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4話 身バレ駄目絶対

勢いです、勢い。


 初めてのオンラインゲームから一夜明けた日の学校。

 今日は金曜日で、終われば土曜日という帰宅部には天国、運動部には地獄か天国か分からない曜日が待っている。

 苦手な英語の授業を終え、昼休みに日課となっている蒸し鶏肉とサラダ、ゆで卵と低脂肪牛乳を摂った龍は、さて昼寝でもするかと自席に突っ伏そうとしていると……。


「龍~! 今日もOFFなんでしょ? 明日土曜日だし今日は朝まで遊びにいこ~よ」

「こんにちは、鬼塚君」


 龍の教室に、楓と美優が我が物顔で乗り込んできた。

 周りの生徒は、やはり性別によって反応が違い、男子は羨望の眼差しを向け、女子は畏怖から視線を外していた。

 そんな二人に、龍は「おう、こんちゃー」と軽い調子で返した。

 楓は腰まで伸ばした黒髪を揺らし、華やかな顔立ちを笑顔に染め、完璧なスタイルを制服越しに現し、校則違反のナチュナルメイクと派手なネイルをこれ見よがなしに見せびらかしていた。

 一方、美優も小悪魔と言われる程に愛らしくも、どこか大人びた妖艶な顔立ち、柔らかいウェーブがかかった茶髪が印象的な美少女だ……あと胸が学校で1番でかい。


「ね? い~でしょ? いこ~よ」

「この前は、改めてご馳走様。あの店よかったね、また行こっか」

「その内な」


 楓の着崩した制服のまま、龍の腕に絡みつき、今日はブレザーではなくセーターの美優は何を思ったのか、龍の視界を自分に染めるようにして目の前に立った。

 学校一の美少女に絡み疲れ、学校一の巨乳に視界ジャックされた龍ではあったが、慣れた様子でそれを流す。


「で? どうする? 今日はゲーセン? それとも今度こそカラオケ?」

「あ~……どうすっかな」


 試合が終わり、2週間OFFとなった龍はやる事が特になく、家に帰っても自室で筋トレ……いや、昨日から始めたネットゲームがあるのだが、それは夜にやれるときにやるだけで、一日を潰すほどのものではない。

 故に彼は悩む……別に楓たちと遊びにいってもいいが、他の男友達と遊びに行く選択もある。

 なら二つまとめてと、前に提案したことがあるのだが楓と美優が大反対、期待していた男友達は落胆に泣くということがあったため論外。


「実際暇だし、いくかあ」

「よっし! じゃあ放課後向かいに来るからさ、待っててよ!」

「鬼塚君はどこいきたいの? 前は奢ってもらったし、今度は私たちおススメのとこいく?」

「それでいいわ、任せた」


 美優の提案に、龍は頷いた。

 すると、横から一層強く腕を絡めてくる楓が嬉しそうに美優へとアイコンタクトを送る。

 これに微笑みで返した美優、どうやら予定通りだったようだ。


「じゃあ、あーしら教室戻るね。ちゃんと待っててよ~?」

「それじゃあね、鬼塚君」

「ああ、またな」


 そういって、2人は前と同じように、龍以外の人間は眼中にないとばかりに教室を後にした。


 ☆


「うっし、とりま完璧!」

「よかったね~今日も鬼塚君と遊べて」

「と~ぜん! あーしにかかれば、あの喧嘩馬鹿だってイチコロだし!」


 龍の教室から自分たちの教室へと歩く2人は、廊下で意気揚々と談笑していた。

 今日も上々の戦果、目的である龍を遊びに誘うも成功し、傍から見ても機嫌が良かった。


「というより、楓がもうゾッコンだよね?」

「ま、まあね! アイツ以外眼中に無いっていうか、アイツ以外つまんないし……」

「そうだよね~子供のころからだものね~」

「ちょっと美優!? からかってるでしょ?」

「そだね~」


 廊下の中央を堂々と歩く2人を、周囲の生徒は避けて歩く。

 これが2人の立場なのだ、それが当然のように振る舞うのは2人が大物である証拠でもあった。

 ふと、そんな2人に3人の上級生たちが近寄ってきた。


「よ! 苅谷ちゃん久しぶり」

「鬼崎もお久~」

「機嫌よさげじゃん、どったの?」


 3人が3人とも身長が高く、目鼻立ちも整った容姿で、控えめに言って遊び慣れた様子だった。

 そんな3人に道を塞がれた2人……楓は一瞬にして表情を気だるげに無くし、刈谷は貼り付けたような笑みを見せた。


「なんすか? うちら先輩らとはもう遊ばないっていったじゃん」

「そ~いわないでよ。あのしょっぱい奴はもう縁きったし、俺らだけでもう一回遊びいこうよ」

「いや、あーしら先輩たち全員無理って言ったじゃないですか?」


 明らかに機嫌の悪い楓、そこに美優が助け舟を出す。


「私たち、今日は鬼塚君と遊ぶ約束してるんですよ~」

「え? あの鬼塚と?」

「そうです、あの鬼塚君と」


 龍の苗字を出した瞬間、3人の上級生は明らかに顔色を変えた。

 それを見た楓が、明らかに詰まらなそうに舌打ちをする。


「あーし、龍以外と遊ぶ気ないんだけど?」

「私は鬼塚君がいれば、別に先輩たちがいてもいいかなって思ってるんだけど?」

「え~? それただの邪魔じゃない? どっちにしたってあーしは龍以外と喋んないからね? 美優が相手してよ?」


 嫌悪感を隠さない楓と、どこか嫌味を見せつつ話す美優。

 そんな2人を3人の上級生は、どこか困ったように眺めていると……。


「で? どうします? 鬼塚君と一緒になりますけど?」


 仮面を被った美優の問いかけに、上級生たちは「あ~」とバツが悪そうにして答えた。


「鬼塚が一緒なら、俺らはいいわ」

「確かに。2人の邪魔になるっぽいし」

「そそ、なら今度空いてる日に遊ぼうよ? それじゃあね」


 一方的に言葉を並べた3人は、そのまま3年の教室がある階へと帰っていった。

 その後姿に「うざ」と一言だけ吐き捨てて見送った楓。


「あ~あ、白けちゃった。これは龍に埋め合わせしてもらうしかないかなあ」


 誰ともなく呟いた楓に、美優がニヤニヤした表情を向ける。

 な、なによ……と楓がたじろぐと、美優が意地悪に口を開いた。


「え? じゃあ今日こそ襲っちゃう?」

「……チャンスがあればね、チャンスがさ」


 口をゴニョゴニョと動かす楓。

 普段の快活なイメージとはかけ離れた乙女な姿に、美優は恍惚とした吐息を漏らした。

 私の親友、まじ可愛い……実は刈谷美優という少女は、若干バイセクシャルな気質があることでも有名だった。

 これは今日一日弄くり回そうと決心した美優に、楓が釘を指す。


「でも、最初はあーしだからね? 初めては龍にって、ずっと決めてんだから」

「分かってますよー。楓ちゃんは純情ですねー」

「そっちのほうが龍に受けるんだよ、黙ってろ糞ビッチ」

「楓ちゃんひどーい」


 ズカズカと自身の教室へと戻っていく楓、それを追っていく美優。

 2人はこれでも、互いに心を許した親友なのだ。

 ちなみに先の上級生3人は、以前に龍とトラブルとなり、もともといた4人目共々病院送りにされている……それを知っていた美優が、張本人を引き合いに出して利用したのだ。

 鬼塚龍という名前は、彼が1年の時から絶対となっており、特に男子生徒にはかなり有効なネームとなっている。

 故に、それと遊んだりしている楓と美優に迫ろうとする者は意外に少ない。

 迫っても、極稀に起こる気まぐれで遊ぶことができるぐらいで、遊べたとしても20分で帰られてしまうのが当たり前となっている。

 高嶺の花、正にそうとしか言えない2人なのだ。


 ☆


 中世ヨーロッパのような街並み。

 白い煉瓦が敷き詰められた歩道や、木造建築、石造建築が立ち並ぶ風景は4陣営のうち『アビス』という陣営の特徴となっている。

 ここで購入できる装備も鎧やグレートソードといった、正に中世ヨーロッパを模したもので、何故か道行くプレイヤーたちの服装もそれを意識したものとなっている。

 運営からも4陣営の中で一番落ち着いた陣営と評されるほど、多種多様なプレイヤーがいる『ノービス』よりも遥かに統一感のあるところだった――――。

 話は変わるが、暇つぶしであるオンラインゲームというのは不思議なもので、ある程度やる事が終わってしまうとゲーム内で更に暇つぶしをしようとする現象が起こる。

 HEOでも同じで、いま2人のプレイヤーがセーフゾーン――――モンスターやPVPが発生しない地域――――である街のカフェで談笑していた。


「マリアっち~、今日はどする? 釣りでもする?」

「うーん、そうだなあ」


 注文したコーヒーを啜り、マリアと呼ばれた召還師の女性キャラは首を捻らす。

 日当たりの良いウッドデッキのテラスで、白亜の街並みを眺めながら悩むマリア。

 現実ではありえない桃色の髪をショートボブにした女性は、白いローブに身を包んでおり、幼さの残る丸顔が魅力的だった。

 美人というより可愛い寄りのプレイヤーに、再度、一緒にカフェで寛いでいる仲間が問い掛ける。


「素材狩りだって終わっちゃったし、次のアリーナイベントまで暇だしさあ。新しいコンテンツに手の出し時だと思うんだよね」

「うーん、でも一回手を出すと長いからなあ」


 マリアと呼ばれた女性の仲間は、緑色の髪を緩やかに流した男性だった。

 いや、男性なのか……表記上は男性だが、外見はどこか中性的で、少女と言われても通じる可憐さだ。

 細い手足にかよわそうな瞳、服装はヘソと背中を露出させたチャイナドレスで、戦闘ジョブはモンクと記載されていた。


「だからといって、ここでだらだらしててもねえ……ゲームでも出不精って、結構不味いし」

「いや、コーヒーは美味しいし風も気持ちいいし、ゆっくりしてるだけでも楽しいんだけど?」

「マリアっちはいいよねえ……召還師って、工作・採取系ジョブやらなくてもスキル埋められるし。そりゃゆっくりするよねえ」

「ジャックちゃんのモンクだって、戦闘だけでスキル開放できるじゃん」

「まあねえ~」


 カフェの丸テーブルに突っ伏すジャック。


「あ~、リアルならここでゆっくりしててもいいんだけどねえ」

「リアルでこんな所いくなら、海外にいかないと駄目だろうね」

「マリアっちは海外いったことあるの? 私は無いなあ」

「あるにはあるけど、ヨーロッパはフランスだけだね。それも小さかったから、もう殆ど覚えてないけど」


 両足をブラブラさせて、ジャックはテーブルに突っ伏しながらマリアを見上げる。


「流石、あのお金持ち学校に通うだけあるね」

「やめてよ、そんないいかた」

「ごめんごめん、ちょっと意地悪だったね」


 身体を起こしたジャック、コーヒーを飲み終えたマリアに、ふと1通のメールが届く。

 なんだと思い、お互いにメールBOXをオープンする。


「マリアっちにも同じの来たの?」

「うん、新イベントかあ。うーん、ランキング形式じゃなくて、レアモブ狩りでドロップ狙う系なんだ」

「でもこういうのって、大体ドロ率渋いよね」

「まあ、見た感じ結構性能いい装備落ちるみたいだし、レベル帯によっては初心者救済になるのかな?」

「リーダーどうすんだろ?」

「さあ? 今スカウトに力入れてるみたいだし、パスするんじゃない?」

「かもね……うん?」

「?」


 2人が新イベントについて話していると、再びメールが届いた。

 今度は2人が所属するチームのリーダーからだった。

 丁度その人の話をしていたために、お互いが顔を見合わせ笑ってしまう。


「リーダーってこういうとこあるよね?」

「そうだね、どっかで見てるのかも」

「ありえるーw」

「それで、内容は……と」

「へえ……新しい子入れたいから、手伝ってって」

「珍しいね」

「うん、リーダーがここまで本気ってことは、凄い人なのかも」


 内容は、期待の新人を発掘したからスカウトを手伝ってくれとのものだった。


「リーダーがインしてないときに見かけたら、積極的に手伝ってか……ノービスのドラゴって人みたい」

「現実の写真そのまま使ってるんだ……本当に初心者さんっぽいね」


 個人情報保護の御時勢になんて珍しいと、マリアは軽く驚く。

 ジャックはニヤリと、メールを閉じて椅子から降りた……。


「なんか面白そうだし、HEOにどっぷり浸からせたいね!」

「うーん、程ほどにしないと止めちゃいそうだけど……」

「ジャック様にまかせなさーい! 私にかかれば、ネトゲの沼に嵌らない男はいないんだから!」

「はあ……」


 また悪い癖が始まったと、マリアはため息をつく。

 実はこのジャック、中身は女性で〝男の娘〟をこよなく愛す人物なのだ……尚且つ、初心者を自キャラガチ恋勢にさせた事は数知れず、所属チーム内外に隠れファンクラブがある程だ。

 チームチャット以外にも、特定の人たちだけでグループチャットも可能となっているため、ジャックのファンクラブは今でも増殖しているとすら言われている。

 HEOには様々な人間がおり、中には芸能人やサブカル界隈で有名な地下アイドル、または3DCGを皮としてアイドル活動をしているバーチャルアイドルも存在している。

 ジャックはそのバーチャルアイドルに近いプレイヤーで、声だけのプレイ動画ではあるが動画配信も行い、HEOプレイの生放送配信時は彼女のファンたちが隊列をなして集まる程だ。

 そういったプレイヤーは他にもおり、ジャック以上の存在もよくプレイ動画を生放送配信していた。

 そんな人物が、おかしなやる気を出したことにマリアはため息をつく。


「ジャックもセーブしないと、そのうち痛い目みるよ?」

「身バレとか? 確かに困るけど、そこまではされないでしょ? 有名動画配信者はよくやられてるけどさ」

「それもあるけど、折角いい初心者さんがいるなら、まずは普通に楽しませるのが先輩の役目なの」

「マリアは真面目だなあ……やっぱリアルでもそうなの?」

「リアルの詮索は厳禁だよ」

「そだよね~でもマリアとだったら、オフ会とかしてみたいしさ。ちょっとは考えてよ?」

「はいはい、そのうちね……」


 マリアは気の無い返事を返すと、コーヒーを飲み干し席から立ち上がる。

 彼女の空間投影されているディスプレイには、キャラクター検索の画面が映し出されていた。


「とりあえず、プレイヤー検索してみたけど今日はインしてないみたい……アバターは写真投影って話だけ――――ぶう!」

「え、どうしたのマリア? なんかあった?」


 件の人物のアバターを確認しようとしたマリアが、これまでの落ち着いた雰囲気を台無しにするレベルで噴出す。

 何事かと気になったジャックが、それを覗き込む。


「へえ、これで写真投影って結構男前なんだね……筋肉やば、ちょっと好みかも」

「けほ! けほ! う、嘘でしょ……」

「ほんとどうしたの? もしかして知ってる人?」


 明らかに動揺しているマリアに、ジャックが心配する。

 するとマリアは「う、ううん。なんでもないの、ちょっと知ってる人に似てて」と目を泳がせる。

 これに怪しいと、何かあると確信したジャックが更に探りを入れる。


「あ、もしかしてマリアの知ってる芸能人とか?」

「え!? い、いや違うかなあ……」

「……じゃあ、昔好きだった人とか?」

「そ、そんなわけない! そうじゃないの!」

「怪しい……全然隠せてないよマリア? ほら素直に下呂っちゃいなよ?」


 突然、取調べ室の警察のような聴取を始めるジャック。

 これに対してマリアは、逃げるようにしてお気に入りのカフェを後にした。

 追いかけるジャック、表情は明らかに悪意に満ちている。


「ねえマリア~! あ、そうだ! マリアの旦那とか!?」

「違う!」

「じゃあマリアの彼氏とか~? イケメンより男前派だったかあ」

「ちがうって!」

「その反応、絶対知ってる人なんでしょ? でしょでしょ?」


 ズカズカと街の歩道を歩くマリアの背に、ジャックがからかう様に付きまとう。

 段々イラついてきたマリアは、後ろを振り返っていつもより少しだけ強い口調でジャックを止めようとする。


「あのね!? リアルの詮索は厳禁ってさっき言ったでしょ?」

「それって、ドラゴって人とリアルで繋がりあるってこと? 墓穴掘ったね」

「っ! ち、ちがうの! あの人とはただ……!」

「ただ~? 何なのかなあ? 気になるなあ? ジャックちゃんにだけ教えてにゃ~?」


 イラつく猫なで声、手は招き猫のようにクイっと捻っている。

 これに堪忍袋の緒が限界を迎えたマリアは「もう知らない!」と言ってログアウトしてしまう。

 一人街中に取り残されたジャックは、「あちゃ~からかいすぎた」と反省しつつ、謝罪のメールだけはマリアに送っておくのだった。



 ☆


 勢いよくVRゴーグルを外した委員長は、青ざめた様子でベッドから起き上がる。

 近くに置いていた眼鏡ケースから眼鏡を取り出し、やや焦りながらかけると、枕元に置いていた携帯を取り出してアプリを開く。

 それは、HEOと連携しているコミュニケーションアプリで、自前の携帯からでも自分のキャラクター情報やチーム掲示板、グループチャットやキャラクター検索などが行えるものだった。


(やっぱり、見間違いじゃない……)


 タッチパネル式のディスプレイに映し出されているのは、鬼塚龍のアバターというより、まんま鬼塚龍が黒いTシャツに青のジーパンを着た姿だった。

 写真投影によるキャラクリエイトの精度は高く、拳にある拳タコの大きさまで再現され、彼を知っている人間ならば間違いようが無いレベルで作られている。


(まさか鬼塚君が写真投影で作るなんて……一応有名人なんだし、拙いんじゃないかな)


 委員長……HEOではマリアというアバターで遊んでいるプレイヤーは、クラスメイトが個人情報保護について杜撰すぎることに頭を悩ます。


(それに、もし鬼塚君が自分の学校とか普通に喋っちゃったら、私の身バレにも繋がるかもだし……これはどうにかしないと拙いかも)


 龍がHEOを始める際、様々なアドバイスは送ったが、個人情報保護については当たり前だったので伝えていなかった事に今更後悔する。

 ネットゲームというより、ネットで個人情報がバレた場合、様々な弊害があることは既に一般常識となっている。

 それが格闘技界で超新星として活躍し始めた人物が、今まさにやらかしてしまいそうなのだ。

 まだ今はいい……格闘技界の超新星とはいえ、知っている人はまだ少なく、知っていたとしても身内かコアな格闘ファンぐらいだ。

 これがどんどん有名になってしまった場合、今のアバターだと非常に拙い事になる。

 これは……なんとかせねばと、委員長は決心する。


(……逆に言えば、リーダーが見つけてくれて良かったのかも。今のうちに私が、今の状態がどれだけ危ないか教えられればいいんだし、分かってくれればアバターの容姿変更もしてくれると思う)


 ふと、委員長は携帯をじっと見つめる。

 そういえば、連絡先は前にもらったんだったと……しかし、委員長は首を振る。


(直接連絡するのは駄目。それじゃあマリアが私だってバレる可能性あるし……特に今日のジャックなら、鬼塚君に色々探り入れそうだし、そこから身バレするかもしれない)


 部屋着のパジャマ姿で、委員長はベッドから降りて部屋を出る。

 とりあえず変に喉が渇き始めたので、牛乳でも飲むことにした。

 2階から階段を降り、1階のリビングについた委員長は既に両親が寝ていることを確認し、そのままキッチンへと行き冷蔵庫を開いた。

 キンキンに冷えた牛乳パックを取り出し、それを食器棚から取り出したコップに注ぐ。


(とりあえず、ジャックが粘着する前に私が鬼塚君に接触しないと拙い)


 ゴクゴクと、見た目の割りに豪快な飲みっぷりを見せる委員長。

 牛乳で喉を鳴らすたびに、形の良い胸が上下する。

 コップに注いだ牛乳を一気に飲み干した委員長は、それを洗って片付け、再び部屋へと戻る。

 ベッドに腰掛た委員長は、覚悟を決めた表情で携帯に映し出された龍のアバターを見つめていた。


(私は絶対に守らないといけない……鬼塚君の個人情報も、私が隠れゲーマーなのも。かといってリアルじゃ話しかけられないし、ゲーム内でしか対応できない……これは、ちょっと危険だけど私が粘着するしかないか)


 決意を固めた委員長は、次の日の夜から行動を開始するのであった。


次から本格的にゲームをしていきます。

基本的にリアルパートとゲームパートは均等にやっていきたいと思ってます。

とはいえプロット無し、バランスは崩れるもの。

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