機が発艦しますよ」


 F-4は自走して電磁力カタパルトに接続される。


 電磁力カタパルトにより射出されたF-4は、機首を直角に上げると急上昇を始め、一瞬にして雲に大穴を開けて行ってしまった。


 しかし、次の瞬間にはロールしながら、垂直に降下していき、海面間際で機首を引き上げ、海面スレスレを飛行し、大きな水柱をあげながら護衛艦の横を通り過ぎた。


 ソニックブームが発生していないので、まだ音速は超えてないな。


「本来なら、あれの15倍以上は速度が出ますよ。そういえば、パラディナン独立連邦にはこういう兵器はないんですか?」

「あの国は軍事力をひた隠ししているからわからないのよね。でも、日本と同程度の文明があるって言われてるわ」


 ミガルズ王国で聞いた時は日本より30年技術が進んでいると言われたが、情報にそれぞれ差異があるな。よほど閉鎖的なのだろう。


 パラディナンとは安全保障のためにも接触しておきたいな。無人艦隊を派遣しようか…?考えておかなければ。


 パラディナン。お前には砲艦外交も辞さないからな。


「あ、船が見えてきたわ。あれが貴方の艦隊ね」

「そうです。合計360隻からなる多国籍艦隊です。先ほど挙げた先駆国海軍の艦隊で組織されているんですよ」

「どの船もこの世界のものよりずっと大きいわね。能力が計り知れないわ」

「これから、艦隊旗艦の大鳳型護衛艦那須に乗り移ってもらいます。魔法で飛べますか?」

「いいわよ。舌噛まないように気をつけてね」


 ヘリコプターで乗り移ってもいいのだが、工程が面倒だから魔法を依頼したのだ。


 不意に浮遊感に襲われると、甲板から足が離れた。これが生身で空を飛ぶ感覚か…。珍しい体験したな。


「どれが那須かしら…?あの中心にいる平たい船?」

「そうです。あれが艦隊旗艦那須です」


 空を飛び、那須まで乗り移る。速度は自転車と同じくらいで、少し時間がかかった。


「ねえ。那須って船、大砲がぎっしり装備されてない?ロストフタの装甲艦以上にあるわよ。それにあの航空機の運用能力が加わるの…。これを作った人は馬鹿げてるわよ…」

「馬鹿は酷くないですか…?」

「やっぱりこれも貴方が作ったのね。世界のほとんどの兵器には貴方が関わってるんでしょう?何と戦うために作ったのよ…」

「確かに世界の兵器の製作には関わっていますね。何と戦うためですか…。多分あの時は中華国と戦うためですね。それ以外は、ただ作りたかったんです」


「中華国って何なの?」

「第三次世界大戦で滅ぼした超大国です。人口15億人を擁し、圧倒的工業力と技術力で軍事力を飛躍的に向上させていました。さらに恐ろしい点は、共産主義であり、全体主義国家である点です。統率のとれた国民ほど恐ろしいものはありません」

「15億人とかすさまじまいわね…。逆に先駆国の方が少ないんでしょうね」

「いい指摘ですね。文明がある程度進歩すると、人口が減少する傾向にあるんです」

「人族って不思議ね」


 ハイエルフとかの人口事情ってどうなっているのだろうか?


「ここからだと、360隻全部がよく見えるわね」

「これは輪形陣と言って、主力となる艦を中心に配備し、その他艦艇を円形に配備する事で、索敵などの警戒を行いやすく、防御にも適しているんです。他にも単縦陣などもあるんですが、艦隊の規模的に輪形陣しか選択肢が無いんですよね」

「これほどの規模だとそうなるわよね。パラディナンも流石にここまでの隻数はないんじゃないかしら…?」


 そういえば、ロストフタは戦艦を建造していると、カーロフ王が言っていたな。


「ロストフタが戦艦を建設しているという話は知っていますか?」

「ああ、その話ね…。召喚人の1人が、ミリオタ…?らしくて、装甲艦があることを知ってから、戦艦の建造を熱弁したそうよ。でも、その人の言う戦艦は建造不可能だから、地球に100年近く前にあった戦艦を建造する事になったのよ。と言っても装甲艦より防御力が高いだけらしいけどね。あ、一応これは機密情報よ。貴方の艦隊を見せてくれたお礼ね」

「現在の地球の戦艦はあんな感じですね。大口径主砲を多数搭載し、高い防御と攻撃を兼ね持つ主力です」

「確かに、そんなのもに守られていたんだったら、同等のものを欲しがるのは無理ないわね」


 なぜカーロフ王は機密情報を持っていたのだ…?恐るべし。ミガルズの情報網。


「そういえば、特別火力演習をやるって言ってなかったかしら?」

「そうですね。ロストフタ海軍が接収した海賊の帆船を、我が艦隊の標的艦として提供してくれたんです。艦隊の能力を見極めたいというのが目的でしょうね。ロストフタの船が見えてきましたよ」


 艦隊の外縁に黒い煙が上がって見えた。異界聯合艦隊に通常動力艦はいないので、ロストフタ王立海軍の蒸気船だろう。あれは装甲艦ハーランドだろう。


 ロストフタ王立海軍との事前の打ち合わせは済んでおり、以前と同じように那須に横付けして、梯子で登ってきてもらう。


 海軍相や海軍司令長官、さまざまなお偉いさんがやってくるのだ。そんなお偉いさんを梯子で登らせるのはちょっとどうかと思うが…。


「私も同席しちゃって大丈夫かしら…?たくさん人が来るんでしょ?」

「大丈夫ですよ。別に秘密にしているわけではないですし。あ、そろそろ梯子を下ろしましょう」


 梯子を下ろしてしばらくすると男たちが登ってきた。合計で20人くらいだ。


「今回は協力いただきありがとうございます。今回はより良い関係が築けると確信しております」

「司令長官のバイスだ。今日はよろしく頼むよ。君の艦隊の能力、しっかりと見極めさせてもらうよ」


 バイス氏の握手に応じる。ダロスさんは後ろに控えている。


「おや?ロストフタ国際学園長の…」

「ユイシア・ユグドラシルです。お久しぶりでございます。バイス司令長官」

「彼女は僕の客人です。追求はご容赦願いたいものです」

「そうか…。君は国際学園の教員になったのだったね。是非とも未来ある若者の教育をよろしくお願いするよ」

「それでは、火力演習をする前に、我が艦隊と国際連邦について少し知ってもらおうと思います。分からないことがあったらいつでも質問してください」


「それなら一つ質問をいいか?この巨大な船は一体なんなんだ。500mを超える城ばかりではないか。一体なぜここまで巨大化したのだ?」

「それは運用する兵器の性能が向上したからですね。他にも、より効率良く運用したりするためです。このような大型艦の他にも小型艦はたくさんあります」

「回答感謝する」


 近くに用意しておいたボードを取り出す。ボードにはこの世界の地図が書かれてある。


「こちらはこの世界の地図です。この南大陸の細いところに位置するのが、国際連邦異界派遣無人基地です」

「随分と詳細な地図だな。しかし、そこの地域は魔王が跋扈している地域じゃないのか?」

「我が基地の戦力は陸上、海上、海中、空中の全てにおいて他を圧倒する能力を保持しています。運用兵器での魔王の撃退も実証済みです」

「陸上と海上の戦力は分かる。しかし、海中と空中における戦力というのはどういうものなのだ?」


 この世界にはまだ、潜水艦や偵察機の概念もないんだもんな。陸上戦力に関しても戦車などは理解できていないだろうな。


「まずは海中戦力から紹介しましょう。下の海を見ていただけますか?潜水艦をお見せします」


 伊四〇〇型潜水艦が浮上する。全長は520mなので、この大鳳型護衛艦と同じくらい大きい。


「な、なんだこれは?!」

「これは潜水艦というものです。海中に潜航し、船舶を攻撃したりします。発見が非常に困難なため、戦略性が非常に高い艦種といえます」

「どういう仕組みで動いているか気になるな。しかし、これは恐ろしいものだな。速急に研究して建造したいな…」


「現代の潜水艦は、戦略潜水艦と攻撃型潜水艦に分けられます。例外として潜水空母もありますが割愛させてもらいます。戦略潜水艦は長距離打撃能力を持ちます」

「長距離打撃能力か…、想像もつかないな」

「SLBMと呼ばれる兵器で、通常、射程は10,000kmを超えます。敵国の都市を攻撃する能力を持ちながら、敵には察知されないのです」

「なんと恐ろしい兵器なんだ…。そんなものがあったら国防なんて無いに等しいぞ」

「攻撃型潜水艦は主に、艦隊として運用されます。前衛の哨戒や対艦攻撃、対地攻撃も行います。ちなみに今皆さんが見てもらっているのは潜水空母です」

「末恐ろしいな。これが海中の戦力か…」


「次は空中の戦力です。空をご覧ください。今から航空戦力の中核を成す航空機を紹介します」


 F-4が亜音速で上空を通り過ぎる。強風が甲板を通り過ぎる。


「あ、あれはなんだ…!」

「あれが航空戦力の中核を担う航空機です。主に、多用途戦闘機と戦略爆撃機に分類されます。今のは多用途戦闘機ですね」

「我々も航空機は幾つか保有している。飛行船や複葉機などだ。しかし、あの機体は一体なんなんだ!」

「あれは第七世代多用途戦闘機、F-4 高等航空支援戦術機、月詠です。最高速度はマッハ15、音速の15倍です。後ろをご覧ください」


 那須の航空機運搬用の大型エレベーターが起動して、F-4が運ばれてくる。さらに自走して僕らのところまで近づいてきた。


「なんて巨大なんだ…。こんなものが空を飛ぶのか…。我が国の防空網も簡単に突破されてしまうだろうな」

「他にも戦略爆撃機という比較的大型の航空機もあります。戦略爆撃機は大量の弾薬を搭載し、敵の重要拠点を爆撃、破壊することが主な任務です」

「航空機はそのような事に軍事転用可能だったのだな…」


 皆圧倒されている。数百年先の技術を目の当たりにしているのだから当然か…。


「それでは国際連邦基地の説明に戻りたいと思います」

ユイシアはメインヒロインではありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ