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第四話



ダムッダダムッダムッダダダムッ


ミニゲームを見ながらみんなが好きにボールで遊んでいる


「体育館は蒸すぜ!

熱いぜ!

ダレるぜぇ〜ぃ!」


体育館の端っこでエンコジがグデンと寝そべっていた


「大丈夫かい?

エンコジくん」

出席番号が一つ前の松岡くんがバスケットボールを持って横にしゃがんだ


今日のバスケのチームわけは出席番号だ


運が悪い事に先程体当たりしてしまった守田とエンコジは一緒のチームになった


「オレ

気分が乗ってないと運動したくない」


エンコジがゴロンと寝返りをうった


ひゅ〜…

ドスッ


「ぅごっ…!!」


どこかから飛んできたボールがエンコジの脇腹に命中


「エンコジ〜ぃ♪」

笑いながらモモカンが走ってきた

モモカンも同じチームだ


エンコジはフルフル震えている


予想外にダメージがでかかったらしい


「何寝てんの!!

ホラ!!

スドケンとツナくんが試合してるよ!!

見なよ」


エンコジはヨロヨロと体を起こしコートを見た


確かにスドケンとツナがゲームに出ている


しかも相手は遠藤と岡田のいるチームだ


遠藤はサッカー部

岡田と守田はバスケ部だ


岡田が手慣れた感じでドリブルをしている


「きゃー!!

陣内くん!!須藤くん!!

頑張ってー!!」


体育館の半分

ネットの向こう側から黄色い声援が飛ぶ


きっと男子は一様にジェラシーを抱いているだろう


エンコジはイライラっと声援を聞いていたが

声援の中に気になる

キーワードがある事に気がついた


「頑張ってー!!

ニセコジとニセケンなんかに負けないでー!!」


エンコジは

たっているモモカンの体操ズボンを

くいっくいっと

引っ張り


「なんであいつらニセコジとニセケンなんだ?」


と尋ねた


モモカンは眉をひそめたが

かわりに松岡くんが答えてくれた


「知らないの?

彼、遠藤幸治でしょ?

中学の時エンコジって呼ばれてたらしいよ

あと岡田くんはオカケン

でも円くんと須藤くん、君達二人が目立つからあだ名取られたんだって言ってた

…ちなみに守田綱吉くんはニセツナ

…これも意味わかるよね?

ハハハ」


エンコジは

ふ〜ん

と言って納得した


エンコジにとって

『エンコジ』

というあだ名などどっちでもいいのだ

なにせ本名は

『マドカトラハル』

なのだから


「へ〜

だから嫌ってるんだ」

モモカンが感心しながらボールを

ダムッダムッ

と床につく


「この事を当事者の君達が知らなかったのは意外だったなぁ」


松岡くんも感心した顔で言った


「きゃーッ!!ナイッシュー!!」


突然の歓声


ツナが華麗にスリーポイントを決めたのだった


マジやばくない?

格好良すぎ!!


と雑音のように女子の高い声が宙を舞う


エンコジは目を細め

またイラっとした


「陣内くん

…スゴい人気だね

彼のオーラというか

フェロモンというか…」


松岡くんがジェラシーよりも尊敬に近い感じでツナを評価する


「きゃーッ!!

ナイスカット!!

きゃーッ!!

ナイッシュー!!」


スドケンがニセケンのボールを奪い

ジャンプシュートを決めた


すかさず女子が歓声を放る


「…須藤くんもスゴい人気だ」


松岡くんは

ほぇ〜っ

と声を漏らし

いつもかけているトレードマークの黒淵メガネをずり上げた


シュートを決めたスドケンと自陣で待っていたツナがハイタッチを交わす

女子の声は止まない


エンコジは

ケッ

と吐き捨て

またも寝そべった



ダムッダムッダムッダムッ



ドリブルのリズムがバスドラムの音に聞こえる


「…。」


エンコジは体育館の天井を見ながら音楽室でできたあの新曲を思い出していた


…ノリノリのカントリー系ロックに仕上げたいな


でもベースとドラムも強調させたらどうなるんだろ?


さりげにあのクラシックのフレーズも使いたいしなぁ


ツナは嫌がるだろうな…


いや

やっぱ入れたい!!


ツナは嫌がるから

モモカンのリードギターでテクニカルにキメよう


んで…


…などと考えていると松岡くんに肩を叩かれた


「次、僕らの出番だ」


いつの間にか先程のゲームは終わり

ダブルスコアでツナとスドケンのチームが勝っていた


サッカー部のニセコジが悔しそうな顔をしている横で

バスケ部のニセケンが愕然としている


「見せ場が…」




女子がワイワイ騒ぎながらバドミントンの競技に戻る


ツナとスドケンが見れたらそれで良いらしい


一試合やって爽やかに手をふってくるスドケンと

汗をタオルでふきながらこちらを見ているツナにエンコジは

中指を立てた


あんちきしょぅ共

うらやましいゼ




コートの中央に二列に並び

礼をした


松岡くんがチラっとバドミントンをして

こちらには見向きもしない女子のほうを見て

「よしっ!

これで緊張せずにバスケが出来るぞ!」


と意気込んでいた


そんな松岡くんを見たエンコジは

松岡くんに聞こえるか聞こえないかの声で


「松岡くん…

君は良いヤツだ…

でも、もし女子が居たとしても君や僕には元来関係ないんだよ…」

確信を得た顔をして背伸びをしていた




相手チームは


田村進一(タムラシンイチ)谷紅葉(タニモミジ)

津地誠吾(ツヂセイゴ)

千葉一樹(チバカズキ)

と長身揃い

…そしてバスケ部期待の星

外様大輔(トザマダイスケ)

相手にまるで不足はなく


むしろこっちが約不足なくらいだ


エンコジ、モモカン、松岡くん…

スポーツ万能だが

何故か常に余裕をこいて

笑顔を絶やさない人物

何を考えているかわからない

凪沢鏡一郎(ナギサワキョウイチロウ)


体育館に入って来るのが遅く何故か同じチームに


謎の男だ


みんなが言うにはエンコジと少し顔が似ているらしい



唯一バスケ部のニセツナはエンコジを嫌っている


これはメンドくさいなぁ


とモモカンは少し困った


「なーっはっはっ!!

ニセツナ!!

まさかお前と戦うとはな!

このミスター・バスケットマンが力の差を見せてやろう!!」


カエル顔の外様が高笑いをした

外様の別名は

トノサマガエル…


トノサマガエルの言葉にエンコジと凪沢がピクッとした


「なに!?

ミスター・マスカットマン!?」


エンコジが警戒した顔でトノサマガエルを見る


「違う!!バスケットマンだ!!

そんなつぶつぶしてない!!」


「なに!?

ミスター・マスコットマン!?」


凪沢がビックリした顔でトノサマガエルを見る


「違う!!バスケットマンだ!!そんな愛されキャラじゃない!!」


「なんやて!?ミス・タバスコゲットマン!?」

休憩しているスドケンがわくわくした顔でトノサマガエルを見る


「違う!!そんな辛かない!!」


さすがに疲れたミス・タバスコゲットマン

もといミスター・バスケットマンは審判に早くジャンプボールを促した


「なに!?バスコダガマがなんだって!?」


モモカンが頭を抱えてトノサマガエルを見る



「違う!!」


と、トノサマガエルが言いかけた瞬間

審判はジャンプボールを上げた


「ゲッ!!」


不意をつかれたトノサマガエルは跳ぶ事が出来ず

ただ上を見た


ジャンプボールはニセツナが奪っていた




「ふふん

ミスターバスコダガマもたいした事ないな」

ニセツナはクルクルっと中指の上でバスケットボールを弄び

トノサマガエルを嘲笑った


「ムキィーッ!!」


トノサマガエルは素早くニセツナのDFにつき


「須藤も含め

キサマらおちょくりよって…」


と鼻息をフーっと荒立てる



凪沢が

「ヘイ、ニセツナ

とりあえずパス」


と手を振った


ニセツナはヒョイとボールをわたし


トノサマガエルのDFをかわそうとフェイントを混ぜながら相手陣営に入りこもうとする


しかしトノサマガエルのマークは徹底的でニセツナはピッタリとマークされていた


「ちっ!!」


ニセツナが舌打ちし

トノサマガエルがニヤリとしている様を見て凪沢が笑った


「ははは♪

あぁ〜

唯一のバスケ部がぁ〜」


なんでもこなす凪沢は

バスケも例外なく器用にこなすようで


ドリブルも手慣れていた


しかし

上手いが故にエンコジは気に入らなかった


目を閉じ


ドリブルのリズムを体で感じながら呟く


「不規則…」


もっと規則的なリズムが欲しい…


「ナギサワーッ!!」


エンコジが急に叫び


周りがビックリしてエンコジに注目する


それは相手チームも例外ではなく


凪沢をマークしていた田村も一瞬凪沢から目を離した


その隙―、


「チャぁ〜ンス♪」


と言い終わらないまま

凪沢がブースターをつんだロケットのようにゴール下まで突っ込む


突然の奇襲にハッとする敵チーム



もう遅い


カシュッ


というネットとボールが擦れる音ともに

エンコジのチームに2ポイントが加算された



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